今回で決着いたします。
では、どうぞ。字数は短いです。
「《スターバースト・ストリーム》!」
輝きを失いかけた剣が再び、荒れ狂う程に光り始め、神にもう一度抗う力を与えてくれた。俺は、突き出された左腕をそっと止めるようにして、二刀流ソードスキル《スターバーストストリーム》の初動モーションを作り出す。
直後、俺の右の剣は、ブンと素早く振られた。その間を縫うかのように左の剣が袈裟に斬られる。右、左、右左右と、目まぐるしく剣は軌跡を描き、ヒースクリフを守っている盾とぶつかって火花が激しく散り撒かれ、徐々にその激しさは増していく。しかも顔には、先程の余裕はない。
漸くだ、漸く奴の人間らしさが見えてきた。奴には焦りと困惑の色が見てとれる。それはそうだろう。俺だって困惑している。まさか、ソードスキルを¨繋げられる¨とは、思いもしなかった。一か八かで挑んだこの大技を成功させられたのだ。
俺にもまだ勝機はある。このままソードスキルを繋ぎ続ければ……いつかは……!
「ウオオオオオオォォォォッッ!!」
星屑が降り注ぐかのような剣舞が、奴の体を包み込む。盾が徐々にぶれていき、ガードがぎこちない。後、もう少しだ!!
俺は咆哮をあげて最後の両刀突きを放つ。盾に体当たりするような、そんな感覚で突き出された剣は、盾を奴の体から離すことに成功した。
ーー抜けるっ!!
光が消え始めていく。だが、ここで終えるわけにはいかない。唇を噛みしめ、精神を集中させていく。ふわりと力なく崩れていく両の腕をゆっくりと動かして、次のソードスキルを反応させる。もう、あと何回しか出来ない。何故ならすでに今神経が痛み始めているからだ。頭がピリッと弾けるような痛みに苛まれており、平静を保ってはいられない。だが……俺の体などどうなっても、構わない。
「ッ……アアアアアアアアァァァァッッ!!!」
痛みに縛られかけている己の体を叱咤するかのように俺は吠えた。そのせいか、ソードスキルが再び繋がった。蒼の光が再び剣に宿り、ヒースクリフへと襲いかかる。
「くっ……!!」
ヒースクリフは初めてしかめ面をする。あれほど余裕だったのに崩れ始めた。
ーーどうだ、絶対に勝てると思い込んでいたのを覆された気分は? ゲームマスターがプレイヤーに敗北する瞬間を味わうことになる気分は? この一撃は……アンタに苦しめられてきた人間の、怒りだァッ!! 二刀流ソードスキルーーーー。
「《ダブル・サーキュラー》!!!!」
燃え上がる蒼の焔が弧を描いて、下から斬り上げられる。それはヒースクリフの盾を捉えている。お前なら知っているだろう? この技の性質を。
奴は、盾を再び構え直さなかった。後ろへと弾き飛ばされる勢いを利用して後ろへと大きく飛んだのだった。奴の判断は正しい。何故ならこのダブル・サーキュラーは、相手のガードを側面から崩して、強烈な一撃を叩き込む二段構えの攻撃だからだ。だから俺は奴がそうすることを知っていた。
足の神経を意識する。ピリッと小さくスパークし、痛みを訴えている。唇を噛みしめてそれを堪え、斬り上げと共に踏み込まれる左足に集中する。そしてーーーー。
「!?」
突然ヒースクリフが驚きの表情で俺を¨見上げた¨。バカなと、音にならない声で言ったような気がした。まあ理解できなくはない。己が設定した技がどうやらおかしなことになっているからだ。俺の体は今、滑らかな曲線を描いて翔んでいる。ダブル・サーキュラーの突進力と斬り上げの勢いを利用して、跳び上がったのだ。奴の頭の梢にまで剣が届き、奴のその無機質な双眸に蒼の焔が映る。
右上方に振りきられた剣の勢いに身を任せる。体はぐるんと右へと一回転し、右腕へと意識を集中させる。
「せああァァッッッッ!!!!」
ギュオンと剣が空気を裂き、渾身の力を込めて斜め下へと斬り下ろされる。激しい一撃を叩き込まれた奴の盾は大きく揺らぎ、再び後ろへと弾かれた。
これがラストチャンスだ。俺は揺らぐ体をどうにか調整して着地に成功するや否や、最後の攻撃を開始する。もうこれ以上は繋げられないだろう。体も最早自由が効かないほどに酷使されている。だが、すべてはこのラストアタックのためだ。これが失敗したら……何にも意味を成さなくなる!!
左腕を腰まで引き付け、一瞬タメをいれる。すると、システムは難なく反応し、白竜の剣に紅の光を宿した。
「終わりだァッ! ヒースクリフッ!」
ジェットエンジンのような轟音を立てながら俺の身体は一直線に突き出される。紅の弾丸と化した俺を見てヒースクリフは唇を引き締める。だが、もうアンタもこれで終わりだ。
殺意にも似た激情の炎が剣を包み込み、ヒースクリフの生命を断つーーーー。
はずだった。
パキーーーーン!!
ーーなっ……に……!?
甲高い金属音。空に舞う白の剣の上半分と、紅の残滓。薙がれた、どす黒い赤の十字剣。奴の、勝ち誇った顔。俺の、絶望に満ちた顔。
俺の《ダークリパルサー》は、《武器破壊》されたのだった。奴の、4連撃《神聖剣》ソードスキル、《ゴスペル・スクエア》によって。全くの予想外だった。奴にソードスキルを放つ余裕などないと踏んでいたのに。
このまま俺は、連携ソードスキルを終了させ、多大な硬直時間を強いられる。その間に、残り三発を受けて、俺は死ぬ。この世界は永遠に終わらない。リズたちは、助からない。
ーーそうなってたまるかよ。
俺はまだ死んでない。まだ戦えるんだ。戦いを投げてはいけない。俺を信じてくれる人がいる限り、絶対に。例えこの身が裂けようと、壊れようと、その手に剣がある限り、戦う意思を捨ててはいけない。
ーー頼む……最後にもう一度、俺に力を……!!
まだ残っている片方の剣を見つめる。そのなかにはアスナとリズベットが、俺に託した想いがある。俺は、彼女らに願った。
声が聞こえた、気がする。
ーー分かったよ、キリトくん。頑張って……!
ーーキリト、しっかりしなさい。アンタはまだいけるんだからね。
俺は、剣を強く握って応えた。諦めるな……俺はまだ、勝てる。
「去らばだ、キリトくん」
ヒースクリフは冷淡な口調で最期を告げる。それは神が決めた運命だろう。俺はこの技を喰らって死ぬという未来は覆せない。この世界の神は信じて疑わなかっただろう。
だが、俺は抗う。決められた運命に俺は剣を突きつける。彼女たちが俺を信じているから、俺は戦う。
消えかけた、下半分の剣の光を必死に掻き集める。技の硬直は、受けていない。俺はまだ攻撃できる。勝機はある。
力が抜けた足を再び地面に着ける。そして、思いきり蹴りあげた。右手を引いて、光をためる。今すぐにでも意識が途切れかけそうなほどに神経がズキンと激しく痛む。恐らく神が決めたルールに反した不遜な代償として、仮想の俺の体に、もしかしたら現実の俺の体に罰を与えているのだろう。だが、たとえそうだとしてもーー俺はやらなきゃいけないんだ。
決意の激情が剣を包む。
神が驚愕する。
勇者が、叫ぶ。片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》。
「まぁぁだぁぁだああああアアアアァァッッーーーー!!!!!!」
奴は俺の叫びを聞いてーー面白いと言わんばかりの目をしていた。
突き出された剣の先には、左に薙がれた十字剣が見える。奴は手首を返して、二撃目を繰り出そうとしている。
つまりこの勝負は……どちらが先に一撃を与えられるか。それに全てが、掛かっている。俺たちの運命も、SAOの運命も、茅場晶彦の運命も。
有音と無音の咆哮が混ざり合い、剣が互いの体に迫る。意識が加速していき、剣の動きもゆっくりになる。俺の紅の剣が奴の胸へと吸い込まれていき、奴の剣が俺の胴を捉えた。
決着がついた。
紅玉宮を満たしたのは、同時に重なったーーーー
破砕音、だった。
孤高の役割は……次回になりそうですねwすいません。
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