孤高の黒の剣士   作:アズマオウ

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ここからはヒースクリフさんとの戦いになります。あの過激な描写はありません。ご安心ください。

それと評価ありがとうございます。頑張らせていただきます。

では、どうぞ。


第6話:孤独の決戦

「待っていたよ、キリトくん」

 

 奥にある階段から降り立ったこの世界の神、《ヒースクリフ》は笑いながら俺と向き合った。俺は何も答えない。

 ヒースクリフの装備は、全く変わっていない。重厚そうな赤の鎧に、胸までありそうな十字盾、そして若干細めな十字剣。装備だけじゃない。彼の立ち振舞い、何も読み取れない表情、無機質な目。全てが第95層にて俺たちにとんでもない告白をしたとき以来から変わっていなかった。

 ヒースクリフは、鋭い双眸をこちらに向けながら、剣を払う。俺も背中にある二刀をしゃりんと音を立てて剣を払う。するとヒースクリフは僅かに目を大きく広げた。

 

「ふむ……てっきり私は《エリュシデータ》と《ダークリパルサー》で来ると思っていたのだがな」

 

 ヒースクリフは、どうやら俺の右手に握られた赤の剣に注目したのだろう。俺は表情を変えずに答える。

 

「まあな……ちょっとした、気分転換だよ」

 

「ふむ……ならばその新しい剣の名前を教えてくれるかな?」

 

 ヒースクリフの問いに俺は素直に答える。わざわざ隠すことではない。

 

「《エンド・ワールド》。俺の《エリュシデータ》と、アスナの《ランベントライト》をインゴットにして作った剣だ」

 

 俺のその答えにヒースクリフは静かに笑う。だが、本心ではきっと笑っていないのだろう。興味がそこまであるわけではないといった方がいいか。

 

「なるほどな……。この世界を終わらせるという、決意が現れているな。そういうのは嫌いじゃない。私という魔王を倒す勇者に、ふさわしい剣だよ」

 

 俺は奴の意味深なフレーズに反応した。勇者? 魔王?

 

「何のことだ?」

 

「そのままの意味だよ。ロールプレイングをしているんだから。そうなれば、君は勇者の役だな。この場にこうして魔王の前に立っているのだから」

 

 さっぱり意味がわからない。ロールプレイング? 勇者? 馬鹿馬鹿しい。俺なんてそんな大層な存在じゃない。誰も救えない、無力な男にすぎないのに。それに……何がロールプレイングだ。アンタはこうもいったじゃないか。『これはゲームであって遊びではない』と。これは単なるゲームじゃない、現実なんだ。役割とかそんな概念は存在しないはずだ。

 

「アンタ……何いってるんだよ」

 

 俺は苛立った声を出す。だが、ヒースクリフは特に大きな反応を見せずに、一拍置いて平時の調子で説明を始める。それは、第1層にて一万人にチュートリアルを行ったときのような、抑揚のない低い声とそっくりだった。思わず背筋が冷えていく。

 

「この《ソードアート・オンライン》には10種のユニークスキルが存在する。そしてその所有者は、《ソードアート・オンライン》上のストーリーの登場人物でもあるのだ」

 

「何?」

 

 俺は顔をしかめる。

 

「筋書きはこうだ。《大商人》から巨万の富を、《大鍛治》から最強の武器を手に入れた、勇者たる《二刀流》は、《手裏剣術》、《抜刀術》、《無限槍》、《射撃》、《怪力》を身に付けた者たちを引き連れ、立ちふさがる《暗黒剣》を倒し、魔王たる《神聖剣》、すなわちこの私を倒す。これが実現できれば最高のシナリオだ。まあ、そのシナリオと合っていたのは、最後の、勇者と魔王との最終決戦のところだけだがね」

 

 下らない。俺たちはそんな下らない筋書きに踊らされていたのか? 沸々と怒りの念が込み上げてくる。俺が勇者でお前が魔王、だと? ふざけるな……。

 

「ふざけるな……俺が勇者だと? お前が魔王だと? 下らないんだよ。アンタは……第一層で、目もつむりたくなるような悲劇が起こっているって言うのに、こんな下らないストーリーを考えていたのかよ!?」

 

 抑えがたい何かを 孕むような叫び声をあげた。それを無表情な顔で受け止める。

 だが、彼はさらにとんでもないことを言い放った。

 

「第一層での出来事は、無論知っていた」

 

「――――!?」

 

 知っていただと? あの恐ろしい惨状を、知っていただと? 知っていてなお、なにもしなかっただと?

 俺は視界がぐらついた気がした。頭を太い棒で思いきり殴られたかのような衝撃と気持ち悪さが襲いかかってくる。この男を、今すぐにでも殴りたい。殴り殺してやりたい。俺はこらえきれず一歩を踏み出す。

 

「アンタ……ふざけているのか? こんな状況を放って置くなんて……どうかしてるだろ!! なぜこの世界の秩序を保つべき人間であるはずの男が、混沌を認めているんだ!! 人の尊厳や誇りを何の躊躇いもなく汚せる環境を野放しにするつもりなのか!?」

 

 だが俺の糾弾に対しても奴はまるで表情を変えず、俺をじっと見つめる。その無機質で何も読めないその態度にも、俺は腹が立った。

 彼は俺が向ける敵意など意に介さぬような口調で返した。

 

「私は観測者であって調整者ではない。システムの異常があれば別だが、プレイヤーの問題には一切の干渉を禁じている。人を殺そうが、尊厳を奪われようが、それを醸成しているのは、プレイヤーたちだ。私は同じ人間ゆえに、干渉は許されない立場だ」

 

「アンタはゲームマスターだろ!? ゲームマスターはプレイヤーにとっては神なんだよ!! 全てを修正するのがアンタの役目だろ!!」

 

「ならば、その彼らを抹消しろとでも言うのか?」

 

「…………っ」

 

 鋭い指摘だった。

 俺だって奴等を抹消したい、殺したい、消し去ってやりたい。でも……そうしたら彼らの尊厳が消えてしまう。俺の言うことが矛盾していることに気がついた。俺は下を俯き、唇を噛む。こいつの言うことも一理ある。最低な屑野郎にだって、人間としての尊厳はある。俺や、その他の人間の一意見だけで、彼らの意思を無視して消し去ることなどあってはならないのだ。理不尽ではあるけれど、不可能なのだ。

 だが、彼が次に放った言葉は、納得がいかなかった。

 

「そんな話は置いておくとしようか。折角の勇者と魔王の戦いだ。始めるとしよう」

 

 前言撤回だ。

 そんな、話だと? 人一人の命をなんだと思っているんだ? まさか……この男は、下の人間よりも、俺との勝負の方が、こんなお膳立てされたような試合の方がずっと大事だとでも言うのか? その実現のためならば、他の……生き残っているプレイヤーの尊厳や誇り、苦悩はどうでもいいとでも言うのか!? いや、死んだプレイヤーに関しても、なんとも思わないのか!?

 こいつは、魔王だ。悪に染まった魔王だ。すでに何千人も殺しているのにも関わらず、平気で生きていられる、化け物だ。

 

 

「ふざけるな……クソ野郎」

 

 

 微かに漏れた言葉は、彼の聴覚を揺らす。

 

 

「人をなんだと思っているんだ? 無力な人間は死んで当然だとでも言うのか? そんなの、間違っているだろ」

 

 ヒースクリフは無機質な双眸で俺を見つめる。その顔の色に、落胆が見えた。

 

「……そういわれても、私は何も言えないな。恐らく君が満足するような回答は出せない。このままではただの下らない言い争いになる。ならば……口ではなく剣で語ろうではないか」

 

「……その言葉を待っていたぜ」

 

 俺は冷ややかに言う。そして俺は補足した。研ぎ澄まされた心で頭を冷やし、殺意を込めていく。アバターが冷たい熱を帯び始めていく。

 

「次いでに言っておくが……これは勇者と魔王、なんていう下らないお題目のもとでの戦いじゃない。――――単純な殺し合いだ」

 

 俺は姿勢を低くする。そこからヒースクリフは察する。俺が、戦闘体制にあることを。彼は左手を降ってウィンドウを表示し、操作した。すると、互いのHPが大幅に減少し、残り3割りほどにまで減少した。一体何のつもりだ?

 

「君のその決意、いや、殺意はよく分かった。そうなれば楽しい戦いと言うわけにはいかないな。このHP残量は強攻撃が当たった瞬間に死亡する量だ。一度でも強攻撃を浴びたら負けだ。まるで……現実世界での殺し合いのようにね。フェアでかつ、現実的だろう?」

 

 なるほど、そういうことか。面白い。

 俺はニヤリと口元だけで笑う。その後、笑いは嘘のように消えていき――殺意を込めた表情で睨み付けた。

 

――待ってろよ……リズ。見ていてくれ……アスナ。俺はこの世界を終わらせるからな……!

 

「ヒースクリフ、いや、茅場晶彦……。俺はーーお前を、殺すっ!!」

 

 吐息だけで叫び、俺は地を蹴りあげた。低く滑空しながらヒースクリフへと迫り、左の剣で上方へと切り払う。ヒ-スクリフはそれを難なく受け止める。十字盾と《ダークリパルサー》がぶつかって生じた火花が、両者の戦いの開幕を知らせる。

 俺は、足の踏み込みや腕の振りなどをフル活用して威力をブーストし、剣を振るう。徐々に俺の剣の速度は上がっていき、時間の密度が増していく。俺の意識が、加速していく。

 この戦いを奴はフェアだといったが、実はそうではない。俺には一つの制約がある。それは、"ソードスキル"が使えないということだ。使えない仕様にされているわけではない。

 このアインクラッドに存在するすべてのソードスキルは、奴が設定した。ということは、奴は俺の所持しているソードスキルをすべて知っているということだ。しかもソードスキルには硬直時間が設けられていて、ヒースクリフ相手では、僅かな硬直時間でも致命傷になる。即ち、安易にソードスキルを使うと全段ガードされた挙句、強攻撃を浴びせられてしまうのだ。俺に残された戦法は、通常技でどうにか奴の鉄壁のガードを崩して、必中のソードスキルで決めるしかない。

 何度か剣を振っていくうちに、空気に粘度が増してきた気がした。意識が加速されているのだろうか。だとしたら、この状態はベストだ、何故なら……。

 

――奴の剣が、盾が……見えるっ!!

 

「うらぁっ!! せやぁあああっっ!!」

 

 奴の盾に俺の攻撃は阻まれ続ける。それに喰らい付くように弾かれ、離された距離を詰めていく。剣と盾が衝突し、大量の火花が散っていく。火花に照らされたヒースクリフの顔を覗き込む。目は、あくまで冷ややかで、焦りの様子もない。神に逆らう反抗者に対する、憐憫の情なのか、嘲笑の視線なのか。この男は、あくまでこの戦いを、ただのゲームとしか考えていないのでは?

 瞬間、背がぞっと冷えていく。侮辱されている怒りと、神に立ち向かっているという事実に対する畏れが混ざり合い、体が固まっていく。

 

 いけない、ここで手を止めたら最後だ。俺は、負けるわけにはいかないんだ!!

 

「ぁぁああああっっ!!」

 

 一度でも怯んでしまった俺を叱咤するように雄叫びを上げて奴へと迫る。俺の二刀が奴へと襲い掛かり、縦横無尽に軌跡を描く。それを奴が的確にガードし、返しとばかりに鋭い一撃を浴びせてくる。それを瞬間的反応で避ける。この繰り返しだった。

 

――もっと……もっと速く!! 奴のガードを上回らないと!!

 

 俺は強く念じながら剣の速度を加速させる。もはやソードスキルとほぼ同じ速度で繰り出される剣は、何重ものの残像を残し、ヒースクリフへと打ち出される。脳が灼けるほどまでに神経を暴走させ、人間の限界までも越えようとしていた。普段以上の酷使に神経は悲鳴をあげ、時々チクリと頭が痛む。だが、それでもかまわない。この世界を終わらせ、俺を信じてくれる人を救うためなら、この身など、どうなろうと構わない。

 加速された時間の中、俺は目だけを切り離して、奴の視線を見る。相手の思考を目から読み取るのは対人戦の基本だ。少しでも多く情報を盗み取らないと――。

 だが、奴の表情は冷ややかだった。先程とまるで変わらない。焦りどころか、余裕すら感じられる。その気になればお前など一瞬で殺せるんだぞ。そう告げているようにも感じられた。俺は、その瞬間生物的な恐怖を感じた。何かが妙にねっとりと俺の側へと忍びより、気付かぬままに飲み込んでしまいそうな、そんな恐怖が奴にはあった。

 

――俺は、弄ばれているのか? 神の前では、ただの戯れだとでもいうのか?

 

 その瞬間、加速された神経がごうっと熱くなった。一閃の光が体の芯を貫いたような感じだった。思考というものが一瞬にして奪われ、理性が働かなくなった。恐怖によってなのか、弄ばれたことに対する怒りなのか。

 俺はギリッと歯を鳴らして剣を交差させた。

 

「うおおおああっっ!!!!」

 

 半ばほえるように叫んで、俺は二本の剣をペールブルーに光らせる。二刀流ソードスキル≪ジ・イクリプス≫。

 離された距離を疾駆し、一条の光を高速で突き立てる。間髪入れずに左の剣で右に払う。右、左、右、左……。ヒースクリフの体を回るように剣舞を浴びせていく。太陽のコロナの如くその一撃一撃を見切れるものは初見ではまずいない。

 ただ一人の男を除いては。

 眼前にいる男は、俺の剣に宿された光を見た瞬間、ニヤリと笑った。その笑いはいつものどうでもいい笑いなんかじゃない。勝利を確信した笑みだ。その瞬間俺はミスを悟った。ソードスキルを使ってしまったのだ。あのヒースクリフの無表情は、俺がソードスキルを使うのを待っていたのだ。俺は、まんまと嵌められた。

 

 俺の、蒼く光り続ける剣は空しく奴の盾に阻まれる。技を放つ俺の神経は加速を止め、燃え尽きている。俺の思考も戦意も萎えていき、頭の中を絶望が喰らう。もう、勝てない。奴にソードスキルをすべてブロックされて、その後、強攻撃を喰らって俺は敗北するんだ。

 盾に阻まれた光の粒がパッと飛び散るのも、俺には見えた。どうやら時間の加速は終わっていないらしい。それをぼんやりと眺めながら俺は最後の時を待つ。俺は、目の前の男に再び負けるんだ。第75層でのデュエルの時でもあと一歩及ばずに俺は敗れた。そして今回も……勝てなかった。

 悔しかった。リズベットやアスナの望みを叶えてやれなかった。この世界を終わらせることが、できなかった。俺には――無理だったんだ。涙が零れる。溢れる。嗚咽が漏れていく。

 

 

 光が、降り注がれる。音が、光が、時間が遠ざかっていく。世界が俺を、置き去りにする。

 

 

 

 

 誰かが、いる。

 

 

 

 

 

『信じてるよ、キリト君』

 

 

 

――なんだ?

 突然、誰かの声が聞こえる。俺が今までずっと聞きたいと思っていた、優しい声。この声はまさか……アスナ!?

 

――アスナなのか? でも、君は死んだはずじゃ……。

 

『うん、死んじゃったよ。でも、君と話がしたかったんだ。君はもう諦めかけているから……励ましに来たの』

 

――そうか……でも、もうわかるだろ、俺は終わりなんだってこと。

 

『ううん、終わりじゃない。キリト君は、アインクラッド最強の剣士。リズが作ってくれたその白の剣と、私たちの思いが込められたその赤い剣ならまだやれるよ』

 

――無茶いうなよ、アスナ。もう俺には、無理なんだよ……。

 

『ううん、そんなことないよ。キリト君は不可能を可能にすることが出来るから。私もキリト君のおかげで、変われないと思ってた自分を、変えることが出来たんだよ』

 

――アスナ、俺も今すぐそっち側へ行きたい! 君に……会いたいよ。

 

『ダメ……それは許さないよ。君はまだ戦える。君は、諦めているだけ。でも……それでもダメだったらこっちおいで。でも、全力出してないよ、君はまだ』

 

――全力は出したさ……でも、ダメだったんだ。

 

『諦めないで……君は、戦えるよ……。それじゃあ、私そろそろいくね』

 

――待ってくれ……置いていかないでくれ……!

 

『バイバイ……なるべくゆっくり行くんだよ。キリトくん』

 

 

 

 

 

『愛してます』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 声はもう、届かなかった。

 

 

 停止した時間が徐々に進み始め、音と光が取り戻される。青の光の残滓が輝きを帯び、火花がスローモーションで舞う。俺は今、《ジ・イクリプス》を放っている最中だと言うことに改めて気づく。絶望感や諦観はもはや存在していなかった。

 あのときに聞いたアスナの声は何だったのだろうか。幻覚なのか? それとも本当に彼女が話しかけてくれたのか?

 どっちでもいいか。アスナの声が聞けたことには、変わりはないのだから。

 俺はまだ諦めない。せめてこの技が終わるまでは。アスナの想いに俺は答えなきゃいけないんだ。

 

――アスナ……俺に力を、もう一度貸してくれ!

 

 すっかり青く染まってしまい、ヒースクリフの盾に力なく打ち込まれている剣にそっと語りかける。それを最後に、俺の頭は、冷たく研ぎ澄まされていった。時間が再び遅くなっていき、思考が数倍にも加速されていく。集中しろ、考えるんだ……! 残りの攻撃回数は13回。それまでに……考えないと。俺は頭をフル回転させる。

 

 

 残り後12発。

 

 俺は《ジ・イクリプス》を発動している。その軌道は全て奴に読まれている。この技が終了したとき、奴に手痛い一撃を浴びせられ、死亡する。

 

 残り11発。

 

 いや、なぜ俺は死ぬと決めつけているのだ? 例え手痛い一撃を食らったところで死ぬとは限らないはずだ。俺のレベルは162、相当なHP量のはずだ。

 

 残り10発。

 

 それは違う。俺の装備している、《孤高》の唯一のデメリットがあるじゃないか。被ダメージが二倍になる、つまり俺は一撃でも喰らったら死ぬのだ。

 

 残り9発。

 

 ならば、《孤高》の中で活かせるものがあるはずだ。テキストを思い出すんだ……!

 

 残り8発。

 

 経験値増加、コル増加、攻撃力増加、硬直時間減少……。そうか! 硬直時間の減少!!

 

 残り7発。

 

 だが、《ジ・イクリプス》は二刀流最上級ソードスキル。いくら《孤高》があるとはいえ、致命的な打撃を加えられるほどの時間はあるはずだ。

 

 残り6発。

 

 硬直せずにすむ方法は……聞いたことがない。一体どうすれば……?

 

 残り5発。

 

 いや、待てよ。あの方法ならもしかして……。

 

 残り4発。

 

 試したことはない……だが、やるしかない! 一か八かに賭けるしか、俺に勝機などありはしない!!

 

 やることは決まった。あとは運に任せて実行するしかない。実行したことは一度もないが……成功しなければ俺は確実に死ぬ。他の手段はなく、これ以外に思い付くものがないので、これをどうにかして成功させねばならない。やるしかないのだ。

 

 

 残り3発。

 

 全身に力を込める。精神を静め、頭を極度に冷やしていく。

 

 残り2発。

 

 運動を司る脳へと意識を集中させる。ここで微かな違和感。何かがずれたような、右と左でそれぞれ違うことをしているような感覚を味わう。だが、これは恐らく成功するというサインだ。統合してはいけない。直感だが、それに頼るしかない。

 

 残り1発。

 

 頭が痛みを訴える。張り詰めた神経が全身を痺れさせる。だが、それを堪えながらも最後の一撃を待つ。

 

 

 そして、ラスト一撃――――――。

 

 

 

 

「ウオオオオオオオオォォォォッッ!!」

 

 ラストの一撃、左の突き攻撃が俺の雄叫びと共に繰り出される。唸りをあげる剣を見てヒースクリフは、ニヤリと笑った。ようやく勝利の瞬間が来た、とでもいうのだろう。その剣はそのまま奴の盾に衝突し、そのまま俺は硬直時間を課せられる。そして奴がトドメの一撃をーー。

 

 そうはいくかな……?

 

 ペールブルーの光を帯びた、激流のごとく迫る青白の剣を動かす俺は奴の盾をにらむ。あれはーーあの構え方は、俺の剣を折る気だ。それすらも自分の思い通りだと? そうは、させない!!

 剣が十字の中心へと突き立てられる直前、俺は奴の内側へと剣を逸らす。ただ、無論剣は盾に阻まれ、火花を多量散らす。

 内側を狙って体へと当てようという最後の悪あがきか。ヒースクリフはそう嘲笑った、気がした。

 だが、俺も笑い返す。その笑いは、強がりか、あるいはーー。

 光は徐々に薄れようとしていく。輝きを失い、仮想の体に制約を受けることになる……はずだった。

 

「――――!!」

 

 神は驚いた。神にすらできない芸当を成し遂げたものに、驚愕した。

 神に抗う愚かな勇者は、新たに光を湛えて、魔王に扮した神に不適に笑う。

 

「――《スターバーストストリーム》!」

 

 

 

 




何が起こっているのか次回説明いたします。次回で……どうなるんでしょうか!?

では、感想やお気に入り、評価などお待ちしております。

まお、《怪力》と、《大富豪》と《大鍛冶》は作者が勝手に決めたユニークスキルです。物語とはほぼ関係ありませんが、一応記載しておきます。

《怪力》……武器を持たずに戦う者のみに与えられる。素手での攻撃力が3倍になり、硬直時間が若干短くなる。また、通常では持ち上げられないものが持ち上げられるようになる。

《大富豪》……商人プレイヤーで、戦闘スキルを一切所有していないプレイヤーにのみ与えられる。獲得コルが10倍になり、従業員NPCをただで雇える。(通常一時間に800コル支払う)

《大鍛冶》……鍛冶プレイヤーで繊細さが光るプレイヤーにのみ与えられる。武器制作・強化成功率が4倍になり、獲得コルが1.5倍になる。


くっそ適当ですねw


孤高の役割に関しては、またあとで説明いたします。
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