ランスIF 二人の英雄   作:散々

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第140話 待ち受けるは最強種

 

-玄武城 古井戸内部-

 

「ここが井戸の底だな? 意外と広いな」

「見える見える! 横に道が続いていますね。結構長そうです」

「(空気が良くないな……長居していると悪化しそうだし、早めに片付けるか……)」

 

 リズナから井戸の鍵を貰ったランスたちは暗黒ヒマワリの本体を倒すべく、町外れの古井戸へとやってきていた。鍵を差し込むと鎖の封印は簡単に外れ、井戸の中へと入れるようになった。降り立ってみると、中々にその内部は広い。面倒臭そうにしているランスの言葉に頷きながら、魔法で周囲を照らすシィル。その横には口元を手で覆っているフェリスが立っていた。体調の悪いフェリスにとって、空気の悪い井戸の中はあまり居心地の良い場所ではないらしい。

 

「ではさっさと先を急ぐとするか……んっ?」

「にゃー」

「ランス様、モンスターです!」

 

 ランスが奥へと進もうとしたが、その足が止まる。目の前から数体のモンスターがこちらに向かってきたからだ。その姿を見てフェリスが眉をひそめる。

 

「うみねこと出目金使いか……割と厄介な組み合わせだな」

「えっ? そうなんですか?」

「出目金使いは攻撃力は高いけど装填に時間が掛かるっていう弱点がある。その時間をうみねこの麻痺攻撃で稼ぐっていう布陣だ。何より、この狭い場所で出会ったっていうのが一番厄介だな」

「なるほど……」

「ふん、うみねこ如き俺様があっという間に倒して、装填の時間など稼がせんさ。ついでに出目金使いも味見させて貰うとするか」

 

 シィルの問いにフェリスが簡単に答える。出目金使いは三つ星モンスターにランク付けされているが、一撃の威力は四つ星にも引けを取らない。そんな中、ランスが剣を抜いて颯爽と前に出る。それに呼応するように、うみねこの背後に女性のオーラが現れ、出目金使いは担いでいたバズーカ砲を降ろして弾を込める準備を始める。

 

「フェリス、適当にうみねこを蹴散らせ。まあ、一、二体で十分だ!」

「ん、それだけでいいのか? げほっ、げほっ……」

「まあ、俺様のために働きたいならいくら倒してくれても構わんがな。どりゃぁぁぁ!!」

「炎の矢! フェリスさん、無理はしないでくださいね」

「ああ、それじゃあ私も行って来る!」

 

 先に駆けていったランスに続き、フェリスもモンスターたちに向かって駆けていく。なんやかんやでフェリスの体調を考慮はしてくれているようだ。それなら悪魔界に返してくれよという思いもあったが、それでも多少はありがたいものである。

 

「にゃー!」

「ふっ!」

 

 うみねこが背後に纏っている女の子のオーラごと水槽を真っ二つに斬りながら、フェリスは自身の体調と冷静に向き合っていた。

 

「(ランスがある程度考慮して動かしてくれるなら、多少は持つかもしれないな……)」

 

 確かに呼び出された時よりも悪化はしているものの、まだまだ軽い戦闘くらいなら出来る。流石に玄武城を上った直後は疲れ切っていたが、今はその疲れも多少は楽になった。なればこそ、酷使さえされなければ問題は無いとフェリスは踏んでいた。

 

「どりゃぁぁぁぁ!」

「ファイヤーレーザー!!」

「はあっ!」

 

 次々とモンスターを屠っていくランスたち。厄介な組み合わせだと懸念していたフェリスだったが、それは自分が前衛で酷使させられ、ランスが後ろで適当に戦うという布陣を考えた上での事。まさかここまでランスが率先して戦ってくれるとは思っていなかったのだ。これならば苦戦するような相手では無い。順調に井戸の探索を続けるランスたち。だが、その背後から脅威が迫っている事は知る由も無かった。

 

 

 

-玄武城 古井戸-

 

「……右良し、左良し」

 

 フリフリのメイド服を着た美少女が町の中を駆けていく。バードが洞窟内の宝箱から発見したあの女の子モンスターだ。古井戸の前まで駆けてきた彼女はその歩みを止め、ゆっくりと井戸に近づいていく。

 

「くんくん……」

 

 井戸の縁に立って匂いを嗅ぐメイド服の女の子モンスター。その鼻に届いたのは、少し懐かしい香り。それを確認した彼女はビシッと井戸を指差す。

 

「……ターゲット臭、捕捉。ランスはこの中です」

 

 恐るべき嗅覚。見事にランスの居場所を見抜いた女の子モンスターは、そのまま井戸を下りるべくロープを手に取る。眉一つ動かさないその無表情さが、仕事人というような印象すら受けさせる。もしここに、かつて某スチャラカ暗殺者集団に泣かされたAという女性がいたならば、何と頼もしい暗殺者なのかと目を輝かせた事だろう。

 

「あっ……」

 

 瞬間、女の子モンスターの手からロープがするりと抜ける。そのまま真っ逆さまに下に落ちていく女の子モンスター。しばしの後、盛大な水音が響き渡り、井戸の底からボソリとした声が聞こえてくる。

 

「痛い……でも、負けない……」

 

 もしここに、かつてとある女の子モンスター保護団体に所属していたAという女性がいたならば、「駄目だ、同類だ」と頭を抱えた事だろう。

 

 

 

-ギャルズタワー 5階-

 

「貴女も一緒に凍えましょう……氷雪吹雪……」

「永遠の眠りを……氷雪吹雪……」

「氷漬けのまま一生共に暮らしましょう……スノーレーザー……」

「ぐおっ!」

「きゃぁぁぁ!!」

 

 一方その頃、ギャルズタワー攻略を続けていたルークたちは思わぬ苦戦を強いられていた。凱場の話ではまだ序盤だという5階の門番は、三つ星モンスターの中でも上位格であると言われているフローズンの大群であった。全体攻撃魔法を得意とするフローズンの大群はあまりにも厄介極まりない。どうしても相手の詠唱を止めきれず、魔法を食らってしまうからだ。凱場がスノーレーザーの直撃を受けて後ろに吹き飛ばされ、膝をつきながら口を開く。

 

「そういや、ギャルズタワーは5階で逃げ出してくる冒険者が多いって話があったな。こういう事か……」

「そういう情報は先に言っておきなさいよね! 回復の雨!」

 

 ロゼが必死に回復の雨で全員を回復するが、こうも全体魔法を連発されては回復が追いつかない。パーティーが徐々に消耗していくのを感じている中、ロゼの目に飛び込んできたのは敵の中を一直線に駆けていくルークの姿。

 

「スノーレーザー……」

「氷雪吹雪……」

「ぐっ……」

 

 全方向から放たれてくる魔法に顔を歪めながらも、その視界に捉えているのは先程から奥で長い事詠唱を続けているフローズン。あれだけは無理してでも倒さなければならない。

 

「全てを氷漬けに……シベリ……」

「させるかっ!!」

「あっ……」

 

 詠唱を終え、魔法を放とうとしていたフローズンに飛び掛かり、剣を振り下ろす。そのまま床に崩れ落ちるフローズンを見下ろしながら、ルークは周囲の仲間たちに向かって叫ぶ。

 

「シベリアだけは絶対に使わせるな! 真空斬!!」

 

 真空斬の連発で周囲のフローズンの詠唱を邪魔しつつ、返す手で側にいたフローズンを斬り捨てるルーク。その声を聞きながら、セシルは懐に持っていた世色癌を必要な数だけ一気に飲み込み、すぐさま剣を振るってフローズンを斬り伏せる。

 

「言われずとも!」

「いつまでも休んでる訳にゃあいかねぇな! おらよっ!」

「どっせい!!」

 

 膝をついていた凱場が立ち上がって鞭を振るい、フローズンの首に巻き付けて絞め落とす。その横ではシトモネが杖をフルスイングし、フローズンの頭に直撃させていた。いくら自分の得意魔法である氷系の魔法が効かないとはいえ、その判断は中々に豪快である。ロゼがそれを苦笑して見ながら、側でフローズンを屠っていたダ・ゲイルに指示を飛ばす。

 

「ダ・ゲイル! ひとまず後の事は考えなくて良いわ!」

「了解だ、ロゼ様! がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 後の事も考えて火炎放射を多用していなかったダ・ゲイルだが、旗色悪しと考えて温存作戦を切り替える。ひとまずこの場を乗りきって体勢を立て直すことが重要だ。弱点とする火炎放射の連発を受け、フローズンたちは次々に倒れていく。とはいえ、あちらの反撃ももう少し続きそうだ。丁度近くのフローズンを切り捨てに後ろに下がってきたルークに対し、ロゼは言葉を発する。

 

「5階でフローズンって……大丈夫なの、この先?」

「確かに不安だな。この先に待ち受けているのは全てフローズン以上の敵という事だろうし……」

「三つ星上位が序盤にいるなんてね……」

「まあ、ひとまずこの場を乗りきるしかないさ。回復は任せたぞ!」

「しょうがないわね……回復の雨!」

 

 ロゼの援護を受けながら、ルークたちはフローズンの大群を屠っていく。全員の胸中にあるのは、この先に待ち受けるモンスターがどれ程強敵なのかという不安であった。何せ三つ星上位のフローズンが5階の番人なのだ。それ以上の強敵と考えて間違いはないだろう。

 

 

 

-ギャルズタワー 7階-

 

「なんだか……」

 

 7階番人、ちょーちん。二つ星女の子モンスター。

 

 

 

-ギャルズタワー 8階-

 

「物凄く……」

 

 8階番人、とっこーちゃん。二つ星女の子モンスター。

 

 

 

-ギャルズタワー 11階-

 

「ハードルが上がっているようにゃ……」

 

 11階番人、ボルト。二つ星女の子モンスター。彼女たちの予感は的中していた。

 

 

 

-玄武城 古井戸内部-

 

「ふむ、敵の数はまあまあだが、質自体は大した事ないな」

「そうですね。最初の出目金使いが一番の強敵だったかもしれません」

「げほっ、げほっ……」

 

 古井戸内を歩きながらランスがそう口にする。ここまで何度かモンスターと戦闘になったが、全て簡単に決着がつくようなモンスターばかりであった。存外フェリスも楽を出来ており、体調はそれ程悪化していなかった。

 

「二人とも、油断は禁物だぞ」

「あ、はい、すいません」

「ちっ、ルークみたいな事を言いやがって。そういう小言はあいつ一人で十分だ」

「(ルークみたい、か……やっぱり知らず知らず影響受けているのかね……)」

 

 鎌を担ぎながらフェリスが軽く注意を促し、素直に頭を下げるシィル。だが、その横に立つランスは面倒臭そうな顔をフェリスに向けながらそう口にしたのだった。ルークのような言葉だと言われ、ポリポリと頬を掻きながら歩みを進めるフェリス。

 

「ん、何かあるぞ?」

 

 その時、ランスが何かを見つけて横道にそれる。シィルとフェリスもそれに続くと、その先にあったのは行き止まりであった。だが、目の前の壁には何やら怪しげなスイッチが取り付けてある。真ん中の赤いボタンの下には、『Push』『怪しくない』という文字が書かれている。

 

「……どう見ても怪しいですよね?」

「何かありそうだな」

「うむ、間違いなく罠が仕掛けられているな」

 

 三人が口々にそう評する。流石にこんな罠に引っ掛かる冒険者はそうはいない。

 

「よし、シィル。押せ」

「……へ?」

 

 しかし、自ら進んで引っ掛かる冒険者ならここにいた。突然の抜擢にシィルが目を丸くし、フェリスが呆れたような表情を作る。

 

「無視して先に進んでもいいんじゃないか?」

「いや、万が一にも貴重なアイテムが手に入る可能性がある。それに、ボタンがあったらとりあえず押してみないと気がすまん」

「押すのは私なんですよね……?」

「当然だ」

 

 ふんぞり返るランスと、涙目のシィル。実に見慣れた光景だと一度ため息をつき、フェリスが一歩前に出る。

 

「やれやれ……シィル、私が代わりに押してやるよ。げほっ、げほっ……何かあった時のために後ろで構えておいてくれ」

「えっ、そんな、悪いですよ……」

「いいって、いいって。即座の対応は私の方が出来るんだから」

「すいません……」

「うむ、使い魔として中々の心がけだな、がはは!」

 

 ランスの笑い声を聞きながら、フェリスは壁へと近づいていきボタンに手を伸ばす。一度だけ躊躇った後、一気にボタンを押し込んだ。瞬間、上空から何やら不気味なものがフェリスの目の前に落ちてくる。

 

「きゃっ!? ……ふっ!」

 

 一瞬だけ悲鳴を漏らすが、すぐさま鎌を抜いてそれを両断する。ボトリと床に落ちたそれをフェリスが見下ろすと、上から落ちてきたのは不気味なおばけの人形であった。

 

「……なんだ、これ?」

「びっくり作戦成功です。コロス」

 

 瞬間、岩陰から一人の少女が飛び出し、ランスに向かって手に持っていた巨大なまち針を突き出してきた。だが、一歩下がってその状況を見ていたランスは大して驚いておらず、岩陰から飛び出してきた少女の攻撃に冷静に対応する事が出来た。剣をすぐさま抜き、まち針の攻撃を防ぐランス。少女は無表情のまま一歩下がり、ボソリと口を開いた。

 

「失敗した、ちくしょう」

「何だ貴様……おっ、中々に可愛いではないか! ちょっと小さいが、脱がしたら凄いかもしれんな」

「げほっ、げほっ……女の子モンスターのようね。見たことが無いし、もしかしたらレア種族かも……」

「(悪魔……知らない顔ですね。でも、ターゲットと違う)」

 

 フェリスの顔をチラリと確認し、まち針を構える女の子モンスター。すると、シィルが何かを思い出したかのような表情を作って口を開く。

 

「思い出した。ランス様、あの女の子モンスターは復讐ちゃんというレアモンスターです。百科事典で見た事があります」

「復讐ちゃん? 物騒な名前だな」

「(やはり貴女もいるのですか……いや、当然ですね。ランスの横にはシィルです……)」

 

 今度はシィルの顔を確認し、無表情のまま一度頷く復讐ちゃん。そして、その視線がシィルの横に立つ男に向けられた。一瞬、ほんの一瞬だけ愁いを含んだ表情を浮かべるが、すぐに無表情に戻る。

 

「ランス、発見しました」

「お、俺様の名前を知っているか。流石俺様、がはははは!」

「……コロス!」

「犯す!」

 

 互いを指差しながら、そう宣言するランスと復讐ちゃん。どこか似ている仕草に首を傾けながら、シィルとフェリスもすぐさま構える。

 

「コロス!」

「ふん!」

 

 復讐ちゃんがターゲットであるランスに向かってまち針を連続で突き出す。中々に素早い攻撃であり、復讐ちゃんが上位女の子モンスターである事が窺える一撃だ。だが、ランスはそれを簡単に捌く。

 

「相変わらず強い……」

「ほう、俺様の実力は知っているようだな。まあ、当然か。英雄である俺様は超有名人だからな、がはは!」

「(英雄……確かにその通りですね、あれ程の争乱を見事収めたのですから。ですが、今は敵同士です、ランス)」

「何か考え事でもしているのかい? でも、それは命取りだよ」

「っ!?」

 

 復讐ちゃんが無表情のまま瞬時に首を横に向ける。視線に飛び込んできたのは、先程の悪魔が自分に向かって鎌を振るう姿。瞬時に後ろに跳びずさる。なんとかすんでのところで鎌の一撃は躱せたが、フリフリのスカートの一部がバッサリと斬り落とされる。

 

「ちくしょう」

「ちっ、中々に素早いね」

「こら、フェリス。殺すんじゃないぞ。後でお楽しみタイムが待っているんだからな」

「判っているよ。でも、あんまり酷い事はするんじゃないよ」

「またそれか。ルークといい、アーニィといい、お前は影響を受け易すぎる。それでも悪魔か、馬鹿者」

「むぐっ……」

 

 以前にアーニィから影響を受け、召喚ちゃんに酷い事をするなと言ってきた事を思い出し、ランスがそう口にする。返す言葉もないのか、むぅと口を噤むフェリス。すると、まち針を構え直していた復讐ちゃんがランスの言葉に反応する。

 

「ルーク、彼もいるのですか?」

 

 きょろきょろと辺りを見回す復讐ちゃんに対し、ランスが面白くなさそうに口を開く。

 

「ルークならいないぞ。何だ、あいつの事も知っているのか?」

「当然です。ランスとルーク、二人が組むと手を付けられません」

「むっ……馬鹿者、何故この俺様があいつとコンビみたいな扱いになっているのだ」

「(それよりも、この娘の言い方……まるで二人を知っているような……)」

「いないのなら好都合です。コロス!」

 

 フェリスが顎に手を当てて復讐ちゃんを観察していると、彼女は空中に向かって大量のまち針を放り投げた。それらは空中で針先をランスたちに向くように整えられ、一気にランスたち目がけて落ちてくる。

 

「範囲攻撃持ちか!」

「任せて下さい。火爆破!!」

 

 空中に向かって炎の柱を突き上げ、全てのまち針を撃ち落とすシィル。志津香や他の魔法使いがいる時はヒーラー役に回りがちであまり印象に残らないが、攻撃魔法の腕前も十分に一流なのである。

 

「一気に片を付け……げほっ、げほっ……」

「チャンスです。魔法はお腹が空くのであまり使いたくないのですが……スノーレーザー!」

「魔法まで……げほっ、げほっ……」

「フェリスさん! 抑えきれるか……火爆破!」

 

 ファイヤーレーザーの詠唱は間に合わないと踏んだシィルは咄嗟に火爆破を放ち、咳き込んでいるフェリスを庇う。流石に威力に差があったため完全には防ぎきれなかったが、それでも大分威力を下げる事が出来た。弱まったスノーレーザーの直撃を受けて顔を歪めながらも、フェリスはシィルに向かって礼を言う。

 

「悪い、助かった……げほっ、げほっ……」

「仕方ない。役立たずのフェリスは放っておいて、この俺様自ら倒してやろう。がはは!」

 

 そう口にしながらランスが駆けていき、剣を両手でもって一気に跳び上がった。その構えを見て、復讐ちゃんは目を開く。

 

「これは……」

「食らえぇぇぇ! 俺様必殺の……」

『がはは、良く覚えておけ! これが俺様の必殺技……』

 

 脳裏に過ぎる、かつての映像。そして、復讐ちゃんはゆっくりと口を開いた。

 

「ランスアタック……」

「ランスアタァァァック!!」

 

 瞬間、凄まじい衝撃波が復讐ちゃんの体を包み込み、壁へと勢いよく吹き飛ばすのだった。

 

 

 

-ギャルズタワー 7階-

 

「何だ、ちょーちんか」

「肩透かしだな」

「ホッとしました」

「6階の幸福キャンキャンと一緒でボーナスステージか?」

「おい、コーラ買って来いよ」

「あ、オラの分も頼むだ」

「会って早々酷い言われようです!!」

 

 下から上ってきたタワー挑戦者に次々と暴言を吐かれ、涙目のちょーちん。彼女の名誉のために言っておくと、決してちょーちんは弱いモンスターでは無い。ただちょっと、フローズンの大群の後に出てくるというのはタイミングが悪かっただけである。

 

 

 

-玄武城 古井戸内部-

 

「ちっ、逃げられたか……」

 

 ランスが悔しそうに壁を見ている。ランスアタックで吹き飛ばした復讐ちゃんだったが、いつの間にかその場から姿を消していたのだ。見事な逃げ足である。

 

「それにしても、あれは一体何だったんだ? 俺様ばかり執拗に狙ってきていたような気もするが……」

 

 ランスの言うように、咳き込んでいて隙だらけであったフェリスと全体攻撃を使ってきたとき以外、復讐ちゃんは常にランスばかりを狙っていた。息を整えたフェリスが口を開く。

 

「それだけ恨まれているって事じゃないの?」

「恨まれている? 俺様がか?」

「……自覚ないの?」

「感謝される事は無数にあっても、恨まれるような事は……ああ、そうだな。俺様に愛されなかった女たちからは恨まれているかもしれんな」

「はぁ……」

 

 深いため息をつくフェリス。ランスが冗談では無く真剣に言っていると感じ取ったからである。何とまあ自分に都合の良い解釈な事か。そんな中、何か考え事をしていたシィルがゆっくりと口を開いた。

 

「ランス様、復讐ちゃんですが、誰かにランス様を殺せと命令されてやってきています」

「何? どういう事だ?」

「復讐ちゃんとは、人間の依頼を聞き、そのターゲットを殺す事を目的としているモンスターです」

「ターゲットを殺す? 物騒なモンスターだね……」

「はい。一度決めたターゲットを殺すまでは決して諦めないと百科事典に書いてありました」

「ふむ……」

 

 真剣な表情で顎に手を当て、何かを考え込むランス。依頼した相手を探ってでもいるのだろうか。すると、ランスの顔がにんまりとイヤらしいものになる。

 

「という事は、黙っていてもまたあっちからやってくる訳だな。がはは、今度こそひっ捕まえてお楽しみタイムだ!」

「まあ、そう考えるのがお前だよな……」

 

 再度ため息をつくフェリス。命を狙われているというのに、何と暢気な事か。

 

「それで、心当たりは無いの?」

「無い!」

「…………」

「と、とりあえず先に進みましょう」

「うむ、そうだな。復讐ちゃんが黙っていても来るなら、ひとまずは暗黒ヒマワリの球根を倒すのが先決だ、行くぞ」

 

 ずんずんと前に進んでいくランスと、ため息をつきながらそれに続くフェリス。シィルも二人に続こうとしたが、前を歩く二人の背中を見て思わず立ち止まる。

 

「(……あれ? フェリスさんって、あんなに身長低かったっけ……?)」

「おい、シィル。何をモタモタしている」

「あ、はい、ランス様!」

 

 だが、ランスに促された事により、シィルの疑問はすぐに消えてしまうのだった。

 

 

 

-玄武城 最上階-

 

「私の代わりにランスさんをここに閉じ込め……」

「いや、シィルとかいう娘の方がよかろう。ランスはスケベだが、それだけに利用しやすい」

 

 玄武城の最上階では、リズナと景勝が向かい合って密談をしていた。話のところどころに、不穏な発言が混じっている。

 

「ですが、ランスさんと一緒に外に出るのは危険では……? 女性の方が……」

「シィルという娘があの男を置いて外に出ることは考え難い。逆にランスであれば、お前の身体を餌にある程度操れる」

「私の身体を……」

「うむ。なればこそ、迂闊に身体を与えてはならぬぞ。それは切り札だからな」

「はい……」

 

 景勝の言葉にゆっくりと頷くリズナ。だが、ランスの側にいたもう一人の女性を思い出してそれを景勝に尋ねる。

 

「あの、悪魔さんは……」

「奴か……恐らく、奴が一番の障害になるじゃろうな」

「悪魔さんが……?」

「うむ。中々の観察眼、下手すればこちらの思惑を読み切られてしまうじゃろうな。それに、悪魔というのは基本的に人間よりも実力は上じゃ。奴が何階級の悪魔かは判らんが、場合によっては魔人と同等の実力者である事も覚悟せねばならん」

「凄い方なのですね……」

 

 感心した様子で頷くリズナ。それを見ながら、景勝は先程あった悪魔の顔を思い浮かべる。大分顔色が悪かったが、それでもこちらよりは実力が上と感じられた。あの悪魔を城に閉じ込めるという方法も考えはしたが、それには若干の不安が残る。

 

「あの悪魔を閉じ込めるという事も考えたが、悪魔界に戻る際にも結界が発動するのかが不安要素じゃ……」

「え? 発動しないのであれば、みんな幸せになれるのでは……?」

「いや、その場合、あの悪魔は必ずランスに報告に行く。騙した相手を奴が容赦するような男に見えるか?」

「それは……」

「下手に脱出されては困るのじゃよ……やはり、ここはシィルという娘を残すのが安全じゃ。その上で、いかに悪魔を言いくるめられるかに掛かっておる」

「頑張ります……」

 

 グッと拳を握るリズナ。そのリズナを見てうんうんと頷いた後、景勝は言い忘れていた事を思い出して言葉を続ける。

 

「それと、処女という事にしておくのじゃぞ」

「えっ? それはどうして……?」

「男というものは処女が好きなのじゃ」

「……それでは、景勝も処女が好きなのですか?」

「う、ごほっ、ごほっ……」

 

 リズナの純粋な質問にわざとらしい咳払いで応える景勝であった。

 

 

 

-ギャルズタワー 11階-

 

「処女に拘る男はもてない。これは世界の常識よ!」

「なるほど……メモメモ……」

「時代はビッチ!」

「ふっ、それはどうだろうな……」

「にゃー……こんな人間に負けるにゃんて……」

 

 一方その頃ギャルズタワーでは、ボルトが目を回している横でロゼの言葉をメモしながら聞き入るシトモネと、それを苦笑しながら見ているセシルという謎の状況が出来上がっていた。それを遠目で見ながら水を飲み、凱場は横に立っていたルークに声を掛ける。

 

「すっかり懐いちまったな、あの嬢ちゃん」

「出来れば良いところだけを参考にして欲しいんだがな……」

 

 凱場の言葉に苦笑で答えるルーク。初めの内はロゼの事を敬遠しがちだったシトモネも、いつの間にかロゼにすっかり懐いていた。

 

「なんだかんだで人の心を掴むのが上手いんだよ、あいつは」

「まあ、そうなんだろうな。そうじゃなきゃ、あの性格で神官なんてやってられねぇだろ」

「ロゼの性格を知っても尚、カスタムの住人は受け入れているからな」

 

 ルークも軽く水を口に含みながら、カスタムの住人たちとロゼの付き合いを思い返す。信仰心が無く、ひたすらに金を集め、そのうえ悪魔とただれた生活を送っている不良神官。それでも尚、人を惹きつける魅力がロゼにはある。

 

「それで、今は大体中間くらいか?」

「そうだな。この塔の最上階は20階、今は11階だから折り返したところだ」

「感謝しなさいよー。その情報も私が得た情報なんだから」

 

 高説を終えたのか、ロゼたち三人がルークたちの方に歩み寄ってくる。この塔の最上階が20階という情報は、8階にいたとっこーちゃんの思考をロゼがリーダーの魔法で読み取って得た情報であった。

 

「それと、次の階にはまじしゃんがいるから、今の内に魔法抵抗力の高い装備にでも変えておくのが得策ね」

「ふむ……まじしゃんは色々と魔法を使ってくるからお守り系では対応しきれんな……ここは魔抵の指輪でいくか」

「ほう、いい指輪じゃねぇか」

「判るか? 素早さと命中率も上がるレアものだ」

「(市販の魔抵の指輪だけど、とりあえずこれで……)」

 

 ロゼが得た情報は最上階の情報だけではない。この先に配置されているモンスターの状況までとっこーちゃんから得ていたのだ。セシルが自慢気に凱場に指輪を見せ、シトモネはこそこそと恥ずかしげに市販の指輪を填めていた。

 

「しかしロゼ殿。早い階層でリーダーをしていてくれれば、フローズンに苦戦をしなくても済んだんじゃないか?」

「4階までにいたモンスターって、暢気系のきゃんきゃん、やぎさん、おかし女、ざしきわらしと、ちょっと壊れてる系のブラックナースだったからね。あの辺だとちゃんとした情報読みにくいのよ。その点、真面目なとっこーちゃんは正確な情報を得やすいって訳。素直だからリーダーで読みやすいし」

「なるほど……失礼、そこまで頭が回らなかった」

「良いって、良いって。その分戦闘面では期待しているわよ。私は後ろで雨降らせてるだけだから」

「ふっ、任せろ」

 

 セシルが頭を下げるのを見て適当な口調で言葉を返すロゼ。それを受け、静かに笑みを浮かべるセシル。腕っ節の方なら任せておけといったところか。

 

「モンスター配置の情報が得られて一気に楽になったな。だが、凱場的にこういう情報を得るのはいいのか?」

「なぁに、塔の中で得られる情報は最大限に利用するのが冒険野郎の定石だ。それに、最上階の情報は得られなかったからな」

「最上階の情報だけは思考にシールドが掛けられていたわ」

「って事は、それだけヤバイもんがいるって事だ。なにせこれだけ超大作のラスボスだ。歴代最強のボスかもしれねぇ」

 

 帽子を被り直してニヤリと笑う凱場。不安な様子はなく、むしろどれだけ凄い敵がいるのかとワクワクしている様子だ。生粋の冒険野郎である。すると、11階の壁に開いた穴からダ・ゲイルが戻ってくる。

 

「ロゼ様。コーラ買ってきただ」

「ありがと」

「やれやれ、塔の中だっていうのに、外の自販機に飲み物を買いに行かせるとはフリーダムな姐さんだ」

「使い魔の正しい使い方の一つよ。んぐっ、んぐっ……」

「それと、一つご報告があるだ」

「報告? ……随分と真剣な表情ね。結構マジな話?」

「んだ」

「(顔の違い、判りますか……?)」

「(判らん)」

 

 ダ・ゲイルの言葉を受け、コーラを飲んでいたロゼが表情を真剣なものに変える。その後ろでこそこそと話すシトモネとセシルの言葉は軽く流しつつ、ダ・ゲイルに話の続きを促すロゼ。

 

「塔の最上階に入っていく影を二つほど見ただ」

「入っていく? 空を飛んでいたという事か?」

「んだ、ルーク。一本の箒に二人が跨がり、空を飛んで塔の最上階へと向かっていっただ。しかも、前で箒を操縦していた影は、あろう事か悪魔であるオラに攻撃を仕掛けてきただ」

「ダ・ゲイルに攻撃? 随分と好戦的な奴ね……相手の力を見切れない馬鹿か、あるいはそれだけ自分の力に自信があるか……」

「多分後者だ。咄嗟に炎を吐いただが、相殺が精一杯だっただ」

「ほう……それで、その後はどうなった?」

 

 ロゼが顎に手を当てながら相手の実力を考えていると、ダ・ゲイルは強者であったと断言する。それに興味を持ったセシルが更に疑問を投げると、ダ・ゲイルは首を横に振る。

 

「なんにも。後ろに乗っていたもう一つの影に軽く頭を小突かれて、そのまま塔の最上階に向かって行っちまっただ。追っても良かっただけんども、ロゼ様に報告すんのが優先だと思ってこっちに来ただ」

「良い判断よ、ダ・ゲイル。一人で最上階に向かって殺されるっていうのが、考え得る最悪の状況だからね」

「そうだな。この情報を得られたのは大きい。少なくとも、最上階に強者がいるのは判ったわけだしな」

「へへっ、面白くなってきやがったぜぇ……」

「同感だ」

「おうおう、ジャンキー共が張り切っちゃって」

 

 凱場がニヤリと笑って鞭を握りしめ、セシルも壁に背を預けながら不敵に笑う。強者の情報に二人とも血湧き肉躍るといったところか。ロゼがやれやれとため息をついて横を見ると、もう一人滾っている男の姿が目に飛び込んできた。

 

「そういや、あんたもバトルジャンキーだったわね」

「ふっ……」

 

 ルークが静かに笑みを浮かべて返す。ダ・ゲイルに堂々と喧嘩を売る者とは、一体何者なのか。

 

「話はクライマックスに向けて驀進しているぜ! その先に待っているのは……」

「塔の大崩壊だな」

「それはもういいですって!」

 

 すっかりお馴染みとなったシトモネの突っ込みを聞きつつ、ルークたちは最上階に向けて歩みを進めるのだった。

 

 

 

-ギャルズタワー 20階-

 

 ギャルズタワーの最上階、20階。その部屋には明かりが点っておらず、真っ暗であった。その部屋の中央には、やたら豪華な天蓋付きのベッドが一つ。その上には、死んだように眠っている金髪の美女がいた。彼女は人間では無い。女の子モンスターであり、この塔の主だ。そのベッドに近づいていく三つの影があった。

 

「おい、いい加減起きろ!」

「ん……ふぁぁぁぁ……誰じゃ? わらわの眠りを妨げる者は等しくキムチの裁きを……」

「やれやれ、私たちにもキムチの裁きを与えるつもりか? これでも友人と思っているのだがな」

「ん?」

 

 寝ぼけ眼を擦り、ベッドに寝ていた者が三人組の姿をその目に捉える。瞬間、パッと顔が明るくなった。

 

「なんじゃ、お主らか! 久しいのう!」

「しばらく特殊な空間に閉じ込められていたんでな」

「ほう、お主たちほどの者がか……ん? なんじゃ、人間の匂いがするぞ」

「流石だな。私たち三人はとある魔物使いの使い魔となった」

「なんと!? 人間の下なんかにはつかないと言っておったあのデンデンちゃんがのぅ……」

「その呼び方は止めろってーの!」

 

 感慨深げに三人組の一人、巨大な太鼓とバチを持ったふんどし姿の少女に視線を向ける金髪の主。横の二人は苦笑し、デンデンと呼ばれた本人も怒りながらもその顔は笑顔である。

 

「それで、此度は何をしに来たのじゃ?」

「一応、使い魔になった報告を。それと、お前も一緒に来ないかと思ってな」

「ふむ……嬉しい誘いじゃが、断らせて貰おう。わらわの主はわらわがピンと来たものに決めるのじゃ」

「会えばあんたも気に入ると思うのだけれどな……」

「出会いも一期一会。縁があればいずれ必ず巡り会うものじゃ」

「意志は固いか……残念だ」

 

 扇で口元を隠しながら、されど残念そうにそう口にする黒服の軍師。それに軽く謝りつつ、視線を最後の一人、漆黒のビキニアーマーを身に纏った赤髪の女闘士に向ける。

 

「それで、先程から何か言いたそうじゃが、何じゃ?」

「下の階の事だが……」

「そうだ、それは私も言いたかった。ちょっと番人の配置が適当すぎるぞ」

「大丈夫じゃ。大体5階のフローズン部屋でみんな逃げ出す。ほほほほほ」

「そうでもないみたいだぞ」

「ほぇ?」

 

 高笑いする金髪の娘に対し、不敵な笑みを浮かべながら甲冑の女が口を開く。呆けたような顔になる金髪の娘。瞬間、最上階の天井が轟音と共に破壊された。

 

「むっ!?」

「なんじゃ!?」

「到着!! いやぁ、久しぶりだね! おっ、他にも懐かしい面々が揃っているじゃないか!」

「馬鹿者。豪快すぎじゃ!」

 

 やってきたのは、二人の来訪者。先頭で立っていた女性は跨がっていた箒をくるくると回して肩に担ぎ、その頭を後ろにいたもう一人がコツンと小突く。銀髪の少女と、和装の少女だ。その内の一人、銀髪の魔法使いの方は知り合いであったらしく、部屋にいた主が口を開く。

 

「全くお主は……壁を破壊するなと何度も行っておるじゃろうが!」

「まあまあ。貴重なキムチが手に入ったんだ。こいつで一杯やろうと思ってね」

「……仕方ない。今回だけじゃぞ」

「ちょろすぎんだろっ!」

 

 太鼓の少女から突っ込みを受ける主。随分とキムチに目が無いようである。そんな中、銀髪の魔法使いと共にいたもう一人の和装の少女が部屋の者に頭を下げる。

 

「お初お目に掛かる。こ奴の知り合いじゃ」

「ふむ……強そうだが、声を掛けるか?」

「止めておこう。既にレオの持っている女の子モンスターだ。見分けをつけるのも大変だろうしな」

「それもそうか……」

「何の話じゃ?」

 

 首を傾ける和装の少女。どうやら甲冑の少女は彼女の事もスカウトしようかと考えていたようだが、扇を持った少女がそれを止めたようだ。女の子モンスターの見分けは人間には難しいため、同じ女の子モンスターは極力持たないというのが常識なのだ。どうやら彼女と同じ個体主を彼女たちの主は既に持っているらしい。

 

「ほれ、貴重なキムチを早くわらわにくれたもう!」

「それより先に報告だ。塔に侵入者……というよりも、挑戦者がいるよ」

「なんじゃと?」

「ああ、それを私も言おうと思っていたところだ。階下から人間の気配がする。今は恐らく11階……いや、12階に挑戦中だな」

「なんと!? フローズン部屋を越えたというのか!?」

「外で悪魔に出会った。実力の程は八、九階級ってところだね。少なくとも、そいつを使役している人間がいるよ」

「八、九階級か……へっ、中々に強いじゃねぇか」

 

 銀髪の魔法使いと甲冑の闘士の報告を受け、部屋の主は大層驚き、太鼓を持っていた少女は面白そうに笑みを浮かべる。

 

「しかし、ここまで来るのには神風部屋を越えなければならんのじゃ。容易には……」

「来るぜ、必ず」

「ああ、来るな……」

 

 同時にそう断言する銀髪の魔法使いと甲冑の闘士。それを聞き、興味深げな表情で二人に問う黒服の軍師。

 

「ふむ、その心は?」

「「勘だ」」

「当たるな、これは……」

 

 扇で口元を隠し、やれやれとため息をつく軍師。それをにんまりと笑いながら眺め、次いで和装の少女に向き直る魔法使い。

 

「あんたも手伝っておくれよ」

「儂は人間とは友好的な種族なんじゃがな……」

「数年前に出会った少女の話なら聞き飽きたよ」

「やれやれ……」

 

 ため息をつきながらも、小さく頷いて協力する事を約束する和装の少女。その時、階下の気配を感じ取った甲冑の闘士が口を開いた。

 

「12階が落ちたな……」

「まじしゃん部屋をこうも容易くか……本物じゃな」

「しかし、ついてない連中だよ……」

 

 魔法使いがそう口にした瞬間、彼女が天井に開けた巨大な穴から月明かりが差し込んでくる。そして、その明かりが暗がりにいて良く見えなかった彼女たちの姿をハッキリと照らし出した。

 

「こんなオールスター勢揃いな日にやってきちまうんだからな!」

 

 銀髪の少女がそう豪語する。最強魔女。僅か数体しか認定されていない最強種の一体である四つ星モンスターが彼女だ。

 

「人間とは争いたくないのじゃがなぁ……」

 

 和装の少女がそう口にする。クスシ。薬製造のスペシャリストである三つ星モンスターだ。

 

「よっしゃ、派手に暴れるぜ!」

 

 太鼓を肩に担ぎ直しながらそう口にするふんどし姿の少女。雷太鼓。魔法使い種でも最強クラスと評価され、四つ星に限りなく近いとされている三つ星モンスター。

 

「ここでレベルを上げて帰れば、レオも喜んでくれるだろうな」

 

 口元を扇で隠しながら嬉しそうにそう口にする軍師。バトルノート。本人の戦闘力は高くないが、その指揮能力でパーティー全体を強化する三つ星モンスター。

 

「滾るな……」

 

 先程と体勢を変えず、されど身体中から溢れ出す闘気を抑えきれずにいる甲冑の闘士。バルキリー。完全無欠の戦闘種族であり、最強種の代表的存在とも言える四つ星モンスター。

 

「ふん……どんな下郎か知らぬが、わらわに勝てる者なぞいないのじゃ」

 

 ベッドの上でふんぞり返る金髪の主。金竜。世界に一体しかいないレア女の子モンスターであり、その実力は最強種と同じ四つ星とされている。いや、ただの四つ星ではない。四つ星でも最強、つまり、数多くいる女の子モンスターの中でも最強ではないかと言われている存在なのだ。

 

「さあ、どこからでも来るが良いぞ。人間共」

 

 塔の最上階で待ち受けるのは、最強クラスの女の子モンスターたち。

 

 




[人物]
復讐ちゃん
LV 40/51
技能 なし
 レア女の子モンスター。暫定の星数は四つ星であり、最強種の一種とされている。バードから依頼を受け、ランス暗殺に奔走している。だが、何やらランスの事を知っている節も見せている。


[モンスター]
うみねこ
 水槽に入ったねこ系モンスター。可愛い声で鳴くが、その泣き声には麻痺効果も付属している。また、攻撃の際に後ろに纏う女の子のオーラは、別名「水の妖」と呼ばれている精霊である。元ネタは同じアリスソフト作品の「ぷろすちゅーでんとG」に登場するキャラクター。

出目金使い
 巨大なバズーカ砲を担いだ三つ星女の子モンスター。装填に時間が掛かるが、その一撃は強烈。装填時間をサポートできる仲間と組むと一気に化ける。

フローズン
 氷雪魔法を得意とする三つ星女の子モンスター。一属性特化型であるため、その分魔法の威力は高く、三つ星でも上位に位置する。腕利きの冒険者でも油断すると全滅の恐れがある。

やぎさん
 角笛で恋人を呼び出す一つ星女の子モンスター。自身は弱いが、呼び出すドラゴンナイトは強力なモンスターであるため、呼び出される前に倒すのが常套手段とされている。

ブラックナース
 巨大な注射を持った二つ星女の子モンスター。手に持った注射には毒物が入っており、それを注入して動けなくなった相手に必ず失敗する手術をしてくる何とも恐ろしいモンスター。

ちょーちん
 頭に突起物の付いた二つ星女の子モンスター。暗い場所を好み、安全第一で危険は冒さない。パンチを主体戦法としているが、そのパンチ自体はあまり強くない。

ボルト
 全身から雷を放っている猫耳の二つ星女の子モンスター。電撃のせいで服が破れてしまい、常に裸でいるためムラムラしたランスに狙われやすい。

雷太鼓
 雷を操る三つ星女の子モンスター。その実力は本物で、学会では彼女を最強種に格上げしようという意見も出ている程である。荒っぽい性格だが親分気質でもあり、知らず知らずの内に多くの舎弟を持っていたりする。

バトルノート
 軍服ドレスに扇を携えた三つ星女の子モンスター。周囲のモンスターに的確な指示を飛ばし、パーティー全体の戦闘力を大幅に上げる。魔軍でも魔物将軍などの参謀として重宝されている事からもその実力の一端が窺える。

バルキリー
 凄まじい機動性と強烈な手刀で戦う四つ星女の子モンスター。最強種の代表格であり、最強の女の子モンスターと聞かれれば多くの者が彼女の姿を思い浮かべる。一流の冒険者と呼ばれている者でも、彼女に一騎討ちで勝てるのは半数いるかどうかと言われている。

最強魔女
 様々な魔法を使いこなす四つ星女の子モンスター。バルキリーと並び立つ最強種とされており、『最強』の名に恥じない実力を持つ。普段は少女の姿だが、強力な魔法を使う際は一時的に大女へと姿を変える。どちらが本当の姿なのかは不明。

金竜
 最強の女の子モンスター。世界に一体しか存在しないレア女の子モンスターであり、ギャルズタワーの主。自身の主たる存在との出会いを待ちわびながら、今日も塔の最上階でキムチと惰眠をむさぼっている。


[技]
シベリア
 氷属性の上級広域魔法。広域魔法の中でも威力が高く、業火炎破や光爆よりも格上とされている。氷属性は単体攻撃に劣る分、全体攻撃においては多属性よりも威力が高い傾向にある。


[装備品]
魔抵の指輪
 装備者の魔法抵抗力を上げる指輪。効果は高くないが、全ての魔法に効果がある事と、比較的安価で店に売られている事からとりあえずで装備している冒険者は多い。
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