孤高の黒の剣士   作:アズマオウ

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どうも、第3話でやらかしたアズマオウです。
やはり感想などでは……恐ろしいという意見が多かったですw。あと、シリカファンにはちょっと刺激が強すぎましたね。この場でお詫び申し上げます。嫌いなわけじゃないんですが。

あと、キリトさんTUEEEEEEEに注意ですw。

それと、評価ありがとうございます。

では、どうぞ。今回は前回ほどひどくはないです。黒幕もわかります。


第4話:孤独の侵入

「分かったでしょ? もう、この街は死んでいるでしょ?」

 

「ああ……」

 

 項垂れている俺にリズベットは声をかけた。俺は僅かに首を縦に降る。シリカと別れてから10分後、俺は始まりの街のベンチに座り込んでいる。

 あの後俺はまるで何かから逃げるように俺は始まりの街を駆け回った。だが、俺の目に映るのは、非情な現実だ。SAOのチュートリアルが行われたあの大広間では、相変わらず人身売買が行われていて、街道ではブサイクな男と少女が堂々と体を繋ぎ合っている。フィールドに出ると、一人の非力そうな少年を複数人で痛めつけて、ポリゴンの粒子と成り果ててしまった。

 悲鳴と喘ぎ声から耳をふさぎたかった。最悪な光景から目を瞑りたかった。中でも俺が衝撃を受けたのは、アルゴが醜態をさらして街道に磔にされている光景だった。しかも、彼女は絶頂に達していて、呂律が回らない状態だった。俺には声もかけることが出来ず、その場を走って去ることしかできなかった。

 そんな現実を俺は10分間休む間もなく見ていた。全身から力が吸いとられ、こうしてベンチに座り込むことしか力が残されていない。シリカにも酷い言葉を吐いてしまったことも、俺の脱力の原因の一つでもある。彼女と現実世界で会おうと言ったのは俺の方だ、なのに俺はそれを拒んだ。とんだ嘘つきである。自己嫌悪の念が再び巻き起こってくる。

 

「もう、女性は全員快楽の前には自我を保てなくなっているわ。今普通に生きているのは、アタシくらいかな……」

 

 リズベットは苦笑して、俺の方を向く。

 

「そういえば……リズはどうやって過ごしてきたんだ?」

 

 俺は疑問をぶつける。女性などが拉致されている状況のなか、どうしてリズベットはこうして堂々と外に出られるのだろうかとずっと気になっていた。

 リズベットはふふっと笑って答えた。

 

「アタシは今も逃げ続けているの。隠蔽スキルとか持っているから、追ってくる奴等を撒くことができるの。一度見つかりかけたけど、メイスで撃破したわ。追ってくる連中なんてレベルの低い奴等だからまず捕まらないわ」

 

 なるほど、レベルが低ければ捕まるはずがない。隠蔽を破れる索敵スキルを所持しているプレイヤーならリズベットは隠れられないが、恐らく熟練度が低いか、習得していないかどちらかなのか、見つけられなかったのだろう。

 

「でも……流石に私でも上の連中は倒せないんだ。この、最悪な状況を動かしている奴等はね」

 

 リズベットは顔をしかめる。恐らく、彼女が女性の中でもトップクラスなのだろう。まあ、かなり強いプレイヤーは全員死んでしまったのだから当然といえば当然だ。しかし、そんな彼女を上回る奴等とはいったい誰だろうか?

 

「それは……誰なんだ?」

 

「キバオウよ」

 

「――――!!」

 

 キバオウ。

 この男の名前を俺は知っていた。現在は無き軍のサブリーダーで、軍の体たらくを招いた張本人である。初期こそは真面目に攻略していたが、第25層の軍の壊滅を機に攻略から身を引いて自己強化と言う名の弱いものいじめに勤しみ、大勢の下層プレイヤーを苦しめた。ついには軍のリーダーのシンカーにより追放されたが、その後の行方は分からないままだった。

 だが、キバオウは再び王の座に返り咲いたようだ。なるほど、納得は行く。元攻略組とあらば、力で支配など容易い。

 

「あいつが女プレイヤーとかを拐いに拐ったの。そして男たちを呼び寄せて……今のような地獄を生み出したの。だから……すべてはあいつが原因よ。キリト、お願いがある」

 

 辛辣な表情を浮かべながらもリズベットは言葉を吐き出そうとしていた。だが、俺はそれを遮った。

 

「――――キバオウを、殺せ。って言うんだろう?」

 

 俺はボソッと言った。リズベットはクスッと笑う。あながちはずれではないのか?

 

「察しがいいわね。まあ飛躍はしすぎているけど。キバオウを……追い出してほしいって言おうとしたんだけどさ」

 

 俺の常識はどこかおかしくなっているのかもしれない。恐らく、何十人も悪人を殺したせいで、殺すことに抵抗がなくなってしまったのかもしれない。そんな自分に俺は苦笑する。

 

「……なるほどな。とんだ勘違いだな。ま、とにかくキバオウのもとへと行けばいいんだろ? それが、リズのお願いか?」

 

「まあね。嫌だったらいいけどさ」

 

「…………」

 

 正直、面倒くさい。だが、一方でキバオウに会いたいと思う気持ちもあった。キバオウは現在どうしているのか、気にもなった。それに……こんな現実を、見過ごせるほどに俺は非情ではない。俺は首をゆっくりと縦に降った。

 

「ありがと。場所はね、元軍の本拠地よ。それで解るでしょ?」

 

 それだけ聞けばすぐに分かる。場所もはっきりと脳裏に思い浮かんでくる。

 

「ああ。わかるぞ。じゃあ行ってくるぜ」

 

「気を付けなさい」

 

 俺は背を向け、手を挙げてその場を去った。軍の本拠地へと足を向けて、ゆっくりと歩く。その途中にも、悲惨な現場が見える。俺は目を背けて足早に向かう。本拠地は確か、圏内だ。

 数分後、その場所へとたどり着く。レンガ造りの大きな建物だ。門の前には、禍々しいモンスターの像が置かれており全体的に黒を基調としているせいか、近寄りがたい印象を与える。その近くには門番がおり、厳しい視線が縦横無尽に巡らされる。だが、俺はそれに臆することもなく門番に声をかける。

 

「悪い、キバオウに会いたいんだが」

 

 どうにか笑顔を作って尋ねる。しかし返ってきたのは、嫌悪の視線、そして威圧感あふれる言葉だった。

 

「おい、市民の分際でキバオウ様のことを呼び捨てにするな。ましてや謁見など恐れ多いだろ!」

 

 市民? キバオウ様? 恐れ多い?

 キバオウに対するアゲアゲがすごすぎてちょっと笑いそうになる。だが、それをどうにか堪えてポーカーフェイスを保つ。どうやら、キバオウを神格化する動きが、この組織では出来上がっているらしい。しかも市民と来た。キバオウ一派がこの始まりの街、いや、アインクラッドを統治していると錯覚しているようだ。滑稽極まりない。

 

「悪いな、失念していたよ。それで、"キバオウ様"に"一市民"が"謁見"したいのですが」

 

 俺は恭しく言った。せめて、気に食わない語句くらいは強調させてもらう。だが、気にしていないのか、どうでもいいのか、門番の男は首を降った。

 

「分かった。案内する。失礼の無いようにな」

 

 門番の男は黙って中に入る。俺もその後に続く。建物内はひんやりと冷えた空気が広がっており、緊張が高まってくる。廊下を歩いていくと作り物の西洋風の鎧がずらっと並んでおり、殺風景な空間を作り上げている。こんなところに金をつぎ込めるなら、攻略に精を出してほしいと思う。

 

「この中にキバオウ様はいらっしゃる。入れ」

 

 門番の男はそれだけいうと持ち場へと戻っていった。俺は目の前のドアノブに手をかけて捻った。すると、ドアの隙間からサボテン頭が小さく見えた。間違いない。俺は部屋の中へと、入った。

 突然の来客に部屋にいるキバオウやその側近は驚きの表情をした。ただ、門番の男から聞いていたらしく、すぐに平静に戻る。奥に、膝を組んでどかっと玉座に座り込んでいる男こそがキバオウだ。トゲトゲしたサボテン頭が特徴で、髪型が表すように、性格や口調もトゲトゲしている。ただ、妙にカリスマ性だけはあるようで、こうして部下がついている。彼のどこに魅力があるのか、俺には分からない。

 

「誰やと思たら……ビーターはんやないか」

 

 キバオウはニヤリと口元を吊り上げて俺に言った。俺の蔑称の一つである¨ビーター¨の名付け親は、早速それを使った。

 

「ああ。久しぶりだなキバオウさんよ。会ったのは、25層以来だな」

 

 俺はその蔑称に関してノーコメントを貫く。この呼び名に関しては未だに馴染めないが、そんなところを突っ込むのは愚の骨頂だ。だが、少し腹が立ったのでトラウマを刺激しておいた。

 だがさすがはサブリーダー職に就いていただけあって、その程度の挑発には乗らなかった。ふてぶてしい笑顔を浮かべて俺をじろりと見る。

 

「んで、キリトはん。今日は何のようや? この街に住む気になったんか?」

 

「いや、アンタの体たらくぶりを笑いに来たのさ」

 

「――なんやと?」

 

 俺の言葉に、場の空気がピーンと張り詰めた。緊張が高まり一触即発の状態になる。キバオウの部下は俺を睨み付け、キバオウは眉毛の谷にシワを寄せた。今はキバオウが部下を制しているため、戦いにはならなかったが、どうやら俺は爆弾を投下してしまったらようだ。無論、わざとだが。

 

「もう一度……いってくれへんか?」

 

 キバオウは俺に問いただす。今度は威圧が掛かった声だ。しかし俺は臆することなく、もう一度繰り返す。

 

「アンタらの、滑稽な支配とか性欲とかを笑いに来たのさ」

 

 ツンボな奴等にも聞こえるようはっきりと俺は言った(そもそもSAOプレイヤーの聴力は皆一定値なのだが)。いよいよ、キバオウ一派の怒りは高まる。キバオウ本人も流石に怒りの表情を隠せない。

 

「キリトはん……ジブンは何をいっているか、わかっとるんやろうな……? ワイらをキレさせたら……どうなるかわかっとるんやろうな……?」

 

 先程より数倍ドスの聞いた声で俺を脅す。しかし、俺はビビらなかった。何故なら絶対の自信があるから。こいつらには、負けないという自信が。俺は、2年前に自身がビーターだと宣言したときのような、冷酷な笑みを浮かべて答えた。

 

「分かってるぜ? アンタらが逆上して俺に襲いかかり、返り討ちにされるのがな」

 

「ッ――――! だったら……望み通りやってやるで!! オマエラ、やっちまえ!!」

 

 おいおい、お前はヤクザかよ。

 安い挑発に勝手に乗るとは馬鹿すぎるな。

 俺は呆れながら、叫びながら迫るキバオウの側近どもの動きを見ていた。俺に近づいた巨体の側近は飛び上がって、体を大きく広げ、威圧攻撃をしながら俺にのし掛かろうとする。

 だが、その程度で俺が怯むとでも? 俺はフンと鼻で笑い、体術スキル《閃打》でがら空きになった腹を思い切り殴った。イエローのライトエフェクトが側近の腹へと霞むほどの速度で刺さり、弾丸の如く壁へとぶつかった。ダメージはないが、激しいノックバックと神経に与えられた不快感が彼を襲っているだろう。

 

「ち、ちくしょう!!」

 

 その様子を見たもう一人の側近は、腰に納めてあった《アニールブレード》を抜き払い、俺に突き立てる。俺は、腰にあるピックを素早く取り出して、投擲スキル《シングルシュート》で、側近の血走った目を狙う。一条の銀の軌跡は真っ直ぐ目標へと向かい、グサッと目玉に刺さった。

 

「ぎゃっ!?」

 

 側近には痛みはない。が、激しい不快感に襲われているはずだ。視界不良好状態がしばらく続くので、こういった一対多数の戦いには美味しい。

 

「くそったれが!!」

 

 さらにもう一人俺に襲いかかる。俺はウィンドウを開いて剣を一本取り出した。俺の愛剣《エリュシデータ》だ。ギアのついた漆黒の輝きを放つその武器の持つ威圧感に一瞬だけキバオウ一派は気圧される。

 その虚を俺は突いた。利き脚でレッドカーペットが敷かれた床を、思い切り蹴り飛ばし剣を腰に引き絞る。狙いは側近の後ろにいる、キバオウ。

 こちらに向かっていると気づいたキバオウは背中からピカピカの武器を抜いて構える。だが、そのときにはもう遅かった。

 俺の右手の剣が紅く光る。獲物を喰らい尽くさんとたぎる獣の欲望のような紅い炎はゴウッと激しく燃え上がり、驚愕の表情を浮かべているキバオウの胸へと狙いを定めた。片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》が、血の色の閃光を放って、轟音とともにキバオウを吹き飛ばした。玉座と共にキバオウの体は大きく転がり、壁に顔面を強打した。

 俺は、ゆっくりと側近の顔を振り返る。側近はヒィッと上擦った悲鳴をあげて後ずさる。だが、視界を奪われていた方の側近は、片目で俺をギロッと睨み、剣を構える。なるほど、度胸だけは褒める価値がありそうだ。

 

「死ねぇぇぇぇぇっっ!!」

 

 大きく振りかぶり、奇声をあげながら側近は片手剣ソードスキル《ソニックリープ》を放ってきた。俺は肩の力を抜いてこちらに迫るのを待った。

 

――久しぶりにあれをやってみるか。

 

 俺は腰をすっと落とし、剣を再び腰に引く。ただし《ヴォーパル・ストライク》を放つのではない。別にそうしても構わないのだが、奴等の戦意を喪失させるにはもっと効果的な方法がある。

 側近の放った《ソニックリープ》は数メートルを一瞬で駆け抜けて、上段斬りを放つ優秀な突進技だ。ただし威力は弱く、牽制や奇襲に使う技だ。また読まれやすく、躱されるのが前提で放たないといけない。まあそういった意味では、ソードスキル特有の硬直時間が少ないこの技を選んだのは間違いではない。間違えたとしたら……相手が俺である、ということだろう。

 黄緑色の光を帯びた側近のアニールブレードが眼前へと迫る。俺はそこでようやく動いた。腰に引かれたエリュシデータがライトブルーに光り始める。そのコンマ一秒後、青の光の粒子を溢しながら、真横へと剣が払われた。狙いはーーアニールブレードの脆弱な腹の部分。

 余りの早さに青の光を帯びた剣の切っ先が湾曲にぶれる。黄緑色の剣とライトブルーの剣が音高く衝突し、火花が散り――――アニールブレードが真っ二つに割れ、上半分がくるくると宙へと舞った。

 側近の顔には、何が起こったのかと書いてある。剣が折れたことを未だに信じられない側近は残された下半分の部分を食い入るように見つめている。しかし、残された剣は、吹き飛ばされた上半分の剣が、空中で静止してポリゴンの粒子と化すと同時に、手の中で弾けとんだ。

 

「今の……何だよ?」

「剣が折れたぞ!?」

 

 側近共がざわつきキバオウは目を丸くしながら、俺へと問う。

 

「さ、さっきのはなんや!?」

 

 恐らく漫画なら顔に汗をだらだら垂らしているであろう表情を浮かべてキバオウは一歩踏み出す。俺はふんと鼻で笑って答えた。

 

「《武器破壊(アームブラスト)》だよ。ちなみに、滅多に成功はしないぜ? "攻略組"以外はな」

 

 攻略組の所を強調して俺は告げた。その嫌みたっぷりな言葉にキバオウ一派は顔にシワを作っていたが、俺の思惑通り、戦意を失ったようで膝ががくがくと震えている。

 さて、このまま奴等をシバいてこんな悲惨な状況をやめさせよう。そう決めて俺はキバオウへと迫る。

 

 だが、キバオウたちが勝ち誇ったような笑みを浮かべた。俺の気のせいか、強がりか、それとも……本当に何か打開策を見つけたのか?

 

「離して!!」

 

 その直後、鋭い悲鳴が室内を満たす。女性の声だ。それも……俺のよく知っている人物の。体に激しい電気ショックを味わったかのような衝撃に襲われ、俺は素早くそちらを振り返る。すると、俺は詰まった声をあげた。

 

「リズ!?」

 

 リズベットは数人の男たちに押さえつけられながらキバオウのもとへと連れられている。だが、リズベットは鋭く叫ぶだけで、目立った抵抗はしていない。いや、できないのだろう。脅迫でもされたのか? でも……なぜ彼女がここに? 

 

「キバオウ様。新しい女、連れてきました!」

 

「ご苦労やな。タイミング的にも、ちょうどええな」

 

 キバオウはじろりと俺を見て、にやりと笑った。その笑みの意味は、俺の背筋を大いに冷やした。俺は剣を構えるも、握る手に力は籠らない。俺はギリッと歯を鳴らし、状況を改めて飲み込んだ。キバオウ一派は悔しげな表情から、下卑た笑みへと変えていく。冷汗がダラダラと流れていき、サァーッと体中が冷めていく。

 

「動くなよ、ビーターはん。動いたら……この女やったるで」

 

 俺は唯一の味方、リズベットを人質に取られた。たった距離10メートルが、こんなにも遠いと感じたことは、なかった。

 

 




ちょっとキリトさん俺TUEEEEEEEEEEになっちゃいましたね。実際強いんですが。

次回は、3話ほどではありませんが、恐ろしいことになります。その時になって改めて警告いたします。

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