ランスIF 二人の英雄   作:散々

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第1章 光を求めて
プロローグ


 

 一つの大陸があった。魂の集合体である存在が、自らの暇つぶしのために創造した大陸だ。その存在は三体の神と呼ばれる者たちを創り出し、大陸の管理をさせた。悲劇と混乱の鑑賞を愉悦とする主を退屈させぬよう、三体の神たちは争いが永遠に続くようバランスを考え、長い時を掛け世界を構築していった。

 

 魔王……モンスター……ドラゴン……

 

 神たちの作り出したバランスが全て上手くいっていた訳では無い。ドラゴンという種族はあまりにも優秀すぎ、大陸を統一してしまったのだ。小競り合いはあれど大きな争いの起こらない平和な世界。それは、創造主を退屈させるのには十分な世界であった。

 

 世界崩壊……駆逐されるドラゴン……そして、人類の誕生……

 

 優秀すぎたドラゴンの存在を反省して創造された人類であったが、この混乱の時代を生き抜くには余りにも脆弱な存在であった。彼らに待ち受けていたのは、長きに渡って魔王やモンスターといった強大な存在から蹂躙され続ける日々。

 

 人類誕生から約3500年……

 

 しかし、人類は滅びてはいなかった。高い繁殖力によってその数を増やし、高い知識によって武器を生み出し、他の種族に対抗する力を徐々に身につけていったのだ。

 

 奴隷からの解放……建国……

 

 魔人の奴隷とされていた暗黒の時代も存在するが、第6代魔王ガイの時代に奴隷から解放されることとなり、各地に国が建国する。ヘルマン・リーザス・ゼスの三大国だ。これに古くから存在するJAPANと多くの自由都市からなる人類圏の誕生。遂に平和を掴み取ったはずの人類を待っていたのは、その人類同士の争いであった。

 

 戦国時代……鉄兵戦争……魔人戦争……HL戦争……南部代理戦争……

 

 どれ程の血が流れ、どれ程の涙が流れたであろうか。その先に自分たちの平和があると信じた愚か者たちが、今日も自ら平和を放棄し剣を取る。魔王ガイの死と、それによる魔人同士の分裂からなる地獄が目前に迫っていることも知らずに……

 

 

 

GI1006

-大陸北西部 とある森中-

 

「はあっ……はあっ……」

 

 その男は森の中を彷徨っていた。身につけている鎧はひび割れ、既に防具としての役割は果たしていない。男の歩いてきた地面には、血が一滴、また一滴と滴り落ちている。全身に傷を負っているが、一際目立つのはその胸の傷。モンスターにやられたのであろうか。その傷の深さから鑑みるに、おそらく長くはない。

 

「15年、か……流石にもう少し長く生きたかったかな……」

 

 自らも死期を悟っているのであろう。諦めが色濃く混じった口調で男が呟くのとほぼ同時に、ガサリ、と背後で物音がした。これ程接近されるまで気がつけないほど、男は消耗しきっていた。

 

「さて……最後くらいは楽に殺して欲しいものだがな……」

 

 自分を殺すであろう相手を確認するため、男は振り返る。本来、男はここで死ぬ運命にあった。多くの平行世界において、GI1006年以降までこの男が生き延びた事はない。そのはずであった。

 

「人間……? なぜこのような場所に……?」

 

 そこに立っていたのは美しき女性であった。しかし、彼女は人間ではない。彼女の正体は、魔人。人類を蹂躙する存在が、その男の目の前に立っていたのだ。

 

 これが、始まり……

 

 それは創造神の悪戯か。本来ここで死ぬべき運命であった人間が、仇敵とも呼べる魔人との邂逅により、その命を生き長らえさせる事となる。それは即ち、これより後に起こる人類と魔人の戦争に、この男が関わってくる事を意味する。多くの平行世界の中でも初めての事柄である異変。それにより生み出される波紋は、人類を救済に導くのか、はたまた破滅へと導くのか、それはまだ誰も知る由がない……

 

-そして10年の時が流れる-

 

 

 破壊と混乱の時代……

 

 時代は英雄をもとめていた……

 

 時代がもとめる資質を備えた人物は二人……

 

 だが……

 

 その英雄たる資質を備えた人物の一人は……

 

 とっても自分勝手で

 

 とってもスケベで

 

 とっても乱暴で

 

 とても正義とは思えない男だった。

 

 そして、もう一人は……

 

 これは、二人の英雄の物語である。

 

 


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