ランスIF 二人の英雄   作:散々

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第162話 アイスフレームのリーダー

 

-ゼス 奴隷観察場 見学室 二階-

 

「ぷふっ、これは驚きました。まさかルーク殿とシィル殿がお知り合いとは」

「同じギルドに所属している冒険者仲間です。こちらも驚きましたよ」

 

 ラドンが心底驚いた口調でルークに話しかけてくるが、驚いたのはルークも同じ。まさかこんな偶然があるとは。キースギルドに流れてくる早い者勝ちの依頼であればこういった事態もあり得る。リーザス誘拐事件やカスタム四魔女事件がそうだ。だが、今回はルーク指名で来た依頼。ランスたちが受けられる依頼ではないはず。それなのに何故シィルがここにいるのか。

 

「お知り合いであるなら丁度いいです、ぷぷぷっ。実は……」

「ルークさん!」

「んっ……?」

 

 ラドンとの会話にシィルが割って入ろうとしてくる。これは珍しい事だ。平時の彼女であればこのような強引な事はせず、用事があったとしてもちゃんと話が終わるまで待っているはず。見れば、表情も真剣そのもの。短い付き合いではない。何かあった事は容易に察する事が出来た。

 

「ラドン長官、失礼。先に彼女と話をさせて貰えますか」

「ぷふっ?」

「(……失礼な男。やはり解放戦の英雄とはいっても、魔法の使えない俗物でしかないようね)」

「(ふむ……)」

 

 ルークが軽く頭を下げてからシィルの方に向き直る。当然、ラドンたちからしたら面白い態度ではない。まさか自分にそんな態度を取るとは思ってもいなかったのだろう。呆気に取られたようなラドンと、目に見えて不快な顔をするエミ。それに対して、ズルキ長官は表情を崩していなかった。内心思うところはあるだろうが、アルフォーヌ親子のようにそれを簡単に表に出すような事はしないようだ。

 

「シィルちゃん、何かあったのか?」

「こんなところで会うなんて奇遇ね、シィルちゃん」

「あ、シトモネさんもお久しぶりです」

「久しぶり。で、ランスは? 当然一緒なんでしょう?」

 

 シトモネが身構えるような仕草で周囲を見回す。そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ、といった感じのシィルの言葉を待っていたのだろうが、返ってきたのは予想外の言葉であった。

 

「ランス様を助けて下さい!」

「へ?」

「ランスに何かあったのか?」

 

 呆けるシトモネと眉をひそめるルーク。ようやく話を聞いてもらえた事に安堵しつつ、シィルは言葉を続ける。

 

「ランス様がこの奴隷観察場に入れられてしまって……」

「ええっ!?」

「…………」

 

 驚くシトモネの声が部屋に響く。この施設がどういった代物なのかは事前に聞いている。わざわざこの場所に招いたのだから、ラドンはこの施設を自慢でもするつもりだったのだろう。他国の、魔法使いでない冒険者に対してだ。中々に軽率な行動だ。普段から招いている貴族と同じように、いつもの癖で同じようにルークを呼んでしまったのだろう。ルークは無言で窓際まで歩いていき、目線を下に落とす。

 

「(酷い光景だな……)」

 

 そこから見える光景は悲惨なものだ。巨大な魔獣が暴れており、奴隷が逃げ回っている。よく見ればあちらこちらに奴隷の死体が転がっている。逃げ遅れた者だろう。この光景を楽しみ、賭けにし、酒の肴にしている連中が確かにいるのだ。

 

「(あの魔獣、どこかで……)」

 

 下で暴れている魔獣を見ていたルークであったが、何か引っかかるものがあった。記憶の片隅にあった微かなもの。下で暴れているつぎはぎだらけの魔獣に見覚えがあったのだ。

 

「どうですかな? 自慢の観察場です、ぷふっ!」

「……ラドン長官、ランスという冒険者があの中にいるというのは?」

「ああ、本当ですよ。ぷぷぷ」

「彼は何かあそこに入れられるような行いを?」

「私の家に上がって下品な言葉を吐いた、というところですな。ぷぷぷふっ!」

 

 当然といった表情をしているラドンとエミ。それだけの理由でこのような虐殺の場に入れる。それを問題ないと思っている。これがこの国の魔法使いの現状だ。

 

「すみませんが、今すぐ出して貰えませんか?」

「ぷ? シィル殿の奴隷とも知り合いで?」

 

 シィルの奴隷という言葉を聞いて何となく事態を察するルーク。ランスはシィルの奴隷と勘違いされており、その勘違いと失礼な態度から奴隷観察場へと入れられた。軽くシィルの方に視線を送ると、小さく頷いてくる。

 

「え? シィルちゃんの奴隷……?」

「……ええ、何度か冒険を共に。戦力としては非常に頼りになる男ですので、どうか出していただきたい」

 

 シトモネの呟きが聞こえぬよう、被せる形でルークが言葉を発する。多分、これが正解のはず。シィルの方が奴隷である事がばれるのは得策ではない。

 

「ふむ……」

「ラドン長官、ここは出してあげては? その奴隷がどのような態度を取ったかは知りませんが、奴隷とはいえ客人の物を勝手に観察場に入れるのは失礼に当たる」

「……それもそうぷふね。おい、さっき新しく入れた奴隷を今すぐ出して来い。名前は……」

「ランスです」

 

 ラドンに命じられ、メイドが慌てて部屋から出ていく。ホッと息を吐くシィル。これで何とか無事に家に帰れそうだ。

 

「我儘を聞いて頂く形になって、申し訳ありません。そちらの方もありがとうございました」

「ズルキ・クラウンです」

「……サイアスの」

「ええ、叔父にあたります」

 

 ズルキの方から手を差し出してきたため、ルークもそれに応え軽く握手を交わす。ズルキ・クラウン。サイアスから少なからず話は聞いている。ゼスの金融長官であり、魔法使い至上主義の人間であり、そして……

 

「お噂はかねがね。これからも甥と良い付き合いをお願いしたい」

 

 拷問狂。爽やかな振る舞いに反し、この男は女性を嬲り殺す趣味を隠し持っている。サイアスが家に招かれた際、一度だけ拷問部屋を自慢されたらしい。だが、サイアスがあまり良く思っていないのを察し、以後はその趣味に関してひけらかしてこなくなったと言う。

 

「で、どうぷふか? 自慢の奴隷観察場は」

 

 その点ではこのラドンより聡明な男と言えるだろう。ズルキの方はサイアスが甥であるから多少脇が甘くなっていたのだろうと考えられるが、流石に初対面で魔法使いでない自分にひけらかしてくるのは隙がありすぎる。

 

「……とても広い施設ですね。これだけのものを建てるのは大変だったでしょう」

「初期投資はかなりのものでしたが、金は貯め込まずに回さないといけませんからな、ぷぷぷ! ああ、もしあれでしたらルーク殿も誰かに賭けてみてはどうです?」

 

 気を良くしたラドンを尻目に、ズルキは口元に手を当てながらルークを観察する。

 

「(ふむ……ラドンは気付いていないようだが、この男はこの施設を快く思っていないようだな。サイアスが心を許している友人と考えれば、それが普通か……)」

 

 甥のサイアスはゼスの魔法使いには珍しい思想の持ち主。あまり表立ってそれを見せる事はないが、魔法使い至上主義を良しと思っていない男だ。いわゆるガンジー派、敵だ。そのため、親戚ではあるがサイアスとズルキはあまり交流を持っていない。

 

「(家に招くのは得策ではないな。わざわざ敵を増やす事もあるまい。無理して関係を作るほどの人間でもないし、適当に流しておくか)」

 

 名の知れ渡っている『解放戦の英雄』とはいえ、その名に強い力が発揮されるのはリーザスと自由都市くらいなもの。ヘルマンでは英雄トーマの仇だし、ゼスでは所詮非魔法使いでしかない。ゼス国外の人間といざこざを持つのは得策でないと考え、ルークとの交流を適当に流す事に決めたズルキ。

 

「(先程からお父様に失礼な態度を……この男、気に入りませんわね)」

 

 涼しい顔をしているズルキとは対照的に、エミは明らかに苛立った表情をしていた。父を差し置いてシィルと先に話をした事、奴隷を解放するよう頼んできた事。それらはエミにとって非常に面白くない事柄であったのだ。

 

「お、丁度一人死んだようですね、ぷぷぷぷぷっ! あ、あそこにいる青髪の男は中々オッズが……」

「ラドン長官、そろそろ仕事の話に入らせていただいてもよろしいですか?」

「ぷぷ! そうでしたね。実は謝らなければいけない事があるのです……」

「謝らなければいけない事?」

 

 自分にも関係のある話になったため、シトモネもルークの隣に立って話に入ってくる。

 

「頼もうと思っていた依頼はそこのシィル殿が既に解決してしまったのです、ぷふー……」

「ええっ!?」

「なるほど……」

 

 これでこの場所にシィルがいたのに合点がいった。ランスとシィルはどこからか今回の依頼を受け、ルークよりも先に解決し、図らずもトラブルに巻き込まれてしまったのだろう。

 

「そういう事でしたか。いえ、お気になさらずに。無事解決したのであれば何よりです」

「そう言って貰えると助かります、ぷふっ。で、報酬の方は……」

「シィルさんたちに払ってあげてください。こちらは結構ですので」

「わざわざご足労いただいたのに申し訳ありませんです。せめてディナーくらいは召し上がって行ってください。今運ばせますので。奴隷たちを見ながらのディナーはまた格別でして、ぷぷぷっ!」

 

 ルークの返事を聞かずにパンパンと手を鳴らしてメイドを呼ぶラドン。正直この光景を見ながらの食事など勘弁願いたいところだが、あまりラドンとは事を荒立てたくない。ゼスの長官連中のクズっぷりは元々理解しているが、それでもおいそれと敵に回したくはない相手だ。だからこそ、あちらに非があると判っていてもランス解放には下手に出たのだ。となれば、ここは我慢して受けるのが正解か。

 

「そうですね。それでは、食事だけは……」

「ひゃっはー! おいおい、いつまで俺たちを無視し続けるつもりだー!?」

「ん?」

 

 ラドンの後方から声が響いてきたためそちらにルークが視線を移すと、そこに立っていたのは一人の美女。おかしい。今の声は確かに男の声であったはず。すると、彼女が手に持っていた本が言葉を発した。

 

「ケケケ。寂しいと魔導書は死んじゃうんだぜー!」

「人も死んじゃうのよー」

「ほ、本が喋った!?」

 

 聞こえてきたのは先程と同じ声。喋る本など珍しいどころの騒ぎではない。シトモネは大きく驚いているが、ルークとシィルは驚きながらも比較的冷静であった。恐らく、喋る剣カオスを見ていたためこういう代物に免疫があったのだろう。

 

「ラドン長官。この方は?」

「おや? ご存じありませんでぷふか?」

「メディアへの露出は控えめですから、他国の方が顔を知らないのも無理はありませんよ。ですが、名前なら聞いた事はあるはずです」

 

 ルークの問いかけが意外だったのか、ラドンは呆けた顔をしている。この女性はそれほど有名な人物なのだろうか。すると、ズルキが間に入ってきて手を大きく広げながら女性の名を口にした。

 

「この方はゼスが誇る四天王の一人、パパイア・サーバー様です」

「ええっ!?」

「…………!?」

「ぶいっ!」

「ぶい、ぶい、ビクトリー!」

 

 魔導書片手にビシッとポーズを決めるパパイアを見てルークたちは呆気に取られる。ゼス四天王。ガンジー王に次ぐ地位を持つ四人の魔法使いであり、その選任方法は完全実力主義。以前までは世襲制であったが、近年ガンジー王の改革によってそのようになったのだ。

 

「(この女性がサイアスや雷帝よりも……)」

 

 ルークが息を呑む。パパイアは明らかにまだ若い。ランスたちよりは年上だろうが、自分やサイアスよりは年下、恐らく20代前半といったところだろうか。だが、四天王であるという事は、即ち四将軍よりも上の実力者だという事。サイアスよりも、カバッハーンよりも、ウスピラよりも、目の前の女性は実力が上なのだ。

 

「どうも、ぴちぴちの22歳です♪」

「ケケケケケ、全然ぴちぴちじゃねー」

「……? あ、えっと、シィル・プライン。19歳です」

「ああ、別にそっちは年齢を答えなくてもいいのよー。ただちょっと……」

 

 ペコリとお辞儀をするシィルに対してパパイアはヒラヒラと手を振り、スッとルークの瞳を覗き込みながら妖艶な笑みを浮かべてきた。

 

「貴方は私の年齢を知りたがっているみたいだったから」

「…………!?」

 

 その言葉にルークは目を見開く。確かに思った。自分やサイアスと比べてまだ若い、20代前半であろうかと。それを確認するためにパパイアの顔や体を見はしたが、そこはルークも常識を弁えた成人。相手に気が付かれるような露骨な視線はしていなかったはず。だが、パパイアはそのルークの視線に気が付いていたのだ。

 

「……失礼」

「いえいえ」

「いいって事よー。ケケケ」

「ルーク・グラントです。こうして直接会えた事を光栄に思います」

「うーん……やっぱりどこかで聞き覚えがあるのよねー……」

 

 頭を下げるルークを眺めながら顎に手を当てるパパイア。まるで値踏みするかのような目つきだ。

 

「ねぇ、ルークって誰だっけ?」

「姐さん、あれだ。アトラスハニー」

「ああ、そうだ! サイアスっちと一緒にアトラスハニー事件を解決した冒険者だったわね。あの塔のお陰で研究意欲湧きまくりだったから感謝しているのよー」

「……!? パパイア様、その話は……」

 

 ルークが慌てて止めに入る。アトラスハニー事件にルークが関わっていた事はあまり知られていない。いや、そもそもアトラスハニー事件自体があまり公にされていないのだ。人類が作ったとは思えぬ技術、町一つ簡単に吹き飛ばす兵器、ならず者の魔法使いが事件の発端を作ったという事実、事件の解決後に町の一部を吹き飛ばして余計な仕事を増やしたへっぽこ魔法使い、どこをとってもゼス国にとっては秘密裏に処理してしまいたい内容であった。

 

「ぷ?」

「ほう……」

 

 ズルキが声を漏らしたところを見ると、アトラスハニーの事件自体は長官連中は知っていたのだろう。だが、それにルークが関わっていた事は知らなかった。あるいは、聞いたかもしれないが記憶の片隅にもなかったかのどちらかだろう。なにせまだあの頃は『解放戦の英雄』と呼ばれる前なのだから。

 

「ああ、オフレコだったわね。めんご、めんご」

「許してください、何でもしますからー!」

「何でもはいやーん♪」

「(どことなくロゼさんに似ている気が……)」

 

 ケラケラと笑うパパイアと魔導書にペースを崩されっぱなしのルーク一同。いや、それはラドンたち長官も同じであろうか。コホンとエミが一度咳払いをしてから口を開く。

 

「あちらに見える合成魔獣。あれはパパイア様がお造りになられたものですわ」

「えっ!? 人造の魔獣!?」

「そういえばさっき放送で……」

 

 シトモネとシィルが絶句しながら窓越しに階下の魔獣を見やる。つぎはぎだらけの魔獣がまた一人奴隷を殺している。あんなものを造り出せるとすれば、やはり疑いようのない大魔法使いという事になる。だが、ルークだけは少し違う事を考えていた。

 

「…………」

「ケケケ、ぷるぷる親父の娘っこちゃん。それ、外部に漏らしていい情報じゃねーぜ」

「あっ……」

「いやー、まあいいんじゃない? 実験の場所を提供してくれたんだし。以前は2級市民街で実験してたんだけどさ、人が死に過ぎて大事になっちゃったのよねー。ガンジー王と千鶴子の目も厳しくなっちゃってさー」

 

 窓越しに合成魔獣を見ていたルークであったが、パパイアとエミの会話を聞いて目を見開く。あの合成魔獣にどこか既視感があった。以前にもどこかで会った事があるような、そんな感覚。そして今、その既視感がある結論へと繋がった。

 

「パパイア様……」

「ん?」

「魔獣カースA、という名前をご存じではないですか……?」

「あらやだ、知ってるの? 今話してた試作型合成魔獣の事よ、それ」

「なっ……!?」

 

 魔獣カースA。かつてゼスの2級市民を恐怖のどん底に突き落とした魔獣であり、ラーク、ノア、ルークの三人で退治した強敵の名前だ。そう、ルークが合成魔獣に感じていた既視感はこれ。あの合成魔獣たちは風貌がカースAにそっくりだったのだ。

 

「試作1号機だからAって肩に書いておいたら、なんか勝手に市民の間で名前が付いていたのよねー」

「強くし過ぎて殺し過ぎちまったからな。あんときはガンジーや千鶴子にばれそうでやばかったぜ、ケケケケケ」

 

 多くの2級市民を虐殺したという事実を平然と語り合うパパイアと魔導書を見て、ルークは眩暈を覚えた。

 

「(違う……)」

 

 サイアス、カバッハーン、ウスピラ、アスマ、千鶴子。ゼスという国の思想は曲がっているが、それでも上にいる者たちは比較的話の通じる人間が多かった。だが、彼女は彼らとは違う。2級市民を『人』と思っていない。では、ラドンたちと同じなのか。それも違う気がする。彼女は、どこか狂っている。

 

「ラドン様、大変です!」

「なんだ、騒々しい!」

 

 その時、部屋にメイドが駆け込んできた。先程ランスを解放するように命じられていた女性だ。息も絶え絶え、ラドンに叱責されながらも言葉を続ける。

 

「ランスという奴隷ですが、どこにも見当たりません」

「ぷっ!?」

「そんな……ランス様……」

 

 

 

-奴隷観察場外-

 

「がはは、外だー!!」

「やっただす、ランス様! おら達、あそこから出る事が出来ただすよぉぉ!!」

 

 一方その頃、奴隷観察場の付近で盛大に叫ぶ男たちの姿があった。一人はランス、そしてもう一人は小柄な男。手には斧を持ち、安物の鎧を身に纏っている。そして特徴的なのはその顔。非常にくどく、親父くさい顔をしているが、実はこれでもまだ14歳だったりする。

 

「空がこんなに広いなんて……ランス様について来て本当によかっただす!」

「えぇい、引っ付くな。鬱陶しい!」

 

 抱き付いて来ようとした男を蹴り飛ばすランス。この男の名はロッキー・バンク。奴隷観察場内で他の奴隷からイジメにあっていたのを気まぐれで助けたところ、こうして懐かれてしまったのだ。こんなくどい男に好かれてもランスにとっては嫌なだけだが、シィルのいない今、身の回りの世話をしてくれる舎弟としてならそこそこに使えると判断し、斬り捨てずにこうして連れて歩いているのだ。

 

「それに、アベルトさんも本当にありがとうございますだ!」

 

 ランスに蹴り飛ばされたロッキーがめげずに起き上がり、くるりと後ろを振り返る。そこに立っていたのは、美形の男。軽装の鎧に軽めの剣、パワータイプではなく技巧派の戦士である事が見て取れる。名はアベルト。そう、ランスたちは面識がないが、かつてペンタゴンに所属していたアベルト・セフティその人である。

 

「罠ではなかったのだな」

「さて、どうでしょうか……貴方たちを安心させてさっくり、という事もありますよ」

「そうなのか?」

「冗談ですよ、そんな事しません。これからぼく達、『アイスフレーム』のエースになる人に……」

 

 アベルトとそんなやり取りをしながら、ランスは奴隷観察場内での出来事を思い出す。その類まれなる力からあっという間に奴隷たちの主になり、パパイアによって放たれた合成魔獣もねじ伏せていた。すると、どこからともなく現れたアベルトが声を掛けてきたのだ。

 

『ぼくはこの場所から脱出する方法を知っています』

 

 自らを『アイスフレーム』に所属するレジスタンスだと名乗ったアベルトは、ランスたちに交換条件を持ち出した。ここからの脱出を手引きする代わりに、自分たちのレジスタンスに所属してくれないか、と。聞けば、どうやらそのレジスタンスは深刻な人手不足らしく、こうして戦える人材を探しに奴隷観察場へとやってきたというのだ。

 

『ふん、別にお前の力を借りんでもこんなところからの脱出なぞ……』

『貴方に紹介したい女性もいるのですが』

『ほう……』

 

 判りやすい反応とは正にこの事。怪しすぎる持ちかけに初めこそ断ろうとしていたランスであったが、美人の女性を紹介すると言われて態度が変わる。それも、その女性の事をランスの好きにしていいとまで言ってきたのだ。更には次期アイスフレームのエースだなんだとおだてられ続けたため、ランスも考えを改める。脱出の為にアベルトを適当に利用し、その女性とヤったらとんずら、これで問題ないだろうという結論に至ったのであった。

 

「出来ればあの大きな体の人も誘いたかっただすが……」

 

 先程脱出に使った抜け穴を見ながらロッキーが呟く。奴隷観察場内でランス以外に唯一合成魔獣と渡り合えていた男がいた。青い髪の大男。かくいうランスたちも、後ろから突如襲ってきた合成魔獣に苦戦していた際、その大男に加勢に入ってもらっている。出来ればその男も一緒に誘いたかったのだが、気が付けばその男の姿は見えなくなっていたのだ。

 

「ふん、あんな男は放っておけ。それよりも、いつまでもこんな場所でうだうだしていても仕方ない。そろそろ俺様たちをその美女の下に連れて行って貰おうか」

「そうですね、では案内しましょう。ぼく達のアイスフレームに」

 

 

 

-奴隷観察場 見学室 二階-

 

「本当にいないのか?」

「はい。今も他のメイドが監視モニターで捜し回っていますが、どこにも……」

「残念ですわね。どうやら殺されてしまったようですわ」

「パパイア様。合成魔獣は人を食うのですか?」

「うーん、どうかしらねー……」

「そんな……」

 

 エミやズルキの心無い言葉に声を漏らすシィルであったが、ルークは顎に手を当てながら再度窓の向こうへと視線を落とす。確かに合成魔獣は手強そうな相手だが、それは並の冒険者相手の評価。以前に相手取ったカースAとは比べ物にならない、それこそモンスターで言えば初級程度の実力だろう。

 

「(あれにランスが殺されるとは思えんな……となれば、可能性は一つか)」

 

 シィルの顔を見るルーク。不安そうな顔をしている。シィルとて合成魔獣程度にランスが殺されるとは思っていないだろうが、それでも万が一という事がある。その不安に今にも押し潰されそうなのだろう。

 

『シィルを悲しませたくない……』

 

 ほんの一瞬、脳裏をある女性の姿が過ぎる。一人の子を成した、悪魔の女性の姿が。一度小さく息を吐き、ラドンに向き直るルーク。

 

「ラドン長官。申し訳ありませんが、この後の食事の話は無かった事にしていただいてもよろしいでしょうか?」

「ぷぷっ? どうかなさいましたか?」

「急用が出来ました。シィルちゃんもついて来てくれ」

「えっ……?」

 

 

 

-奴隷観察場内-

 

「うおらっ!」

 

 強烈な拳が合成魔獣の頭部を吹き飛ばし、どす黒い色の血が噴き出る。返り血を浴びぬように一歩下がりながら、今しがたその拳を振るった大男は上を見上げた。

 

「(ん……さっきまでいた強そうな男がいなくなってるな)」

 

 見学室の方から自分に視線を向けていた黒髪の剣士の存在にこの大男も気が付いていた。あの風貌、ただ者ではない。以前の自分であれば、あの男の強さに気が付けていなかっただろう。だが、今は違う。それに気が付けるだけの力を自分は手にした。そんな事を思いながら、大男は肩を軽く回す。

 

「(さて、と。後どれくらいこの場所に隠れていられるかねぇ……んっ?)」

 

 ふと、先程黒髪の剣士が立っていた場所に、今は美人の女性が立っているのが見えた。そして女性もまた、興味深げに自分の事を見下ろしているのだ。

 

「(なんだ、あの女……)」

 

 何か不穏なものを感じ取りながら、大男は奴隷用の詰め所へと引き返していくのだった。

 

 

 

-奴隷観察場 見学室 二階-

 

「お父様、随分と簡単に帰しましたわね」

「ぷぷぷ。まあ、もう用事がなかったのは事実だからな」

「おや、パパイア様。どうかなさいましたか?」

 

 ルーク、シトモネ、シィルの姿はもうない。わざわざディナーに誘ってやったのに断った事にエミは腹を立てている様子であったが、ラドンの方は対して気にしていない様子であった。そんな中、窓越しに奴隷たちの様子を見ていたパパイアに向かってズルキが話しかける。静かに振り返るパパイア。

 

「ううん、何でもないわ。ねえ、さっきのルーク・グラントってサイアスの知り合いなのよね」

「そうです。サイアス将軍の紹介でこの場に招いたのでぷふ」

「おや、ルーク・グラントに何か興味が」

「おっ、びちびちビッチか!?」

「そんなんじゃないわよ」

 

 手の中で騒ぎ立てる魔導書に軽くデコピンを飛ばし、パパイアはどこか不気味な、それでいて静かな憂いを帯びた笑みを浮かべてこう口にした。

 

「似た者同士みたいだから」

 

 パパイアは見抜いていた。ルークもまた、同じ『狂人』である事を。

 

 

 

-奴隷観察場外-

 

「ランス様が脱出を……?」

「ああ、それしか考えられん」

 

 シィルが驚いた顔をしているが、ルークにはある種の確信があった。ランスはああ見えて機転がきく。何かしらの策を講じて奴隷観察場から脱出したのだろう。そして、脱出したランスはシィルを取り返すべくまだ周囲にいるはず。そのため、急いであの場を後にしたのだ。

 

「ルークさん!」

「あったか!?」

 

 シトモネに呼ばれてそちらの方に駆けていくルークとシィル。シトモネが指差しているのは、足元の砂。

 

「微かにですが足跡が」

「……痕跡を消した跡があるな」

「はい。正直、ランスがこういう手の込んだ事をするとは……」

「(仰る通りです……)」

 

 シトモネの冷静な分析に少し恥ずかしそうにしているシィル。

 

「……とにかく後を追ってみよう」

 

 あちらも急いでいたのだろう。完璧には消しきれていない痕跡を頼りに後を追っていくルークたちであったが、すぐにその足が止まる。

 

「森か……」

「駄目ですね、足跡は消えています。木の枝とかが折れているのを頼りにもう少し追えるかもしれませんが……」

「いや、それは無理そうだな」

 

 ルークが眉をひそめる。見れば、正面、右、左と三方向共に人が立ち入った形跡がある。逃げる際に付けた痕跡ではない。そんな時間はなかったはず。となれば、事前にこの道を通る事を見越して何者かが痕跡を残していたのだろう。痕跡を消さなければいけない足跡と違い、こちらは痕跡を残せばいいだけ。撹乱には打ってつけだ。

 

「協力者がいるな」

「そうですね。これだけの痕跡、事前に準備しておかないと……でも、一体誰が……」

「ランス様……」

 

 こうなるとランスは事件に巻き込まれた可能性も出てくる。何せシィルを置き去りにしたまま失踪してしまっているのだ。このまま追跡するのは難しいが、このまま放っておくわけにもいかない。もし自分たちがここで投げ出しても、シィルは危険を顧みず一人で調査を続けてしまうだろう。

 

「シィルちゃん、安心しろ。ランスは必ず見つけ出す」

「……ありがとうございます、ルークさん」

 

 ランスが消えたであろう森の奥をジッと見ながら、ルークは何か言い知れぬ不安を感じるのだった。まるで何かの始まりを告げるかのような、そんな感覚。

 

 

 

二日後

-オールドゼス カフェテラス-

 

「情報は無し、か……」

「はい……」

 

 ゼス南東部、琥珀の城からそれほど離れていない場所にある大都市、オールドゼス。ルークたちはこの場所でランスの捜索を続けていた。だが、未だ足取りは掴めずにいる。

 

「……流石に俺たちだけでは厳しいかもしれんな」

 

 ルークもシィルもシトモネも情報収集に特別長けている訳ではない。ギルドにも情報は流れてこず、この面々での捜索は完全に行き詰ってしまっていた。

 

「サイアスに連絡を取ってみるか……ん?」

 

 コーヒーを口に含んだルークがふとシィルの様子がおかしいのに気が付く。少しぼうっとした様子で道行く女学生を眺めているのだ。

 

「シィルちゃん、どうかしたか?」

「あ、すいません。少し懐かしくて……」

「懐かしい?」

「私もあの学校に通っていたんです」

「えっ? シィルちゃんってゼス出身だったの?」

 

 ルークとシトモネが驚く。言われてみれば、ランスの奴隷になる以前のシィルの話はあまり聞いた事がない。見れば、女学生はそれなりに身なりが良い。あのような学校に通っていたという事は、実はシィルは良い所のお嬢様だったのかもしれない。

 

「はい。あの学校を卒業後、都会の学校に入学しようとしてうし車で移動中に夜盗に襲われて奴隷に……でも、ランス様が助けてくれたんです」

「へー……それだけ聞くと良い奴なんだけどねー」

「……という事は、実家もこの近くなんじゃないのか?」

「あ、はい。この近くにある森の中に……」

 

 ルークの問いにそう答えるシィル。すると、シトモネがエスプレッソを飲み干してからそちらを指差した。

 

「折角なんだし、会ってくればいいじゃない。久しぶりなんでしょう?」

「あ、でも……」

 

 ルークをちらりと見てくるシィル。ランスの捜索を手伝ってもらっているのに、自分が別の事をするのに気が引けているのだろう。そのシィルを見ながらルークは静かに微笑む。

 

「いいんじゃないか?」

「あっ……」

 

 ここ二日間、碌に笑顔の無かったシィルの顔に久々に笑みが戻った。

 

 

 

-オールドゼス付近 森-

 

「こっちです」

「あっ、ポポラの実みっけ。んー、甘酸っぱい!」

「私もそこになっているポポラの実は良く食べていたんですよ」

 

 草むらになっている小さな果実をシトモネが見つけて口にすると、シィルが少し自慢げにそう口にする。慣れ親しんだ土地に数年ぶりに戻ってきた事、そしてもうすぐ両親と再会出来る事。シィルは目に見えて嬉しそうな状態であった。自然とルークとシトモネの頬にも笑みが浮かぶ。

 

「元気、出たみたいですね」

「そうだな」

 

 シトモネがひそひそ声でルークに話しかけてくる。すると、少し先行していたシィルがくるりとこちらを振り返った。

 

「あれです。あの赤い屋根の家が……」

「……!?」

「シィルちゃん、後ろ!!」

「えっ……んぐっ!?」

 

 瞬間、シィルの後ろにあった草むらから一人の男が飛び出し、シィルの口を塞いだ。そのままシィルの腰に手を回し、強引に引っ張りよせる。突然の事にシィルは対応が遅れ、されるがままに男の方に体を引き寄せられてしまった。

 

「捕まえた! この魔法使いで間違いないですか!?」

「うん……奴隷観察場で見た顔だ。間違いないよ……あっ」

「えっ? どうかし……」

 

 男が後ろを振り返り、後方にいた別の男に問いを投げる。それは、この状況下ではあまりにも致命的なミス。後方の男が何かに気が付いて声を漏らすが、もう遅い。シィルを捕まえていた男が再度前を向いた瞬間には、既に剣が振り切られていた。直後、ボトリとその男の腕が地面に落ちる。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!! お、おれの腕がぁぁぁぁ!!」

「ラクンイテ!!」

 

 敵は三人。シィルを捕まえた少し体格の良い男、今しがた叫んだ女、そして無言で腰を落とした美形の男。警戒する必要がありそうなのは美形の男くらいだろう。ルークはすぐさまシィルを男から引き離し、後ろにいたシトモネへと引き渡す。

 

「大丈夫、シィルちゃん!?」

「は、はい……何とか……」

「お前ら、何者だ……?」

 

 まだ男の血が滴っているブラックソードの切っ先を三人組に向けながらルークはそう口にする。その迫力に女は動けない様子であったが、左腕を切断された男、ラクンイテは目を血走らせながら腰の短剣を抜いた。

 

「てめぇぇぇぇ!!」

「あっ、それは……」

 

 後ろの男が制止しようとしたが、男は聞く耳を持たずルークに斬りかかってきた。だが、その動きはあまりにも遅い。ルークは素早く前に出て、その男が短剣を振るよりも早くブラックソードを振りぬいた。男の胴体に真一文字の線が入り、鮮血が飛び散った。そのまま崩れ落ちるラクンイテ。既に息はない。

 

「きゃぁぁぁぁ!!」

「ああ、だから止めたのに……」

「もう一度聞く。お前ら、何者だ? 何故この娘を狙った?」

 

 再度切っ先を向けながらルークが残った男に問う。静かに両手を上げ、口を開く美形の男。

 

「ああ、すいません。争うつもりはないんです。ある人にその娘を連れてくるように頼まれただけでして……」

「ほう……それを頼んだのは誰だ? 貴族か?」

 

 先程この男は奴隷観察場の名前を出した。となれば、あの場で見学していた貴族がシィルの美しさに惚れこみ、自分の物にしようと無理矢理攫いに来たというのが一番考えられる。だが、男は首を横に振った。

 

「申し訳ありませんが、簡単に依頼主の名前を出す訳には……」

「なら、強引に聞き出される方が良いかな?」

「それも出来れば勘弁して貰いたいですね」

 

 この状況にあってもなお余裕を崩さない美形の男。その自信は一体どこから湧いてきているのか。どこか不穏なものを感じ取っていたルークであったが、直後男の傍に立っていた女が泣き顔で口を開く。

 

「依頼主はランスという男です! シィルという魔法使いを連れてくるように頼まれたんです! これで見逃してください!」

「……!?」

「ランス様が!?」

 

 それは意外な名前であった。驚くこちらを尻目に、美形の男が困ったように女を見る。

 

「ナキイハさん……」

「だって、あんな男庇う必要ないじゃないですか! 来て早々大きな顔するし、ホワイト隊を全滅させるし、口は大きいし、スケベだし……このままじゃあ、アベルトさんが殺されちゃう!」

「うーん……」

 

 ポリポリと頭を掻くアベルト。同様に、シトモネも呆れた様子で頬を掻いている。

 

「なんか……行方不明の間にもいつも通り誰かに迷惑を掛けていたみたいね」

「あぅ……」

 

 シィルが恐縮する中、ルークは静かに剣を鞘に収めた。それを見て美形の男は不思議そうな顔をする。

 

「おや? どうしましたか?」

「どうやらやり合う必要のない相手だったみたいだ。ランスは知り合いだ。案内してくれ」

「……もし貴方たちが敵だったら、と考えると中々怖い提案ですね。それに、おいそれと魔法使いの方を連れて行く訳には……」

「シィルちゃんを連れてこい、と言われているんだろう?」

「……そうですね。ですが、貴方たちは今の言葉を信じるのですか? ランスさんの知り合いと知っての罠かもしれませんよ?」

「さっきの告白が演技か本気かくらいは見分けられるつもりだ」

「そうですか……」

 

 アベルトと呼ばれた男は静かに笑みを浮かべ、腰をスッとあげる。そのままルークの方に近寄ってきたかと思うと、右手を差し出してくる。

 

「ぼくはアベルト・セフティ。レジスタンス、アイスフレームのブルー隊隊長をやらせていただいています」

「レジスタンス? 何故ランスがレジスタンスに?」

「それは追々お話しします。ついて来てください。あ、すいませんが魔法使いの二人はコートを着て一目では魔法使いだと判らないようにしてください」

「あ、でも……」

 

 アベルトが道案内をしようとするが、それをシトモネが制止する。チラリと横を見れば、シィルの実家である赤い屋根の家が遠くに見える。

 

「アベルト、少し時間をくれないか」

「いえ、大丈夫です。今すぐ出発しましょう」

「シィルちゃん……いいのか?」

 

 少し迷いのある表情ではあったが、シィルはしっかりと頷いた。

 

「はい。両親には会いたいです。私は無事ですって報告したいです。でも、それはまた機会があります。今は、すぐにでもランス様に会いたいんです……」

「……そうか。また帰り、オールドゼスに寄ろう」

「はい!」

 

 シィルが深く頷くのを確認し、ルークはアベルトに向き直る。

 

「案内してくれ。レジスタンス、アイスフレームに」

 

 

 

-アイスフレーム拠点-

 

「着きましたよ。ここがアイスフレームの隠れ里です」

「えっ!? ここが?」

 

 思わずシトモネが声を漏らす。森の中を二時間ほど歩くと、小さな村へと辿り着いた。どうやらここがアイスフレームのアジトのようだが、あまりにも堂々とした場所である。レジスタンスのアジトというからには、てっきり洞窟の中にでも暮らしているのかと思っていたのだ。

 

「建築関係の仕事をしていた者が数名いましてね。これだけ森の奥であれば、こうやって暮らしていても滅多な事では見つかりませんし」

「なるほど」

「多種多様な人材がいるのですが、肝心の戦闘要員は人手不足でして。それでランスさんに協力してもらえないか頼みこんだ訳です」

 

 道中、ある程度の話はアベルトから聞いていた。奴隷観察場でランスをスカウトし、レジスタンスに引き込んだ。聞くだけなら簡単な話だが、自身の得にならない事をランスは嫌う。彼の機嫌を損ねずレジスタンスに引き込むのは難しい事だっただろう。

 

「すまんな。その戦闘要員を一人斬ってしまって」

「いえ、あれはこちらが悪いですから。気にしないでください」

 

 気にするなとアベルトは言うが、この話の流れに持っていったのはアベルトな気がする。それも、かなり自然な流れで。もしそれを狙って行い、ルークを罪悪感からレジスタンスに引き込もうとしているのならば、中々のくせ者である。

 

「あ、アベルトさーん」

 

 すると、小さな女の子が手を振りながらこちらに駆けてきた。

 

「あんな小さな娘もいるのか!?」

「あの子はカーマ。孤児院で二番目にお姉さんの子です」

「孤児院があるんですか?」

「リーダーの方針でね。出来る範囲でしかありませんが」

「アベルトさん、お帰りなさい。お疲れ様でした」

「(孤児院か……)」

 

 レジスタンスの孤児院と聞いて少し前の出来事を思い出していたルーク。すると、いつの間にやらカーマが傍までやってきていた。とてとてと駆け寄ってきたカーマはルークたちを見回しながらペコリと頭を下げる。

 

「この人たちが今回スカウトしてきた人たち?」

「ああ、少し違ってね。彼らはランスさんの知り合いなんだ」

「シィルです。よろしくね」

「シトモネよ。よろしく」

「ルークだ」

「あ、カーマです。初めまして。よろしくお願いします」

 

 軽い自己紹介が終わったのを確認すると、アベルトはカーマに問いかけた。

 

「ランスさんは?」

「えっと……ちょっと前に近くの森を探索するって言って出て行って、まだ帰ってきていないと思います」

 

 その返事を聞いたアベルトは申し訳なさそうにしながらルークを振り返る。

 

「すいません、丁度不在みたいで」

「あの、私たちもその森に……」

「いえ、多分すぐ帰ってくると思いますから、下手に動き回らずにこの場で待っていた方が良いでしょう」

「そうか……じゃあ、待たせて貰おうかな」

 

 ルークがそう言うや否や、まるで待っていましたとばかりにアベルトがポンと手を叩く。

 

「それなら折角ですし、ぼく達のリーダーに会ってくれませんか」

「レジスタンスのリーダーにですか?」

「ええ、そうです。あ、ナキイハさんは隊舎に戻って皆にラクンイテさんの事の報告を」

「はい」

 

 アベルトにそう言われて左方向へと駆けていくナキイハ。対してアベルトは一歩前に出ながらこちらを振り返り、スッと誘導するように手を前に出す。

 

「さあ、こちらです」

「悪いが、レジスタンスに入るつもりはないぞ」

「それは残念です」

 

 軽く牽制しあいながら、ルークたちはアイスフレームの奥へと進んでいった。

 

 

 

-アイスフレーム拠点 孤児院-

 

「ただいまー!」

「ああ、カーマ、お帰り」

「あれ? サーナキアさん、何か用ですか?」

 

 元気よく孤児院に帰ってきたカーマを出迎えたのは、このレジスタンスに所属する女騎士。女性ながらその腕は立ち、シルバー隊の隊長を務めている。少し真面目すぎるところもあるが、自分たち孤児には優しい。

 

「ああ、キムチに頼まれて木材を運んできたんだ。どこか壊してしまったんだろう」

「ありがとうございます」

 

 サーナキアに礼を言いながら辺りをきょろきょろと見回す。件のキムチ、この孤児院の責任者が見当たらないのだ。

 

「ああ、キムチなら今ウルザのところに行っているよ」

「なんだー。折角お話ししようと思ったのに。あ、でもウルザさんの所なら鉢合わせるかも」

「お話? カーマ、何かあったの?」

「えっとねー、アベルトさんがまた戦士さんたちを連れてきたの。ランスさんの知り合いなんだって」

「へー」

「ランス兄ちゃんの知り合い?」

 

 炊事をしていた女性、キムチを除けば唯一カーマよりも年長者の人物の問いかけに対し、自慢げに答えるカーマ。すると、他の孤児たちもカーマの周囲に集まってきた。

 

「そう。男の人と、女の人が二人」

「格好良かった?」

「美人だった?」

「女の人はフード付きのコートで顔は良く見えなかったんだけど、多分二人とも美人だったと思う。男の人は格好良かったけど、ランスさんよりちょっと下かなー。でも、すっごく強そうだった」

「その人たちもレジスタンスに?」

「ううん。違うみたい」

「そうか、残念だ」

 

 カーマが首を横に振るのを確認し、サーナキアが小さく息を吐く。認めたくはないが、ランスが入った事は戦力不足のアイスフレームにとってかなりありがたい事であった。認めるのは本当に、本当に悔しいが、実力は自分よりもランスの方が上だ。とはいえ、まだまだ人材不足。戦力はあるに越した事は無い。

 

「(まあ、あのランスの知り合いなら碌な人間じゃないだろう。トラブルの種が入隊するよりはいいか)」

 

 そんな事を考えていたサーナキアであったが、直後にカーマが放った言葉で目を見開く事となる。

 

「どんな人たちだった? 名前はー?」

「えっと……黒髪の剣士さんで……あ、ルークって名乗ってた」

「……!?」

「ルー……ク……?」

 

 そして、驚いたのはサーナキアだけではなかった。炊事をしていた女性がピタリと手を止め、狼狽した様子でカーマに振り返る。と同時に、孤児院の扉がガラリと開いて誰かが飛び出していくのが見えた。

 

「アルフラ!? おい!」

 

 サーナキアの声にも振り返らず、孤児の少女はある場所に向かって駆けて行った。

 

 

 

-アイスフレーム拠点 本部-

 

「ただいま、父さん」

「うむ……」

「ウルザさんは?」

「今、奥でキムチと話をしている」

「呼んできて貰えませんか? ランスさんが捜していた人が見つかりましたので」

「…………」

 

 アベルトと話していた老人が一度ルークたちを見回したかと思うと、スッと家の奥に消えていった。

 

「な、なんか迫力ある人でしたね……」

「すいません、不愛想で。ぼくの父でダニエルと言います。ウルザさん……このレジスタンスのリーダーの主治医です」

 

 緊張から解放されたシトモネがはぁっと息を吐く。冒険者であるシトモネが気圧される程にどこか威圧力のある老人であった。

 

「主治医? リーダーさんは病気なんですか?」

「病気……とは少し違いますが、今は健康ではありませんね」

「…………?」

 

 アベルトの言い回しに一同が首を捻っていると、ギィという音と共に奥の扉が開かれた。部屋に入ってきたのは、先程の老人と一人の美少女。だが、その女性は車椅子に乗っている。自然と視線が集まる中、ゆっくりとその女性は口を開いた。

 

「座ったままで失礼します。私はウルザ・プラナアイスと言います。このアイスフレームのリーダーです」

「えぇっ!?」

「こ、こんなに綺麗な方が……?」

 

 驚く一同であったが、無理もない。レジスタンスのリーダーというのだから、年季の入った老人か、あるいは血気盛んな大男辺りが出てくると思っていた。しかし、現れたのは車椅子に乗った可憐な少女。これで驚くなという方が無理である。

 

「(……ん? ウルザ・プラナアイス? その名前……どこかで……)」

「わざわざご足労ありがとうございました。ランスさんでしたらもうすぐ戻ってこられるので……」

「ルーク? ルークなの!?」

 

 ウルザが丁寧に話を進めていたが、それを遮る声が奥の扉から聞こえてきた。一同がそちらに視線を移すと、そこに立っていたのは褐色の肌の女性。彼女もまたかなりの美人だ。

 

「あれ……? 確か貴女……」

「キムチ、知り合いか?」

「……ペンタゴンの!」

 

 シィルは完全に初対面だが、シトモネは彼女に見覚えがあった。確か前に一度だけ会っていたはず。だが、思い出せない。そんな中、ダニエルが口にした名前を聞いてルークが声を上げた。それを聞いたキムチがこちらに駆けてきて、ルークの手を取る。

 

「驚いたわ! どうしてここに!?」

「キムチこそ……ペンタゴンはどうした?」

「ああ、あの時の!!」

 

 彼女の名はキムチ・ドライブ。かつてルークとシトモネがロリータハウスという売春宿を潰した際、助け出した孤児たちを預けたレジスタンスの女性だ。シトモネもようやく思い出したようで、大きな声を上げていた。

 

「このアイスフレームはね、ペンタゴンから分裂した組織なのよ。ペンタゴンの過激なやり方にはついていけない、そんな人たちが集まって作った新組織」

「そうだったのか……」

「で、ルークは?」

「俺はランスの知り合いでな。あいつが捜している女性を連れてきたんだ」

「キムチさん、一体……?」

 

 状況が呑み込めないウルザはキムチに説明を求める。見れば、ダニエルも渋い顔をしている。説明も無しに勝手に盛り上がられては、こんな顔にもなろうというもの。

 

「ああ、ごめんウルザ。説明が遅くなったわね。彼はルーク。以前にロリータハウスの事件でお世話になった……」

「ほぅ……」

「ああ、貴方がそうだったんですか」

 

 ロリータハウスの件はウルザたちも聞き及んでいたのだろう。ダニエルの目つきが変わり、アベルトも思わず声を漏らす。すると、ウルザが車椅子に座りながらルークに手を伸ばしてきた。

 

「お話は聞いています。その節は本当にお世話になりました」

「いえ……」

 

 軽く涙をその目に溜め、本当に感謝した様子でルークの手を握ってくるウルザ。それを見て、ルークは先程抱いた疑問の答えに辿り着いた。そう、あれはキムチとの出会いと同じ。ロリータハウスの事件の時だ。

 

『ビルフェルム・プラナアイスだ。ルーク、ペンタゴンに来る気はないか?』

『妹は……ウルザは地味な俺と違って本当に凄いぞ。あいつはペンタゴンを……いや、ゼスの未来を必ず変える』

 

「もしかして……ビルフェルムの妹さんか?」

「えっ……?」

 

 握られていた手から力が抜け、呆けたような表情でウルザはルークを見上げてくる。そう、あの時確かに聞いていた。ビルフェルム・プラナアイスには『ウルザ』という妹がいる事を。

 

「兄を……?」

「やはりそうか。ビルフェルムはいるのか? ぜひ話がしたいんだが」

「あっ……」

「っ……」

 

 瞬間、部屋の空気が凍る。キムチとダニエルが漏らした声が、嫌に大きく響いていた。同時に、ルークは悟る。冒険者をしているのだから、こういう空気には今まで何度も触れてきた。だからこそ判る。もう、ビルフェルムはこの世にいないのだ。

 

「……すまない」

「いえ……」

 

 スッとルークから手を放すウルザ。その手は少しだけ震えていた。弱々しげな瞳が左右に動き、明らかに狼狽しているのが見て取れる。呼吸も心なしか荒い。触れれば、そのまま壊れてしまいそうな儚さだ。

 

「(ビルフェルム……これが……お前の言っていた妹なのか……)」

 

 ゼスの未来を変える。ビルフェルムはそう豪語していた。だが、目の前の女性はあまりにも儚い。覇気をまるで感じない。この女性が、本当に彼の言っていた女性なのか。

 

「えっと……」

 

 全くもって状況の掴めていないシィルであったが、とりあえず空気が悪い事だけは判る。何とかその空気を打破すべく言葉を発しようとした瞬間、本部に一人の少女が駆け込んできた。

 

「ルーク……ルーク!」

「……アルフラか!?」

「ルーク!! 本当にルークだ……ルーク!!」

 

 少女がルークの胸に勢いよく飛び込んでくる。彼女の名はアルフラ。先のロリータハウス事件の際にルークが救出した少女だ。そして、もう一人。

 

「ルークさん……」

「あおいも……そうか、君たちもキムチと一緒にアイスフレームに……」

 

 アルフラから少し遅れて本部に入ってきたのは、同じくロリータハウス事件の際に救出したあおい。孤児院で一番の年長者である。先程カーマからルークの名前を聞き、こうして慌ててここまで駆けてきたのだ。目に涙を溜めながらゆっくりとルークに近寄り、震える声で言葉を発する。

 

「会いたかったです……」

「……大分良くなったみたいだな」

「おかげさまで……」

「ルーク!」

 

 そして、三人目の来訪者もやってくる。重そうな鎧を身に纏った女騎士。こちらはシィルも知っている。闘神都市を共に戦い抜いた女性、サーナキアだ。

 

「サーナキアさん!?」

「おお、シィルじゃないか。どうしてここに……」

「いや、それはこっちの台詞だ。何でお前がレジスタンスにいる」

 

 アルフラに抱き付かれながらルークが驚いた表情を作る。騎士を目指している彼女が国に反抗しているレジスタンスに所属しているのが信じられなかったのだ。その光景を見ながら、アベルトが小さく息を吐く。

 

「これは話が出来るまでもう少し時間がかかりそうですね」

「あ、どうも。シトモネです」

「あ、あの時の。ごめんなさい、お礼が遅れて」

「いえいえ、覚えていてくれただけでありがたいです。私、影薄いんで」

 

 部屋の片隅でキムチとシトモネがあの時の話をする中、ダニエルはそっとウルザに近づいていき、震える手にそっと自分の手を乗せた。

 

「大丈夫か……?」

「うん……大丈夫……大丈夫だから……」

 

 ああ、この娘は、まだ死に引きずられている。

 

「ん? 帰ってきたみたいね」

 

 キムチがそう声を漏らすと、遠くからどたどたとした音が聞こえてきたかと思うと、がははという威勢の良い笑い声が響いてきた。すぐに判る。ランスが帰ってきたのだ。

 

「がはは! 俺様参上!! シィルの馬鹿が来ているというのはカーマから聞いて……知って……」

 

 大笑いしながら部屋に入ってきたランスであったが、中の光景を見て固まる。だが、シィルはそのランスの異変に気付かず、二日ぶりに元気そうな姿を見た感激から涙を流してその胸に飛び込んでいった。

 

「ランス様ぁぁぁぁぁ!!!」

「えぇい、鬱陶しい!」

「きゃん!」

「えぇぇぇぇぇっ!?」

 

 飛び込んできたシィルをべしっと放り投げるランス。感動の再会だとばかり思っていたシトモネが大声を上げ、他の者たちも呆気に取られている。そんな中、ランスはゆっくりとルークに近づいていく。

 

「ルーク……」

「っ……」

 

 今まで通り振る舞う予定であった。だが、どうしてもあの光景が思い出されてしまう。涙を流すフェリスの姿が。自然とルークに緊張が走る。あの事はフェリス自身が話すまで口にしないと約束した。だが、本当に自分は今まで通りランスと付き合っていけるのか。

 

「なんで……」

「…………?」

「なんで俺様にまるでなびかないあおいちゃんが、お前の横で頬を赤らめているんじゃぁぁぁぁ!!」

「お前は……」

「そんな事がシィルちゃんとの再会よりも優先されたの!?」

 

 頭を抱えるルークと盛大な突っ込みを入れるシトモネ。だが、ランスはギロリとシトモネを睨みながら言葉を続ける。

 

「えぇい、そんな事ではない! あおいちゃんは俺様が狙っているんだ! 手出しはさせんぞ。それに、俺様の方が先に会っているんだ。先に会ったものに優先権が……」

「それなら、俺は一年以上前に会っているぞ」

「会った早さなど関係ないわ、馬鹿者ぉぉぉぉぉ!!」

「えぇぇぇぇぇっ!? 二秒で意見を変えたぁぁぁぁ!?」

「(シトモネがいると突っ込みが楽でいいな……)」

「えぇい、ランス! いい加減貴様の性根を叩き直してやる!」

 

 ルークの返しに即座に前言撤回するランス。なんという理不尽な男か。そう、これがランスなのだ。シトモネが突っ込み、サーナキアが剣を抜く中、ルークはなんとなくどうでもいい事を考えていた。すると、またも部屋の外から足音が聞こえてくる。

 

「ランス様ー。急に走って行って何事だすかー?」

「全く……」

「ちっ、面倒かけんじゃねーよ」

「ふふふ……」

「…………」

「やれやれ、世話のやける男だ」

 

 叫ぶランスの後から数名のレジスタンスが部屋に入ってくる。どうやら、彼らがランスの率いている仲間のようだ。斧を持った小柄な男、鞭を持った救護兵らしき女性、戦う者には見えぬヒラヒラの服を着た女性弓兵、黒の長髪に眼鏡をかけた成人男性、いかにも傭兵といった感じの強面の男、見た事の無い制服を着て重そうな武器を持った白銀髪の少女。なるほど、どれもこれも一癖ありそうな面々だ。

 

「捜していた人が見つかったとの事でしたが……」

 

 そして、最後に部屋に入ってきた和装の女性とルークの目が合う。瞬間、あちらの女性が固まった。

 

「(彼女は……まさか……)」

 

 それは、ルークも同様であった。目を見開いているルークに対し、女性はすぐさま硬直を解いてスッと人差し指を口元に当てる。何も言うな、そう合図してきたのだ。そしてそのままゆっくりとランスに近づいていき、喧嘩相手のサーナキアから器用に引っぺがす。

 

「ランス隊長、ここで暴れてはウルザ様のお体に障りますよ。サーナキアさんも」

「あっ……こ、これは失礼」

「ちっ……」

 

 上手い事二人の喧嘩を収めたかと思うと、和装の女性はそのままルークに近寄っていき、他の者たちに聞こえぬよう小さな声で呟いた。

 

「カオルと申します。詳しいお話は後で……」

「……了解した」

 

 そのままランスたちの輪の中に戻っていく女性。その後姿を見ながらルークは確信する。間違いない。彼女はレジスタンスなんかではない。

 

「(ガンジー王の側近……何故彼女がレジスタンスに……?)」

 

 以前にガンジー王と一度だけ謁見した際、王を警護していた女性だ。その彼女が何故このような場所にいるのか。スパイか、はたまた何か別の思惑があるのか。胸の中のアルフラの頭を撫でつつ、チラリとウルザに視線を移すルーク。先程よりは収まっているが、まだ小さく震えている。今度はランスに視線を移す。先程のやり取りにシィルたちは違和感を覚えなかっただろうか。自然に振る舞ったつもりではあったが、やはりフェリスの姿が何度か頭に浮かんでしまっていた。

 

「(レジスタンスになんてあまり深く関わるつもりはなかったが……)」

 

 サイアスやカバッハーンとの関係上、レジスタンスに所属する気など更々ない。だが、既に状況は動き出している。いつも通り接する事の出来ないランス、ビルフェルムの妹であるウルザ、かつて救い出したアルフラとあおい、何故かこの場にいるサーナキア、そしてゼス国王側近でありながらレジスタンスに所属しているカオル。

 

「(どうやら、かなり面倒な事に巻き込まれそうだな)」

 

 これから始まる大冒険をなんとなく予感してしまい、苦笑するルークであった。

 

 




[人物]
シトモネ・チャッピー (6)
LV 16/30
技能 魔法LV1
 キースギルド所属の冒険者。最近はキースとルークが協力してギルドのエースに育て上げようとしているため、ルークと行動を共にする事が多い。

ウルザ・プラナアイス (6)
LV 31/55
技能 剣戦闘LV1 弓戦闘LV1
 アイスフレームのリーダー。かつては皆を率いるカリスマであったが、とある事件で車椅子生活となり、覇気も失ってしまった。

アベルト・セフティ (6)
LV 12/28
技能 剣戦闘LV1
 アイスフレーム工作員。ランスを奴隷観察場から助け出し、アイスフレームへとスカウトした。現アイスフレームメンバーの中では戦闘力も上位に入る。

ダニエル・セフティ (6)
LV 20/40
技能 暗器戦闘LV1 医学LV1
 ウルザの主治医。暗器使いであり、いざという時は戦闘もこなす。ウルザがかつての姿に戻ってくれる事を待ち続けている。

キムチ・ドライブ (6)
 アイスフレーム孤児院長。夜は隊員の慰安も進んで行っているため、周囲からは一目置かれており、発言力も各隊長並に高い。

カーマ・アトランジャー
LV 1/29
技能 盗賊LV2 怪獣使いLV1
 孤児の少女。孤児の中では二番目に年齢が高いため、あおいと共に他の子の面倒を見ているお姉さん的存在。実は類まれなる才能の持ち主。

アルフラ・レイ (6)
 孤児院で暮らす少女。かつてルークに救われた経験を持ち、その事から彼に懐いている。

あおい (6)
 孤児院で暮らす少女。性奴隷の後遺症は完全に抜けきってはいないが、日常生活を送るのに支障がないレベルにまでは回復した。救い出してくれたルークに心から感謝している。

ムカーダー (6)
LV 7/13 (生前)
技能 剣戦闘LV1
 ホワイト隊隊長。いつの間にやらランスに殺されていた可哀そうな人物。

ラクンイテ
 ブルー隊隊員。シィルを連れ去ろうと強引に襲い掛かり、ルークに斬り捨てられた。

ナキイハ
 ブルー隊隊員。小心者であったため、生き延びる事が出来た女性。


[技能]
怪獣使い
 怪獣を手なずける才能。Lv3にもなれば、怪獣の王子や王女も意のままに操れるという。


[都市]
オールドゼス
 ゼス南東部に位置する都市。それなりに繁栄はしているが、治安はあまり良くない。シィルの実家がある場所でもある。

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