ランスIF 二人の英雄   作:散々

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第5.9章 総集編
総集編


 

 一つの大陸があった。数多くの生物が息づく世界。魔人、モンスター、ドラゴン、そして人間。

 脆弱な人間は初めこそ凶悪な生物たちに蹂躙される存在であったが、高い繁殖力と優れた知識により、徐々にそれらに対抗し得る力を身に着けていった。だが、そんな人間たちに待ち受けていたのは、人間同士の争いの日々であった。

 

 破壊と混乱の時代。時代は英雄をもとめていた。時代がもとめる資質を備えた人物は二人。

 

 一人はとても自分勝手で、とてもスケベで、とても乱暴で、とても正義とは思えない男であった。

 そしてもう一人は……

 

 これは、二人の英雄の物語である。

 

 

 

-第1章 光を求めて- 全5話

 

1-1 全ての始まり

 

 自由都市、アイスの町に一人の冒険者がいた。彼の名はランス。実力は確かだが、『この世の全ては俺様のためにある』と真剣に考えている難ありの男。

 そんな彼はある日、一つの依頼を引き受ける。行方不明になっているヒカリという少女を見つけ出すという依頼だ。奴隷のシィルを引き連れ早速調査へと向かったランスは、その道中である男と出会う。

 

「俺の名は、ルーク・グラント。キースギルド所属の冒険者だ」

 

 ルーク・グラント。ランス同様、英雄たる資質を備えたもう一人の冒険者だ。性格はまるで正反対であり、決して良い印象を抱くような初対面ではなかったが、同じ依頼を受けていたルークが色々と譲歩する事により協力関係が完成。共にヒカリ救出を目指して動くこととなった。この出会いが伝説の幕開けだという事も知らずに。

 ヒカリが行方不明になったリーザス城下町で調査を続ける二人。その最中、様々な事件があった。謎の女忍者からの襲撃、コロシアムへの参加、幽霊屋敷の事件。中でも特筆すべき事件が二つ。一つは、尋常ではない威圧感を持った少女との邂逅。ルークは知らなかったが、その少女は現代の魔王、リトルプリンセスであった。そしてもう一つ、とある洞窟の壁に埋め込まれていた男との出会い。何をやっても壁から引っ張り出す事の出来なかった男に対し、ルークはいつか必ず助け出すと約束を交わす。小汚い格好の壁男。だが、その正体は1000年以上前に伝説のパーティー『エターナルヒーロー』を率いた戦士、ブリティシュ。この二つの出会いはいずれルークにとって大きな意味を持ってくる事になる。

 これらの出来事を経て、ルークたちは遂に事件の黒幕に至る。それは、リーザス国王女のリア・パラパラ・リーザスであった。

 

 リーザス城へと乗り込んだランスであったが、リアの魔の手に掛かり危うい状況へと陥ってしまう。だが、すんでのところでルークとシィルの援軍が間に合い、窮地を脱した。逃げるリアをランスに任せ、ルークはリア直属の女忍者と相対する。

 何とかこれを撃退したルークであったが、話を聞いている内に彼女がこの作戦を心の中ではよく思っていなかった事を知る。そんな彼女に対し、真の忠臣を目指すのであれば主君の間違いは正さなければならないと説く。

 一方その頃、リア王女と相対していたランスはお仕置きと称して彼女を犯していた。本来であれば一国を完全に敵に回すような行為だが、この出来事でリア王女はランスに惚れてしまう。こうして事件は一件落着。

 

「待ってーーー! ダーーーリン!!」

「俺様は結婚などせんぞぉぉぉぉ!!」

 

 そうは問屋が卸さない。結婚を迫るリアと、それから必死に逃げるランス。どたばた騒ぎの二人を遠目に見ながら、件の女忍者はルークへと一つの宣言をした。今度こそ真の忠臣となる、そう彼の前で誓ったのだ。

 

「名前、まだ聞いてなかったな」

「かなみ、見当かなみです!」

 

 こうして、大国リーザスとの長きに渡る付き合いはこの時から始まる事になるのだった。

 

 

【重要ポイント】

・ルークとランス、二人の英雄が出会う

・大国リーザスとの付き合いが始まる

・魔王リトルプリンセス、壁男ブリティシュと出会う

 

 

 

-第2章 反逆の少女たち- 全14話

 

2-1 四人の魔女

 

 一つの町が地下へと沈んだ。それを行ったのは、四人の魔女。魔女退治の依頼を受けたルークは、地下に沈んだカスタムの町へと向かう。そしてそこで、同じく依頼を受けてこの町へとやってきたランスとシィルの二人と再会するのだった。

 今回もルークが報酬などの譲歩をし、共に行動する事になった三人。一流の冒険者であるルークとランスが手を組んだのだから、今回の依頼も難なく終了する。そんな淡い期待を抱いていたシィルであったが、町で調査を続けていく内に暗雲が立ち込めてくる。

 

 魔女たちの手によって殺されたらラギシスという魔法使いの霊からもたらされた情報によると、彼女たちはラギシスの下から盗み出した『フィールの指輪』というアイテムによって魔力を強化しているというのだ。不安を抱きながらも、魔女たちが根城にしているという洞窟に足を踏み入れる三人。そして、一人目の魔女であるマリア・カスタードと出会う。

 そして、一同の不安は的中してしまう。圧倒的な威力の水魔法を使ってくるマリアにルークたちは大苦戦。激戦の末に何とかマリアを破った一同だったが、一瞬の油断を突かれてしまい、別の魔女にシィルを攫われてしまった。

 

「全てラギシスの陰謀だったんだな?」

「そう、全てあいつが元凶よ」

 

 倒したマリアからもたらされたのは、意外な情報であった。町を地下に沈めた大罪人と思われていた四魔女であったが、実は全ての元凶はラギシスであったというのだ。急いでラギシスの下へと戻るが、既に彼の姿は無い。未だ健在の三魔女、攫われたシィル、謎の動きをするラギシス。事態は混迷を極めていくのだった。

 

 

2-2 対結界

 

 新たにマリアを仲間に加え、迷宮の探索を続けるルークたち。その道中には様々な事件があった。四魔女の一人、ミル・ヨークスの姉であるミリ・ヨークスが仲間に加わり、幻獣の剣という妖剣をミイラ男より貰いうける。また、女悪魔を誤って呼び出したりもしたが、そこはランスの機転で何とか回避した。そして遂に、二人目の魔女ミル・ヨークスが姿を現す。

 

「なんで……なんでよ!? なんで幻獣さんが倒せるのよ!?」

「残念だったな、ミル・ヨークス。どうやら俺は幻獣使いにとって天敵みたいだ!!」

 

 普通では倒す手段の無い幻獣を扱うミルは四魔女の中でも一、二を争うほどに手強い相手であった。だが、ルークはその幻獣を次々と屠っていく。これが彼の持つ特殊能力、『対結界』。ほぼ全ての結界を無効化できるルークは幻獣の皮膚を覆っている結界も無効化し、これを倒す事が出来たのだ。こうしてルークたちはミルを撃破し、指輪の洗脳から解放する。

 一方その頃、攫われたシィルはバードという冒険者と共に行動をしていた。惚れっぽく、少し頼りないが、冒険者としての腕はそこそこに立つ男、それがバードだ。だが、そんな彼も四魔女の一人であるエレノア・ランには敵わなかった。左腕を切断され、更には洗脳されてしまいシィルに襲い掛かってしまう。シィル絶体絶命の危機。

 

「そこのピンクモコモコ奴隷のご主人様にして世界の大英雄! ランス様だ!!

 

 そこに駆け付けたのは彼女が敬愛する主人、ランスであった。集結した一同によってランはあえなく敗北。こうして、残る魔女は後一人となった。だが、決して油断する訳にはいかない。残りの一人は、四人の中でも最強の魔女なのだから。

 

 

2-3 志津香 -守るべき存在-

 

 シィルを守れず、自分の弱さをランスに指摘されてしまい悔し涙を流すバード。そのバードにルークは厳しくも暖かい言葉で背中を押す。

 

「必ず……必ず強くなってみせます!」

 

 ハッキリとそう口にするバード。この男はきっと強くなる。ルークはそう確信してバードを別れるのだった。

 最後の魔女を前に一度町に戻る事にした一同。町を沈めたと疑われていた魔女たちだが、それが誤解である事が判ると町の人たちは彼女を快く迎え入れてくれた。町の復興のため、一度パーティーから外れるマリア、ミリ、ミル、ランの四人。また元の三人に戻ったルークたちであったが、その彼らの前に意外な人物たちが救援に駆けつける。それは、リーザス王女リアと侍女のマリス、忍者のかなみの三人であった。

 

 リア一向からリーザスに代々伝わる聖剣と聖鎧をランスが受け取り、万全の状態で最後の魔女が待つ洞窟へと足を踏み入れるルークたち。だが、灼熱の洞窟にそびえ立つ魔女の屋敷を見た瞬間、ルークはランスたちを置いて一人駆けだしてしまった。何故ならその屋敷が、かつて幼い頃に世話になった恩人が住んでいた屋敷とそっくりであったからだ。

 

「……アスマーゼ……さん?」

「!? 母を知っているの!?」

 

 そして、出会う。最後の魔女であり、恩人の娘、魔想志津香と。自分の計画を止めに来たルークに攻撃を仕掛けてくる志津香。恩人の娘である志津香とは戦いたくないルークは、志津香が何故時空転移などという危険な行動に出たのかを聞き出す。それは、ルークにとって衝撃的な理由であった。

 

「私がここにやってきたのは、卑怯な手段で殺された父を助け出すためよ!」

「殺された……だと。篤胤さんが!?」

 

 ラガールという魔法使いの罠に掛かり殺された父と攫われた母。その過去を変えるために志津香は時空転移の魔法を使ったのだ。だが、その時空転移の魔法は完璧なものではなかった。過去には干渉できず、ラガールの手で父が殺される光景をただただ指を咥えて見ている事しか出来なかったのだ。打ちひしがれ、ラガールへの復讐を誓う志津香に対し、ルークは自分もその復讐を手伝う事を約束する。

 

「奴は必ず殺すぞ……」

「……役に立たないと判断したら……切り捨てるからね」

 

 こうして、仇討ちという目的の下にルークと志津香は手を結ぶことになった。これより、長く深い付き合いとなる二人の出会い。そして同時に、ルークはある決意をしていた。恩人の娘であるこの少女だけは、必ず守り抜く、と。

 

 

2-4 英雄は遅れてやってくる

 

 四魔女を全て倒し一件落着かと思われていたが、まだ事件は終わっていなかった。黒幕であるラギシスがフィールの指輪を奪い、恐るべき力を手にして実体化したのだ。ラギシスを倒すべく立ち向かうルークとミリ、四魔女の四人。だが、ランスだけは自分の仕事は既に終わっていると言い捨て、メンバーに加わらなかったのだ。戦力的には是が非でもついてきて貰いたいところであったが、殺される可能性が濃厚な強敵であるため無理強いは出来ず、仕方なく6人で戦いを挑むルークたち。

 だが、ラギシスの力はルークたちの想像を遥かに超えていた。次々と倒れていく仲間たち。勝利を確信したラギシスは、自分に歯向かった志津香に向かってある事実を口にした。

 

「冥土の土産に一つ良いことを教えてやろう。ラガールの奴に魔想がこの町にいると教えたのは、この私だ」

 

 ラガールを町に手引きした事。その見返りにフィールの指輪を手に入れた事。フィールの指輪の魔力を自分のものにするためだけに志津香たちを育てていた事。次々と明らかになる真実に全員が殺意を覚えるが、立ち上がる事が出来ない。そんな中、最も傷ついているルークだけがゆっくりと立ち上がった。

 

「つまり、貴様も篤胤さんとアスマーゼさんの仇ってことだな……?」

「貴様、まだ立つのか……」

「ならば貴様はここで殺すぞ、ラギシス! 俺と志津香の手でな!!」

 

 再びラギシスへと挑むルーク。だが、満身創痍の状態では敵う訳もなく、防戦一方となっていた。もはやこれまで。誰もがそう思ったときに、その男はやってきた。いつも通りの笑い声と余裕の表情と共に。

 

「がはは、英雄は遅れてやってくるものなのだ!」

 

 ランスが援軍に駆けつけてくれたのだ。二人の英雄が肩を並べ、ラギシスへと挑む。また、同時にやってきたシィルが志津香の治療をし、魔法が放てるまでにその身を回復させる。両親の仇の一人でもあるラギシス。決着は、志津香の手で。

 

「白色破壊光線!!!」

「こ、こんなはずでは……弟子に二度も殺されるというのか……お、おのれぇぇぇ!」

 

 志津香の最強魔法により、ラギシスは塵と消えた。こうして、短くも濃密なカスタム四魔女事件は終わりを告げた。成功報酬だけを考えれば、割に合わなかった仕事かもしれない。だが、それ以上に大切なものをルークたちは手に入れた。これから長い付き合いになる、個性豊かで頼りになる少女たちとの絆を。

 

 

【重要ポイント】

・マリアと志津香を筆頭に、カスタムの住人と懇意になる

・ルークと志津香、共に仇討ちを誓う

・フィールの指輪は事件後、AL教によって回収される

 

 

 

-第2.5章 砂漠のガーディアン- 全3話

 

2-5 炎の色男

 

 カスタムの事件後、ルークはある男を呼び出していた。男の名はサイアス・クラウン。ゼス四将軍にして、ルークの旧友でもある男だ。魔想夫妻の仇であるラガールの調査を依頼したルークだったが、それを受ける代わりにある仕事を手伝ってほしいと頼まれ、それを承諾する。依頼の内容は砂漠に突如現れた謎の塔と盗賊団の調査というもの。ルーク、サイアス、そしてガチガチの魔法使い至上主義を持っているゼスの治安隊所属のキューティ・バンドの三人で件の砂漠へと向かう事となった。

 

「こんなもの、人間業ではないぞ……」

 

 砂漠の町を襲ってきた盗賊団を撃退したルークたちであったが、その盗賊団というのは人間ではなく、魔力で動く鎧であった。これだけの数を操る魔力など人間業ではないと口にするサイアス。そして一行は、砂漠の塔へと乗り込んでいく。

 塔の最深部へと辿り着いた一行を待っていたのは、砂漠の町の町長である女性、アニー。盗賊団に町を襲わせていたのは、町長であるアニーであったのだ。だが、アニーの悲しい事情を知ったキューティは迷ってしまう。アニーを殺さなければ塔の力で町は消し飛ぶ。だが、彼女を殺したくない。魔法使い至上主義であるキューティは今、魔法使いでないアニーを心から救いたいと思い、魔法使いである自分の不甲斐なさを強く噛み締めていた。

 

「助けたい……アニーさんも町の人も……だって、あの人も被害者じゃないですか……こんなの……悲しすぎる……」

「安心しろ、キューティ。俺たちに任せろ!」

 

 ルークとサイアス。共に大陸でも屈指の実力者コンビが不可能と思われたアニー救出を成し遂げたのだった。その後、ゼス国が事後処理を進める事になる。アニーは裁判で裁かれる事となったが、極刑は免れそうだとの事。キューティは魔法使い以外にも素晴らしい人たちはいると考えを改め、大団円と終わるはずであった。

 

「アニス・沢渡。ズバッと参上です!」

 

 が、やってきたゼスが誇る最強へっぽこ魔法使いの手により、町は半壊。一部の者の胃を酷く痛めつける終幕となった。

 

 そしてもう一つ、因縁が生まれる。壊された砂漠の塔の持ち主であり、人類の怨敵である魔人の一人、メディウサ。

 

「機能停止させたその人間、もし見つけたら簡単には殺さないわよ」

 

 サイアス・クラウン。彼はこれより数年後、その命を掛けてメディウサと対峙することになる。その因縁の始まりであったことを、その死闘の凄惨なる結末を、まだ誰も知る由はなかった。

 

 

【重要ポイント】

・ルークにとってサイアスは旧友であり、最も信頼できる人物の一人

・サイアスにとってルークは旧友であり、最も信頼できる人物の一人

・サイアスとメディウサに因縁が生まれる

・ルーク、キューティとアニスの二人と仲良くなり、ゼスとの繋がりを強固にする

 

 

 

-第3章 リーザス陥落- 全35話

 

3-1 リーザスを奪還せよ

 

 リーザス陥落。その報は即座に大陸を駆け巡った。突如襲来したヘルマン・モンスター混合軍により、リーザスは落とされてしまい、リアを王女は囚われの身となってしまった。唯一城から逃げ出す事の出来たかなみはルークとランスに協力を仰ぐ。だが、リア救出の鍵となる重要なアイテム、リーザス聖剣と聖鎧をランスは売り払ってしまっていた。何とか聖剣と聖鎧を取り返すべく動くルークたち。そんな中、ルークはギルド長のキースにある事を聞かれる。何故ランスと一緒にいるのか、と。

 

「あいつに似ているから……一緒にいるのか……?」

「そういう訳じゃないさ。何というか、放っておけないんだ」

 

 ルークにはかつて妹がいた。ルークが行方不明の間に冒険で命を落としてしまった、かけがえのない妹が。その彼女が、冒険のいろはを叩き込んだ若き冒険者がいる。それがランスであった。ルークがランスと共に行動する理由、そして彼の行動に少しだけ甘い理由はここから来ていた。

 聖剣と聖鎧を取り戻すべく行動を開始した一行だったが、その道中に驚くべき敵と相見える。それは、人類の怨敵である魔人。サテラと名乗る魔人はその圧倒的な力をルークたちに見せつけ去って行った。一同が魔人の出現に震え上がる中、ルークだけは違う事を考えていた。

 

「どうして、ホーネット派の魔人がここにいるんだ……」

 

 冒険を続ける一行は、カスタムの町がヘルマン軍に攻められているという話を聞き、偶然再会を果たしたカスタムの神官ロゼと共にカスタムの町へと向かう事となった。その道中、これまた意外な再会を果たす。カスタム事件の際、ランスが酷い方法で散々犯しつくした悪魔、フェリスと再会したのだ。だが、ロゼの協力により彼女を使い魔にする事に成功したルークとランス。リーザス解放に向け、心強い味方が増えたのだった。

 悪魔の洞窟という通路を使い、カスタムの町を目指す一向。道中、ランスが神様の絵の描かれたプレートをぶち壊すというアクシデントもあったが、何とか無事にカスタムの町へ到着。そこでルークたちは、マリアや志津香といった懐かしい面々との再会を果たす。

 

 

3-2 リーザス解放軍結成

 

 カスタムに進行していたヘルマン部隊の司令官、ヘンダーソンを見事打ち取ったルークとランス。同時に、ヘルマン軍が引き連れていた洗脳状態のリーザス兵たちの解放にも成功。

 

「儂も耄碌したものじゃな……目の前の敵をみすみす見逃していたのだからの!」

「……僕は、貴方がリーダーになってくれる事を望んでいたのですがね」

 

 その中には、リーザス軍総大将のバレス・プロヴァンスと白の軍将軍のエクス・バンケットという名将も混ざっていた。バレス率いる黒の軍とエクス率いる白の軍が合流した一行は大部隊となり、リーザス解放軍を名乗る事になる。カスタムの町からも四魔女、ミリ、トマト、真知子、ロゼといった面々が参加し、ルークが救い出した傭兵たちも協力してくれる運びとなった。解放軍のリーダーにはマリアが指名され、ランスはちゃっかり総司令官の立場をゲット。これより本格的にリーザス解放へと動いていく事となった。

 

「チューリップ3号、全速前進!!」

 

 リーザス解放戦において、最も戦果を挙げたのは彼女であろう。カスタムの誇る天才発明家、マリア・カスタードが新兵器チューリップ3号で戦場を駆ける。総崩れとなったヘルマン軍に対し一気に畳みかける解放軍。一方ランスたちは、敵の中心部へと潜り込んでいた。前回同様洗脳されているリーザス軍を開放すれば、勝利は確実だと考えたからだ。だが、そこに待ち受けていたのは錚々たる面々であった。かつて大陸最強と謳われた格闘家のフレッチャー・モーデル、その弟子ボウとリョク、洗脳状態であるリーザス最強の戦士リック・アディスン、その副将メナド・シセイ、そして魔人アイゼル。だが、ルークたちもここに来るまでに頼れる仲間と再会を果たしていた。

 

「お久しぶりです、ルーク殿。息災で何より」

 

 アレキサンダー。かつてリーザスコロシアムでルークと戦った格闘家だ。ルーク、ランス、アレキサンダーという大陸でも屈指の実力者三人は何とかフレッチャーたちを撃破。ただし、魔人アイゼルだけは戦う前に撤退してしまったため、倒すには至らなかった。いや、まともに戦えばルークたちに勝ち目はなかっただろう。それ程までに人間と魔人には差があるのだ。そしてそれをまざまざと見せつけるかのような出来事が起こる。

 

 

3-3 魔人襲撃

 

 リーザス軍からリック、レイラ、メナド、チャカ、メルフェイス、自由都市からセルが合流した解放軍は更に勢いづく。このままリーザスを解放できるはず。そう息巻く一行を絶望の淵に叩き落としたのは、一人の魔人であった。

 

「そうだ、絶望しろ! 人間如きが勝てる訳ないだろ!」

 

 魔人サテラ、襲撃。彼女はお供のガーディアン二体を引き連れ、たった三人で解放軍のアジトへと乗り込んできた。だが、サテラたちになす術もなくやられてしまう一同。更にはシィルまで攫われてしまう。リベンジを誓うランスだったが、打つ手がない。そんな中、意外な人物が声をあげた。レッドの町の神官、セル・カーチゴルフだ。

 

「ワルヤテジ閉テシ間空ノ遠永カンナ物魔イ悪……魔封印結界!」

 

 セルの切り札である魔封印結界は強力な魔法であり、魔人サテラを追い詰める事に成功。だが、後一歩のところで彼女のガーディアンであるイシスが自らの身体を犠牲にサテラを助け出す。倒しきれなかったが、何とか撤退させる事に成功したルークたちは再びリーザス解放のために進軍する。

 だが、ここまでやられ続けてヘルマン軍も黙ってはいない。遂に魔人アイゼルが前線に出てきたのだ。これまで快進撃を続けていたマリアのチューリップ3号を難なく破壊するアイゼルの使徒。その爆風に巻き込まれ、志津香が吹き飛ばされてしまった。報告を聞いて駆けだすルークとかなみ。志津香は絶対に守らねばならぬ存在だからだ。

 

「君を助けたのは、私の独断でしたことだ。他意はない」

 

 吹き飛ばされた志津香であったが、意外な人物に助けられていた。それは、魔人アイゼル。勇猛果敢に戦う志津香に魅せられていたアイゼルであったが、駆けつけたルークとその彼に対する志津香を見て何かを察し、この場から離れようとする。だが、ルークはそのアイゼルを引き留めて質問を投げかける。ホーネット派の魔人であるお前とサテラが何故この場にいるのか、と。

 だがそれは、人間が知り得る情報の範疇を遥かに超えていた。駆けつけたサテラとシーザー、呼び出されたフェリスも交え、一触即発の空気が流れる。

 

「ホーネット、ホーネットって、お前がホーネットの何を知っているんだ! サテラはホーネットの親友だぞ! 会った事もないお前なんかよりずっと……」

「会った事ならあるさ……」

「何?」

「俺はかつて……この命、彼女に救われた」

 

 

3-4 夢迷い無く、道険し

 

今から約10年前、ルークはとある事情から魔人界に迷い込んでしまっていた。迫りくる恐るべきモンスターの数々を前に、力尽きる寸前であった。だが、そのルークを救ってくれたのは、一人の美しき女性。彼女の正体は魔王ガイの娘、魔人ホーネット。

 

「人間……? なぜこのような場所に……?」

 

 初めこそ互いに戸惑っていた二人であったが、ルークはこれまで抱いていた魔人のイメージと違うホーネットに対し徐々に警戒を緩め、ホーネットも魔王の娘である自分を恐れずに接してくれるルークに心を許していった。

 他の魔人たちに見つかる恐れがあるため軽々には脱出できず、ルークはホーネットの屋敷で数年の間生活する事になるのだった。ルークの話す外界の話を興味深げに聞くホーネット。遥か格上のホーネットに稽古をつけて貰うルーク。いつしか二人は互いに絶大の信頼を置くようになっていた。

 

「ルーク……私の使徒に……なってはくれませんか……?」

「それは出来ない……」

「そうですか……私は……ルークにも必要とされては……いないのですね……」

「そうじゃない! 使徒になったら……俺は君よりも下の立場になる。それじゃ駄目なんだ! 俺は……君とは対等な関係でいなくてはいけない! 対等な関係でいたいんだ!」

 

 魔王を継承する事が叶わなかったホーネットは酷く落ち込み、ルークを使徒へと誘ってくるが、ルークはこれを拒否。互いの思いを打ち明け合った二人の絆はより強固なものへと変貌したが、穏やかな日々の終わりは近づいていた。これより暫くの後、魔王ガイが殺されたのだ。

 魔王継承を拒否して逃亡した新魔王リトルプリンセス。彼女を立てるべく動くホーネット。彼女を殺して自分が次の魔王になろうと目論む魔人ケイブリス。魔人界が二つに割れると予想したホーネットは魔王が殺されて混乱している今ならば人間界まで逃げられるとルークに告げ、脱出を手引きしてくれた。その彼女に対し、ルークは一つの約束を交わす。

 

「また会いに来る! 人類をまとめた後、共にケイブリス派を倒すため、必ず君の援軍に駆けつける! だから、それまで待っていてくれ!」

「待っています、ルーク!」

 

 そして二人は別れる。分かたれた二つの道が、また重なり合う日が来るのを信じて。人間界に戻ったルークは冒険者に復帰。その中で、一つの目標を打ち立てる。人間界不可侵という大きな夢を持つホーネットと対等であるためには、同じレベルではいけない。彼女よりも更に大きな夢を。人間が抱くにはあまりにも大それた『狂人』の夢を。

 

「俺の目的は……人類と魔人の共存!」

 

 

3-5 立ちはだかる最強たち

 

 前線へと復帰したルークたちはヘルマン軍との戦いを再開する。だが、遂に二人の人類最強がルークたちの前に姿を現す。人類最強トーマ・リプトン将軍と、女性最強ミネバ・マーガレット副将だ。これまでとはレベルの違う相手に苦戦を強いられるルークたち。だが、ヘルマン軍は内部から徐々に崩壊を始めていった。

 ルークと出会った事で同胞の魔人ノスへと不信感を抱き始めたアイゼル。その予感は当たっており、ノスはアイゼルとサテラを騙して裏では何かを画策しているのだった。また、魔人だけでなく人間側にも不穏な動きがあった。第三軍副将のミネバだ。積み重なった思惑はある時を境に一気に瓦解する。

 遂にリーザス城へと乗り込んだ解放軍。それを見た魔人ノスは遂に反旗を翻し、ヘルマン皇子パットン・ヘルマンをその手に掛けようとする。乳母であるハンティ・カラーの協力もあり何とか逃げ延びたパットンだったが、これにより指揮をとる者がいなくなってしまった。ノスの反乱を一早く察したミネバは部下を引き連れ戦場から撤退。戦況は一気に解放軍へと傾いていく。

 

「ヘルマンの未来のため、パットン皇子のため、ここでワシが倒れるわけにはいかぬ!」

 

 だがそれでも、人類最強は折れなかった。解放軍に囲まれ、圧倒的劣勢の中でなお孤軍奮闘。その姿は志津香やリックといった強者にも畏怖を感じさせ、解放軍の中心人物であったルークに重傷を負わせる。だが、ルークにも止まれぬ理由がある。激戦の末、遂に人類最強を打ち破ったルーク。だが、それとほぼ時を同じくして最凶の存在が現世に復活を遂げていた。人類史上最悪の魔王、ジルがノスの手引きにより復活を遂げたのだ。

 

「儂か? 見ての通り、儂はカオス。魔剣カオスじゃ」

 

 残る魔人たちに対抗すべく、ランスはリーザス城の秘宝である魔剣カオスを手に入れる。これは魔人や魔王が保有する無敵結界を無効化できるという恐るべき存在であった。解放軍の中でも精鋭たちを引き連れ、ランスとルークは二手に分かれてリーザス城に乗り込む。ランスが魔人サテラを、ルークが魔人アイゼルを相手取る。どちらも遥か格上の存在であったが、何とかこれに勝利。先に決着がついたランスパーティーが城を登っていき、魔人ノスと対峙する。だが、ノスとの戦いの最中、シィルを守ったランスは重傷を負ってしまう。

 

「そして、その積み重ねが……魔人ノス、貴様を討つ!」

「人間風情が……」

 

 ランスとルークという二人を欠いた状態であったが、仲間たちは命を懸けてノスに立ち向かっていった。中でもリックの奮戦は凄まじく、後一歩のところまでノスを追い詰めるに至る。だが、ノスも意地を見せリックを撃破。最早これまでと思われた中、ルークとランスが戦線に復帰。

 

「英雄が二人いてもいいんじゃないか?」

「……ふん! 足を引っ張るなよ!」

 

 遂に二人の英雄が揃い踏む。ルークとランスは絶妙なコンビネーションを見せ、仲間たちがボロボロの状態まで追いやってくれたノスを見事消滅させたのだ。だが、まだ最後の敵が残っている。復活を遂げた先先代魔王ジルが。最低限の回復を済ませて最終決戦に臨んだ一同であったが、開幕と同時にかなみが体を貫かれるという衝撃的な幕開けとなった。

 

「それで……次はどいつだ?」

「俺だ!!」

 

 

3-6 魔王ジル

 

 次元が違う。そう評価するのもおこがましいほどにジルとの間には圧倒的なまでの力の差があった。一撃すら入れられない内に次々と倒れていく仲間たち。だが、そんな状況でもルークたちは勝利を諦めず立ち向かっていった。

 

「あんた、むかつくね!」

「この状況は予想がついていたんですかねー? 無様ですかねー?」

「届かせる! 例えこの身、朽ちようとも!!」

「リーザス赤の軍将軍、リック・アディスン。お相手させていただく!」

 

 これまで命令に従うだけであったフェリスが自ら参戦し、仲間内で最も未熟だと思われていたトマトが意外な活躍を見せる。アレキサンダー、リックといった強者も奮戦し、人類が決してルークとランスの二人だけではない事を証明して見せた。そして、その力を示したのは人類だけではない。

 

「貴様らの為ではない。ノスに騙され、ジルを復活させたまま……おめおめと帰ったのでは、ホーネット様に会わせる顔がない! ここで滅んで貰うぞ、魔王ジル!」

 

 敵であった魔人アイゼルとサテラ、ガーディアンのシーザーが援軍に駆けつけてくれたのだ。人類と魔人、一時的とはいえ敵対し合う二組が共闘するという奇跡がここに起こる。それはルークたちに更なる力を与え、徐々にジルを追い詰めていく。

 

「寛大な俺様が今回だけは譲ってやる……だから、必ずぶっ殺せ、ルーク!」

「その傲慢……驕り……それこそが……貴様の敗因だ! 魔王ジル!」

 

 そして、遂に魔王ジルを打ち取る。仲間たちのアシストの下、ルークが渾身の一撃を叩き込んだのだ。歓喜に沸く一同。だが、ジルは死んでいなかった。残っていた力でルークとランス、シィルの三人を異次元へと引きずり込む。同じ場所に飛ばされたルークとジルは一触即発状態。そんな中、アクシデントが起こりルークとジルは互いの過去の記憶を見てしまう。重く、苦しく、人類を怨嗟するような過去。それは、どこか似通っていた。

 

「理解できんな……私には……お前の考えが理解できん……」

「お前は……人間に何かを期待し、待っていたんじゃないのか?」

 

 人類に絶望し、魔王の道を進んだジル。人類を見捨てず、共に歩んでいく道を決めたルーク。似た道を歩みながら、違う道を歩んだ二人は互いに思うところがあった。だからこそ、異次元からの脱出の直前、ルークは敵であるジルに手を伸ばしてしまった。

 

「ジル……お前がもう人間を蹂躙しないと約束できるのならば、一緒に来い!」

「私は魔王だ。施しは受けん。哀れみも受けん。くくく……はっはっは!」

 

 だが、その手は振り払われる。ルークは元の世界へと帰還し、ジルは異次元に残る事となった。もし運命を司る者がいるのだとしたら、その者は判断したのかもしれない。『今はまだ』、ジルがこの世界から放たれるのは早いと。

 こうして長く苦しいリーザス解放戦は終わりを告げた。解放軍は見事リーザスを奪還し、リア王女主導の下、復興作業が進んでいった。だが、ルーク、ランス、シィルの三人は戻ってこなかった。異次元から脱出したものの、行方不明になってしまっていたのだ。仲間たちは決意をする。今度は、自分たちがルークたちを助けると。

 

 

【重要ポイント】

・ルークにとってランスは妹の忘れ形見のような存在

・ルークはかつて十年近く魔人ホーネットと過ごしていた

・ルークの目指すものは、人類と魔人の共存

・ランス、魔剣カオスを手に入れるが戦後はセルの監視下に置かれる

・ヘルマン皇子パットン、様々な思惑の下ヘルマンに戻れなくなる

・魔人アイゼル、生存。戦後はホーネット派に戻る

・魔人ノス、消滅。魔血魂はリーザスにて保管される

・魔王ジル、異空間に取り残される

 

 

 

-第4章 教団の遺産- 全46話

 

4-1 空中都市の冒険

 

 ジルの異空間から脱出したルーク、ランス、シィルの三人は空中都市イラーピュに飛ばされていた。早々に合流し、フェリスを加えて四人で脱出手段を探る一同。そんな彼らを助けるべく、地上でも動きがあった。

 ルークたちがイラーピュにいるのを発見したリーザス、ゼスの二国がそれぞれ救助隊を派遣。リーザス救助隊はリックやレイラ、アレキサンダーや志津香といった手練れを含むリーザス自由都市混合軍。ゼス救助隊は四天王のナギ、四将軍のサイアス、ウスピラ、カバッハーンを中心とした大戦力。これだけの大戦力であれば、難なくルークたちを連れて帰る事が出来るはずであった。

 だが、平穏には終わらない。それより少し早く、ヘルマン軍が空中都市の調査に部隊を派遣していたのだ。その中には解放戦でルークが殺したトーマ将軍の息子ヒューバート、トーマを慕っていたイオの二人が含まれており、出会えば一触即発となる事は自明の理であった。

 また、魔人も空中都市の戦いに参戦する。ホーネット派からは魔人メガラスとハウゼルが調査の名目の下に派遣され、ケイブリス派からはパイアールが闘神という兵器を調べに乗り込んでくる。乱戦が始まる。

 

「とりあえず、美女のピンチだったから救ってみたが……判断は正しかったかな?」

「つまりはだ……どちらも敵という事だな!」

 

 ルークたちの救助に来たリーザス軍とゼス軍、そして調査にやってきていたヘルマン軍が鉢合わせてしまう。超高レベルな乱戦の中、ヘルマン軍はヒューバートの判断で早々に撤退をする。残されたリーザス軍とゼス軍は両方と接点のあったセルの仲介の下一時休戦。互いの目的が同じと知ったため、一時的に手を取り合う事となった。

 

「お前、中々強いな。これほどの使い手に会ったのはゼスの軍人以外では久しぶり……いや、初めてかもしれない」

「貴女もね……四将軍や四天王という訳ではないんでしょう?」

「(あの二人……なんだろう。全然違うのに、どこか似ている気がする……)」

 

 そして、この冒険の中四天王のナギと志津香は互いに認め合い、交流を持つ事となる。だが、志津香は知らなかった。彼女の名はナギ・ス・ラガール。両親の仇であるラガールの一人娘だという事を。そして、ナギも知らなかった。志津香が自分の殺すべき相手である『魔想の娘』である事を。この悲しきすれ違いは、後に悲劇へと昇華する。

 

 

4-2 宿命の螺旋

 

 ルークと合流を果たした救助隊であったが、油断を突かれヘルマン軍にパーティーを分断させられてしまう。また、脱出用の飛行艇を魔人パイアールに破壊され、脱出の手段もなくなってしまった。

 トーマを殺した相手がルークと知ったイオは復讐に狂い、ランスを洗脳してルークへとけしかけてくる。レベル差のあったルークはランスを悠々と倒したが、イオは取り逃がしてしまった。ひとまずイオは置いておき、ルークたちは離れ離れになった仲間たちを順々に見つけていく。だがその道中、ヘルマン軍が復活させたという最強の闘将と出くわす事となった。ルークと長く深い因縁で結ばれる事となる、最凶の宿敵と。

 

「私はディオ・カルミス。お初にお目に掛かる。殺し以外は興味がない、戦う為に生まれてきた存在だ」

「決めたぞ、貴様は必ず俺が殺す!」

「無理だな……私がお前を殺すのだからな」

 

 ディオの圧倒的な力の前にルークは剣を折られ、腹を手刀で貫かれるという完敗を喫する。どんな時でも最終的には勝利を掴んできたルークの敗北は仲間たちにとって衝撃的なものであった。ディオはルークとセスナの二人に致命傷を与え、なおも戦闘を続行する。ランス、フェリス、リック、サイアス、ウスピラといった手練れが一斉にかかってもなお勝ち目の見えぬ相手。敗色濃厚な空気の中、意外な行動を取ったのはルークの旧友であるサイアスであった。

 

「サイアス!」

「ウスピラ。地上に戻ったら、デートくらいはしてくれるかい?」

 

 危険な状態のルークたちを逃がすべくサイアスは一人で残り、ディオの足止めを実行した。半壊したパーティー。ロゼの治療を受けながらも生死の境を彷徨っていたルークであったが、そんなルークの耳に聞こえてきたのは意外な人物の声であった。

 

「迷うなよ。私とは別の道を歩むと、貴様自身で決めたのだろう。ならば、突き進め。その先に破滅しかないとしてもな……ククク……」

 

 魔王ジルの後押しを受け、ルークは前へと進むことを決意する。そして時を同じくして、ディオから逃げ延びたサイアスも意外な者たちに助けられていた。魔人メガラスとハウゼルの二人だ。人類と魔人の接点がまた一つ生まれようとしていた。

 

 

4-3 加速する狂気

 

 ディオに殺されかけていた闘将ミスリーを助けるべく、サイアスたちが救援に入る。尋常ではない速さを誇る魔人メガラスの前に膝をつきかけたディオであったが、戦いの中で恐るべき成長を見せ、メガラスと互角に渡り合う。最終的にはディオが撤退する運びとなったが、メガラスに不安を感じさせるには十分な出来事であった。

 一方、ルークたちは仲間たちとの合流を続け、道中K・Dの協力の下に新たな剣を手に入れる。ブラックソード。かつての愛剣、妃円の剣の魂も受け継いだ魔法剣である。

 

「良かった……無事で……本当に……」

「何よ……そんなに心配してくれたの……? 馬鹿ね……死なないわよ……あんたと、父の仇を討つって約束があるんだから……」

 

 ルークが最も心配していた志津香との合流も遂に果たす。また、フロストバインと真知子の手によって生まれた人口生命体あてな2号も仲間に加わり、一行は徐々に戦力を元の状態に戻していった。

 

「フェリスの事なんだが……もう少し優しくはしてやれないか?」

「ふん、俺様の使い魔をどうしようが俺様の勝手だろう?」

 

 フェリスの事を巡ってルークとランスの間に不穏な空気は流れたものの、概ね順調に冒険を進めていくルークたち。道中、魔女アトランタに捕らえられていた人々を救出。その中には戦力となるエムサという魔法使いも混ざっていた。だが、強化されたパーティーを嘲笑うかのようにディオが強襲する。ブラックソードを手にしたルークは以前よりもディオに食い下がる事が出来たが、それでもディオの力は圧倒的。またもこちらの強者たちを一蹴し、ルークたちの集めていたカードキーを奪って逃走。この際、アトランタに捕らえられていた少女たちの一部を惨殺されたため、ルークたちはまたも敗北感に包まれるのだった。

 

 

4-4 奪われた闘神

 

「我は闘神ユプシロン。指令、契-337を実行する。我が使命は、人類と魔人の撲滅」

 

 ルークたちから奪ったカードキーによってヘルマン調査隊は闘神ユプシロンを復活させてしまう。だが、それは彼らの手に負えるものでなく、人類を抹殺すべく動く凶悪な兵器であった。ヘルマン調査隊の実権を握っていたビッチがユプシロンに惨殺され、ようやく自由に動けるようになったヒューバートたちは何とかユプシロンの下から逃亡する。だが、その前にディオが立ちはだかった。その目的は一つ。かつて自分を封印したフリークの抹殺。

 

「に、逃げでぐで! ヒューあにぃ……今のうちだ……逃げでぐでぇ!!」

「「てめぇ、あたし(私)らの命の恩人に何してくれたんだこらぁぁぁぁ!!」」

 

 デンズが足止めをしてヒューバートを逃がした後、意外な二人が援軍に駆けつけた。これまで何度かルークたちの前に立ちはだかっていたへっぽこ二人組、シャイラとネイの二人だ。とても敵う相手ではない。だが、飛び出さざるを得なかった。成長しているのは、決してルークたちだけではないのだ。

 

「ジジイ!」

「戦いとは半歩先を読むものじゃよ」

 

 カバッハーン、アレキサンダーという強者の到着が間に合い、ディオから逃亡する事に成功したシャイラたち。闘神復活という恐るべき事態を伝えるべく、ルークたちの下へと急ぐ。だが、もっと恐るべき事態は進行していた。

 

「貴方を倒して、闘神都市を乗っ取ろうかと」

「抹殺する!」

 

 魔人対闘神。雲の上の対決を制したのは、魔人パイアールであった。闘神ユプシロンを意のままに操れるよう改造し、またその魔力供給源として逃げ遅れていたイオを利用。最早手の付けられない化物へとユプシロンは生まれ変わっていた。

 この事態に遂に人類が動く。全ての仲間と合流を果たした一同は互いに手を取り合う。リーザス、ゼス、ヘルマンの敵対する三大国が手を結んだのだ。更に、魔人ハウゼルも共に戦うと約束。人類の統一、魔人との共闘というルークの夢が小規模ながらも達成する運びとなった。

 

「ああ……これだ……この光景が、俺が目指しているものだ……」

 

 歓喜に打ち震えるルーク。その背中を支える、ルークの夢を知る志津香、かなみ、フェリスの三人。人類と魔人の共存。途方もない夢であるが、決して叶わないものではないのかもしれない。

 

 

4-5 覚醒する者たち

 

 決戦が始まる。ユプシロン撃退組、魔気柱破壊組、脱出手引き組の三組に分かれたルークたちだったが最初に窮地に陥ったのはサイアス率いる魔気柱破壊組であった。彼らの前に現れたディオは以前出会った時よりもその力を増していた。トマトの身体を手刀で貫き、アレキサンダーの利き腕をへし折る。圧倒的な劣勢の中、彼に成す術のない魔法使いと重傷の者を逃がし、ヒューバートたちヘルマン勢がディオへと挑む。

 また、ユプシロンに挑んでいたルークたちも劣勢を強いられていた。切り札であったフェリスとハウゼルは完全に封じられ、パイアールの圧倒的な手数を抑える事が出来ず、徐々に傷ついていく。しかし、負ける訳にはいかない。

 

「どんな絶望的な状況であっても、二度と諦めたりしない! そう誓ったのよ!!」

「……っ……うぁぁぁぁぁ!!」

「俺は……天才じゃなくても……親父に届かなくても……この剣で、あいつらを護ると誓ったんだよぉぉぉぉ!!」

 

 レイラ、セスナ、ヒューバート。一流ではあるが、大陸最強クラスと比べると見劣りしてしまう。そういった面々が意地を見せる中、その気持ちに呼応するように二人の強者が戦場に到着する。魔人メガラス、ハンティ・カラーの二人だ。二人の強者はまるで示し合わせたかのように同じ言葉を口にした。

 

「「覚悟は出来ているな!?」」

 

 激戦の末、ハンティは何とかディオを撃破。脱出すべくその場を後にするハンティたちであったが、ディオは生きていた。ボロボロの身体を引きずり、ゆっくりとその場を後にするディオ。垣間見えた彼の過去は狂気に彩られていた。

 ユプシロンの方もメガラスの到着で一転優勢になった。だが、パイアールの奥の手によりユプシロンにパイアールが搭乗。更にシィルまでユプシロンの中に取り込まれてしまった。シィルの魔力を使って自動回復を繰り返すユプシロン。自分のせいで劣勢になっていると感じたシィルは魔力を暴走させ、自爆にも似た形でユプシロンから脱出をする。だが、その代償は大きかった。ピクリとも動かないシィルを抱くランスに対し、パイアールは言ってはならぬ事を口にする。

 

「早く片付けてくださいよ、そのボロ雑巾」

「おい、貴様。今、俺様の女に向かって何て言った?」

 

 魔人ですら恐怖を感じる程の威圧を出すランス。だが、魔人であるパイアールを殺す事は出来ない。魔剣カオスの重要性を再認識しつつ、ランスはユプシロンへと向かっていく。それに続くように、ルークたちも一気にユプシロンへと攻め込んでいった。

 

「炎だけは! プライドにかけて! 誰にも負ける訳にはいかないんだよ!!」

「ボクが……ボクが闘神都市の歴史を終わらせるんだぁぁぁ!!」

「お前を仕留めるのは俺じゃない……決めろ、ランス!!!」

「鬼畜アタァァァック!!」

 

 サイアス、サーナキアの二人が持てる力以上の物を捻り出し、道を切り開く。そして、今回は最後に決めたのはルークではない。ランスの新必殺技が炸裂し、ユプシロンは遂にその動きを止めたのだった。

 何とかすんでのところで脱出したパイアールは無敵結界を過信して特攻を仕掛けてくる。だが、結界を無効化出来るルークによって右手を切断されるという痛手を負う。

 

「ルーク、貴様の名前は覚えたぞ! 必ず……必ずボクの手で殺す!! ひぐっ……ひぐっ……この傷を与えた事を後悔させてやる!! うぅ……」

 

 新たな因縁が生まれる中、一行は脱出すべくこの場を後にする。その道中、イオがルークに襲い掛かってきた。皆を先に逃がし、イオと対峙するルーク。その思いを正面から受け止め、イオの説得に成功したルーク。地上に戻ったらトーマの話を聞かせてくれ。そう涙ながらに差しのべられたイオの手は、ルークの手を掴む事無く血溜まりへと落ちていった。イオの身体を背後から貫き、狂気に彩られた笑い声をあげる最凶の宿敵。

 

「ディオぉぉぉぉぉ!!!」

「クカカカカ!! 見つけたぞ、ルーク!!!」

 

 

4-6 背中を押す者

 

 互いに満身創痍の中、激闘が繰り広げられる。打ち鳴らされる剣戟、飛散する血しぶき。そんな戦いの最中、ディオはある事に気が付く。ルークが自分と良く似ている事を。

 

「私は貴様の夢を認めてやろう。どれ程馬鹿げていようと、どれほど狂っていようと、それを掴み取る力があれば何も問題はない! 私はそうして生きてきたぞ!!」

「屍の山を築いてか……?」

「ならば、貴様の夢に屍の山は築かれないとでも言うのか? ククク……私と貴様は似ているよ。同じ狂人だ」

「たとえ貴様と似ていても、たとえ貴様と同じ狂人でも……人類の為に、俺は貴様を殺す」

 

 ルークとディオが激闘を続ける中、他の者たちは次々と脱出を遂げていった。ヒューバートたちはユプシロンが最後の力を使って道を切り開き、防空ドラゴンのキャンテルと共に脱出。志津香たちは脱出用の飛行機で次々と脱出していたのだが、ルークたち用に残していた最後の飛行艇を魔女アトランタたちに奪われてしまい、彼らの脱出手段を失ってしまう。脱出手段の無い中、それでもルークたちを待つべくその場に残るかなみ、志津香、マリア、ナギの四人。他にも多くの者たちが残ろうとするが、それをロゼが止める。人数が多くなればなるほど、脱出手段を見つけるのが難しくなるからだ。最終的にメリムとフェリスを加えた六人がその場に残り、ルークたちの帰りを待つ事となった。

 

「ジルは貴様とは違う!!」

「何を判った風な事をぉぉぉ!!」

 

 ルークとディオの決戦も終わりの時が近づく。優勢に立っていたのは、ディオであった。意識が朦朧としているルークにトドメを刺すべく駆けるディオ。瞬間、ルークは彼の動きがスローに見えた。響いてくる魔王の声。これが、彼女の見ている世界。足を動かす。これが、彼女の移動術。

 

「奴は似ていないよ。私にも……貴様にもな……」

「こんなもの……私は認めぬぞぉぉぉ!!」

「似ていないよ……俺も、ジルも、お前とはな……」

 

 ジルの技は人間の身体には負担の大きい諸刃の技であったが、ディオを倒すためには必要な代償であった。新技、韋駄天速で遂に宿敵ディオを破ったルーク。イオの亡骸をその場に残し、ランスとシィルの二人と合流して脱出を目指す。志津香たちの待つ場所までやってきたルークたちは、脱出手段を探すべく奔走。最終的にはK・Dがドラゴンの姿に戻り、その背に乗せてくれ、無事脱出を遂げるのだった。

 

「ルーク、ルーク、ルーク、ルーク、ルークぅぅぅぅ!! 殺す、殺す、殺す、殺す、殺す!! 奴は私の手で必ず殺す!! 皆殺しだ! 人間もモンスターも、生きとし生けるものは全て皆殺しだ!!!」

「PG-7。奴を回収して下さい。面白そうじゃないですか、あいつ」

 

 強者が惹かれ合うように、狂者もまた惹かれ合う。ルークに敗れ、闘神都市で朽ちるはずであったディオはパイアールによって回収される。また、同時にイオの亡骸も回収。魔人パイアール、闘将ディオ、復讐者イオ。宿命によって結び付けられた三人は、またいずれルークの前に立ちはだかる事となる。

 こうして、空中都市の冒険は影を残しながらも終わりを告げるのだった。

 

 

【重要ポイント】

・ルーク、魔人メガラスとハウゼルに認められる

・ルーク、魔法剣ブラックソードを手に入れる

・ルークとディオ、宿命が生まれる

・ルーク、パイアールに目をつけられる

・ディオ、パイアールによって回収される

・志津香とナギ、互いの宿命を知らずに出会ってしまう

・サイアス、魔人ハウゼルを自らの目標に据える

・セスナ、シャイラ、ネイの三人、ペンタゴンへ入隊

・闘将ミスリー、サイアスの下へ

・ヒューバート、デンズ、フリークの三人、パットンと合流

 

 

 

-第4.1章 ルークのお礼参り- 全10話

 

4-7 絆、深め合う

 

 闘神都市から帰還したルークは、世話になった人々に礼を言うため諸国を回る。初めに訪れたのはリーザス。各将軍との交流を深めたり、闘神都市で世話になった次世代の強者チルディと士官学校を訪れたりする中、ルークは女王になったリアと侍女のマリスに重要な情報を打ち明ける。それは、自分が何故魔人の事に詳しいのかという理由と、近い内人類は結束して魔人と戦わねばならぬというもの。

 

「(もし真実だとすれば、これを語ってきたという事は多少信頼されているのかしら? あるいは、リーザスの力が必要なのでやむなくか。どちらにしろ、リーザスとダーリンの障害になるようなら排除させて貰うわ)」

 

 これを聞いたリアは、今までルークに抱いていた疑念が解消すると同時に、新たな疑念を抱く事になる。信用に足る人物ではある、だがもしランスの害になるような事があればこの男を殺さねばならない。それがリーザス国女王リアの出した結論であった。

 

 次に訪れたのは自由都市。まずは闘神都市の墜落した場所を訪れ、以前からの知り合いであったパランチョ王国総隊長のピッテンと再会を果たす。そのままカスタムの町へと足を運び、既に長い付き合いとなっている少女たちと楽しい時間を過ごす。志津香やラン、真知子といった面々との絆をより深くしたが、最も特筆すべきはロゼとの事柄だろう。

 

「私はアンタの道を否定しないし、する気もない。良いじゃない、狂人上等」

 

 ルークは殆ど誰にも話していない自身の夢、人類と魔人の共存をロゼに打ち明ける。それに対し、ロゼは自分もAL教の司教という名誉ある立場に任命されたがそれを断った事を明かす。どちらも普通の人には到底理解できない狂人の行動だ。だが、それの何が悪いとロゼは言ってのける。頷くルーク。初めはロゼの事をただの不良神官としか思っていなかったルークだが、ここに至って彼女は最も信頼できる仲間の一人にまでなっていた。

 

 ルークが最後に訪れたのはゼス。ここでまた一つ運命的な出会いが起こる。四天王山田千鶴子との会談の場に突如ゼス国王ガンジーが現れたのだ。

 

「お前の目指す物は何だ?」

「……俺の目指す物は、世界を一つにまとめる事だ」

「私と同じとはな……」

「似て非なる物の可能性もあるがな……」

 

 これまでの要人と違い、魔人との関わりについてストレートに尋ねてくるガンジー。それを上手く躱しながら、ルークは自分の見据えるものをガンジーに打ち明けた。大陸の統一。そこに魔人が入るか否かという違いはあるが、似たものを目指している二人は互いに何かを感じ合う。いずれまたこの男とは会う事になる。そう互いに感じながら別れるのであった。

 その後、ゼスの面々と慰安を兼ねた温泉旅行へと行く事になったルーク。その出先には様々な人々が集っていたのだが、奇跡的なニアミスとなる。そしてその帰り道、カバッハーンから手渡された新聞を見たルークは苦笑する。

 

「その手には解放戦時にも愛用していた漆黒の剣が握られており……ん、ブラックソードは闘神都市で手に入れたのだろう?」

「リアめ、やってくれる……」

 

 リーザス解放戦の英雄と呼ばれる人物は二人いた。ルークとランスだ。それが記憶の風化と巧みな情報操作によって、いつの間にやらルーク一人に仕立て上げられていたのだ。ランスの存在を諸国に知られたくないリアの思惑によるものである。これによって、人類最強トーマを倒したルークの名は大陸中に知れ渡る事となる。

 温泉旅行を終えアイスの町へと帰ってきたルークは、セスナからの依頼でゼスの悪徳売春宿を潰す事になった。難なく売春宿を潰し、アルフラら少女たちを救出。だが、少女たちを連れての国外脱出は難しく、同様に売春宿の偵察に来ていたペンタゴンの幹部に救出した少女たちを預ける事になった。

 

「妹は……ウルザは地味な俺と違って本当に凄いぞ。あいつはペンタゴンを……いや、ゼスの未来を必ず変える」

 

 その際、ビルフェルムという男から彼の妹、ウルザの話を聞かされる。ゼスの未来を変える可能性を秘めているという傑物の少女。いつか巡り会いたいものだと思いながら、ルークは家路につくのであった。

 

 

【重要ポイント】

・リアとマリス、ルークが魔人と繋がっていた理由を知る

・ロゼ、ルークの夢を知るもそれを受け入れる

・『盗み聞きの魔女』と呼ばれる女性、ルークとロゼの話を盗み聞いてしまう

・ガンジー、ルークに一目置くも警戒は続ける

・『解放戦の英雄』ルーク・グラントの名前が大陸中に知れ渡る

・ルーク、ペンタゴンの人間と出会う

 

 

 

-第4.2章 お薬工場を救え!/エンジェル組- 全19話

 

4-8 ルーク不在の冒険

 

 闘神都市から帰還して二か月、ランスの生活費は底をついていた。仕方なく報酬の良い依頼を受ける事にしたランス。この際、闘神都市で死にかけたシィルを家に残し、お供にあてな2号を連れて行く事にした。少し鈍っているとはいえ、闘神都市で上げたレベルはまだ残っている。楽勝だと余裕をもって行動するランスだったが、受領したのは一筋縄ではいかない依頼であった。

 大手製薬会社ハピネス製薬を舞台に繰り広げられる事件の数々。冒険者の暗殺、モンスターの襲来、あそこのでかい坊主、キサラやローズといった美人の姉ちゃんたち、へたれバードとの再会、そして、謎の仮面戦士。

 

「俺の名はブラック仮面!!」

「ブラック仮面だと……!?」

 

 蝶型の仮面をつけ、何故かルークと同じ技を使う謎の男ブラック仮面。そして、彼と似たような仮面をつけたもこもこ髪の女性、ピンク仮面。彼らのサポートにより、ランスは徐々に事件の真相へと近づいていくのだった。

 敵の狙いは、ハピネス製薬に囚われている聖女モンスターであったのだ。アジトを突き止め、乗り込むランスたち。それを迎え撃つのは、大陸でも有名な暗殺者集団である摩利支天暗殺組。少数精鋭ながら、一人一人が手練れ揃いであった摩利支天たちに苦戦するも、何とか突き進むランスたち。だが、ここで思わぬ事態が起こる。敵幹部のアーニィの一撃を受け、ランスが致命傷を負ってしまったのだ。

 

「俺は……また……あいつの……残した者も……守れないのか……お前は殺すぞ!」

「馬鹿野郎……ルーク! お前はアーニィと話をするんじゃなかったのかよ!!」

 

 血溜まりに沈むランスを見て絶望するブラック仮面。怒りのままにアーニィを殺そうとするが、その彼を止めたのはフェリスであった。死にかけていたランスであったが、聖女モンスターであるウェンリーナーの治療によって何とか一命を取り留める。

 正気を取り戻したブラック仮面はアーニィと会話をし、互いの目指すものを打ち明け合う。人類と魔人の共存、人類とモンスターの共存。それは、よく似た夢であった。彼女を仲間に誘うブラック仮面であったが、その誘いは断られる。いずれまた、胸を張って隣に並べる時が来れば、仲間に加えて欲しい。そう言い残し、似た夢を持つ女性は去って行くのだった。

 

「究極なる闇! 摩利支天ブラック!!」

「ブラック仮面、颯爽と参上!」

 

 ランスは敵の親玉であるアーチボルトに挑み、ブラック仮面は摩利支天たちと決着をつける事になった。ピンク仮面、エムサブルー、ざしきわらしレッド、フェリスグリーンという頼りになる仲間たちを携え、何とか勝利を収めたブラック仮面。一方ランスも、レベルの違いを見せつけるかのようにアーチボルトに圧勝。こうして、事件は無事収束を向かえたのだった。一部の者の胃に多大なダメージを残して。

 

「あはははははは!! なんだあの仮面は!? 馬鹿か、馬鹿なのかあいつは!? 駄目だ、腹が痛い……あはははははは、ごほっ、ごほっ……」

 

 ブラック仮面とは一体何者だったのか。それは、総集編ではなく本編を読めば判るかもしれない。

 

 

【重要ポイント】

・ルーク、ハピネス製薬との繋がりを得る

・キサラ、借金がなくなり妹のレベッカを助け出す

・摩利支天暗殺組、JAPANへ渡る

・アーニィ、モンスターとの共存という夢を叶えるべく旅へ出る

・致命傷でも治せる薬、幼迷腫。ルークとエムサが一つずつ貰う

 

 

 

-第5章 ひとりぼっちの女の子- 全18話

 

5-1 悲想

 

 冒険の最中、異空間へと迷い込んでしまったランス。シィルとあてな2号を引き連れて辺りを探っていたところ、妖怪たちの住む城下町へと辿り着く。その中でも一際目立つ城、玄武城。異空間からの脱出手段を求めて城へとやってきたランスたちを待っていたのは、何十年もの間この城に囚われの身となっている女性、リズナ・ランフビットとの出会いであった。

 リズナから異空間から脱出するための方法を聞いたランスたちは言われた通りに行動をした。脱出のためには城門にいるモンスターを倒す必要があるとの事。ランスは戦力としてフェリスを呼び出すが、彼女はフセイの日という悪魔特有の症状でかなり弱っていた。だが、フェリスを悪魔界には戻さず、酷使するランス。その他にも、道中惚れられた海苔子という妖怪を井戸へと突き落として瀕死に追いやるなど、いつもと比べて一回り酷い行動が目立つランスであったが、それは様々な理由が積み重なり苛立っていたからである。そして、その苛立ちはリズナの起こした行動によって最高潮へと達する。

 

「任せな。必ずランスは見つけてくる」

「フェリスさん、無理は駄目です!」

 

 モンスターを倒し、異空間から脱出できるようになったリズナはランスだけを連れて城を後にする。実はこの城、最後の一人を逃がさないようにする結界が張ってあったのだ。リズナの代わりに城に囚われてしまうシィル。そんな彼女を助けるべく、フェリスは重い体を引きずってランスを追いかけるのだった。

 

「ごめんなさい……置いていかないで……一人にしないで……」

「馬鹿が……最初から素直に話していれば、助けてやったのに……もう貴様など知らん!」

 

 ランスも自分一人を連れまわすリズナを怪しみ、真実をリズナの口から聞き出した。何十年も一人で囚われていたリズナが城から出たい気持ちは判る。彼女の親友である景勝というハニーに背中を押されての行動だというのも理解出来た。だがそれでも、シィルを危険に晒す行動を取ったリズナをランスは許す事が出来なかった。散々に犯した後にその場に放り、ランスはそのまま全速力でシィルの待つ玄武城へと戻って行った。そこに、ランスを呼びに来たフェリスと遭遇。苛立ちがピークに達していたランスは、それをフェリスにぶつけてしまう。

 

「(止めろ、ランス……今日は、今日だけは駄目なんだ……ルー……ク……)」

 

 ランスは知らなかった。フセイの日に人間と行為をなした悪魔は、100%懐妊するという事を。この悲劇はこれから後、重く、深く、ルークとランスの間に影を落とす事になる。

 

 

5-2 虚空の魔少女

 

 一方その頃、ルークはロゼやシトモネ、セシルといったいつもと違うメンバーを連れて異空間にある塔を目指していた。この塔の攻略が今回の依頼だったからだ。砂漠の主である鬼ババアを撃破し、塔の攻略も順調に進んでいた。だが、最上階でルークたちを待ち受けていたのはとてつもない化物集団であった。塔の主にして女の子モンスターを統べる存在、金龍。どこかの優秀な魔物使いが育てたバルキリー、バトルノート、雷太鼓の三体。治療役のクスシ。そして、異常なまでの強さを誇る最強魔女。ここまでの強敵がいると思っていなかったルークは仲間の選出に後悔をする。せめてもう一人、背中を預けられる強者がいてくれれば。

 

「ルーク殿、いきなり飛び出してきた形にはなるのですが……私の力は必要ですか?」

 

 そこに現れたのは、格闘家のアレキサンダーであった。リーザス解放戦、闘神都市での戦いを経て更に高みへと上り詰めたアレキサンダーは、ルークにとって何の心配もなく背中を預けられる数少ない仲間の一人となっていた。

 アレキサンダーの新技である合成属性パンチが唸り、ロゼがルークの持つブラックソードの秘密、魔法を吸収する事が出来る能力を解明する。新たな力を得たブラックソードで最強魔女を撃破し、ルークたちは見事勝利を収める。

 

「あたしはノス様の使徒、アミィだ」

 

 戦闘後、ルークは最強魔女から驚くべき情報を聞くことになる。彼女はリーザス解放戦で倒した魔人ノスの使徒だというのだ。更に、彼女はジルとノスから何かを命じられ、1000年以上もの間人間界に留まっているという。その理由を聞き出す事は叶わなかったが、代わりに別の情報を提供された。曰く、魔人の使徒には二人ほど特別な存在がいるという。魔人ではなく、魔王ジルがその魔人の使徒に抜擢した存在。ノスの使徒であるアミィと、ラ・ハウゼルの使徒である火炎書士。一体どういう理由からジルはこの二人を使徒にしたのか。一抹の疑念を残し、アミィはルークたちの前から姿を消すのだった。

 

 

5-3 救世主は一人じゃない

 

 ランスに置いて行かれたリズナは絶望の淵にいた。シィルに酷い事をしたこんな愚かな自分を救う者などいない。涙も枯れ果て、心身共に疲れ果てた状態でモンスターと戦うリズナ。確かにランスは彼女にとって待ち望んでいた救世主ではあった。玄武城から連れ出し、自分を引っ張ってくれた。だが、それだけでは足りなかった。リズナの闇は深い。引っ張り上げるだけでなく、後ろからそっと押してくれるような存在も彼女にとっては必要だったのだ。

 

「救世主……様……?」

「行こう。君にとって忌まわしき城の、その呪縛を断ち切りに」

 

 救世主は一人ではない。ルーク一行と出会ったリズナはこれまでの経緯を告白。それを聞いたルークたちはリズナを引き連れ、シィルとリズナの心を救うべく城へと戻る。彼女を長い間玄武城に縛り付けていたものは、魔人ザビエルの使徒が造り出した結界。そう、結界なのだ。そしてその結界を無効化出来る人間が、ここにいる。

 対結界の能力を使い、玄武城からシィルを救い出す事に成功したルーク。シィルは自分を騙したリズナの謝罪を快く受け入れ、彼女はパーティーに合流。いつの間にかランスと合流していた知り合いのコパンドンもパーティーに加え、一同は異空間からの脱出を目指す。

 その出口で脱出する冒険者を倒すべく待ち構えていたのは血達磨包丁という上級モンスターであった。普通の冒険者であれば十分に苦戦する敵だが、流石に相手が悪すぎる。ルーク、ランス、アレキサンダーという強者たちを含んだパーティーはこれを難なく撃退。無事、異空間から脱出を遂げた。

 

「なら、お前でいいや」

 

 脱出後、ランスはコパンドンからある問いかけを受ける。彼を好いている女性は多い。この場だけでも自分、リズナ、シィル、一応あてな2号と四人もいる。そんな中から誰を選ぶのか。その問いに対して、ランスはシィルの肩を抱き寄せて簡潔に答える。使い慣れた女の方が色々と便利。とても素直ではない、だがどこか気持ちのいい回答を聞きながら、ルークたちは帰路に着くのだった。

 

「いずれ時が来る。その時、お前は黄金像をかき集めて魔王城に戻れ」

「時とは……」

「天使が空を覆い尽くした時だ」

 

 ノスの使徒アミィ。彼女がジルから命じられた使命を、ルークたちはまだ知らない。だが、いずれ知る。天使が空を覆い尽くした時に。

 

 

【重要ポイント】

・ルーク、JAPANにある毛利家の伝手を得る

・リズナにとっての救世主はルークとランスの二人

・フェリス、ランスの子を懐妊

・バード、異空間に閉じ込められるも割と有意義な生活

・ノスの使徒アミィ、魔王ジルに命じられて人間界に1000年以上居座っている

 

 

 

-第5.5章 空白の一年- 全10話

 

5-4 揺れる世界

 

 大陸中に衝撃が走ったリーザス解放戦から早一年、世界はゆっくりと、だが確実に動いていた。ゼスのレジスタンス集団であるペンタゴンが内部で割れ、二つの組織に分裂。穏健派のアイスフレームと過激派のペンタゴンはそれぞれ別の道を歩む事となる。

 AL教にも動きがあった。四人しかいない司教の一人、パルオットが突如行方を眩ませたのだ。しかも、かつてカスタム四魔女事件で猛威を振るったフィールの指輪と共に。ロゼとも懇意にしており、人格者でもあるこの男が何の理由も無しに失踪するとは思えない。ロゼ自身もそう考え、積極的に捜索活動に身を投じるが、遂に彼を発見する事は出来なかった。

 魔人界にも激震が走る。人間界に侵攻しようとしていた魔人カミーラが多大な犠牲を出して撤退してきたのだ。これを受け、魔人ケイブリスは人間界に侵攻する魔人の増員を図る。ジーク、サイゼル、メディウサ、ガルティアの四人の魔人に加え、パイアールの進言によって一人の使徒が参戦する。それは、魔法大国であるゼスにとって、そしてルークにとって最悪の相手であった。

 

「紹介しましょう。ボクの使徒……最強の闘将、ディオ・カルミスです!」

 

 最狂の悪意はここに復活を遂げる。同時に、絶対正義である存在は消滅してしまう。人類の希望、勇者。その存在の消滅。

 人間界を逃げ回っている現魔王リトルプリンセスを殺すべく勇者アリオスが迫る。人間でありながら、護衛についていた魔人ハウゼルとサテラを圧倒するその強さは本物。これこそが、勝利を約束された存在、勇者なのだ。偶然その場に居合わせたルークは、ホーネットとの約束を果たすべく魔王リトルプリンセスの側に加勢。勇者アリオスと対峙する事になる。

 

「悪いが、パラライズの粉の痺れならもう知っている……」

 

 だが、この戦いにおいてルークは完全敗北を喫する。持てる全ての力を使ってもなお、勇者には届かなかったのだ。敗北を噛み締めたルークは、精神世界の中で魔王ジルにある誓いをする。もう誰にも負けない。今よりも高みを目指す、と。

 ルークに勝利したアリオスであったが、彼は自身の中の甘さから魔王リトルプリンセスを殺す事が出来なかった。そして、勇者の任期が来てしまう。20歳になってしまったアリオスは勇者でなくなり、持っていた力の大半を失ってしまう。勇者の従者であるコーラは次の勇者を探すべく旅立つが、元勇者ディオが生存している事による世界のバグが発生し、次の勇者は生まれていないのであった。これにより、人類にとって絶望的な勇者不在の期間が始まる。

 

 

5-5 家族

 

 悪魔フェリスは人間との子を成した罪により、重い刑に罰せられるところであった。誰も彼女を救う事は出来ない。上司の悪魔も、同僚の悪魔も、ただ指を咥えて見ている事しか出来ないのだ。それが、悪魔の法。生まれてきた彼の息子は母に謝る。生まれてきて、ごめんなさいと。そんな我が子の頬を打ち、フェリスは優しく彼を抱きしめる。そんな彼女たちに救いの手を差し伸べる者はいない。そう、本来ならばいないはずであった。だが、この世界は他の時間軸と違い、ある男が生き延びている。彼女の主で、仲間で、掛け替えのないパートナー。

 

『俺はもう、フェリスを使い魔として見ていない。大切な仲間だ。だからこそ、放ってはおけない』

「来い! フェリス!!!」

「ルーク……頼む……私たちを助けてくれ……」

 

 刑執行寸前でルークに助け出されたフェリスは、息子であるダークランスと共にルークに保護され、彼の家に身を寄せる事となった。だが、まだ安心は出来ない。悪魔狩りをしている天使や彼女を殺すべく追ってくる悪魔の存在がある。それでも、ルークは彼女と子供を守り抜く事を誓った。

 しかしこの出来事は、ルークとランスの間に影を落とす事となる。フェリスの懇願により、子供がいる事をランスに伝えるのを先送りにしたルークであったが、内心穏やかではなかった。妹の忘れ形見であり、今までランスの行動に甘い態度を取っていたからこそ、この悲劇は起こった。ルークとて無関係ではない。そしてこの波紋は、いずれ大きな衝突へと昇華してしまう事になるのを、今はまだ誰も知らない。

 

 

 

【重要ポイント】

・ルーク、アリオスに完全敗北。より高みを目指す事を決意

・ルークと魔王リトルプリンセス、互いにその存在を認識したうえで正式に出会う

・サテラのガーディアン、イシス復活

・アリオス、勇者引退。ディオのせいで後任の勇者は生まれず

・ディオ、パイアールの使徒として復活

・フェリス、悪魔界を追われる。息子と共にルークの家に転がり込む

・フェリス、天使のせいで家から出られず、その力も弱体化

 

 

 

 目まぐるしく過ぎ去って行ったLP0001~0003の3年間。だがそれは、二人の英雄の物語においてはほんの序章に過ぎなかった。

 これより世界は、更に激動の道を辿る。その先には一体何が待ち受けるのであろうか。

 

 

 

-第6章 ゼス崩壊-

 

 これより開幕

 


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