ランスIF 二人の英雄   作:散々

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※今話はこれまでで最もオリジナル色の強い(オリキャラ、オリ設定が多い)話となっております。これは悪魔界の設定が公式からあまり発表されていない事に起因するものであるため、ご理解いただけると幸いです


第159話 フェリス -君の名を呼ぶ-

 

-悪魔界-

 

「うわぁ、壮観……」

 

 小高い丘の上に腰掛けた梨夢がそう声を漏らす。丘の下には悪魔、悪魔、悪魔。地面を埋め尽くすような大群の悪魔がぞろぞろと歩いているのだ。この全てが、フェリスの刑の執行を見に来た悪魔だ。

 

「フェリスったら大人気で嫉妬しちゃうわー」

「心にもない事を。それに、フェリスのために集まった悪魔など一割もいないわ」

「あっと、フィオリ様。もういらっしゃっていたんですか!?」

 

 後ろから上司の声が聞こえたため、慌てて立ち上がる梨夢。振り返れば、そこにはいつもより少しだけ装飾が上品な上司、フィオリ・ミルフィオリが立っていた。第3階級という上級悪魔として、適当な格好では出て来られなかったのだろう。何せ今日はフィオリよりも更に格上の悪魔が多く集うのだ。

 

「この悪魔の殆どは三魔子がやってくるという報せを聞いたからやってきたに過ぎない。フェリス自身に興味のある悪魔なんて殆どいないわ」

「ですよねー。刑の執行の冒頭を見終わったら、ボレロ・パタン様は場所を変えて宴を開くって聞きますし。それに参加しないのは悪魔としてマズイですよねー」

 

 宴会好きの三魔子が次兄、ボレロ・パタンは刑の執行の観覧が終わった後、集まった悪魔たちを集めて宴を開くと宣言していた。元々ボレロは悪魔の間でも非常に慕われている存在であるため、噂を聞いた悪魔たちはこの場に集結。恐らくこれを目的に集まった悪魔が一番多い。

 

「あっ、あれは……フィオリ様、ちょっと失礼しますね」

「……ああ、そういう事。良いわ、私も一緒に行くから」

 

 悪魔の行列から少し離れた場所に佇む二人の悪魔がいる。その姿をその目に映した梨夢はニヤリと笑い、上司であるフィオリに一言告げてからその悪魔たちの方へと駆けていく。その梨夢の行動に一度ため息をついてから、フィオリもゆっくりと丘を降りていった。

 

「はーい! セルジィ、親友の刑を見に来たの?」

「梨夢……」

 

 岩場を背にして立ち止まっていたのは、セルジィとダリス。少しでも前の方の場所を取るべく悪魔たちがぞろぞろと歩いている光景からは少しだけ浮いていた。挑発的な笑顔でやってきた梨夢を適当にあしらおうとするが、その背後からフィオリが近づいてきている事に気が付きすぐさまセルジィが跪く。横に立っていたダリスは呆けた顔をしていたが、二テンポほど遅れてからフィオリの存在に気が付き跪く。

 

「あっ、フィ、フィオリ様、ご機嫌麗しゅう……」

「ああ、畏まらなくて良いわ。一々そんな事していたら、今日は一日跪きっぱなしよ」

「では……」

 

 スッと立ち上がり、フィオリに向かって静かに一礼するセルジィ。ダリスもそれを真似している中、梨夢がゆっくりと口を開く。

 

「ねぇ、今どんな気持ち? これから親友が他の悪魔たちに犯される気分は」

「何も……罪を犯したのはフェリスだから」

「刑執行の直前に乱入して、滅茶苦茶にしてやろうとか考えてないわよね?」

「まさか……そんな事が出来る訳ないでしょう」

「そうね。貴女の実力では十秒も持たないでしょうね」

 

 フィオリが冷酷にそう告げる。とはいえ、それは真実だ。第6階級であるセルジィは低級魔人と同格の力を持っているが、刑執行の場には三魔子や永久の八魔、第2、3階級の上級悪魔が挙って集まるのだ。十秒以内に殺されるというのは言い過ぎではない。小さく頷いた後、梨夢は懐から懐中時計を取り出す。

 

「刑執行まで後5時間。有力悪魔も続々と集まっていますね。挨拶回りしますか?」

「別に気にしなくて良いわ。あっちから来るでしょうし」

「そうだな。何せ貴様は当事者だからな」

 

 突如背後から響く野太い声に、フィオリ以外の悪魔たちが一斉に後ろを振り返る。唯一人フィオリだけがその声の主に気が付いていたのか、一度ため息を吐いてからゆっくりと振り返り口を開く。

 

「何をしに来たのかしら? パブズ」

「なに、貴様に近しい者がまた大罪を犯したと聞いたからな。どんな顔をしているのか見に来ただけだ」

「(また……?)」

 

 そこに立っていたのは、三人の悪魔。左に佇むのは若く聡明そうな人間型の男悪魔。男であるにもかかわらず、その金髪は腰の辺りまで伸びている。右に佇むのは赤い髪の女悪魔。同じく人間型であり、悪魔にしては珍しく鎧を着込んでいる。そしてその二人に挟まれるように立っているのは、優に3メートルはあるであろう大柄の悪魔であった。頭の上には王冠が乗っており、背には真っ赤なマント。ギラギラとした瞳に、白い髭。全身から威厳を放っているようなその佇まいに、ダリスは自然と息を呑んでいた。一体この悪魔は何者だ。だが、その答えは彼女が敬愛するセルジィが口にした。

 

「パブズ……魔将軍パブズ閣下ですか!?」

「ええ。滅多に人前には出て来ないけど、こいつがパブズよ」

「パブズ閣下と言えば……確か階級は……」

「我が主、パブズ閣下の階級は第2階級だ」

 

 横に佇んでいた金髪の男がそう口にする。と同時に、パブズが大声で笑い出した。

 

「かっかっか!! 久しいな、カラーマニアのフィオリよ!!」

 

【第2階級悪魔 『魔将軍』 パブズ】

 悪魔界では三魔子に次ぐ広大な領地を持つカリスマ。剛胆にして強欲。

 

 

「(カラーマニア……? そういえば、フィオリ様の部下にはカラー出身の悪魔が多い……)」

 

 ダリスがフィオリの部下の悪魔を思い出しながら眉をひそめる。その反応に気が付いたのか、こちらを見下ろしていたパブズはニヤリと笑って言葉を続けた。

 

「なんだ? 貴様らは知らんのか? 一部では有名な話だ。カラーマニアの変わり者、フィオリ・ミルフィオリの過去はな」

「フィオリ様の過去……?」

「パブズ。くだらない話は止めなさい」

 

 いつもと変わらぬ、されどどこか怒りを宿しているように感じられる口調でフィオリがパブズを止める。だが、その反応を楽しむかのようにパブズは言葉を続けた。

 

「かつてフィオリが第7階級の頃、こやつには敬愛する先輩悪魔がいた。名はレンリ。カラー出身の第6階級悪魔だ」

「レンリ……?」

「……っ!?」

 

 聞き覚えの無い名前にセルジィが眉をひそめている横で、梨夢は何かに思い至って目を見開いた。

 

「確かそれって、フェリスの前に罪を犯した……」

「そう! 此度と同じように人間との間に子を成し、悪魔レンリは裁かれた。同時に、カラー出身の悪魔は悪魔界で肩身が狭くなった」

「元々純粋な悪魔と違い、カラー出身の悪魔は言わば外様。彼女らを軽視する風潮は昔からありましたからね」

「そこに大罪人。そうなっても仕方ありません」

「うむ、その通りだ。マック、ミン」

 

 パブズの言葉に左右に控えている男女の悪魔が続く。確かに、悪魔界ではそれ程大っぴらにではないが、カラー出身の悪魔を軽視する風潮がある。ミンと呼ばれた女悪魔が言ったように、彼女らは純粋な悪魔では無いからだ。だが、その風潮は近年ではあまり見られない。セルジィが生まれるよりも前はもっと酷かったと聞くが、とある上級悪魔が彼女たちを囲い、魂集めに尽力させ結果を出し、その地位を向上させたと噂には聞いたことがある。

 

「まさか……カラーの地位を上げた悪魔というのは……」

「古い話よ」

 

 腕組みをして吐き捨てるフィオリ。そのフィオリを小馬鹿にするように、周囲にパブズの笑い声が響く。

 

「何が古い話なものか。貴様は今でもレンリの影を追っているに過ぎん。かはははは!!」

「……パブズ、それ以上挑発をするというのなら、私は全面戦争も辞さないわよ?」

「くくく、貴様が儂と戦って勝てるとでも思っているのか?」

「試してみる?」

「控えよ! パブズ閣下は第2階級。貴様は第3階級であろうが!」

 

 バチバチと睨み合うフィオリとパブズの間にミンが割って入ってくる。主を挑発されて腹が立ったのだろう。だが、ミンが言葉を言い終えた瞬間フィオリが地面を勢いよく踏み抜いた。ビシリと大きく地面が割れ、小さな振動が起こる。同時に、フィオリから発せられる強大な殺気。彼女の背後に大きな影が確かに見える。ダラダラとミンが汗を掻き、行列を成していた悪魔たちもフィオリの殺気に気が付いて遠目にこちらを見てくる。

 

「貴女こそ控えなさい、第7階級。一体誰に向かって口を聞いているの?」

「あ……う……」

「止めい。儂の部下を威圧するな」

「なら、お山の大将が出てくる?」

「そうだな……それも一興か……」

「そこまでにしておきましょう、お二人共」

 

 若い男の声が周囲に響く。それはパブズの部下であるマックの声ではない。睨み合っていたフィオリとパブズが声のした方向に視線を向けると、そこに立っていたのは美形の男悪魔。人間型ではあるが、頭には角が二本生えている。手にはまるで血の色のように透き通った赤い鎌を持っている。

 

「キラか……」

「どういうつもり?」

「もうすぐ三魔子様も見られます。このような日に争い事を起こしては、お二人も裁かれてしまいますよ」

「……ふん、興が削がれた。行くぞ、マック、ミン」

「はっ!」

 

 大きなマントを翻しながらパブズがこの場を離れていく。後に続くマックとミン。その三人の背中を見送りながら、フィオリがジロリとキラを睨み付ける。

 

「……余計な真似をと言いたいところだけど、礼を言っておくわ。貴方の言うように、今日諍いを起こすのは得策では無い」

「それはどうも」

「(悪魔キラ……)」

「(こいつ……第4階級でありながらフィオリ様と対等に……)」

 

 やってきた悪魔の素性を判っていないダリスと違い、セルジィと梨夢は各々驚いていた。第4階級でありながら、第3階級のフィオリと対等に話している。そして、それをフィオリも許している。いや、振り返って見ればパブズも彼の態度を許していた節がある。

 

「(これが……昼行灯と呼ばれる男か……)」

 

【第4階級悪魔 『昼行灯』 キラ】

 女の子モンスターを愛でる美形悪魔。上級悪魔への昇進を断り続けている。

 

 

「……少し頭を冷やしてくるわ」

「あっ、それじゃあ私も」

「来なくていいわ」

 

 梨夢についてくるなと言い放ち、フィオリがこの場から離れていく。一人になりたかったのだろう。パブズとの諍いだけではない。彼女が敬愛していたレンリという悪魔の事を思い出してしまったのだから。

 

『後悔は無いの!? レンリ!』

『……無いわ。あの娘を産んだ事に、後悔なんてない』

 

 頭を過ぎるあの日の出来事。刑の執行を今正に受けようとするレンリが清々しい顔で口にした言葉は、先日フェリスが宣ったのと同じ言葉。

 

「本当に……カラーの悪魔はいつもいつも……」

 

 拳を握りしめながら、フィオリはこの場を離れていくのだった。

 

【第3階級悪魔 『カラーを統べる者』 フィオリ・ミルフィオリ】

 カラー出身悪魔の地位を向上させた功労者。カラー出身悪魔の八割以上を囲っている。

 

 

「…………」

「……キラ様。一つお聞かせ願えますか」

「……なんですか?」

 

 フィオリの姿が見えなくなり、無言で立ち去ろうとしたキラの背中をセルジィが引き留める。振り返り、何が聞きたいのかと問うキラ。

 

「レンリという悪魔を知っていますか?」

「……ええ。知っていますよ」

「罰を受けた彼女はその後、どうなったのですか?」

「……刑に耐えきれず、途中で亡くなったと聞いています」

「……!?」

 

 その言葉は、セルジィの頭に重く響いた。かつて刑の執行が成された悪魔は途中で死んだという。では、フェリスはどうなるのか。警鐘のようなものが頭の中に響く。このままで本当にいいのか。

 

「(お姉様……はっ、こういう時は大概梨夢の奴が挑発を!)」

 

 息を呑むセルジィを心配そうに見守っていたダリスだが、梨夢の存在を思い出してキッと睨み付ける。だが、その梨夢はフィオリの去った方向を見ながらぼうっとしていた。普段ならばセルジィを挑発してきていただろうに、随分と珍しい姿である。

 

「(……フィオリ様。私は貴女の事……少し、軽蔑しました)」

 

 心の中でそう吐き捨てる梨夢。彼女は先程聞いたフィオリの過去がどうしても理解出来なかったのだ。敬愛する悪魔がカラーだったから、カラー出身の悪魔を救う。それは果たして悪魔らしい行動と言えるのか。否。悪魔ならば、全てを蹴落とさなければならない。仲間も部下もいらない。全てを蹴落として、目指せるべき最高の到達点へ。それが悪魔だ。だからこそ、梨夢は自分の上司が自らの考える悪魔像から外れた事が許せなかったのだ。

 

「(やっぱり、私が第2階級の長になるしかないわね……)」

 

 チラリと懐中時計に目を落とす梨夢。刑執行まで、後4時間半。

 

 

 

-ゼス 国境付近-

 

「うわっ、なんだ!?」

「超特急うし車……? あんな高いもん乗るなんて、どこのお大臣だ?」

 

 街道をうし車が駆けていく。そのスピードは普通のうし車の比ではない。時速100km以上は優に出ており、人とぶつかったら間違いなく即死ものだ。だが、そのうし車の運転手はすいすいと人を避けながら街道を駆けていく。

 

「あの悪魔の通路というのは凄いわね。ここまでショートカットが出来るなんて……だけど、このままでは到底間に合わないわよ」

 

 銀髪の美女が客席に向かってそう話しかける。そこに座っているのは、AL教の神官。こんな高級うし車に乗っているとは思えぬほど若い女性だ。その女性の背後に控えるのは、なんと悪魔。彼が指示した先にあった洞窟をうし車で越えると、かなりの距離をワープしたのだ。どうやら悪魔の通路という特殊な通り道らしい。

 

「国境を越えた先にもう一つ悪魔の通路があるわ。そうよね、ダ・ゲイル?」

「んだ、ロゼ様。うし車でも入れる通路がもう一つある。それさ使えば、数十キロはワープ出来る。それと、その通路ば抜けたら、おらは一旦悪魔界に戻るだ。刑の執行に参加しない訳さいかねぇだ」

「了解。悪魔の通路を教えてくれてありがとう。助かったわ」

 

 乗っていたのは、ロゼとダ・ゲイル。彼女たちはうし車屋を雇い、ある場所を目指していた。

 

「……それでもギリギリね」

「死ぬ気で走って! 間に合ってくれたら、料金は上乗せしてもいい!」

「……そこまで言われたら、間に合わせない訳にはいかないわね。JAPAN出身、柊絵理華。てばさきで鍛えたこの運転技術を見せてあげるわ!」

 

 巧みにうし車を操り、カーブを曲がっていく。ガタガタと揺れる車内の中、ロゼは頭を抱えながら小さく声を漏らしていた。

 

「何とか日が変わるまでに、アイスの町へ……」

 

 刑執行まで、後3時間。

 

 

 

-悪魔界-

 

「…………」

 

 ここは刑執行の最前列。行列を成していた悪魔たちもここまではやってこられない。この最前列は、上級悪魔用の場所だ。後方にずらりと悪魔たちが並んでいるのをチラリと見ながら、フィオリは刑が執行される少し盛り上がった岩場、まるで見世物の舞台のような場所を眺めていた。

 

「思い出すのか?」

「……ロック」

 

 スッと隣に腰掛けてきた者がいる。チラリと視線を向ければ、それは大きな鋼鉄の兜を被った女性型悪魔。低級悪魔は彼女の存在すら知らないだろうが、自分は知っている。彼女こそ永久の八魔が一人、第1階級悪魔のロックだ。

 

「ふふ。ワシを呼び捨てにする第3階級なぞ、お主くらいなものじゃぞ」

「何をしに……って、決まっているわね。でも、貴女はこういう見世物的なのは嫌いじゃなくて?」

「うむ、納得がいかん。だから先程レガシオの馬鹿に抗議してきた」

「結果は?」

「10分ほど殴りあって負けた。最後は腹を槍でぶっ刺された。はっはっは!」

「貴女らしいわね」

 

 クスリと笑うフィオリと、その笑顔を見てどこか満足げに笑うロック。元々永久の八魔の中では比較的他の悪魔たちの前に姿を現すロック。フィオリとも旧知の中であり、当然かつてあったレンリの刑執行の事も知っていた。だからこそ、刑執行直前であるこのタイミングでフィオリに話しかけてきたのだ。先程のパブズとは違い、彼女を心配しての行動。

 

「負けたからには素直に従うしかない。黙って刑執行を見守る事にするかのう」

 

【第1階級悪魔 『帰依を司る土の八魔』 ロック】

 永久の八魔。八体の中では最も面倒見が良く、最も悪魔たちから慕われている地仙娘々。

 

 

 顎に手をあてながら舞台を見るロック。そしてゆっくりとフィオリに視線を向ける。

 

「お主は納得しておるのか?」

「ええ。罪を犯したのはフェリス……今回罪を犯した私の部下の名前ね」

「なぁに、それくらいの予備知識くらいは持っておるわい。ふむ、そうか……まあ、お主が納得しておるならワシはこれ以上何も言わん」

 

 フィオリから視線を外し、舞台に視線を戻すロック。そのまま言葉を続ける。

 

「生まれた子はどうなる?」

「……今、私の部下は満員でね」

「ふむ、そうか……」

「でも、今夜の刑の執行の後でフェリスは除籍させるつもりだから、一つだけ空きが出来るのよね……」

「素直じゃないのう」

 

 しばしの静寂の中、二人とも黙って舞台を眺めていた。しかし、その静寂も長くは続かない。気が付けば、この上級悪魔しかやってこられない場所も次第にざわざわとしてきていた。他の上級悪魔たちが次々と集ってきていたのだ。遠目に先程諍いを起こしかけた魔将軍パブズの姿が見える。彼の周りには多くの悪魔が集まっていた。パブズを見ているのに気が付いたのか、隣であぐらを掻いているロックが声を掛けてきた。

 

「魔将軍パブズ。お主とは犬猿の仲じゃが、奴には悪魔を惹きつけるカリスマがある。随分とまあ悪魔を侍らしておるのう」

「あの周りにいる悪魔、つついたら上級悪魔以外も出てくるわよ。この場所には上級悪魔しか入れないはずだから、その辺で罪になるんじゃない?」

「まあ、黙認じゃろ。他の悪魔も大概数体は引き連れておるよ。お主は誰も連れて来なかったのか?」

「一人だけ。第5階級の梨夢って娘をね。もう少ししたら来るはずよ」

「なんじゃ。お主もパブズの事は言えぬではないか」

 

 かんらかんらとロックが笑い、フィオリも苦笑でそれに返す。そんな中、ロックが何かを見つけて言葉を続けた。

 

「見よ、フィオリ。パブズよりも多くの悪魔を侍らせているのがおるぞ」

「ん……あれは……」

 

 ロックがくいと首で示した先には、黄金の甲冑を纏った人間型の男悪魔と、白装束を纏った黒髪の女悪魔が立っていた。その周りには多くの悪魔。しかも驚くべき事に、その悪魔は全て第2、第3階級の上位悪魔だ。となれば、彼らを侍らせられる悪魔の正体など決まっている。

 

「永久の八魔……?」

「うむ、お主も見るのは初めてじゃったか? 男の方がガルギメス、女の方が光輝聖天じゃ。滅多に姿を現さないあの二人が来ているのを見ると、やはり今回の刑は特別じゃのう」

「(集まっているのは私よりも年上の悪魔ばかり……なるほど、彼らはあの二人の存在を知っているのね)」

 

【第1階級悪魔 『戦乱を司る無の八魔』 ガルギメス】

 永久の八魔。一度剣を抜けば生き残れる者無しと言われ、「黄金の死神」の通り名を持つ。

 

【第1階級悪魔 『慈愛を司る光の八魔』 光輝聖天】

 永久の八魔。平時は悪魔界の遙か上空に身を置き、天空を守護している女王。

 

 

「お主も後で宴の時に紹介してやろう。どちらもまだ話の通じる八魔じゃぞ」

「話の通じない八魔ってのは誰の事だか聞かせて貰いたいわね」

 

 背後から声を掛けられたと思うと、二人を影が覆う。何か巨大な物体が背後にいて、光を遮ったのだ。だが、ロックはその者の接近に気が付いていたのか、平然と言葉を返す。

 

「お主らとサイコとリグルの三体じゃよ」

「心外ね。私たちじゃなく、アルケミカルをそこにいれなさいよ」

「奴はワシとは仲が良いからのう」

 

 フィオリが上を見上げる。巨体のパブズですら、この者の前では小さく見える。背後に立っていたのは、20メートルはあるだろう化け物。顔はうしに似ているだろうか。真っ赤な体に鎧を身に纏い、鼻息荒くこちらを見下ろしている。そして、その肩の上には黒髪の少女。先程から話しかけてきているのは彼女だ。

 

「紹介しよう。こ奴等は八魔の一人、インフェルノロードじゃ。こっちはワシの友人のフィオリ・ミルフィオリ。第3階級悪魔じゃ」

「…………」

「よろしく」

 

 フィオリが無言で跪き、そのフィオリを遙か上空から見下ろしながら少女が声を掛けてくる。触れば折れてしまいそうな華奢な体をしているが、彼女は紛れもなく八魔の一体なのだ。

 

【第1階級悪魔 『破壊を司る闇の八魔』 インフェルノロード】

 永久の八魔。冥府の守護者、怒れる暴君。巨牛と少女、二体で一体の存在。

 

 

「引きこもりのお主らが出てくるなんて珍しい……むっ」

「……来たわね。そろそろ始まるわ」

 

 フィオリでは感じ取れなかった何かを二人が感じ取る。これが第1階級と第3階級の違いという事か。その直後、背後に連なっている悪魔たちがまるで波が引くように左右に割れる。ポッカリと空いた真ん中の通路を、ゆっくりと歩いてくる三体の悪魔。瞬間、フィオリやロック、インフェルノロードも含め全ての悪魔がその場に跪いた。彼らを知らぬ悪魔などいない。彼らに敬意を覚えぬ悪魔などいない。頭の左半分から女性が生えている異形の人間型悪魔、巨漢で酒を呑みながら歩いている獣人型悪魔、人が想像する悪魔の姿を模したかのような悪魔らしい悪魔。彼らこそが、悪魔王に代わり悪魔界を統べる存在。

 

「おいおい、そんなに畏まるなよ。さっさと終わらせて宴を楽しもうぜ!」

「馬鹿者。メインは宴ではなく、刑の執行の方だ」

「そう……それこそが、我が父の望むもの……」

 

【特階級悪魔 『三魔子長兄』 プロキーネ】

 三魔子。三魔子最強。悪魔に階級制を用いた絶対的な存在。

 

【特階級悪魔 『三魔子次兄』 ボレロ・パタン】

 三魔子。大酒飲みの面倒くさがり屋。最も悪魔に慕われている存在。

 

【特階級悪魔 『三魔子末弟』 レガシオ】

 三魔子。悪魔界の財宝を管理する。戒律に煩く、法を整備する存在。

 

 

 悪魔たちが左右に分かれたため、刑が執行される舞台まで真っ直ぐと開かれた道を三魔子がゆっくりと歩いて行く。跪いていない者は誰もいない。彼らが最前列の席に辿りつくまで、立ち上がる者などいないはずであった。だが、その時一人の悪魔が立ち上がり、三魔子に向かって駆けていく。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

「……!?」

「あの馬鹿……」

 

 その姿を見たフィオリは目を見開き、同様に悪魔たちの行列の中にいたセルジィが声を漏らす。三魔子に向かっているのは、フェリスが産み落とした子供だ。その手には、ボロボロの剣が握られている。瞬間、先程までフィオリの側に立っていた二体の悪魔が姿を消した。

 

「お前らがかーちゃんを!!」

「…………」

「ほぅ……」

「そういう事か……」

 

 三魔子の三人が興味深げに向かってくる子供を見ている。気が付いたのだ、この子供が罪人フェリスの息子である事を。フェリスの息子は目を血走らせながら全力で駆けていき、高々と掲げた剣を目の前の三魔子に向かって振り下ろす。だが、その刃が三魔子に届く事はなかった。

 

「あ……」

 

 振り下ろした刃はロックの鉄拳によって折られ、首筋にはガルギメスの剣が添えられている。光輝聖天がいつでもレーザーとして放てる光の魔力の塊を両手で作り終えており、インフェルノロードの巨大な両手が頭をいつでも潰せるようにすっぽりと包み込んでいる。いつの間にか目の前に現れていた八魔が、フェリスの息子の命をいつでも奪える体勢になっていた。

 

「…………」

 

 先程までフィオリと笑い合っていたロックが冷酷な瞳でフェリスの息子を見る。その瞳にフェリスの息子はダラダラと汗を掻き、身動きが取れなくなってしまっていた。殺される。齢三ヶ月にして、少年は死を間近に感じ取っていた。だが次の瞬間、レガシオの声が響き渡る。

 

「控えよ。別に我らに襲い掛かってはいけないという法はない」

 

 レガシオがそう言い終えると同時に、永久の八魔たちが一斉にフェリスの息子から離れる。そして、呆然としているフェリスの息子に向かってレガシオがゆっくりと歩みを進めた。周囲の悪魔たちは息を呑む。これからレガシオは何をするのか。あの子を殺すのか。はたまた別の思惑があるのか。

 

「お前が件の小僧か……?」

「…………」

 

 レガシオの問いかけに応えず、少年はキッと三魔子を睨み付ける。その行動にレガシオは内心驚いていた。たった今この子は殺されかけたのだ。永久の八魔に囲まれ、死を感じ、恐怖していたのが見て取れた。だと言うのに、もうこのような目つきが出来るというのか。何という精神力。何という意志の強さ。到底子供とは思えぬ。

 

「なるほど、良い目をしている」

 

 レガシオはそう言いながら、ニヤリと笑って十本ある腕の一つが持っていた剣を少年に向かって投げた。真っ直ぐと地面に突き刺さった剣を見て少年は呆然としているが、周囲の悪魔たちは一様に驚いている。この剣はただの剣では無い。悪魔界の財宝であり、武器コレクターでもあるレガシオが愛用する魔剣の一つ。

 

「グラムだ。お前にくれてやる。その剣は持ち主の怒りや悲しみによって威力が増す」

「……!?」

 

 怒りや悲しみで威力を増すと聞いた少年はすぐさまグラムと呼ばれた剣を抜いた。歪に曲がった紅の長剣。禍々しい何かが感じ取れるが、目の前の三魔子を倒して母を救い出せる可能性があるのならば何でも良かった。だが、少年の身長以上の長さはあった長剣が、彼が手に取った瞬間するすると縮んでいってしまった。

 

「何だこれ!?」

「くくく……小僧、お前の怒りや悲しみはその程度だという事だ」

「ふざけるな!! おいらの怒りはこんなもんじゃない!! かーちゃんを悲しませたお前らを絶対に許さないぞ!!」

「ならば、その怒りを更に高めていつの日か私を殺しに来い。グラムがどこまで成長するか、私を倒せるまでに至っているか、楽しみに待っているぞ」

 

 レガシオが五つある右手の内の一本を伸ばし、少年の頭を掴んでグイと持ち上げる。少年は手に持ったグラムでレガシオの腕を斬りつけるが、硬い皮膚に覆われたレガシオの腕には傷一つ付けられなかった。そしてそのまま、レガシオが少年を遠くへ放り投げる。上級悪魔たちのいる最前列の方向だ。

 

「ほうら!」

「うわぁぁぁぁ!」

 

 絶叫と共に少年が地面に勢いよく落ちた音が聞こえた。死んだりするような勢いではなかったが、それなりに生傷は負っているだろう。

 

「いきなり襲い掛かってきた事への罰は、母の刑執行を最前列で見る事とする!」

 

 そう叫ぶレガシオ。これは彼なりの配慮だ。いくら法が無いとは言え、三魔子に斬り掛かった者を無罪放免という訳にはいかない。周りの悪魔たちが絶対に納得しない。だからこそ、母の刑を間近で見るという罰を課したのだ。そのまま兄弟たちの下へと戻っていき、再び三人が最前列に向かって歩き出す。そんな中、次兄のボレロ・パタンが笑いながら話しかけてきた。

 

「珍しいな。気に入ったか?」

「まあな。いずれ私の前に現れるか、その前に朽ち果てるか……」

「ふっ……」

 

 レガシオの言葉を聞き、珍しく長兄のプロキーネが面白そうに笑みを溢した。その笑いが気になったレガシオは思わず尋ねる。

 

「甘いと思っているのか?」

「いや……」

 

 弟の問いを否定し、プロキーネはかつて自分が人間の少年に放った言葉を思い出していた。

 

『貴様の命は見過ごしておいてやろう。拾った命で生を満喫すると良い。それでも……もし私が許せなければ、憎しみが消えなければ、命を賭して殺しに来い』

 

「兄弟というのは似るものなのだな、と……」

「……?」

 

 言葉の意味が判らず眉をひそめるレガシオをよそに、歩みを続けるプロキーネ。そして三魔子が最前列に到着すると同時に、光輝聖天がパチンと指を鳴らした。すると、三人の背後に光輝く椅子が生み出される。そのままその椅子に腰掛ける三人。それを見届けた悪魔たちは跪くのを止めて一斉に立ち上がり、見物席へと戻っていった。フィオリもゆっくりと歩みを進める。今いる場所でなく、ある場所へと位置を変えるために。そこに、梨夢がやってくる。

 

「遅くなりました、フィオリ様! あれ? 場所を変えるんですか?」

「ええ。もう少し前の方が見やすいでしょう」

「そうですね。出来ればフェリスの刑執行は特等席で見たいですし」

 

 ニッコリと微笑む梨夢。そのまま懐中時計に目を落とす。時刻は23時40分。もう間もなくだ。

 

「罪人が連れて来られたぞ!!」

 

 どこの誰だか知らない悪魔のそんな声が響き渡った。一斉に視線が後方へと向く。先程三魔子が通ってきた道に、今度はまた別の三体の悪魔が立っていた。全身灰色の悪魔と全身金色の悪魔が左右に立ち、中央にいる悪魔の手に巻かれた鎖を持っている。彼らはレガシオの部下で法に携わる悪魔。その名をザ・ラックとゴルキウスという。そして、彼らに挟まれるように立つ悪魔が今宵の主役。

 

「あれが、罪人フェリス……」

 

 集まった悪魔の中には彼女と面識がない者も多く、初めてその顔を目の当たりにする悪魔たちが興味深げに声を漏らす。あれが悪魔の禁忌を破った大罪人、フェリスなのだ。

 

「行くぞ」

「…………」

 

 ゴルキウスの言葉に無言で頷き、三人がゆっくりと舞台に向かって歩いて行く。三魔子の時同様、悪魔たちは左右に分かれて道を開ける。だが、あの時と違うのは突き刺さるような視線と罵声。

 

「悪魔の面汚しが!!」

「フィオリ様にどれだけの迷惑を掛けたと思っている!」

「お前の乱れる様、たっぷりと観賞してやるぜぇ!」

 

 集った悪魔の中には当然フェリスに憤慨している者も多い。罵声を浴びせる者、哀れんだ瞳で見送る者、興味本位の視線を向ける者、刑執行自体には興味が無く隣の悪魔と談笑している者。そんな悪魔たちの間を、フェリスはゆっくりと歩いて行く。ふと、ピンク色の髪が目に映った。少し先に立っている悪魔の者だ。あれは親友のセルジィ。

 

「…………」

「…………」

 

 だが、言葉は交わさない。交わす訳にはいかない。自分と友人であるという事だけで、他の悪魔からちょっかいを出されかねないのだ。これ以上迷惑を掛ける訳にはいかない。無言で横を通り過ぎようとしたフェリスだったが、その瞬間ポツリとセルジィが言葉を漏らす。

 

「息子さんは、私が何としてでも守るから……」

「……ごめん……ありがとう……」

 

 フェリスがそう言葉を返すと同時に、それを責めるようにザ・ラックが鎖を引っ張りフェリスに前進を促した。引っ張られるように歩みを進めるフェリス。その背中を悲しげな瞳で見送るセルジィ。彼女に出来る事は、もう何も無い。

 

「かーちゃん! かーちゃぁぁぁぁん!! ちくしょう、どけ、どいてくれ!!」

 

 最前列までやってきたフェリスの耳に我が子の声が聞こえてくる。来てしまったのか。出来れば来て欲しくなかった。まだ幼いあの子がこれから執行される刑を見るのは、あまりにも重すぎる。顔を俯け、我が子の声に応えることなくフェリスは歩みを進める。ゆっくりとした歩みであったため、10分近く掛かったであろうか。ようやく舞台にまで辿りついたフェリスは鎖を外され、舞台に上がることを促される。自由になったフェリスだが、逃げる事など出来るはずがない。目の前には三魔子、永久の八魔、上級悪魔たち。何とも豪華な顔ぶれだ。

 

「…………」

 

 無言でフェリスが舞台に上がっていく。少しせり上がった場所であるため、集った悪魔たちの顔が良く見える。叫んでいる我が子、その側には上司のフィオリと梨夢の姿。少し離れた場所にセルジィとダリスがいる。そして舞台の側、上級悪魔とは違う下卑た顔の悪魔たち。彼らがこれから自分を犯す者たちだろう。そんな風に舞台上から悪魔たちを眺めながら、フェリスはどこか落ち着いていた。これは、諦め。既に自分に出来る事は何も無い。だからこそ、全てを受け入れる。

 

「ほう……この状況であんな顔が出来るのか。良い女じゃねぇか。抱いておきたかったな」

 

 最前列で椅子に座っていた三魔子の次兄、ボレロ・パタンがそう言葉を漏らす。彼が気になったのはフェリスの顔。諦めているからこそあの顔なのは理解出来る。だが、そう簡単にあの表情は作れない。

 

「うふふ……もうすぐ、もうすぐ……」

 

 梨夢がテカテカとした顔で舞台と懐中時計を交互に見やる。もう三分を切った。間もなくフェリスは悪魔としての尊厳を奪われる。これ程楽しい事は無い。

 

「…………」

 

 そして、悪魔たちを見回していたフェリスが舞台の上でゆっくりと瞳を閉じた。今日、自分は悪魔として終わる。その先に待っているのは発狂死かもしれない。これが、悪魔フェリス最後の瞬間だ。そんな中、彼女の頭の中に走馬燈のように思い出が過ぎる。

 

『まあ、下僕のように扱う気もないから心配しなくて良いぞ』

 

 初めはあいつも自分の事はただの使い魔としてしか見ていなかった。魔人に対抗しうる戦力。それだけだったはずだ。

 

『その羽で空を飛ぶ事は出来るか? 頼みがある。俺をあの場所まで運んでくれ』

『元々全ての魔人と仲良くできるとは思っていないさ。奴は倒すべき魔人だった、それだけだ』

『ほら。そんな血まみれじゃ、せっかくの美人が台無しだ』

 

 幾度となく死線を共にくぐり抜けた。いつしか相手へ抱く感情が変化していった。ただの主ではない。共に肩を並べて歩んでいける存在。

 

『俺はもう、フェリスを使い魔として見ていない。大切な仲間だ。だからこそ、放ってはおけない』

 

「どうしてだろうな……最後の最後で思い出すのは、お前の事ばっかりだ……」

 

 悔しそうに、だがどこか嬉しそうにフェリスがそう言葉を漏らした。それと同時に、ゴルキウスの声が響き渡る。

 

「さあ、間もなく時間だ!!」

 

 

 

-アイスの町 ルーク宅-

 

「ざっちゃん。もう遅いからそろそろ寝ろ」

「はーい、なの!」

 

 ブラックソードの手入れをしながらルークが魔法ビジョンを見ているざっちゃんに向かって声を掛ける。時刻は間もなく0時。そろそろ自分も床につこうかと考えていると、何者かが家のドアを激しく叩いてきた。来客だ。しかし、こんな時間に一体誰が。

 

「出る?」

「いや、俺が出よう。危ない人間だったらマズイからな」

 

 訪問者の対応をしようとするざっちゃんを制止し、ルークがブラックソードを腰に差してドアの方へと進んでいく。未だドアはけたたましく叩かれている。眉をひそめながらゆっくりと鍵を開けると、勢いよくドアが開かれた。そこに立っていたのは、見知った顔。

 

「ロゼ!? どうした、こんな時間に……」

「フェリスを呼び出して!!」

 

 ルークの言葉を遮るようにロゼが叫ぶ。一体何事か。何故フェリスなのか。

 

「フェリス……?」

「いいから早く! フェリスが大変なの! このままじゃ手遅れになる!!」

 

 真剣な表情でそう叫ぶロゼを見て、ルークも眉をひそめて真剣な表情を作る。何が起こっているのか判らない。だが、ただ事ではない。フェリスに何か窮地が迫っている。そしてそれは、一刻を争う事態。

 

「っ……」

 

 ルークが右手を前に出す。そしてその瞬間、何故かフェリスとの思い出が頭を過ぎった。

 

『忠実な下僕として仕えさせていただきます』

 

 初めはただの使い魔としてしか見ていなかった。偶然にも手に入れる事の出来た魔人に対抗しうる戦力。それだけだった。

 

『人間と魔人。神と悪魔。対極に位置する関係だ。分かり合える事なんてない』

『この女を殺さなきゃ気が済まない。最後まで戦わせろ』

『何ヶ月も人の事呼び出さないで……勝手に行方不明になって……カスタムの人間たちやリーザスの人間たちがどれだけ心配していると思っているんだ!?』

 

 幾度となく死線を共にくぐり抜けた。いつしか互いに相手へ抱く感情が変化していった。ただの使い魔ではない。背中を任せられる掛け替えのないパートナー。

 

『俺はもう、フェリスを使い魔として見ていない。大切な仲間だ。だからこそ、放ってはおけない』

 

 あの時誓った。フェリスを放ってはおかないと。突き出した右拳を強く握りしめ、大きく声を発する。それはまるで、すんでの所で呼び出す事の出来なかったあの日をやり直すかのように。

 

「来い! フェリス!!!」

 

 

 

-悪魔界-

 

「ぬっ!?」

「これは……」

「なに!? なんなの!?」

 

 今正に舞台に上がってフェリスを犯そうとしていた悪魔たちの歩みが止まる。観覧していた悪魔たちが目を見開く。突如フェリスの前にバチバチと黒い塊が現れたのだ。悪魔ならば誰しもが知っている。あれはワープゲート。使い魔契約を結んだ悪魔が主に呼び出された際、現れる魔力の塊だ。

 

「あっ……」

 

 自然とフェリスの瞳から涙が零れていた。本来、複数の主を持つ使い魔はワープゲートに飛び込んでみなければ誰が呼び出したのか判らない。玄武城にてランスに呼び出された際、フェリスはこれが原因でランスに失言をしている。そう、飛び込んでみなければ判るはずがないのだ。それなのに、フェリスには判る。今自分を呼び出しているのが誰なのかが。

 

「ルー……ク……」

 

 涙が止まらない。諦めていたはずの心が騒ぎ出す。生きたい。まだ自分は生きたい。生きて我が子の成長を見たい。あいつが夢を叶える姿を見たい。

 

「わっ!?」

 

 その時、最前列でフェリスの姿を見ていた彼女の息子がドンと背中を押された。体勢を崩しながら一歩前に出る。一体誰が。そう思って振り返った息子の目に飛び込んで来たのは、一度しか会ったことのない母の上司の姿。その彼女がクイと首を動かす。行けと言っているのだ。瞬間、少年は母に向かって走り出していた。

 

「かーちゃん!!」

 

 涙でぼやけた視界に映るのは、こちらに向かって駆けてくる我が子の姿。気が付けば、フェリスは手を伸ばしていた。

 

「おいで!!」

 

 伸ばされた手をグッと掴み、我が子の体を抱き寄せてワープゲートへと駆けていくフェリス。その姿を見ながら梨夢が叫ぶ。

 

「罪人が逃げるわ! 止めて! 誰か捕まえて!!」

「(いや……)」

「(この場合は……)」

 

 時間を確認した三魔子が椅子から立ち上がらない。同様に永久の八魔も動かない。他の上位悪魔たちもざわつくが、彼らが動こうとしないのにどうして自分が動けようか。そしてそれは中級以下の悪魔も同じ事。初めこそフェリスに怒声を飛ばし、捕まえようと動き出していた悪魔たちも、自らの上司たちがまるで動かないのを見て困惑、その足が止まる。

 

「何で……? 何で誰も動かないのよ!!」

 

 悪魔界中に響くのではないかという声で梨夢が絶叫する中、フェリスたちはワープゲートへと飛び込んだ。

 

 

 

-アイスの町 ルーク宅-

 

「これは……」

 

 ルークが呆然と声を漏らす。ロゼが真剣な表情で見やる。呼び出しに応じ、フェリスは目の前に姿を現した。だが、いつもと様子が違う。彼女の頬には涙が伝っており、その傍らには小さな子供が立っているのだ。

 

「フェリス……その子は……?」

 

 ルークがそう問いかけるのと同時に、フェリスが胸に飛び込んでくる。もたれ掛かるように自分に体を預けながら、俯き震えている。そして、ゆっくりとフェリスが声を絞り出した。

 

「ルーク……頼む……私たちを助けてくれ……」

「何があった!?」

 

 運命の糸が、また歪に交わる。

 

 

 

-悪魔界-

 

「まあ、しゃあないな。宴にすっぞ!」

 

 呆然としていた悪魔たちに向かってボレロ・パタンがそう叫ぶと、この空気を払拭するためか大勢の悪魔が賛同するように声を上げる。だが、その声を斬り裂くように梨夢が叫んだ。

 

「どうして!?」

「…………」

「恐れながら、どうして捕まえなかったのですか!?」

「時間だ」

 

 その問いに答えたのはレガシオ。まるで射殺すような目でこちらを見ている梨夢に向かって言葉を続ける。

 

「あの瞬間、まだ0時を回っていなかった。刑が執行されればあの者は11階級。主の呼び出しには応えられず、また我らはそれを許さない。だが、あの瞬間はまだ7階級。主の呼び出しに応える義務が発生している」

「そんな!? 彼女は罪人ですよ!? 逃げる可能性だってある!」

「まだ刑は執行されていない。使い魔呼び出しの優先度の方が上だ」

「そんな法……」

「私の作った法に何か文句でも?」

 

 ジロリと梨夢を睨み付けるレガシオ。その視線に気圧され、梨夢は息を呑む。

 

「い、いえ……」

「既に0時は回った。あの者は今この瞬間を持って罪人だ。悪魔界に戻ってくれば、刑を執行する」

「戻る訳……ないじゃないですか……」

「悪魔は人間界でずっとは生きていけぬ。神の連中に見つかるからな。戻って来なければ、どうせ朽ち果てる」

 

 悪魔狩り。悪魔と敵対している神々に見つかれば、悪魔は即座に狩られてしまう。基本的に神は悪魔よりも高位の存在だ。フェリス程度の力では、見つかり次第殺される。

 

「皆に次ぐ。罪人フェリスを見つけたら、悪魔界へと連れてきて構わない。だが、わざわざ探す必要は無い。優先度は平時の仕事の方が上だ」

「はっ!!」

「よっしゃー! 宴だー!!」

 

 レガシオが周囲に向かってそう叫び、悪魔たちが声を上げる。どうせ戻らねば朽ち果てる身。探す優先度は低いとレガシオが決めた法だ。ようやく面倒な事が終わったかと伸びをしながら叫ぶボレロ・パタン。そのままぞろぞろと悪魔を引き連れて場所を変更すべく歩いて行く。その背中を見ながら、プロキーネがフィオリに向かって声を掛けた。

 

「先の件……裁く法が無いため不問にしておこう……」

「……申し訳ありません」

「構わぬ……それよりも聞きたい事がある」

「何か……?」

「あの者の主の名だ。あのようなタイミングで呼び出すその天運、興味がある……」

 

 悪魔たちを管理しており、中級階級の悪魔の名は全て覚えているプロキーネだが、流石にイレギュラー的な存在である使い魔契約の主の名までは覚えていない。問われたフィオリは記憶を整理する。正直、うろ覚えだ。

 

「フェリスは二人の人間と契約を結んでいます。一人は覚えておりませんが、子を成した方の人間ならば……」

「名は……?」

「確か、ランスと……」

 

 ピタ、とプロキーネが止まる。眉をひそめ、先程自分たちに斬り掛かってきた子供の顔を思い出す。似ている。確かに似ている。瞬間、全てが繋がった。

 

「ふふふ……」

「プロキーネ様……?」

「ははは……ははははははは!!」

 

 プロキーネの笑い声に周囲の悪魔が驚く。このように他の者の前で大笑いするような悪魔では無い。兄弟である二人も珍しいものを見たような顔で彼に問いかける。

 

「兄貴、どうした?」

「ははははは……そうか、これも運命か……ボレロ、今宵の宴、私も最後まで付き合おう」

「おっ、珍しいな」

「今夜は気分が良い」

 

 こうして、悪魔界の歴史に残る一夜が終わった。そして同時に記しておかねばならない事がある。今宵姿を現した悪魔たちの名を覚える必要は無い。なぜならば、彼らがルークたちの前に姿を現すのは遙か遠く。ルークたちの旅路の終わりの更に先、全ての終焉へと向かう物語の際になるのだから。

 

 いや、唯一人、その前にルークたちと関わる悪魔がいるとすれば、それは……

 

 

「認められる訳がない……フェリスは私が見つける……私がこの手で殺す……」

 

【第5階級悪魔 『追跡者』 梨夢・ナーサリー】

 

 




【今は覚える必要の無い者たち】
[人物]
プロキーネ
LV -/-
技能 悪魔LV3
 特階級である三魔子の長兄。美形だが、顔の左半分から女性の上半身が生えている異形の悪魔。第4~8階級の悪魔全てを管理しており、名前も覚えている。悪魔界においては絶対的な存在であり、その実力も悪魔王ラサウムに次ぐ。かつてとある理由から人間の少年を抹殺しようとした過去を持つ。

ボレロ・パタン
LV -/-
技能 悪魔LV3
 特階級である三魔子の次兄。獣人型の悪魔で、面倒臭がり屋の大酒飲み。意外にも世話好きな一面も持っており、数多くの悪魔に「兄」と呼ばれて慕われている。単純な『力』では悪魔界最強。

レガシオ
LV -/-
技能 悪魔LV3
 特階級である三魔子の末弟。十の腕に硬い皮膚、人が想像しうる悪魔の形を模したような最も悪魔らしい悪魔。冷酷で法に厳しく、悪魔界の法は彼とプロキーネによって定められたものが殆どである。フェリスの息子を気に入り、名剣グラムを手渡した。

ガルギメス (オリ)
LV -/-
技能 悪魔LV2
 第1階級、永久の八魔。戦乱を司る無の八魔。黄金の甲冑に身を纏い、その左手にはかつてレガシオより貰い受けた伝説の聖剣エクスカリバが握られている。真面目を絵に描いたような悪魔であり、三魔子に忠誠を誓っている。正々堂々とした決闘を好み、『黄金の死神』の通り名を持つ。名前はアリスソフト作品の「ママトト」より。

光輝聖天 (オリ)
LV -/-
技能 悪魔LV2
 第1階級、永久の八魔。慈愛を司る光の八魔。悪魔界の天空を守護する。黒髪に白装束、背中に純白の羽を持った美女。悪魔でありながら光属性という矛盾をした存在であり、考え方なども到底悪魔らしくない慈愛に満ちた存在。だが三魔子には忠誠を誓っており、彼らが命ずれば純粋な悪魔へと瞬時に姿を変える。圧倒的な魔力を保有しており、その力は魔法LV3相当。名前はアリスソフト作品の「ママトト」より。

インフェルノロード (オリ)
LV -/-
技能 悪魔LV2
 第1階級、永久の八魔。破壊を司る闇の八魔。巨牛と少女、二体で一体の悪魔。巨牛が『怒れる暴君』、少女が『冥府の守護者』という通り名をそれぞれ持つ。巨牛が物理攻撃で外から、少女が精神攻撃で内から対象の全てを破壊し尽くす。普段は悪魔界の辺境で引きこもっている。巨牛が言葉を発せないため会話はないが、互いが互いを信頼し合う無二のパートナー。名前はアリスソフト作品の「ママトト」より。

ロック (オリ)
LV -/-
技能 悪魔LV2
 第1階級、永久の八魔。帰依を司る土の八魔。彼女を一言で言うのならば修行馬鹿。武器は使わず、己の身一つ鍛え続ける。土の魔法を使う事は出来るが、彼女が使うのはただ一つ。地にある無限の力源を引き出し、己の力を上げるという補助魔法のみ。三魔子にも喧嘩を売る剛胆ぶりだが、面倒見は良く多くの悪魔から慕われている。自分と対等に戦う事の出来る格闘家を欲している。名前はアリスソフト作品の「ママトト」より。

サイコサラマンダー (オリ・未登場)
LV -/-
技能 悪魔LV2
 第1階級、永久の八魔。浄化を司る炎の八魔。真紅の肉体を持つ巨獣。その顔はドラゴンによく似ており、常に体が炎に包まれている。一度戦場に出れば全てを燃やし尽くしてしまう『狂気の過炎』。知能は低く、たまに間違えて永久の八魔にも襲い掛かる。ロック曰く『悪魔界一の大馬鹿者』。しかし、三魔子に襲い掛かる事は決して無い。フェリスの刑の執行は欠席。執行日を失念していた。名前はアリスソフト作品の「ママトト」より。

セドナ (オリ・未登場)
LV -/-
技能 悪魔LV2
 第1階級、永久の八魔。誕生を司る水の八魔。二頭の巨竜の頭の間から緑髪の美女の上半身が生えている異形の悪魔。人見知りであり、物静かな性格。膨大な魔力を保有しているが争いは好まず、普段は悪魔界の奥地で静かに暮らしている。プロキーネの亜種型悪魔であり、彼には心を開いている。プロキーネも自身の亜種型である彼女は放っておけず、定期的に相談に乗っている。フェリスの刑の執行は欠席。他の悪魔に会うのが怖いため、事前にプロキーネに報告、許可を得ていた。名前はアリスソフト作品の「ママトト」より。

リグル・ダム (オリ・未登場)
LV -/-
技能 悪魔LV2
 第1階級、永久の八魔。清浄を司る風の八魔。巨大な蛇に尾が三つあるような姿をした異形の悪魔。三つの尾には巨大なプロペラがそれぞれ付いており、そこから巻き起こされる風が総てを吹き飛ばす。別名、『風の王都』。サイコサラマンダー同様知能は低いため、とりあえず何でも吹き飛ばしてしまい、天空を守護する光輝聖天の頭痛の種となっている。フェリスの刑の執行は一応出席。遙か上空にプカプカと浮かんでいた。名前はアリスソフト作品の「ママトト」より。

アルケミカル (オリ・未登場)
LV -/-
技能 悪魔LV2
 第1階級、永久の八魔。進化を司る雷の八魔。手長足長、獣の顔を持った悪魔。乳房が四つあり、一応性別は女性。許可無く近づく者には妥協のない死を与える電界の女帝。本来は三魔子以外の悪魔に興味を持っていないが、女性の尊厳を大事にしており、その辺りの考え方がロックと通じたため、唯一彼女にだけは心を開いている。滅多に使わないが雷を足に纏った高速移動術を隠し球として持っており、悪魔界最速。フェリスの刑の執行は欠席。女性型悪魔がそのような目に遭うのは見たくないとの事。名前はアリスソフト作品の「ママトト」より。

パブズ (オリ)
LV -/-
技能 悪魔LV2
 第2階級悪魔。大柄な人間型悪魔で、白い髭からも判るとおり高齢の悪魔。自ら『魔将軍』を名乗っており、王冠にマント、部下には『閣下』と呼ばせる徹底ぶり。フィオリを含む一部の悪魔からは冷ややかな目で見られているが、それでも彼に従う悪魔が多いのは絶大なカリスマを保有するため。三魔子に次ぐ広大な領地を持っている。名前はアリスソフト作品「Rance」シリーズのドラマCD、「真実のランス」より。

フィオリ・ミルフィオリ (5.5)
LV -/-
技能 悪魔LV2
 第3階級悪魔。小柄な女性型悪魔で退屈を嫌い、自らの愉悦を満たしてくれるものを好む。そういった意味では近年、フェリスという悪魔がお気に入りの存在であった。かつて友であったレンリを救えなかった事を悔やみ、その償いからカラー出身悪魔の地位を向上したという過去を持つ。それでもカラー出身悪魔への風当たりは完全に払拭された訳では無いため、新たにカラー出身の悪魔がやってくると率先して自らの庇護下に置く。

キラ (ゲスト)
LV -/-
技能 悪魔LV2
 第4階級悪魔。美形の優男風だが、その実何度も上級悪魔昇格の話を貰い、その度に断り続けている実力者。女の子モンスターを心の底から愛しており、現場で働き続けられる階級でいたいというのが上級へと昇格しない最たる理由。真紅の鎌を持ち、治癒魔法も得意とする。男の子モンスターのフリーダムとは何故か仲が良い。名前はアリスソフト作品の「GALZOOアイランド」より。

ザ・ラック (オリ)
LV -/-
技能 悪魔LV1
 第4階級悪魔。レガシオの部下で、二本の角と四本の腕を持つ異形型。凶暴な性格だが法には煩く、特に契約関係の取り締まりはレガシオより一任される事も多々ある。口が良く回り、巧みな話術で自身に有利な契約を数多く結んできた。実力も高く、『第4階級の支配者』の異名を持つ。名前はアリスソフト作品の「ママトト」より。彼が見つからないという方は闇のカードを観賞してみましょう。はい、いましたね。

梨夢・ナーサリー (5.5)
LV -/-
技能 悪魔LV1
 第5階級悪魔。フィオリの部下である元カラーの女性型悪魔。フィオリから目を掛けられているフェリスにライバル心を持っており、今回の刑の執行を最も楽しみにしていた悪魔。それ故に今回の決着に納得がいかず、例え地獄の底まででも彼女を追いかけて殺す事を決意する。野心家であり、第2階級の頂点を目指している。

マック (オリ)
LV -/-
技能 悪魔LV1
 第5階級悪魔。パブズの部下である美形の人間型の男性悪魔。パブズに絶対の忠誠を誓っており、彼が死ねと言えばいつでも自死する覚悟を持っている。そんな彼の事をパブズも信頼しており、常に傍らに控えさせている。剣、槍、弓、斧など数多くの武器を使いこなす達人だが、剣を最も好んで使う。自由人であるキラとは何故か気が合うとの事。キラ曰く、彼が不可能を可能にしそうだとか何とか。名前はアリスソフト作品「Rance」シリーズのドラマCD、「真実のランス」より。

セルジィ (5.5)
LV -/-
技能 悪魔LV1
 第6階級悪魔。フェリスの友人であり、出産時に立ち会った。彼女の身を案じていたが立場上どうする事も出来ず、せめて息子だけは立派に育てようと考え、影で支える決意をしていた。近々第5階級への昇格も視野に入れられている。

レンリ (ゲスト)
LV -/-
技能 悪魔LV1
 故人。第6階級悪魔。カラー出身悪魔への風当たりが今よりも強かった時代、文句一つ言わず誰にでも快く接していた優しき悪魔。フィオリの良き先輩であり、敬愛していた存在。だが人間との間に子を成してしまい、刑に処せられその最中に亡くなった。余談だが彼女の子は悪魔の血よりも人間の血が色濃く出たため、悪魔では無くカラーの少女として産み落とされた。名前はアリスソフト作品「闘神都市3」より。パラレルワールドという事でフィオリとの関係は大きく変更しました。

ミン (オリ)
LV -/-
技能 悪魔LV1
 第7階級悪魔。パブズの部下である人間型の女性悪魔。パブズを敬愛しており、長年に渡り彼の為に尽くしてきた事から近年ようやく認められ、傍らにいる事を許されている。頭に血が上りやすく先走る事も多いため、マックからは色々と心配されている。名前はアリスソフト作品「Rance」シリーズのドラマCD、「真実のランス」より。

ゴルキウス (オリ)
LV -/-
技能 悪魔LV1
 第7階級悪魔。レガシオの部下であり、同時にザ・ラックに生涯仕えるという契約を結んでいる。これはザ・ラックに言葉巧みに結ばされたものだが、そのお陰で第7階級とは思えぬ程の力を手に入れた。彼の実力ならば昇進する事も容易いが、ザ・ラックの命で第7階級に留まり続け、法を犯す下級悪魔を見張る番人として君臨している。一度法を犯せば、彼が持つ巨大なハンマーで頭を潰される。女子供とて容赦はない。名前はアリスソフト作品の「ママトト」より。彼が見つからないという方は無のカードを観賞してみましょう。こんなところからキャラを引っ張ってくるなと言う文句は受け付けません。ママトトのカードキャラ、大好きなんです。

ダリス (ゲスト)
LV -/-
技能 悪魔LV1
 第8階級悪魔。セルジィを心の底から愛している女性型悪魔。百合娘。ちゃんとした上司は他にいるのだが、仕事も放ってセルジィの元へ飛んでいってしまう困ったちゃん。何度行っても聞かないため、最近は上司がセルジィにそれとなく仕事をするよう促してくれと頼んでいる。一応仕事をすればそれなりに優秀な悪魔。セルジィ曰く、努力とは無縁の天才肌、いずれ私を抜くとの事。セルジィは4.1章から登場していたが、何気に彼女は前話が初登場。名前はアリスソフト作品「闘神都市シリーズ」より。セルジィとダリスは「闘神都市3」だけじゃなく、「闘神都市1」にも登場しています。


[その他]
悪魔
 神と対を成す存在。魂を集めるのが主な仕事であり、それも汚れた魂である必要があるため、言葉巧みに人間と契約を結んで魂を汚れさせる。神に敵対心を持っているが、基本的に神々の方が実力は高いため、悪魔たちは天使に会わぬよう細心の注意を払っている。とはいえ人類から見れば十分驚異的な存在であり、第6階級悪魔が低級魔人と同程度の力を保有している。また、無敵結界も彼らには関係無い。魂集めは悪魔王ラサウムより命じられているのだが、その真の理由を知る者は少ない。悪魔王ラサウムは創造神ルドラサウムを倒し、彼に成り代わろうとしている。魂というのは創造神の生命力でもあり、それを奪い続ければいつかはルドラサウムに成り代われると考えての命令であるのだが、それは広大な海からコップで水を掬い続けるような途方もない作業。そんな事も知らず、悪魔たちは今日も働き続ける。正に社畜の鏡。

三魔子
 悪魔王ラサウムが妻であるテェロ・エティエノに命じて産ませた最初の息子たち。悪魔界の実質的な支配者であり、悪魔王には何の忠誠もないが彼らには従うという悪魔も近年は多い。各々の実力も高く、魔王相手に7:3か8:2で勝利を収められる。

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