ランスIF 二人の英雄   作:散々

153 / 200
第5.5章 空白の一年
第151話 12月革命


 

-カスタムの町 酒場-

 

「それで、なんで俺は来て早々足を踏まれなくちゃいけないんだ?」

「だから、それは悪かったってば……」

 

 苦笑しながら隣に座っている志津香に小言を言うルーク。久しぶりにカスタムの町を訪れてみれば、早々に足を踏み抜かれたのだから文句の一つも言いたくなる。とはいえ笑みを浮かべているところを見ると、責めていると言うよりは楽しんでいるような態度だが。ばつの悪そうな表情で謝罪する志津香を見ながら、マリアとロゼがニヤニヤとしている。

 

「これぞ見慣れた光景って感じねー」

「志津香の勘違いにも困ったものよねー」

「アンタが元凶でしょうが!」

 

 ギロリとロゼを睨む志津香。ホテルに泊まっただの何だのという言葉を真に受けての行動であったが、すぐさまルークから事情を説明され、とんだ赤っ恥をかいた事を根に持っていたのだ。とはいえそこはロゼ。まるで気にした様子も無く、ピーピーと口笛を吹きながら視線を反らしてしまう。その行動が更に志津香の神経を逆なでするが、その頭にルークがポンと手を乗せる。

 

「ま、そうカッカするな。もう気にしてないから」

「ん……」

「ロゼ、悪戯は程々にしろよ。大概、痛い目を見るのは俺なんだから」

「だからこその悪戯なんだけどね」

「お前な……」

 

 はぁ、とため息をつくルーク。確かにロゼは『本当の事』しか言っていないが、明らかに誤解させようとした言い回しをしている。とはいえ、マリアの言うようにこの悪戯も含めて『見慣れた光景』なのだ。

 

「ルークさん。次の機会には是非ともこのトマトも誘って欲しいですかねー!」

「ああ、機会があればな」

「俺もよろしくたのむぜ。久しぶりにお前やランスと冒険をしたい」

「なら、ミルもー!」

 

 トマト、ミリ、ミルの三人も同じテーブル席に座っており、わいわいと談笑している。思えばカスタムの面々とも長い付き合いになってきたものだ。ランは今回も仕事中で不在だが、後で顔でも出してあげるかとルークが考えていると、ふと酒場の隅でごそごそと何かをしているエレナの姿に目に入る。

 

「ん? エレナ、何だそれは?」

「あっと、ばれちゃったか。じゃじゃーん! 遂にウチの酒場も魔法ビジョンを買いました!」

 

 ドン、とカウンターの上に魔法ビジョンを置いてポーズを取るエレナ。魔法ビジョン。魔法ビジョンの放送局から魔力電波を拾い、映像や音で客を楽しませる娯楽物である。とはいえまだまだ一般大衆にとっては高価な代物。魔法ビジョンを置いている酒場などごく一部だけだ。だからこそ、ルークが感心したように声を漏らす。

 

「よく買えたな。安いもんでもないだろうに」

「情報のエキスパート真知子さんに協力して貰って格安販売店を探し、そこから更にロゼさんが値引き交渉してくれた結果です」

「いつも利用していますし、これくらいの協力はしないといけませんからね」

「一番使いそうなのは私らだしねー」

 

 真知子とロゼが笑いながら答える。こうしてみると本当に各種エキスパートの揃った町である。

 

「でもよ、魔法ビジョンなんか置いたら客の回転率悪くなっちまうんじゃないか?」

「今でも回転率良くないし。そんなに変わらないわ」

「うっ……何も聞こえない……」

 

 ミリの問いは完全にやぶ蛇。ちょっとだけ冷たい視線を全員に送るエレナ。この連中がどれだけ居座っているのか容易に判る視線である。マリアがわざとらしく視線を反らしたところで一度ため息をつき、微笑みながらエレナが言葉を続ける。

 

「という訳で、いっその事そういった面々を更に居座らせて、目一杯搾取する事にしたの」

「搾取って言ったですかねー!」

「清々しいくらい正直だね」

 

 同じく商売人であるトマトとミルが反応を示すが、そのすぐ後にドッと笑いが起こる。みんなエレナが搾取などしない事は判っているのだ。そのまま魔法ビジョンの取り付けに掛かるエレナを横目で見つつ、ルークは真知子に向き直る。

 

「それと、まさか俺が頼むよりも先に調べておいてくれるとは思わなかったよ。助かった」

「いえ、お役に立てたのなら光栄です」

「なに? また厄介事?」

 

 酒場に寄る前にルークは真知子の情報屋に立ち寄っており、そこでいくつか調査資料を受け取っている。それは、ルークが頼もうと思っていたリズナの両親、及び親類の調査報告書であった。どうやら事前にロゼが伝達してくれていたらしいが、それでもこの調査スピードは恐れ入る。隣に座っていた志津香が興味深そうに資料を覗き込んでくるが、一応個人情報になるためルークはすぐに資料を封筒にしまってしまう。

 

「人捜しだ。後はこれをカールギルドに送って、一応は完了だな」

「人捜しか……ねぇ、こっちの件は何か進展あった?」

「すまん……」

「……別にいいわ。私の方もあれから何も掴めていないし」

 

 人捜しと聞いて、否応にもラガールの事を思い出してしまったのだろう。他の皆に聞こえぬよう、ヒソヒソと小声で問いかけてくる志津香。だが、ラガールの問題はあれから何の進展もない。申し訳無さそうに首を横に振るルークを見て気にするなと口にする志津香であったが、やはりその顔はどこか辛そうだ。

 

「今はサイアスとも連絡が取り難いからな……」

「そうだったわね……クーデターが起こりそうなんでしょ?」

「ゼスのクーデターの事? 今話題よね。検問もかなり厳しいらしいし」

「武器の仕入れ値が日に日に上がっているのを見ると、怖さを実感しますですかねー」

「ゼス国内だと相当値上がりしているみたいですね」

 

 志津香の呟きをマリアが拾うと、全員の話題がゼスのクーデターの話に移る。少し前から巷で噂になっている事柄。ゼスで十二月に大規模なクーデターが起こるという話だ。当然ゼス国内では武器の需要が上がり、その余波は自由都市のカスタムにまで及んでいた。店で武器を扱っているトマトにとっては、皆より身近な問題なのだろう。そんな中、ロゼが肩肘をつきながら口を開く。

 

「でも、クーデターは起こらないと思うわ」

「え? どうして?」

「俺も同じ見解だ」

「同じく」

「ルークさんと真知子さんも……どうしてなんですか?」

 

 ミルがきょとんとしている中、ルークと真知子もロゼの言葉に同意する。だが、マリアにはその理由が判らなかったため、どうしてなのかと尋ねてきた。ロゼがルークと真知子に目配せをすると、二人が頷く。それを確認し、代表してロゼが説明を始めた。

 

「だって、クーデターが起こるって周知になりすぎているもの。ゼスの上層部が掴んでいるだけならまだしも、リーザス、ヘルマン、それどころか自由都市にまで知られちゃっているのよ」

「なるほど。ゼス国内は警戒仕切っている。そんな状況でクーデターを起こすなんて……」

「そう、自殺行為もいいところよ。今からクーデターしますって宣言してから行動するようなものなんだから、今の状況は」

「ほえー、なるほどですかねー」

「それじゃあ、ゼスの警戒は無駄に終わるって事ですか?」

 

 ロゼの説明にミリ、トマト、マリアと順々に頷いていく。最後にマリアが疑問を投げるが、これまで無言であった志津香が冷静にそれに返す。

 

「逆に考えれば、それこそが狙いだったのかも」

「どういう事?」

「クーデターを警戒して警備を厳重にする。それにはお金も掛かりますし、いつもよりも忙しくなるため兵の不満もふくれるでしょう。対外的にもゼスの治安に疑問の声が上がるでしょうし、ゼス国としてが大きな痛手なんです」

「情報戦ってやつだな」

 

 判っていない様子のミルには、志津香の代わりに真知子が説明を入れる。自分たちは動かず、警戒した相手だけを疲弊させる。何とも嫌らしい攻撃だ。

 

「それでも、クーデターが起こる可能性が0じゃない以上、国は警戒せざるを得ない……」

「まあ、この状況でクーデターを起こしたら普通じゃないわ。トップがよほどの馬鹿か……」

「あるいは、勝算があるという事になる」

「…………」

 

 ルークの言葉を受け、酒場が一瞬静寂に包まれる。これだけ厳重な警戒の中、それでも勝算があるというのか。もしそうだとしたら、それは一体。トマトの手に自然と汗が滲む中、突如酒場の扉が開かれた。

 

「いらっしゃーい」

「失礼、客では無いのです。ロゼ殿はいらっしゃいますか?」

「は?」

「(……一人じゃないな)」

「(あれは……)」

「……!?」

 

 酒場に入ってきたのは、少女の人形を手に持ったハゲ頭の青年。同時にルークだけが気が付く。やってきたのは彼一人ではない。酒場の前から数名の人物の気配を感じる。あの青年が引き連れてきた者たちだろう。瞬間、ロゼが目を見開いて椅子から立ち上がった。非常に珍しい反応にトマトが思わずビクッと震えてしまう。そんな中、ロゼの姿を発見した青年が声を上げる。

 

「おお、ロゼ殿!」

「教会以外には来るなって言っておいたはずだけど。というか、なんでアンタ自ら?」

「それが……」

「……!? 悪い、ちょっと出てくる!」

「え? あ、ロゼ!」

 

 スタスタと足早に青年の下へと歩いて行ったロゼであったが、何やらヒソヒソと話し合った後、再度目を見開く。よほどの事が起こったのか、言い訳も適当に酒場を後にしようとするロゼ。マリアが思わず声を掛けるが、聞く耳持たずそのまま飛び出して行ってしまった。

 

「何なんだ……?」

「AL教の人みたいだったよね。以前言っていた着服がばれたとか?」

「そういう雰囲気でも無さそうだったけどね……」

 

 残された面々は、ただただ呆然とするしかない。あのロゼが相当焦っていたのだ。それがどれだけ珍しい事柄か判らないほど付き合いの浅い者たちではない。そんな中、ルークの足を机の下でコツンと蹴ってくる者がいる。ついで、膝の上に手が置かれる。それは、志津香とは逆側の隣の席に座っていた真知子。ルークがその手を取ると、そこには小さな紙が握られていた。すぐさまそれを受け取ると、真知子の手が引っ込む。どうやら皆にばれぬようにこれを手渡したかったようだ。一度周囲に視線を移すルーク。だが、皆は今のロゼの話をしているところであり、ルークに気を向けている者はいなかった。これならば問題無いと判断し、皆の目を盗んで手渡された紙を広げ、書かれた文字を見る。瞬間、ルークは目を見開いた。

 

『今の方は恐らく、ロードリング司教です』

 

 すぐさま真知子に視線を移すと、真知子は真剣な表情のまま静かに頷いた。ミ・ロードリング。少し前にパルオットと共に司教へと抜擢されたAL教の若きエースだ。トータス、エンロンといった以前から司教であった者たちに比べまだ顔が売れておらず、他の者たちは今立ち寄ったのがロードリング司教だとは気付かなかった。唯一人、情報屋である真知子を除いて。

 

『因みにね、私、新司教に選ばれちゃった』

 

 随分と前、ロゼと互いの秘密を話し合った日の事を思い出す。真知子とは違いその情報を知っているからこそ、ルークには今の出来事にどこか納得が出来ていた。望めば司教にまで登り詰められた女だ。現司教が直接呼びに来ても不思議ではない。だが、一体何があったのか。

 

「(AL教で何かがあった。それは間違いない。だが、一体何だ……?)」

 

 一抹の不安を抱いているのは、ルークだけではない。ロードリングと気が付いてしまったからこそ、真知子も相当の不安を抱いていた。そんな中、酒場に明るい声が響く。

 

「よーし、ようやく取り付け完了! ほらほら、景気の悪い顔をしてないでみんなで魔法ビジョンでも見ましょう!」

「……そうだな! エロい番組でもやってりゃあいいんだが」

「そんなの放送してる訳ないでしょ」

「楽しみですかねー!」

 

 パンパンとエレナが手を叩いて暗い空気を払拭する。流石は看板娘と言ったところか、こういう事柄はお手の物である。ミリもすぐさまそれに乗り、他の者たちも空気を変えるべく話題を変える事にした。一同の視線が魔法ビジョンに集まる。

 

「それじゃあ、スイッチオーン!」

 

 ブン、という電子音と共に魔法ビジョンに映像が映し出される。どうやらニュース番組のようだ。美しい女性アナウンサーの口から発せられたのは明るい話題ではなく、つい先程まで話していた事柄。

 

『緊急ニュースです。ゼス国内で大規模なクーデターが数日前から発生していた事が判りました』

「なっ!?」

 

 それは、絶対に起こらないと断言していた革命。

 

 

 

数日前

-ゼス国内 東方-

 

「きゃぁぁぁぁ!」

「殺せ! 魔法使いは皆殺しにしろ!」

「構え! 一斉照射!!」

 

 ゼス国内のあちらこちらで火の手が上がっている。この日、ゼスの歴史を紐解いてもそう例を見ない程の大規模クーデターが発生した。魔法使い憎しのレジスタンスが中心になり、女子供問わず魔法使いとそれに従する者たちを皆殺しにしている。それを迎え撃つのは、ゼス軍。その先頭に立つのは治安部隊だ。そしてそこには、ルークたちも見知った顔が並んでいた。

 

「雷撃!!」

「エアレーザー!!」

 

 治安部隊隊長、キューティ・バンド。治安部隊臨時所属、エムサ・ラインド。砂漠のガーディアン、闘神都市、ハピネス製薬。何度となくルークと関わりを持ってきた二人の魔法使いもこの内乱を収めるべく最前線に立っていた。

 

「ぐあっ!」

「殺せ! 魔法使いに味方する者も皆敵だ!」

 

 魔法使いを守るべく戦う戦士、俗称『肉壁兵』の一人が脇腹を剣で切り裂かれて倒れ伏す。魔法使いというのは詠唱に時間が掛かるため、彼らのようなガード要員がいなければまともに戦えないのだ。そのため、ゼス国では魔法を使えずともこのように肉壁兵として軍に所属することは出来る。だが、彼らの待遇は最悪。根底に『魔法使いでなければ人ではない』という思想があるのだから無理もないが、彼らは基本的に消耗品という扱いであった。戦場で魔法使いを守って散るのが彼らの仕事であり、足りなくなれば生活苦の二級市民を無理矢理肉壁兵にすればいい。彼らを同じ人間として見ている魔法使いなど、滅多にいない。だからこそ、このように殺されそうになっても助けに来る魔法使いなどいないのだ。そう、一部を除いて。

 

「きゅー!」

「なっ……あががががが!!」

「ウ、ウォール・ガイ……?」

「ナイス、ライトくん! 雷撃!!」

 

 倒れていた肉壁兵を助けたのは、一体の指揮ウォール・ガイ。反撃の電撃を食らわせ相手が怯んだ隙に、その主である女性が雷撃で敵を吹き飛ばす。颯爽と立つその背中は末端の肉壁兵でも知っている。彼女はこの治安部隊の隊長、キューティ・バンドだ。

 

「大丈夫ですか!? 下がって治療を!」

「は、はい……」

 

 平然と発せられた言葉だが、それは魔法使いにとっては異質。彼女は魔法使いではない自分の体を心配したのだ。そそくさと治療兵の下へと下がっていく肉壁兵を見送りながら、キューティは周囲に聞こえるよう宣言をする。

 

「無駄死には許しません! クーデターも出来る限り殺さず、捕らえるように!! 重要な情報源です!」

「はっ!!」

「了解です!」

 

 若くして治安隊のトップへと登り詰めた彼女だが、その信頼は厚い。元々積み重ねてきた真面目な行いは勿論、四天王の千鶴子から彼女には期待しているという発言が飛び出しており、四将軍のサイアスやウスピラ、カバッハーンとも懇意にしている事が非常に大きいのだ。更には優秀な魔法使いであるエムサをスカウトしてきた。若い魔法使いにとっては憧れの存在であり、野心溢れる者にとっては出世の足がかり。それぞれの腹の一物はさておき、キューティに何とか取り入ろうとする者が徐々に増えてきているのは確かである。

 

「(肉壁兵をあれだけ重要視するのだけは未だに理解出来ないけど……)」

「(それでも、結果を出していますしね……)」

 

 唯一彼女の槍玉に挙がるのは、肉壁兵を重要視する戦い方。当初は不満の声も聞かれたし、上層部からも疑問視する声が出た。しかし、彼女の運用法は結果として肉壁兵、魔法使い双方の損耗率を大幅に下げた。キューティ自身も上層部からの疑問に、『使い回すよりもより長く肉壁兵を使う方が連携も取れ、手間や出費も減る』と答え、ある程度の理解は得られたためにこの運用法を行い続けている。勿論、キューティの考えはそれだけではない。魔法使い絶対主義思想、その呪縛から外れているからこその戦い方だ。

 

「(出来る限り死者は出さない……みんな、守るべきゼスの国民なのだから……)」

 

 その真意を知る者は少ないが、彼女の考えに賛同してついてくる者も確かにいる。

 

「石飛礫! エアレーザー!!」

「ぐぁぁぁぁ!」

「ど、どうして二つの魔法を同時に!?」

「見えていないんだよな、あの魔法使い……?」

 

 敵味方双方から驚愕の声が上がる。盲目の一流冒険者、エムサ・ラインド。キューティの考えに賛同してついてくる者の一人だ。実戦経験豊富な彼女は圧倒的な実力で敵を鎮圧していく。そして、もう一人。

 

「火爆破!!」

「はぁっ!」

 

 数名の魔法使いたちが一斉に火爆破を放った瞬間、その火柱の群れへと突き進んでいく者がいた。面食らうのは、クーデター側。味方の放った魔法に自分から突っ込んでいくなど正気の沙汰ではない。だが、その者は魔法による火傷やダメージを全く受けず、平然とした様子で跳び上がった。

 

「つあっ!」

「がっ……」

 

 跳び蹴りを食らい、吹き飛ぶレジスタンス。呆気に取られている他のレジスタンスも次々とその者に屠られていく。そして、気が付く。

 

「こ、この人形、魔法が効かないのか!?」

「お、お前、我らペンタゴンと共に理想を叶えるつもりは……あぎゃっ!?」

 

 魔法の効かない機械人形。もし味方にする事が出来れば、ゼス国に一泡吹かせる事が出来る。そう考えたレジスタンスが勧誘したくなる気持ちも判らなくはないが、その首をゴキリと90度回転させ、意識を刈り取る。殺してはいないが、戦闘不能になって地面へと倒れるレジスタンスを見下ろしながら、エムサ同様キューティの考えに賛同する一人、闘将ミスリーが静かに告げる。

 

「すいませんが、裏切る気は毛頭ありません」

「殺せ! あの機械人形に相当数の同士がやられている! 一刻も早く殺すんだ!」

「はぁっ!」

 

 一斉に掛かってくるレジスタンスを物ともせず、次々とその意識を刈り取っていくミスリー。魔法が効かないという特徴にだけ目が向きがちだが、彼女は聖魔教団の英知の結晶である闘将なのだ。そんじょそこらの戦士に負けるような存在では無い。

 

「くぅ……このままではこの場所は失敗か……」

「ですが、他の場所に散らばった同士が必ずや……」

「無理ですよ」

 

 ちょうど捕らえていたレジスタンスがそんな事を宣っていたため、キューティが極めて冷静な口調でそう告げる。事前に掴んだ情報によると、大規模なクーデターが起こるとされていたのは五箇所。北方、西方、東方、南方、中央部。自分たちのいる東方は勿論、他の場所にも当然手は回している。むしろ、この場にいる者よりも遙かに頼りになる手練れを。

 

 

 

-ゼス国内 西方-

 

「さあ、行きますよ……」

 

 多くの魔法使いを引き連れ戦場に颯爽と降り立つのは、爽やかな印象を受ける好青年。だが、彼の纏っている魔力は普通のそれではない。それもそもはず、彼は闘神都市の調査に参加しなかった最後の四将軍。光の魔法団隊長、アレックス・ヴァルス。

 

「白色破壊光線!!」

 

 放たれるのは、最上級魔法。抗いようのない絶対的な魔力がレジスタンスを包み込んでいく。

 

「あいつやべぇ! 逃げるぞ!」

「そう簡単に逃がすと……ぐぁっ!」

 

 レジスタンスの一人であった女戦士がすぐさま撤退を決め込むが、その道を肉壁兵が阻む。しかし、その女戦士は素早い身のこなしで肉壁兵の首を絞め落とし、引き連れている仲間と共に撤退をしていく。

 

「ちくしょう、こんなヤマだなんて聞いてねぇぞ……これじゃあ過激派じゃねぇか……」

「セスナは大丈夫かしら……?」

 

 息も絶え絶え戦場から引き揚げていくのは、シャイラとネイ。大きなヤマだとは聞いていたが、魔法使いを皆殺しにする大規模クーデターだとは知らなかったのだ。道中可能な限り仲間を助けつつ、撤退をする。これまでの戦闘経験からすぐに察せたのだ。あのアレックスとかいう男には天地がひっくり返っても勝てない事を。こうして、西方の部隊は崩壊していくのだった。

 

 

 

-ゼス国内 南方-

 

「投降しなさい……これ以上無駄な血は流したくありません……」

「ふざけるなぁぁぁ! 魔法使いがどの面下げて……」

「……氷雪吹雪」

 

 南方部隊を率いるのは、四将軍ウスピラ・真冬。投降を呼びかけてはいるものの、向かってくる敵に情けを入れる程甘い人間では無い。一分の手加減も入れず、次々と敵を凍り付かせていく。

 

「死を怖れるな! 提督の作戦が必ずや勝利を導くはずだ!」

「やれやれ……提督の作戦では、こんなに早く四将軍が出てくるのは想定外のはず。ここは撤退するのが得策だというのに……」

 

 一心不乱に特攻を続ける仲間にため息を吐きながら、戦士とは見えない風貌の眼鏡男が戦場からそそくさと撤退していく。その彼の目についたのは、周りに撤退するよう促している女の姿。確か名前はセスナ。同士であるフットのお気に入りの戦士だ。だが、その説得は上手くいっていないようだ。皆、魔法使い憎しの連中。途中で撤退を決め込むなど出来ないのだろう。

 

「無駄だよ。頭に血が上っている。そこそこ考えられる頭を持っているのなら、さっさと撤退した方が良い」

「ロドネー……さん……」

 

 ロドネー・ロドネー。自分たち一般構成員とは違い、ペンタゴン8騎士に属する幹部だ。その彼と戦場で偶然出会うことの出来たセスナは、自分の抱いている疑問を素直にぶつけた。

 

「貴方は……この作戦の内容を事前に知っていたの……?」

「当然」

 

 瞬間、セスナが明らかな嫌悪感を示した。その表情を見てロドネーは興味深そうに呟く。

 

「へぇ、そんな表情も出来たんだ」

「無謀過ぎる……クーデターは事前に知られていた……」

「だからこその特攻。敵もまさか本当にクーデターが起こるとは思っていなかったはず……なのだけれど、一枚上手だったようだね」

「そんな賭けのような作戦を……」

「いくつかの賭けに勝たなければ革命は有り得ないよ。それが今回は失敗に終わっただけさ」

 

 話は終わったとばかりにさっさと引き揚げていくロドネー。その背中を静かに睨んでいたセスナに対し、ロドネーは一度だけ振り返った。周りから聞こえてくる悲鳴や金属音を耳にしながら、ロドネーはゆっくりと告げる。

 

「当然、フットも知っていたよ」

「…………」

「他にも、そこそこの地位にいる構成員は結構知っている。少数派なんだよ、君たちのような考えは」

 

 

 

-ゼス国内 北方-

 

「ら、ら、ら……」

 

 目を見開くレジスタンスたち。だが、無理もない。唯でさえ不利な状況の自分たちの前に、ゼスの生ける伝説が立ちふさがっているのだから。

 

「雷帝だぁぁぁぁぁ!!」

 

 雷帝、カバッハーン・ザ・ライトニング。彼が来た今、北方でのクーデターは失敗に終わることが確定した。敵味方双方がそう確信してしまう程の威圧。バチバチという電撃音を携えながら、カバッハーンはゆっくりと口を開いた。

 

「さて、殲滅するかのぅ……」

 

 

 

-ゼス国内 中央部-

 

「エリザベス様! 北方に雷帝が現れた模様!」

「南方より入電! ロドネー様、撤退。戦況も芳しくない模様」

「東方、西方も……」

 

 報告を受けていた女性兵はガン、と臨時司令部の机を叩く。ペンタゴン8騎士の一人、エリザベス・レイコックだ。次々と届くのは、こちらが不利という報告のみ。吉報は一つたりともない。

 

「馬鹿な……どうしてここまで四将軍が早く動く……」

「こちらが思っている以上に、あちらさんは俺たちを危険視していたみてぇだな」

「フット……」

「エリザベス、撤退命令を出せ。これ以上は無理だ」

「まだだ! まだ負けた訳では無い! 提督の打ち立てた作戦では……」

「前から言ってんだろうが。提督だって完璧な人間じゃねぇ、失敗だってある」

 

 フットの言葉を受け、エリザベスがキッと睨み付ける。まだ失敗した訳では無い、そう抗議しているのだ。だが、それと同時に最前線の方から一際大きな喧騒が聞こえてくる。

 

「なんだ……?」

「報告します! 最前線にガンジー王が現れました!」

「何だと!?」

「自ら出やがったか……」

 

 駆け込んできた伝令兵が告げたのは、考え得る最悪の事態。アニスを除けばゼス最強とも名高いガンジー王自ら前線に出てきたのだ。

 

「ガンジー王の説得に応じた者、その圧倒的な戦闘力に恐れをなした者、理由は多々ありますが、最前線の同士が次々と投降しています!」

「馬鹿な! 崇高な理想を掲げた同士がそう簡単に説得に応じるなど……」

「一枚岩じゃねぇんだよ、俺たちも。8騎士を見りゃあ判るだろ」

「ぐっ……」

 

 その言葉を受け、エリザベスが言い淀む。ビルフェルム、ウルザ、ダニエル。この作戦に最後まで反対していた8騎士だ。確かに、幹部の8騎士ですら一枚岩では無い。

 

「……撤退だ」

「オーケー。お前さんのそういうところは評価している。おら、急いで最前線の連中にも伝えてきな! 撤退だ!」

「は、はい!!」

 

 こうして、一際大規模なクーデターの起こった全ての箇所でゼス側が勝利を収める。とはいえ、これですぐに戦乱が収まった訳ではない。尚も抵抗を続ける者、クーデターが起こったと聞いて二次的に各地でクーデターを起こす者など、内乱は続いた。何とか徐々に収束はしていったものの、完全に鎮圧するまでは実に二週間以上もの日数を要するのであった。この大規模クーデターは『12月革命』と呼ばれ、ゼスの歴史にその爪痕をまざまざと残す事になる。

 

 

 

現在

-カスタムの町 酒場-

 

『国軍の迅速な対応でクーデターは徐々に鎮圧。現在は残党処理を行って……』

「まさか、もうクーデターが起こっていたなんて……」

「この情報に関しては、外に漏れぬよう相当の情報封鎖をしたんだろうな」

「四天王、山田千鶴子。あの方の手腕でしょうね」

「闘神都市に四将軍の派遣を決めたっていう才女か」

 

 魔法ビジョンから流れてくるニュースに唖然とする一同。既にクーデターは起こっていたどころか、既に鎮圧寸前だという。クーデター情報が事前に漏れまくっていたペンタゴンとは違い、ゼス国の情報封鎖レベルが窺える。とはいえ、リーザスならば既にこの情報は掴んでいただろう。

 

「(リーザスが介入しなかったという事は、それ程早急に大局が決したか、あるいはサイアスが相当睨みを効かせたか……)」

 

 リーザスにとってはちゃっかりゼスを吸収するチャンスでもある。リーザスの情報網からして、クーデターが起こった直後にこの事は察していたはず。その介入を阻止出来たのは、国境でもあるアダム砦を守っている四将軍のサイアスがリーザスに睨みを効かせていたのも大きな要因だろう。すると、隣に座っていた真知子が少しだけ悔しそうな表情を浮かべている。

 

「事前に掴めていなかったなんて……情報屋として恥ずかしいです……」

「ここ数日はルークさんの頼み事を調べていたんでしょ? 仕方ないですよ」

「そうだ。あまり気にする事はない」

 

 どうやら情報屋のプライドに触ったようだ。すぐさまフォローを入れるマリアとルーク。それを横目に見ながら、志津香がポツリと呟く。

 

「みんな、大丈夫かしらね……?」

「サイアスさん、ウスピラさん、カバッハーンさん、キューティさん、アスマさん……」

「セスナ、シャイラ、ネイの三人もゼスにいるはずだ」

「(アスマ……)」

 

 闘神都市で世話になった者たちだ。どうしてもその安否が気に掛かるというもの。リズナに手紙を送るのと同時に、セスナの利用しているペルシオンギルドにも手紙を送らねばなと考えるルークであった。

 

 

 

-ゼス国内 とある貴族の館-

 

「くっ……離せ!!」

「おとなしくしなさい! 貴方が今回のクーデターに関わっていた事は判っているんです!」

 

 後ろ手に縛られて喚くのは、とある有力貴族。だが、この男は反ガンジー派の貴族であり、今回のクーデターに協力していたのだ。その情報を掴んだ千鶴子からの命を受け、キューティがこの男を捕らえたのだ。

 

「主人を離して! 炎の矢」

「ふっ!」

 

 貴族の妻である女が反抗をしてきたが、キューティを守るべくミスリーが間に割って入り、魔法をその手で受け止める。四散する魔力と傷一つ付いていないミスリーの手を見て、妻が恐怖する。

 

「ば、化け物!!」

「っ……」

「……公務執行妨害ですので、その方も連行します」

「はい、キューティ隊長!」

 

 指示を受けてキューティの部下たちが妻を縛り上げ、貴族共々連行していく。それを見送りながら、ミスリーは複雑な思いを抱いていた。化け物。そう呼ばれたのは初めてではない。ゼスに来てからこれまで、もう数えるのも馬鹿らしくなるほど言われてきた。やってきた当初は正面から、最近では陰口で。サイアスやキューティと共にいる時はそれ程でもないが、一人で歩いている時などはわざと聞こえるように言葉にされる。

 

「……ミスリー、行こう」

「……はい」

 

 魔法大国、ゼス。魔法によって成り立っているこの国にとって、魔法を無効化するミスリーの存在は畏怖の対象である。もし彼女が裏切ったら、もし彼女が刃を向けたら、そんな不安は魔法使いや貴族の間に徐々に広がり続けていた。

 

 

 

-ゼス 王者の塔-

 

「キューティ治安隊長が例の貴族を捕らえたようです」

「そう、ご苦労って返しておいて」

「はっ」

 

 報告に来ていた部下のマクシミリアンにそう告げ、千鶴子が椅子に深く腰掛ける。ここ数日は鬼のような仕事量であったが、それもようやく落ち着いてきた。

 

「(でも、こんなもんじゃないはず……裏で手引きしていた貴族はもっといたはず……)」

 

 机の上に置かれた書類に目を通しながら苦虫を噛み潰す。今回捕らえられた貴族など判りやすいトカゲの尻尾切りだ。もっと上の者たちが絡んでいるはず。だが、証拠はない。

 

「一枚岩じゃないのはペンタゴンだけじゃないわね……」

 

 先の戦争で一枚岩でなかったペンタゴンを思い出しながら、自嘲気味に笑みを浮かべる千鶴子。ゼスもまた、一枚岩では無い。

 

 

 

-ゼス ペンタゴンアジト 会議室-

 

「どうして決行したのですか!?」

 

 怒声と共にウルザが激しく机を叩く。だが、正面に座る者たちに悪びれた様子は無い。ネルソン、エリザベス、ロドネー、キングジョージ。いずれもこの作戦を主導していた8騎士たちだ。唯一申し訳無さそうな表情を浮かべているのは、同じく8騎士のフットのみ。ウルザの隣に座っているビルフェルムとダニエルも怒りを隠していないし、少し離れた位置に座っているウルザの両親とキムチの三名を非難の目を向けている。

 

「どれだけの血が流れたと思っているのじゃ?」

「数は問題では無い。我らは大義の為に行動を起こさねばならなかったのだ!」

「でも、失敗に終わったと」

 

 ダニエルがギロリと睨みながら苦言を呈すが、エリザベスは一歩も引かず拳を握りしめる。それを茶化すように口を挟むのは、アベルト。彼も今回の作戦には反対だったようだ。平行線の議論を受け、それまで黙っていたネルソンがスッと立ち上がる。

 

「だが、爪痕は残せた。いずれ来る更なる大規模クーデターに繋がる爪痕がな……散っていった同胞の血は無駄ではない」

「勝手な事を! 我々が目指しているのは国家再生です。ですが、今回のクーデターは明らかに違う。これは、魔法使いから利権を奪い返す事だけを目的にした無謀な作戦です!」

 

 だが、その言葉はウルザたちを心情を逆撫でする言葉でしか無かった。再度机を激しくウルザを見て、ネルソンが悲しげな瞳を向ける。

 

「ウルザ、どうして判らない?」

「判りたくないな……」

 

 それに答えたのは、ウルザの隣に座っていた人物。実兄、ビルフェルム・プラナアイス。静かに、されど確実な怒気を纏ったその声はその会議室にいた者たちを緊張させるのには十分な声であった。皆がビルフェルムに抱いている印象は、ウルザの横でいつもにこにこと笑っており、優秀な妹を優しく補佐する、そんな存在。その彼が今、明確な怒りを示しているのだ。丸眼鏡の奥に見える眼光がギロリと鋭く光っている。

 

「ネルソン。ウルザの言ったように、俺たちの目指しているのは国家再生のはず。だが、最近のお前たちは道を外れすぎている」

「そう感じるのなら、外れているのはお前たちの方じゃないか?」

「ロドネー……」

 

 斜め前に座るロドネーにチラリと視線を移すと、ふんと鼻で笑うような仕草を返してくる。明らかな挑発だ。次いで、ネルソンの隣に座っていたエリザベスが口を開く。

 

「道を外れていると感じるのならば、出て行くがいい! 我らは理想を叶えるべくここに存在しているのだから!」

 

 完全な売り言葉に買い言葉。だが、エリザベスがそう口にしてしまったのは、まさか本当に出て行く訳がないという思いから。だが、それは甘い考えであったと直後に後悔する事になる。

 

「ならば、そうさせて貰おうか」

 

 全員が目を見開いて端の席に視線を向ける。言葉を発したのはウルザとビルフェルムの父、セドリック・プラナアイスだ。額から一筋の汗を流しながら、ゆっくりとネルソンが問いかける。

 

「正気か、セドリック……」

「無論。少し前から考えていた事だ」

「父上……」

「セドリックさん……」

 

 ビルフェルムとキムチの呟きにゆっくりと頷き、いつの間にか席から立ち上がって真剣な表情を作っていた奥方、コーネリア・プラナアイスの肩を抱き寄せ言葉を続ける。

 

「こいつも理解してくれている。我らプラナアイス家はその私財を投げ打って新組織を作るつもりだ」

「なっ!?」

「既に思いを同じくしてくれそうな一部の者たちには話を通してある」

 

 セドリックがそう告げた瞬間、扉が開け放たれる。何事かとエリザベスが席から立ち上がって構えると、そこに立っていたのは数名のペンタゴン兵たち。ただの構成員ではなく、小隊長クラスに当たる有力な兵たちだ。そして彼らも同様に、セドリックたちと同じ穏健派である。その彼らがこのタイミングで姿を現す理由は一つしかない。

 

「セドリック……貴様、いつの間に……」

「上ばかり見過ぎたな、ネルソン」

「まあ……」

「そういう事じゃな……」

 

 わなわなと震えているネルソンを見据えるセドリック。そう、彼はいつの間にか根回しを進め、同じようにペンタゴンから離反する同士を集めていたのだ。そしてその根回しが済んでいた者たちは、この部屋にもいた。同時に席から立ち上がった二人を見て、ウルザが驚愕する。

 

「ダニエル……アベルト……」

「すまんな、ウルザ。裏切り行為でもあるため、ギリギリまでお前には秘密にしておくというのがセドリックの思いじゃった」

「ですが、それがいい隠れ蓑になったようですね」

「貴様らも裏切るつもりか!?」

「裏切る? 先に我らを裏切り、クーデターを断行したのは貴様らじゃろうが」

「それに、先程出て行きたければ出て行けと言いましたよね?」

「くっ……」

 

 エリザベスが怒声を放つが、ダニエルとアベルトの実に息の合った言い回しを受けて言葉に詰まってしまう。流石は親子、連携が取れている。

 

「ビルフェルム、ウルザ。ついてきてくれるな?」

「……はい!」

「どこまでも」

「キムチ、貴女はどうする? 今ほど孤児たちにお金を回せなくはなってしまうけど……」

「……ついて行きます。貧しくても、ここにいるよりはよっぽど子供たちのためになります」

 

 コーネリアの問いかけにキムチも頷く。完全にしてやられた。8騎士だけ見ても、ウルザ、ビルフェルム、ダニエルと既に三人。更には有力兵の一部にアベルト、キムチまで持って行かれるのだ。これでは末端の兵たちも、多く持って行かれる事だろう。何せ、ウルザはそれだけのカリスマ性を持っているのだから。それは恐らく、ペンタゴンの半数近くにも及ぶ。

 

「関係無い。提督についていく」

「エリザベス。君にも声は掛かっていなかったのか?」

「……ああ」

「フットは?」

「……掛かっていたぜ」

 

 ロドネーの何気ない言葉にフットは平然と肯定で返す。だが、それは部屋の者たちを驚愕させるには十分な言葉。そして、そのままスッと席から立ち上がるフット。エリザベスは確信する。フットも奴等と共にこちらを裏切るつもりだと。彼は提督の全てが正しい訳では無いと口にしていた。なればこそ、残る理由はない。

 

「(フット……)」

 

 そして同じように確信していた者がもう一人。キムチだ。かつてフットに命を助けられた彼女は、彼が必ず自分たちと共に来てくれると信じていた。だが、フットはゆっくりとネルソンに近づいていき、クルリとこちらに振り返った。

 

「悪ぃな。俺はこっちにつかせて貰う」

「なっ!?」

「フット……嘘でしょ……?」

「そう悲しい顔すんなや、キムチ。だけど、本当だ。ここでお別れだな」

「フット……それがお前の決断か……?」

「ああ、これが俺の決断だ」

 

 互いに真剣な表情で視線を交わすセドリックとフット。そしてその二人と同じような思いを抱いたのか、ダニエルがゆっくりと天井を仰ぎ見た。しばしの静寂の後、セドリックがゆっくりと出口に向かって歩いて行く。

 

「さらばだ、ペンタゴン。世話になった」

「……残念だよ、セドリック。願わくば、我らの道がいずれまた交わる事を……」

「真にゼスの為に動いているのであれば、また共に手を取り合えるさ……」

 

 ネルソンの言葉に背中越しでそう返すセドリック。そのまま家族や部下たちを引き連れ部屋を後にする。ダニエル、アベルトもそれに続くが、キムチだけが最後まで部屋に残り、フットをじっと見据えていた。

 

「フット……」

「キムチ。ガキ共を頼んだぜ」

 

 だが、フットは視線を合わそうとしない。そっぽを向いたままパイプから煙を上げ、ヒラヒラと手を振って別れを告げた。絶対についてきてくれる、そう信じていた。だが、彼との道はここで違えてしまったのだ。

 

 

 

-ゼス ペンタゴンアジト-

 

「繰り返す! 我らはペンタゴンを抜け、新たな組織を作る! 賛同する者たちはついてきてくれ!」

 

 アジトに響く呼びかけの声に誰しもが困惑していた。クーデター失敗に意気消沈していたところに、いきなり上層部が割れたという連絡が入ったのだ。穏健派と過激派の分裂。当然、荒れる。

 

「俺はウルザ様たちについていく! 今回のクーデター失敗でペンタゴンはもう駄目だと悟った!」

「馬鹿野郎! ゼスを変えられるのは提督だけだ!!」

「なんだと、この野郎!!」

 

 怒声や殴り合いの声が響き渡る。思いはそれぞれ。魔法使い憎しの過激派は多いためペンタゴンに残る者は多い。それでもウルザのカリスマ性からか、一部の過激派も新組織の方へと流れてくる始末。ネルソンの予想通り、その数は半数に至ってしまいそうであった。

 

「ムカーダー様、どうしますか?」

「どっちかっていうとペンタゴン派なんだが、こっちにはフットの野郎が残るっていうし……決めた、俺は新組織に行くぜ!」

「はい!」

 

 以前よりフットと折り合いの悪かったムカーダーが新組織に行くのを決めている中、迷っている者もいた。シャイラとネイだ。

 

「シャイラ、どうする?」

「考え方的にはウルザたちの方なんだけど……フットのおっさんには世話になったしなぁ……」

 

 ネイの問いかけにシャイラが腕組みをしながら答える。心の底では答えは決まっている。過激派のペンタゴンではなく、ウルザたちの作る新組織だ。だが、彼女たちの心を引き留めていたのは、フットの存在。これまでかなり目を掛けて貰ったあの男が、意外にもペンタゴンに残ると言ったのだ。

 

「参ったな……」

 

 ボリボリと頭を掻いていると、近くにいた男たちが突如大声で話し始めた。過激派に属する者たちだ。

 

「お前はどうする?」

「当然、ペンタゴンだ! 魔法使いを皆殺しに出来るからな」

「むっ……」

「俺もだ。魔法使いなんてクズの集まりだからな! あんな奴等、みんな死んじまえばいいんだ! ガンジー王も四天王も四将軍も……」

「ふざけんなよ、てめぇ!」

 

 こういった言葉を聞くのは初めてではない。だが、色々と溜まっていたものがつい爆発してしまい、気が付けばシャイラとネイはその男たちを蹴り飛ばしてしまっていた。

 

「て、てめぇら! いきなり何すんだ!?」

「魔法使いが全員クズだと!? 笑わせんな、中には良い魔法使いだっているんだよ!」

「そうよ! 雷帝様とかキューティとか雷帝様とかサイアスとか雷帝様とかウスピラとか雷帝様とか……」

「て、てめえら国外の連中に俺らの気持ちは判らねぇよ! さっさと出て行け!」

「ああ、出て行かせて貰うとも!」

 

 カッとなってついそう口にしてしまったシャイラ。だが、それが混じりっけのない本音だろう。すると、遠くにフットの姿が見えた。会議室から出てきて、今のこの喧騒を眺めに来たのだ。

 

「おっさん……」

 

 遠くにいる上にこの喧騒だ、聞こえるはずがない。だが、フットはまるでシャイラの呟きに応えるかのように、ゆっくりと視線をこちらに移してシャイラたちの姿を見つけた。彼女たちがどういう答えを出すのか判っていたのだろう。口に咥えていたパイプを離し、パクパクと口を動かす。実にシンプルな三文字の言葉。あばよ、と。

 

「悪ぃ、おっさん。世話になった」

「もっと早く会っていたら、貴方に惚れていたかもしれません」

「お前、老け専過ぎるだろ……」

 

 軽く手を上げてフットに合図を飛ばし、シャイラとネイは背中を向けてゆっくりと歩いて行った。その歩む先は、ウルザたちの待つ新組織。

 

「ちくしょう、あいつら調子に乗りやがって……ん?」

 

 シャイラとネイに蹴り飛ばされた男たちが憎々しげにその背中を睨んでいると、突如その間に割って入ってきた者がいる。倒れている自分たちを見下ろしてくる大男、それは最近レジスタンスに傭兵として入った冒険者だ。名前は確か、バーナード。

 

「な、何だよ……?」

「お前たちは腐ったミカンだ……」

「はぁ?」

 

 それだけ告げて、その傭兵はシャイラたちの後に続くように歩いて行ってしまった。今の口ぶりと歩んだ方向から見るに、彼も新組織に行くつもりなのだろう。

 

「あらあら、どうしましょうー」

 

 この喧騒に似合わぬ声を上げるおかっぱ頭の美少女が一人。ペンタゴンの制服ではなくフリフリのドレスを身に纏い、手にはその格好に似つかわしくないトゲ付きのモーニングスターを持っている。そんな彼女の姿を見つけ、同僚が声を掛けてくる。

 

「おーい」

「あ、インチェルちゃん」

 

 青髪にロングソード、それ以外は特に特徴のない地味目な美少女が近寄ってくる。

 

「どうする? モスナはペンタゴンだってさ。因みに、私はウルザ様のいる新組織」

「んー……わたくしも新組織にしようかなーって」

「やりぃ! んふーっ、またよろしくね、珠樹!」

 

 パンと手をならすインチェル。末端の兵たちは兵たちで、それぞれの思いの下動いていた。

 

「やれやれ、内部的にも革命になっちまったな……」

「その通りだな」

 

 シャイラとネイの背中を見送ったフットがふぅと煙を吐き出す。ここは他の場所より少し高い位置、皆が一望できる場所だ。去っていく者たちの中には見知った顔も多い。その背中を見送るにはうってつけの場所。すると、いつの間にか隣にネルソンが立っていた。先程までペンタゴンを去らぬよう演説を続けていたはずだが、いつの間にここにやってきたのか。

 

「今はロドネーとキングジョージに任せている。去っていく者たちを見届けたくてな」

「へぇ、そうですかい」

「提督!」

 

 二人で話していると、エリザベスが慌てた様子でこちらに駆けてきた。声に反応して振り返ると、その顔は青ざめている。

 

「も、申し訳ありません! 私が余計な事を口走らなければ……」

 

 どうやら、自分が出て行けと発言したのが引き金になったのだと責任を感じていたようだ。苦笑するフットと、スッとエリザベスの肩に手を乗せるネルソン。

 

「気にする事は無い。こうなったのは必然だ。あの場で言わずとも、いずれこうなった」

「提督……」

「ああ、これは必然だ」

 

 元々抱いていた理想が違う。故に、この分裂は必然だったのだろう。感慨深げに再度去りゆく者たちに視線を戻すと、そこにはセスナの姿もあった。野生の勘か、はたまたあちらも気に掛けていたのか、セスナが不意に後ろを振り返りフットと目があう。そして次の瞬間には、深々と頭を下げていた。シャイラとネイ同様、これまでの世話を感謝するように。そしてクルリと振り返り、スタスタと歩いて行く。その背中に、歩みに、迷いは無い。

 

「俺より先に死ぬんじゃねぇぞ、三人娘……」

 

 そう小さく呟きながら、フットは彼女たちを送り出すように煙を吐き出した。こうして、この日ペンタゴンは二つに分かれた。過激派であるペンタゴンと、穏健派である新組織、アイスフレームに。共にゼスの為にという思いを抱きながら、分かたれてしまった二つの道。彼らの道が再び交わる事があるのかは、誰にも判らない。

 

 

 

-ゼス 某所-

 

「(今回のクーデターは鎮圧する事が出来た……だが、何だこの胸騒ぎは……)」

 

 高層建物の上に佇む三つの影。その中央にいるのは、ゼス国王ガンジーだ。復旧していく町を見下ろしながら、ガンガンと警鐘を鳴らす胸騒ぎに不安を抱いていた。

 

「(まるでまだ、何かが起こるようなこの感覚は……)」

 

 

 

-魔人界 某所-

 

「部下からの報告です! なんか、ゼスでいくつも煙が上がっていたとか何とか。多分、人間同士で争っていたのかと」

 

 美少女か美少年か見分けのつかぬ者がそう報告を告げる。椅子に深く座った主はゆっくりと首を動かし、隣に控えていた長髪の男に見やる。目を閉じているのか開けているのか判らぬ細目に、長髪。物静かな佇まいのその男は主の視線を受け、自身の考えを告げる。

 

「内乱だとすれば、動くには絶好の機会かもしれませんね」

「そうか……ならば近々動くとするか……」

 

 透き通るような声を発する主。見目麗しきその姿は、魔人の中でも屈指という声も多い。だがその正体は、残虐にして怠惰、決して近寄ってはならぬ存在。

 

「そうですね、カミーラ様!」

 

 魔人四天王、カミーラ。

 

 




[人物]
ウスピラ・真冬 (5.5)
LV 32/42
技能 魔法LV2
 ゼス四将軍の一人にして氷の魔法団団長。リーザスに睨みを効かせるため動けないサイアスの分も働くべく、率先して最前線に立っていた。

カバッハーン・ザ・ライトニング (5.5)
LV 42/56
技能 魔法LV2
 ゼス四将軍の一人にして雷の魔法団団長。彼のいる方面に配置されてしまったレジスタンスはあまりにも運が悪い。

アレックス・ヴァルス (5.5)
LV 41/80
技能 魔法LV2
 ゼス四将軍の一人にして光の魔法団団長。実戦経験は他の四将軍に劣るが、その才能は随一。

ラグナロック・アーク・スーパー・ガンジー (5.5)
LV 49/99
技能 魔法LV2 剣戦闘LV1
 ゼス国王。自ら最前線に立ち、今回のクーデターを最小限の被害で抑える事に成功した。だが、言いしれぬ不安がその胸を占めている。

山田千鶴子 (5.5)
LV 40/50
技能 魔法LV2
 ゼス四天王の一人。クーデター発生前から発生後までまともに睡眠も取れぬほど働き尽くした苦労人。だが、肝心の貴族連中は多く取り逃がしてしまったため、歯痒く思っている。

マクシミリアン (5.5)
LV 18/20
技能 魔法LV1
 山田千鶴子の忠実な部下。約130話ぶりの登場。

エムサ・ラインド (5.5)
LV 28/40
技能 魔法LV2
 盲目の魔法使い。弟の病気も完治したため、現在ではゼス軍に所属している。氷の魔法団より声が掛かっているが、クーデターなどのお陰で治安部隊の手が足りないため、臨時でそちらに所属している。

ウルザ・プラナアイス (5.5)
LV 38/55
技能 剣戦闘LV1 弓戦闘LV1
 元ペンタゴン8騎士。以前より意見の食い違いはあったが、今回のクーデターでそれが膨れあがり、家族と共に離反。新たにアイスフレームという組織を立ち上げた。カリスマ性が高く、彼女がいるからアイスフレームに移ったという者も少なくない。

ビルフェルム・プラナアイス (5.5)
LV 23/25
技能 剣戦闘LV1
 元ペンタゴン8騎士。普段は笑顔を絶やさない男だが、今回のクーデターにその怒りが爆発。家族と共にペンタゴンとその道を違えた。

セドリック・プラナアイス
 ウルザとビルフェルムの父。貴族でありながらレジスタンスに所属しているという変わり者。離反に関しては前々から考えていたものであり、着実に手回しを進めていた。

コーネリア・プラナアイス
 ウルザとビルフェルムの母。私財を投げ打ってアイスフレームを設立した夫に文句の一つも言わず支え続けている良妻。

アベルト・セフティ (5.5)
LV 17/28
技能 剣戦闘LV1
 アイスフレーム工作員。事前に話はセドリックより聞かされており、ペンタゴンを離反。

ダニエル・セフティ (5.5)
LV 20/40
技能 暗器戦闘LV1 医学LV1
 元ペンタゴン8騎士。セドリックの考えに賛同し、アベルトと共にペンタゴンを離反。

キムチ・ドライブ (5.5)
 アイスフレーム孤児院長。フットがペンタゴンに残った事に最もショックを受けていた人物。彼ならば必ず来てくれると信じていた。

ネルソン・サーバー (5.5)
LV 6/17
技能 話術LV2
 ペンタゴン8騎士の一人。12月革命にばかり気を取られており、セドリックの根回しに気が付く事が出来なかった。とはいえこの男も人心掌握は相当の者。何とか離反者を半数ほどに留める事が出来た。

エリザベス・レイコック (5.5)
LV 14/28
技能 話術LV1
 ペンタゴン8騎士の一人。ネルソンの信奉者であるため、アイスフレームからは声が掛からなかった。勿論、例え声が掛かっていたとしても絶対に離反はしなかったが。

フット・ロット (5.5)
LV 22/31
技能 槌戦闘LV1
 ペンタゴン8騎士の一人。厳つい見た目とは裏腹に穏健派、過激派の双方から信頼が厚い常識人。アイスフレームの面々は必ず来てくれると信じていたが、ペンタゴンに残留。

キングジョージ・アバレー (5.5)
LV 30/42
技能 格闘LV1 プロレスLV1
 ペンタゴン8騎士の一人。エリザベス同様ネルソンを信奉しているため、ペンタゴンに残留。その戦闘力は随一であったため、アイスフレームとはしては出来れば来て欲しい人材であった。

ロドネー・ロドネー (5.5)
LV 13/29
技能 化学LV1
 ペンタゴン8騎士の一人。ペンタゴンの理想に興味は無いが、ネルソンとセドリックであったらネルソン派であったため、ペンタゴンに残留。フットが残ったことを少し意外に思っている。

ムカーダー (5.5)
LV 7/13
技能 剣戦闘LV1
 アイスフレーム戦闘員。フット憎しの一点からペンタゴンを離反し、アイスフレームへ所属する事になる。若干過激派。

シャイラ・レス (5.5)
LV 19/35
技能 剣戦闘LV1 シーフLV1
 アイスフレーム戦闘員。フットへの恩義はあったが、やはりペンタゴンの掲げる理想にはついていけず、ネイと共に離反。

ネイ・ウーロン (5.5)
LV 20/37
技能 シーフLV1
 アイスフレーム戦闘員。色々と思うところがあり、ネイと共にペンタゴンを離反。アイスフレームの重要な戦闘員である。

セスナ・ベンビール (5.5)
LV 22/28
技能 槌戦闘LV1
 アイスフレーム戦闘員。ウルザたちの理想を信じ、自らの意志でペンタゴンを離反する。その戦闘力はアイスフレームでもトップクラス。

珠樹
LV 9/17
技能 槌戦闘LV0 格闘LV0
 アイスフレーム戦闘員。元は貴族の生まれだが、家が没落。巡り巡ってレジスタンスへと流れ着いた。中々に壮絶な人生を歩んでいるが、当の本人は暢気であり特に気にしていない。意外にも力持ちであり、愛用のモーニングスターから放たれる一撃は強力なほか、怒らせると飛んでくるアイアンクローも恐ろしいとか何とか。名前はランス6に登場予定であった没キャラより。虎の穴様で発売されていた『ランスⅥラフ画集』にのみ載っているドマイナーキャラです。珠樹と聞いてすぐに彼女の顔が浮かんだ貴方は立派なランスマニアです。

インチェル・エアー
LV 10/14
技能 剣戦闘LV1
 アイスフレーム戦闘員。青い長髪の元気娘。特徴が無いのが特徴ですとは本人の談。ムードメーカーであり、仲の良い女性兵が多い。中でも珠樹とは親友の間柄。でも時々調子に乗りすぎて怒りのアイアンクローを食らっている。名前はランス6に登場予定であった没キャラより。『ランスⅥマニュアル』及び『ランスⅥラフ画集』にてその姿を確認出来ます。マニュアルに載っている分、珠樹よりは知名度が上だと思われる。

カミーラ
LV 120/220
技能 魔法LV2
 ケイブリス派に属するプラチナドラゴンの魔人。魔人四天王。アベル期に誕生した古参の魔人であり、歴史の教科書にもその名が載っているほど有名な最上級魔人。怠惰で退廃的。好きな者は美少年及び美青年であり、携える使徒も美形の者ばかりである。魔人ケイブリスから激しい求愛を受けているが、本人はケイブリスを嫌悪している。だが、それ以上にホーネットの事が気にくわなかったため、ケイブリス派に属している。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。