ランスIF 二人の英雄   作:散々

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第183話 闇を這う虫けらは光を求める

 

-ペトロ山-

 

 イタリアの北部にある巨大な山脈、ペトロ山。連なる山々の中の一つ、ペトロ77と呼ばれる山の頂上に館を構えるのが今回の相手である魔女モヘカだ。

 

「シャイラ、体力は大丈夫か?」

「ん? ああ、大丈夫だぜ。なんとか徐々に体の調子も戻ってきたみたいだ」

「ならよかった」

「こんな険しい山の頂上に本当に人なんて住んでるの? ガセならもう帰りたいんだけど」

 

 幽閉生活で体が鈍っていたシャイラの心配をするルーク。ペトロ山脈は急斜面であり、普通に登頂する事はまず不可能。そのため、山頂へと続く地下道が山の中に作られていた。とはいえ、山の中に無理矢理作ったのもの。最低限の整備しかされておらず、足元も暗い。そのうえモンスターまで出る。現れるモンスターは今更ブラック隊が苦戦するよう敵ではないが、ネイが息切れしながら弱音を吐く程度には体力を奪われていた。

 

「で、なんだっけ? その魔女の名前」

「カドカー・モヘカ。株式運用で多大な利益をあげた、通称『金融界の魔女』ね。違法スレスレのあくどい事やってるってんで、株式の世界じゃ有名なクソババアよ」

「ロゼさん、株もやってるんですかねー?」

「始めたのは最近だけどね。ほら、ハニワ平原ってまともな娯楽ないから」

「『金融界の魔女』って事は、魔法使いって訳じゃないのか?」

「いや、普通に魔法使いよ。でも、魔女って呼ばれるような凄腕の魔法使いじゃないみたい。ゼス国内なら掃いて捨てる程いる普通のしょぼい魔法使い」

 

 シャイラの疑問にロゼが答える。カドカー・モヘカ。魔女と呼ばれる彼女には、ある疑惑が持ち上がっている。それは、二級市民の少年を人知れず誘拐し、自分の館で殺しているのではないかという噂だ。

 

「これまで確認されているだけでも16人の少年が行方不明になっている」

「あくまで確認されているだけの人数っていうのがミソね。二級市民は天涯孤独の人間も多いし、発覚していない被害者はもっといるはずよ」

「もし本当にその魔女の仕業なら、許せませんね」

「腐ったミカンだ」

 

 ルークの語気に少し怒りが混じっているのは気のせいではないだろう。ロゼの補足説明を聞き、シトモネとバーナードは絶対に許せないと拳を握りしめる。そんな中、ルークの横を歩いていたかなみが懐の懐中時計を取り出して時間を確認した。

 

「予定の時間よりも少し遅れていますね。夜になると更に冷え込むでしょうし、少し急ぎましょう」

「出がけに揉めたからなー」

「うっ……」

 

 シャイラのおちょくるような発言と共に、ルークの背後から視線が突き刺さる。そう、今回ブラック隊は出発が予定よりも少し遅れていた。それは、こういった大所帯のパーティーでは必ず発生するある問題が原因。

 

 

 

出発前

-アイスフレーム拠点 ブラック隊詰所-

 

「何で私がメンバーから外れてるの?」

 

 話は出発前に遡る。今回の任務のメンバー構成を聞き、眉をひそめて不服そうにルークを睨む一人の女魔法使い。志津香だ。

 

「今回の目的地であるペトロ山脈は狭い通路だからな。大規模魔法は味方を巻き込む可能性があるし、何より地下通路が崩落する危険性もある」

「そんなドジしないわよ」

 

 ルークの言うように、確かに今回の目的地は魔法を使うには適さない場所だ。恐らく、それも見越して魔女モヘカはこの立地に館を構えたのだろう。ゼスにおいて自分の命を狙うであろう輩は、大半が魔法使いなのだから。しかし、志津香の意見にも一理ある。治安隊本部の戦いの際にも、志津香は狙いを絞って攻撃を行えていた。

 

「それに、その理由ならどうしてシトモネがメンバーに入っているのよ」

「シトモネは今回レンジャー側の役割を期待してメンバーに入れた。館には鍵が掛かっているだろうし、地下通路にも罠が仕掛けられている可能性がある」

「かなみで十分じゃないの?」

「かなみには別の仕事を頼んでいるからな」

「ふーん……」

 

 別にシトモネが選ばれている事が気に食わない訳ではない。自分が外れている事が納得いかないのだ。志津香は一見冷静沈着な印象を受けるが、実はそうではない。長い付き合いの仲間たちには周知の事実だが、志津香はパーティーの中でも比較的気が強く、また挑発にも乗りやすい短気な性格だ。同時に、自分の強さにもある程度自信を持っている。だからこそ、任務のメンバーから外された事にここまで食い下がったのだ。

 

「志津香、何も戦力を考慮して外した訳じゃあない。流石に言わなくても判っているだろう?」

「ん……」

 

 純粋に戦闘力順でメンバーを選ぶのならば、志津香は真っ先に候補に上がる。それは何もブラック隊に限った話ではない。これまでの多くの激戦の中でも、志津香は常に最上位の戦力としてパーティー内で頼られていた。リーザス解放戦では窮地の中でリックやアレキサンダーと共に立ち上がり、闘神都市の戦いでは最も負担の大きい第一パーティーに選抜されていた。数多いる仲間たちの中でも、ルークが最上位に頼りにしている仲間であるのは紛れもない真実なのだ。だから、今回メンバーから外れた理由は他にある。

 

「合流してからここまで休みなく働いていただろう?」

「……別に疲れてないわよ」

「資料を見る限り、魔女モヘカは大した相手じゃあない。休める時に休んでおけ」

「だから、別に休みは足りてるって言ってるでしょ」

 

 そう、頼りにしているからこそここまで酷使し過ぎていたのだ。思い返せば、志津香合流後は常に任務に同行させていた。唯一の例外は、男しか入る事の出来ない奴隷観察場へパットンを迎えにいった任務のみ。ロゼは女の子刑務所で、かなみは治安隊本部でそれぞれ最前線からは外れている。あくまで今回メンバーから外れたのは、ローテーション的な意味での休暇扱いに過ぎない。

 

「まだ時間が掛かりそうかしら?」

「ふぁ……そうですわねー」

 

 一方、メンバーは二人の話に決着がつくまで待ちぼうけとなっていた。ナターシャの問いに欠伸をしながら答える珠樹。

 

「どうして志津香さんは隊長にあんなに食って掛かってるんですか?」

「ふふ。それはねー、志津香は自分だけ置いていかれるのが嫌なのよ。出来るだけ一緒にいた……」

「どっから湧いて出た!」

「いふぁっ! いふぁい……いふぁいよ志津香……捻じるのは反則……」

 

 ニヤニヤとしながらインチェルの問いに答えるのは、グリーン隊所属のはずなのに何故かこの場所にいるマリア。そのマリアの柔らかい頬を捻じり上げる志津香。すっかりおなじみの光景だ。最近ではルークが足を踏まれる回数よりも増えている気がする。ベチン、という気持ちの良い音と共に頬を離されたマリアは赤くなった頬を抑えながら涙目でロゼに駆け寄っていく。

 

「えーん、ロゼえもーん。親友に湧いて出たとかゴキブリ扱いされたよー」

「あらやだ大変。きっとあの日ね」

「いい加減にしないと纏めて吹き飛ばすわよ!」

 

 一人は元だが、カスタム住人ならではの勝手知ったるコントが繰り広げられていた。やんややんやと合いの手を入れるシャイラとネイに八つ当たりの一睨みを入れた後、志津香は真剣な口調で言葉を漏らす。

 

「休んでいる時間なんてないのよ。今は少しでも強くなりたいの。だから、可能な限り戦いの場には連れて行って欲しいの」

「……気持ちは判るが、今日は休め」

「……隊長命令?」

「そうでなきゃ聞けないんなら、そうする」

「……判ったわよ」

 

 一度大きくため息をつき、志津香の方が折れる形となった。確かに魔女モヘカが大した相手でないのならば、アイスフレーム拠点の周辺で自己鍛錬をしているのと変わらないかもしれない。それに、これ以上の問答で時間を取るのは流石に任務に支障が出る。

 

「セスナも……いや、わざわざ忠告するまでもないか」

「そうね」

「ぐぅ……ぐぅ……」

 

 今回の任務からはセスナも外れている。セスナの武器であるハンマーは振り回す必要があるため、こちらも狭い通路では使い勝手が悪い。また、志津香同様セスナもこれまで酷使気味であった。良い機会だと思い、ブラック隊の主力二人を纏めて休ませたのだ。しっかり休めよと忠告しようとしたルークだが、既に居眠りをしているセスナを見て苦笑する。

 

「志津香さんはしっかりと休んでいてくださいです。ルークさんの事はトマトにお任せですかねー!」

「ん……」

「ふっ……あの男に俺らの助けが必要かは判らないがな……その背中くらいは守って見せるさ……」

「トマトさん、気を付けてくださいね」

「勿論ですかねー!」

 

 トマトがドンと胸を張る。言う人が言えば皮肉にも聞こえかねない台詞だが、トマトにそんな意図がない事は皆判っているため、志津香も素直にその言葉を受け入れる。その後ろではバーナードがボソボソと何かを口にしていたが、皆の耳には届いていなかった。

 

「一緒にいる事で急接近という可能性もあるですかー? このトマト、数少ないチャンスは逃さないですかねー!」

「そ、そういう考え方もあるんですね」

 

 ルークからは見えないようにグッと拳を握るトマトを見てインチェルが戸惑いながらも尊敬の眼差しを送る。トマトの好意は誰から見ても明らか。本人は隠しているつもりらしいが、頭も尻も隠していないような状況だ。そんな真っ直ぐなトマトをインチェルは陰ながら応援していた。

 

「ただでさえ真知子さんには後れを取っているです。こういう時に少しでも差を挽回しないとですかねー」

「な、成程。深いです」

「お二人とも、あちらを」

 

 コソコソと話すトマトとインチェルの肩をつんつんと指で突くのは珠樹。促されるように顔を上げ、二人は珠樹の示す方へ視線を向ける。

 

「ルークさん、こちらがペトロ77の地図です。ルートが3つありますが、この左のルートが一番安全なものと思われます。山中で出現するモンスターの情報もこちらに」

「ああ、ありがとう。真知子さん、いつも助かる。任務が決まったのは今朝なのに、この短時間でよくここまでの情報を……」

「正確さと迅速さが情報屋の命ですから」

 

 ルークに地図を手渡し、感謝されている真知子の姿がそこにあった。思わず口をポカンと開けてその光景に見入ってしまうトマトとインチェル。そんな二人の方を一度振り返り、真知子が静かに笑う。

 

「居残り組にもこういう戦い方があるんです」

「ま、真知子さん……恐ろしい人っ……」

 

 トマトが大げさにショックを受けている中、真知子は困ったような笑みを浮かべていつの間にか横に立っていたロゼを見る。

 

「ロゼさん、勝手にアフレコされると困るのですが」

「でも、そんな感じの事は思ってたでしょ?」

「ふふ、さてどうでしょうか……」

 

 ニヤリと笑うロゼにこれまた含みを持った笑みで返す真知子。そんな二人を他所にぐぉぉぉという乙女が出してはいけない声で床を転げるトマト。そのトマトを見ながらため息を吐く志津香。これが各人の余裕の差というものだろうか。

 

「あははは! ……ん?」

 

 その光景を笑っていたマリアだが、ふと違和感に気が付く。いつもならば一緒に騒いでいそうなかなみが、ルークを見ながらぼうっとした様子で突っ立っているのだ。何かあったのだろうか。

 

「…………」

 

 かなみの視線の先に立つのは、ルーク。そしてその彼を取り囲むように立っているのは、志津香とロゼと真知子。今回、志津香はルークの方針に反対し、自分の意見をハッキリと言った。結果は覆らなかったが、ルークに対し一歩も引かなかった。もし自分が同じような立場であった場合、同じ行動が取れただろうか。

 

「(対等かぁ……)」

 

 かなみの頭の中に浮かぶイメージ。それは、志津香やロゼがルークの横に立っているのに対し、自分はルークの一歩後ろに立っている映像。ルークは自分の事を信頼してくれている。頼れる仲間だと認めてくれている。だが、『対等』な立場に自分は立てていない。志津香やロゼ、フェリスや真知子のように、彼の横にはまだ立てていないのだ。そこに立場は関係ない。使い魔という絶対的な主従関係でありながら、フェリスは彼の横にしっかりと立っていたのだから。

 

「(……もっと頑張らないと)」

 

 そうでなければ、ルークの目指す夢にはついていけない。

 

【ブラック隊参加メンバー】

 ルーク、ロゼ、かなみ、トマト、シトモネ、シャイラ、ネイ、バーナード

 

 

 

-ペトロ山-

 

「かなみ、どうかしたか?」

「えっ? あっ!」

 

 思いがけず出発前の話になった事で、かなみはつい上の空になってしまっていた。ルークに気を遣われ、思わず慌てるかなみ。

 

「す、すいません!」

「いや、気にしなくていい。そんな事もあるさ」

「あぅ……」

 

 思いっきりフォローされているのが判ったため、恥ずかしそうに顔を赤くする。もっと頑張らねばと決意を新たにしてすぐにこれでは言い訳のしようもない。今回は別の任務もルークから頼まれているというのに。

 

「そういえば、このペトロ山ってなんか怪談話があったわよね」

「そうなんですかー?」

「前にどっかで聞いたような気がするんだけど、忘れちゃったのよねー」

 

 そんな中、ロゼとトマトの会話が耳に入る。偶然だがその話は知っている。これだ。汚名返上にはならないが、とりあえず今の気まずい雰囲気は無くせる。

 

「あ、それなら私知ってます! メナドから聞きました!」

「あら? そうなの?」

「はい! メナドが以前将軍たちの集まりで話した事あるみたいなんですけど、リックさんとハウレーンさんが気絶するくらい怖がったみたいです」

「ほぅ。あのリックとハウレーンがな……」

「リックって、死神のあんちゃんだよな?」

「そういえば闘神都市でもモンスターを怖がってたものね」

 

 思わずリックとハウレーンの恥部を暴露してしまうかなみ。ルークが驚いたように声を漏らす。リックとは付き合いもそれなりにあり、戦闘以外では温和な性格であるのも知っているためそこまで驚かなかったが、ハウレーンの方は凛々しいイメージがあったので怖い話が苦手とは思わなかったからだ。同様に、闘神都市で兜を無くした状態のリックを見ているシャイラとネイもリックが怖がりという事にはむしろ納得した様子であった。

 

「面白そうじゃない。話してみてよ」

「えっ!? わ、わざわざこの場所で話すんですか?」

「それは流石に怖いですかねー……」

「はっはっは。ま、まあ臨場感あっていいんじゃないか?」

「あ、足が震えてるわよ、シャイラ」

 

 ニヤリと笑うロゼに対し、シトモネとトマトは怯えた様子だ。シャイラは必死に強がっているが、ネイに足の震えを指摘されている。かくいうネイも足が震えているのだが。

 

「えっと……」

 

 話してもいいものか困ったような視線を向けるかなみに対し、ルークは静かに微笑む。

 

「ん? そうだな、まあまだ目的地まであるし、気分転換がてら話すのもありじゃないか?」

「隊長! その判断は失策だと思います!」

「却下する」

「ひでぇっ! あたしたちへの扱いひでぇっ!」

「まあ、お前らとは前からこんな感じだからなぁ」

 

 ネイの抗議をあっさりと退けるルーク。この二人との付き合いも無駄に長いし、色々と紆余曲折あった。恨まれたり戦ったり脅したり。今ではルークが積極的に弄るという特殊な立ち位置になっている。

 

「こほん。で、では僭越ながらペトロ山脈の首を求める幽霊の話を……メナドほど上手く話せないと思いますが……」

「(首を求めるって……まあ、気が付いてないのが殆どみたいだからまだ黙っておきましょ)」

 

 気が付いているのが恐らくルークだけである事を確認し、ロゼはネタばらしを後に回す事にする。語られる怪談。話し上手なメナドと比べれば確かに拙いが、それでも今いるのがその現場であるという臨場感が作用し、気が付けばほぼ全員が息を呑んでいた。

 

「そこには……首の無い少年たちの死体が!」

「「っ!?」」

 

 話も山場。かなみの声の抑揚にも勢いがつき、シャイラとネイはいつの間にやら肩を寄せ合って震えていた。その様子にちょっとだけ優越感を感じるかなみ。自分の話し方もやれるじゃないかとご満悦だ。更に話を続け、とうとう最後の山場までやってきた。

 

「背後の気配に怯える住人。すると、肩を叩かれます。トントン……って。住人は覚悟を決めて振り返ったらしいんです……」

 

 ゴクリ、とトマトが息を呑むのが聞こえる。さあ、最後の決めシーン。後ろを振り返ったら少年の首を持った女が立っていて、『首を置いてけぇぇぇ』と叫ぶ。大声で叫ぶのがポイントだ。話し手のかなみがグッと拳を握る。

 

「するとそこには!」

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

「ひっ……ひぃぃぃ!!」

「いやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 これ以上ないというタイミングで男の大声が迷宮に響く。当然、阿鼻叫喚の一同。シャイラとネイが悲鳴と共に腰が抜け、シトモネが可愛らしい悲鳴で耳を塞ぎぶんぶんと頭を揺らす。完全に見せ場を取られたかなみはポカンと口を開けていた。叫んだのは予想外の男。まさかのバーナードだ。

 

「あ……あの……」

「出発前に渡されていた」

 

 バーナードがメモ用紙を懐から取り出す。ルークがそれを受け取り、かなみとロゼも横から覗き込む。そこには、『怪談話をする展開になったら、一度死体を見つけた後に後ろを振り返るタイミングで叫んでください』、といった内容が書いてあった。差出人は真知子。

 

「真知子さんが一枚上手か。しかし、バーナードもよく承諾したな」

「報酬のいかなごには勝てなかった」

「いかなごか。佃煮にすると美味いよな」

「バーナードに仕込んでおく辺りがにくいわね。そんな事するなんて誰も思わなかっただろうし」

「うぅ……見せ場が……」

 

 苦笑するルークとロゼ。確かにロゼならば叫びそうなイメージだが、バーナードならばそんなイメージは全くない。恐らく、怯えている一同もロゼが何かやるのではと警戒していたのだろう。そこにまさかのバーナード。射程外からの強装弾。撃ち抜かれるのも当然の結果だ。肩を落とすかなみ。その肩がポンポンと叩かれる。

 

「バンバンだよ人生は……」

「そうですね、バンバンですね……って、きゃぁっ! て、敵です!」

「あれー、変な人がいるよー」

「HAHAHA!」

 

 かなみを同情していたのは野生の女の子モンスターであるうしうしバンバンであった。モンスターに同情された事を考えると泣きたくなるが、今はそんな場合ではない。とりたまやプロレス男など、事前に真知子から聞いていたモンスターがぞろぞろと集まってきた。

 

「敵か。全員、武器を構えろ」

「隊長、無理でーす。腰が抜けてまーす」

「同じーく」

「いやぁぁぁ! いやぁぁぁ!!」

 

 仲良く腰が抜けているシャイラとネイ。未だに耳に手を当てて涙目で頭を揺すっているシトモネ。当然ルークの声は届いていない。

 

「因みにトマトはここで泡吹いて倒れてるわよ」

「…………」

「…………」

 

 冷たい風が通路に吹く。パーティーメンバー8人。戦闘前に4人離脱。しかも主戦力。ルークは困った様子で額に手を当て、真剣な表情でこんな事を言い放った。

 

「怪談を話したのは失敗だったか……」

「ご、ごめんなさいぃぃぃ!!」

「ふっ……もう、お前と組んで仕事はしたくないな……」

「ハードボイルドに決めてるつもりかもしれないけど、半分くらいはあんたのせいだからね」

 

 ニヒルに笑うバーナードにロゼが突っ込みを入れる。責任の所在という意味では、怪談を許可したルーク、実行犯のバーナード、真犯人の真知子が仲良く並んでいるといったところか。とはいえ例え4人でも負ける事のない相手であるため、帰る頃には笑い話になっているだろう。そんな出来事であった。

 

 

 

-アイスフレーム拠点 志津香の部屋-

 

「ふぁ……」

 

 ベッドの上に寝転がりながら魔術書を読む志津香。風呂上りなのか、下着に大きめのシャツ一枚というかなり油断した格好だ。普段はマリアが口うるさくしている事もあってあまりばれていないが、基本はものぐさな性格なのだ。

 

「落ち着いて考えるとラッキーよね。ああ、突っ込まなくていいって楽だわー。ついていってたら、今頃きっと突っ込む事態になってそうだし」

 

 大正解。たまの休日を満喫する志津香であった。

 

 

 

-アイスフレーム拠点 広場-

 

「あれ? 今回の任務はメガデスとプリマも休みなの?」

「おう。まあ、治安隊本部で活躍しちまったしな、くふふっ。あと、モロミちゃんって呼べっつってんだろ☆ 射るぞ☆」

「まあ確かにね。というか、メガデスが6人の選抜メンバーに選ばれるのがそもそも大抜擢というか」

「あぁん!?」

「ひっ、そ、そう睨まないでよ……」

 

 任務から外れていたナターシャが広場でプリマとメガデスの二人とすれ違う。この二人のじゃれ合い、といっても若干メガデスからの一方的なものだが、そんな光景もアイスフレームではおなじみの光景だ。ナターシャとメガデスは同じ弓兵という事もあり、友達と呼ぶ程ではないが比較的会話はする。

 

「そっちの隊長はどう?」

「ランスの事か? ああ、そういやナターシャの心象は最悪だったな。チェンジされたし」

「うっ……」

「ちょっと、メガデス……」

「いやいや、こういうのは笑い話にしねーとやってらんねーって」

 

 ルークがアイスフレームに来る前、ナターシャは一度グリーン隊に配属されたが、容姿がランスの趣味に合わずプリマとチェンジさせられた経験がある。その事から当然ランスの事をよく思っていない。グサグサと古傷を抉るメガデスにプリマが注意するが、メガデス的には笑い話にするべきというスタンスのようだ。

 

「ランスはなー、ちょっとストライクゾーン狭いよなー。モロミちゃんならナターシャはギリオッケーなのに。一発どう?」

 

 実は両刀使いのメガデス。グッと親指を立ててナターシャを誘うが、呆れた様子で断られる。

 

「断るわ。私、好きな人いるし」

「アベルト? 振られたんでしょ? ならいーじゃん、モロミちゃんと一夜限りの火遊びしよーぜ☆」

「だから、そうハッキリ言うなって!」

 

 ナターシャがアベルトを好きな事はアイスフレーム内では薄々気が付いている者も多かった。そして先日、彼女がハッキリと振られた事も。目に見えて落ち込むナターシャを見てプリマが再度メガデスを注意するが、メガデスは気にした様子もなくナターシャの肩に手を回して夜のお遊びに誘う。そんなメガデスの耳に向け、ナターシャが小声で問う。

 

「というか、あなたプリマ狙いじゃなかったの?」

「プリマは嫁。それ以外は一夜限りの遊び。オーケー?」

「全然オーケーじゃないけど……でも、まだプリマには手を出してないのよね?」

「あー……処女って面倒くさいんだよね。プリマは嫁だけど、処女だから手を出したくない。でも、モロミちゃんの予想だとそろそろランスがプリマに手を出しそうな感じ」

「……いいの?」

「オッケー、オッケー。そこら辺の馬の骨だったら殺すけど、ランスならまーオッケー。モロミちゃんも処女に拘る安い女じゃないし。ランスが処女膜を破ってくれたら、纏めて美味しくいただきます☆」

「(プリマも大変ね……)」

「(何話してるんだろう……)」

 

 理解出来ない感覚にげんなりとした表情のナターシャと、二人のひそひそ話が気になるプリマ。少しだけ寂しかったりもする。それを察したのか、メガデスはナターシャの肩に回していた手を外して離れ、プリマの背中を勢いよく叩いた。

 

「あいたっ!」

「で、ランスの事だったな? おもしれーぜ。一回休みを合わせて一緒にナンパ巡りしたい」

「それ、男友達の感覚じゃないの……プリマは?」

「ん、そうだね……善人じゃないかな。スケベだし……」

 

 ケラケラと笑うメガデスに対し、少し困った表情を浮かべるプリマ。だが、言い回しを鑑みるに心の底から嫌っているという訳でもなさそうだ。

 

「……そっちの隊長はどう?」

「そうね、文句はないわ。ただ、最近は外の人が増えてちょっと疎外感あるかな」

「まあ、こっちも似たようなもんだけどな」

 

 苦笑するナターシャ。元々のアイスフレームメンバーである彼女からすると、最近のブラック隊はルークの知り合いが増えすぎていて少しだけ居心地が悪い。そのうえシャイラやネイ、セスナといった元メンバーもルークとは前からの知り合いなのだ。勿論、みんな良い人なのだが、友達同士の中にポツンと一人入れられたような感覚がある。その感覚は少し判るが、まあ気にするなと笑い飛ばすメガデス。彼女は性格的にあまり気にならないのだろう。

 

「でも、あの人が隊長だと色々と大変でしょう?」

「いや、それがそうでもないかな。カオルさんがフォローしてくれるし」

「ああ、そうか。副隊長はしっかり者のカオルさんだものね」

 

 ナターシャの心配をよそに、プリマは実はそうでもないと言い切る。副隊長のカオルが上手い事ランスのセーブ役となっているからだ。だが、メガデスは眉をひそめて何かを思い返す。

 

「でもさ、なーんか今日の出がけは不穏な空気じゃなかった?」

「そう?」

 

 ブラック隊が出発してからしばらくして、グリーン隊も任務に向かった。その際、確かにカオルは不機嫌そうな顔をしていた。だが、プリマはその事に気が付いていなかったようだ。

 

「なんもなきゃいいけど」

 

 メガデスが空を見上げる。あれだけ晴れていたのに、いつの間にやら曇り空になっていた。まるでこの先の未来を示しているかのような。

 

 

 

-ゼス 第3試験会場-

 

「よーし、卒業試験が行われているというのがこの迷宮だな」

「はい、ランス様」

「…………」

「どうした? 機嫌悪そうな顔して」

 

 ゼスのとある迷宮。今日はここでゼス応用学校の卒業実技試験が開かれている。そして、その卒業試験が今回の任務に関係しているのだ。笑顔のランスとは対照的に、後方に立つカオルの表情は険しい。そんなカオルに話しかけるのは、パットンだ。

 

「納得していないだけですわ……」

「そうは言ってもなぁ……リーダーのウルザも認めてたんだろう?」

「っ……」

 

 肩を竦めるパットン。その言葉にカオルが更に表情を暗くする。そう、この任務はあのウルザが実行を認めたのだ。信じられない。信じたくない。こんな無謀で無茶で人道外れた任務を。

 

「パットンさんは平気なのですか……?」

「ん? 俺か?」

「明らかに下劣な作戦です」

 

 この質問を受け、パットンはカオルが冷静でない事を理解する。相当この任務に納得がいっていないのだろう。明らかに聞く相手を間違えている。

 

「まあ、俺はゼスの人間じゃねーしな。その王女様に特別な感情はないな。それに、俺は『それ』をやられた側だぜ?」

「っ……」

「行為を咎めるなら、タイミングが遅いだろ。あんたが怒っているのは『その行為』じゃなくて、『誰』にその行為をするのかって事だろ?」

 

 しまったとばかりに口を噤むカオル。そう、パットンは『その行為』の結果、今この場所にいるのだ。実行したのはブラック隊だが、カオルもその任務については承知していた。立場も似ている。パットンは元皇子。そして今の相手は王女。

 

「……あんた、本当にレジスタンスか?」

 

 瞬間、パットンが鋭い視線をカオルに送る。そう、カオルが不機嫌になる事がまずおかしいのだ。レジスタンスに入るような者は多かれ少なかれ現政府を憎んでいる。この任務に人道的な面で反対する気持ちは判るが、ここまで拒否反応を示すのは不可解だ。パットンとてかつては権謀渦巻く渦中にいた。パットン自身も当時はクソみたいな皇子だったと断言しているが、これでも対立派と幾度となく腹の探り合いをやってきた。リーザス解放戦では、あのノスやアイゼルとも舌戦をやりあっている。だからこそ気が付く、カオルへの違和感。

 

「……質問の意図が判りかねます」

「本当にそうか……?」

「ええ、理解出来ません」

「……そうか。じゃあ、忘れてくれ」

「パットンさん、カオルさん、出発するみたいですよ」

 

 フッと緊張の糸を自ら切るパットン。すると、マリアが手を振りながら自分たちを呼んでいる。肩を回しながらそれに応えるパットン。

 

「おっ、そうか。了解だ。壁役が後ろにいたんじゃ意味ねーからな」

「あはは。頼りにしてます」

 

 自分は器用な人間ではない。前に出て、敵の攻撃をこの身に受けて仲間を守り、ついでに相手を殴り倒す。それしか出来ない男なのだから、後ろにいては意味がない。それはいずれ来るであろう、祖国ヘルマンを奪還する際にも変えるつもりのないスタンスだ。そんなパットンの背中を見据えながら、カオルも無言でそれについていく。

 

「ここはもしかして……」

「おい、リズナ。何をボーっと突っ立っている。行くぞ」

「あっ、はい」

 

 どこか心ここにあらずな様子のリズナに一声掛け、ランスは剣を抜いて真っ直ぐと通路の先を指し示した。

 

「さあ、行くぞ! マジックちゃん誘拐大作戦だ!」

 

 グリーン隊の任務。それはこの卒業試験に参加しているガンジー王の一人娘、マジック・ザ・ガンジー王女の誘拐であった。

 

【グリーン隊参加メンバー】

 ランス、シィル、マリア、カオル、リズナ、パットン、ロッキー、殺

 

「……殺さんは今回の任務をどうお思いですか?」

「誘拐か? まあオオサカなら日常茶飯事だな。相手を交渉の場に座らせる手段としては効率的だと言えるだろう」

「…………」

 

 またしてもカオルは聞く相手を間違えていた。

 

 

 

-ペトロ山 山頂-

 

「どうだい?」

「もうすぐ開きそうです……」

 

 ペトロ山の山頂、モヘカの館。情報通り、巨大な館がそこにはそびえ立っていた。その正面入り口、鍵の掛かった扉の前でシトモネがしゃがみ込む。カチャカチャと鍵穴を仕事道具で弄っている。これがキーハンターであるシトモネの真骨頂。こと開錠の技術においてだけはかなみをも上回っている。

 

「えっ? 幽霊はいないんですかねー?」

「少なくとも、このペトロ山にはな」

 

 驚いたような声を出すトマト。それに対し、少なくともこのペトロ山で噂になっているものは幽霊の仕業ではないと断言するルーク。次いで、ロゼが笑みを浮かべながら補足を入れる。

 

「今回の任務を思い出してみなさいよ」

「確か、16人の少年が行方不明に……」

「で、噂話の方に出てくる死体は?」

「少年の首なし死体……あっ、成程!」

「そっ。モヘカの誘拐事件が独り歩きした結果がその噂話よ、多分ね」

 

 ネイとかなみは合点がいったというように頷く。そう、恐らくその怪談はモヘカの誘拐事件が原因で生まれたものだろう。

 

「って事は、首なし死体ってとこは脚色か?」

「そうね……火のない所に煙は立たないとも言うけど……」

「…………」

 

 シャイラの疑問を受け流しながら、チラリとルークに視線を送るロゼ。そのルークは眉をひそめ険しい顔をしている。ルークも気が付いているのだろう。その可能性に。

 

「(少年の誘拐っていうからただのショタコン監禁ババアかと思ってたけど……)」

「開きました!」

 

 ロゼが最悪の可能性を考えていると、扉の方からシトモネが声を響かせる。流石に仕事が早い。

 

「みんな、罠があるかもしれないから気を付けろ。シトモネ、周囲に気を配ってくれ」

「はい!」

「さてさて、鬼ババアが出るか蛇ババアが出るか」

「ババアなのは確定よね」

 

 シャイラとネイがそんな事をのたまいながら、一同は館の中へと入っていく。正面玄関を開けた先のロビーに人影はない。

 

「……奥の方から気配を感じるな。それも二つ」

「そうですね」

「(感じるか?)」

「(これっぽっちも)」

 

 強者のルークと忍びのかなみは一早く奥の部屋の気配を察し、進む方向を決める。シャイラとネイは勿論、他の者たちもまだその域には達していない。罠を警戒するシトモネが先頭で歩く中、ルークは横を歩いていたロゼにある疑問をぶつける。

 

「そういえば……」

「ん? なに?」

「さっきの戦闘、ダ・ゲイルを呼び出さなかったな。というか、アイスフレームに来てから確か一度も呼び出してないよな」

「ああ、やっぱり気が付いてた?」

 

 そう、ロゼはここ最近の間、ダ・ゲイルを一度も呼び出していないのだ。階級はそこまで高くないとはいえ、純正の悪魔。戦闘力としては仲間の中でもかなり頼りになる部類。ギャルズタワーでもアリオスとの戦いでも、敗れたとはいえ十分な戦力にはなっていた。

 

「楽してたって言いたいところだけど、ちょっち理由がね」

「何かあったか?」

「……他言無用よ。実は思うところがあってね……」

「おっ、あそこに何かありますですかねー?」

 

 ルークとロゼがそんな会話をしている中、トマトが館の隅に宝箱が置いてあるのを発見する。柱の陰であり、つい見落としてしまいそうな位置においてあるそれを見つけたトマトは実に目ざといと言えるだろう。

 

「うわっ、判り難い場所。よく見つけましたね」

「トマトは宝箱に愛されているんですかねー」

「勝手に奪っていいのかしら?」

「悪党の溜め込んだ財宝だ。頂くのが逆に筋というものだ」

「別にいいんじゃねーか?」

「そうですね。じゃあ、私が開けます。罠が仕掛けてあるかもしれないし」

 

 かなみですら見落としていた宝箱の発見に胸を張るトマト。とはいえ、人の家の中に置いてある物。シトモネが口にした疑問を、バーナードがハードボイルドに答える。が、その言葉はシトモネの耳に届いておらず、シャイラの回答を聞いて小走りに宝箱へと駆けて行った。

 

「……ん、鍵は掛かっているけど罠はないみたい。赤の鍵で開きそうかな。よっと……」

「中身はなんですかねー? トマトにも見せて欲しいですかねー」

「……っ!?」

 

 宝箱の前にしゃがんで鍵を開けるシトモネとそれに駆け寄るトマト。瞬間、宝箱の底が僅かにだが赤く染まっているのをルークは見てしまう。あの変色した赤黒い色の正体はすぐに察せた。中身は判らないが、嫌な予感がする。小走りで二人の下へと駆け寄るルークだったが、間に合わない。

 

「開けるな!」

「えっ?」

 

 ルークの声が聞こえるよりも早く、シトモネは蓋を開けてしまっていた。トマトはルークの声に反応して振り返ったためその中身を見る事がなかったが、シトモネは思い切り見てしまう。

 

「っ……きゃぁぁぁぁ!!」

「ふえっ!? 何が……って、何も見えないですかねー! 真っ暗ですかねー!!」

「トマト、見なくていい」

「あっ、ルークさんの手ですかねー」

 

 シトモネの悲鳴に思わず振り返るトマトであったが、突如視界が塞がる。何事かと慌てるが、ルークが手で自分の視界を塞いでいるのが原因だと判り、ホッとした様子で落ち着きを取り戻す。だが同時に、何故ルークがそんな事をしているのかに疑問を抱く。それ程までに宝箱の中身を見せたくないのか。未だ視界が塞がれている中、足元から怯えた様子のシトモネの声が聞こえてくる。

 

「あ……ルークさん……これっ……」

「おい、どうした?」

「何があったんですか!?」

「みんなも来なくていい」

 

 ただならぬ様子に駆けてこようとした一同を止め、ルークはトマトと共にその場にしゃがみ込む。未だトマトの視界を片方の手で覆ったまま、もう片方の手で半開きのままになっていた宝箱の中を確認する。

 

「…………」

 

 そこにあったのは、12歳程度と思われる少年の生首であった。ロゼの考えていた最悪の可能性は当たってしまった。この館の主人はただの少年誘拐犯ではない。こうして殺戮を繰り返している狂人なのだ。

 

「シトモネ……」

「…………」

「……忘れろ」

「……はい」

 

 涙声で答えるシトモネ。忘れろと言っても、難しいだろう。冒険中に死体を見つけるのとは訳が違う。切断した少年の首をこうして大事に保管しているのを目の当たりにしてしまったのだ。静かに宝箱を閉めるルーク。

 

「(……殺す)」

 

 そして、明確な殺意を持って奥の部屋へと進むのだった。

 

「…………」

 

 そして、その様子を見守っていた一つの影が、ルークたちよりも先に奥の部屋へと姿を消した。それに気が付いた者は、誰もいない。

 

 

 

-モヘカの館 応接間-

 

「おらおら! 悪党ババア、出てきやがれ!」

「愛と勇気の戦士がお仕置きに来たわよ!」

「なんか懐かしい口上ね」

 

 扉を蹴破って応接間へと入る一向。ここから気配を感じるというルークとかなみの言葉を信じての行動だ。道中、それとなく宝箱の中に入っていた物をシトモネから聞き出したシャイラとネイは怒り心頭。最早懐かしさすら覚える名乗りを上げながら部屋へと一番に乗り込んだのだった。闘神都市の戦いの際、一度だけそんな口上を聞いた覚えのあったロゼは一応反応を示してくれていた。

 

「なんや? お客さんか?」

「た、助けて……」

「へ?」

 

 だが、応接間の光景に思わず呆気に取られてしまうシャイラとネイ。いや、二人だけではない。ルークやロゼも含め、全員が応接間の光景に驚いていた。部屋の奥には巨大な鉄製のお御籤を持った女性が立っており、その足元には額から血を流した女性が転がっている。まだ息はあるらしく、こちらに助けを求めるべくずりずりと床を這いずっている。

 

「……コパンドンか?」

「なんや、ルークやん! それとそっちにはロゼやんとシトモネちんも! いやー、奇遇やなー」

「やっほー」

「そ、その呼び方は微妙なんですけど……」

「お知り合いですか?」

「ああ」

 

 そう、部屋の奥に立っている小柄な女性の正体はコパンドン・ドット。かつてルークが請け負ったハピネス製薬事件の後処理で知り合い、玄武城からの脱出も共にした知人だ。金や恋愛にうるさいところはあるが、悪い人間ではない。となると、足元で血を流しているのがこの館の主人であるモヘカなのだろう。しかし、何故こんな場所にコパンドンがいるのか。

 

「こんなところで何をしているんだ?」

「そういうあんた等は……って、言わんでもいいわ。面子的に冒険者が多いみたいやし、そういう仕事なんやろ?」

「ああ。この館に招かれて行方不明になった少年が大勢いてな。さっき死体も見つけた」

「うげっ! このおばはん、そんな事もやっとったんか!」

 

 舌を出し、おえーという擬音を出して嫌悪感を示すコパンドン。そのコパンドンから逃げるように床を這いずるモヘカ。とりあえずルークたちがこの場にいる理由に納得したコパンドンは、今度は自分がいる理由を話し始める。

 

「うちな、今株取引しとるんよ。で、この株を買い占めたいなーって思える企業があったんやけど、まあその株を手放さん強欲なクソババアがおってな」

「あー……モヘカは金融界の魔女って呼ばれてたわね」

「そう、それがこのババアや。わざわざ直接赴いて、そのうえ市場の5倍の値段で買うたる言うたのに、最終的には喧嘩になってもうてな。帰れーってナイフを振り回してきたから、このお御籤でスパーンとドタマかち割って倒してもた」

「うわー……」

「一応コパンドンさん、一人で冒険できるくらいには強い冒険者です」

「それは凄いですかねー」

 

 ビシッと床のモヘカを指差すコパンドン。頭から血を流している事に合点がいくと共に、ドン引きのネイであった。シトモネがトマトに説明したように、コパンドンとて冒険者の端くれ。大した力を持っていない魔法使いに近接戦闘で負けるような鍛え方はしていない。

 

「た……助け……」

 

 ルークの足を瀕死のモヘカが掴む。そのモヘカを冷酷な視線で見下ろしながら、ルークはゆっくりと腰を下ろし、モヘカと視線の位置を合わせてから真っ直ぐとその目を見据える。

 

「質問に答えろ。嘘を言えば殺す。正直に答えれば見逃す」

「ひっ……」

 

 怯えるモヘカ。だが、頭からの出血で意識が朦朧とし始めているモヘカは、コクコクと頷いてこれを承諾してしまう。同時に、既にまともな思考が出来ないためか、本当にルークの質問に正直に答えてしまう。

 

「誘拐した少年を殺したのはお前だな?」

「……あ、ああっ、そうだよ」

「誘拐した少年は全員殺したのか? 生き残りは?」

「ぜ、全員死んだよ……そろそろ新しいのを補充してこなきゃって思ってたところだ……」

「補充か……何故殺した? 恨みでもあったのか?」

「お、男の子の悲鳴が好きなのよ。首を斬られて死ぬ瞬間の悲鳴は他に代えがたい道楽だったわ。それと、恐怖に彩られた最期の表情。オブジェとしては最高の……」

 

 そこまで言った瞬間、これまで少年たちにやってきたのと同じようにモヘカの首が宙を舞った。振り切った剣を静かに収め、ゆっくりと立ち上がるルーク。そしてそのままドサリと倒れたモヘカの胴体を見下ろし、一言だけ告げる。

 

「お前はここで死んでおけ」

「あー、嘘ついたー。ルーク、うーそつーいたー」

「約束を守る理由もないだろう?」

「まあ、それもそやな」

 

 正直に言えば生かすという約束を破ったルークを茶化すコパンドンだが、一応空気は読んでいるのだろう。ルークの返事に素直に頷く。死んで当然の女だ。

 

「最後まで理解出来ないババアだったわね」

「さっきからちょっと気になってたんですけどー、モヘカって確か真知子さんの資料だと30歳ですかねー。30歳ってババアなんですかー?」

 

 モヘカの死体を見下ろしながらそう呟くネイ。そんなネイに、トマトは先程から気になっていたある疑問をぶつける。曰く、ババアの定義。それに対し、ネイは何の悪気もなくこう答える。

 

「四捨五入して三十路越えたらおっさんおばさんでしょ」

「よーし、戦争や!」

 

 そして、見事に地雷を踏み抜く。

 

「ちょっ、待って! なんか鉄のお御籤を振りかぶりながら駆け寄って来るんだけど!」

「あんたは何も判っとらん! 年を重ねる事でにじみ出る大人のエロスっちゅうもんを判っとらん!」

「えっ!? なんで!? あの娘、十代でしょ?」

「コパンドンは今年27歳よ」

「うっそっ!?」

「うわー、見えねー」

「童顔も禁句や! うちが目指しとるのは大人の女やー!」

「やっべっ、飛び火した!」

 

 ネイに続き、シャイラもターゲットにロックオンするコパンドン。その目つきは野獣そのもの。慌てて逃げようとするネイとシャイラ。その視線の先には、ルークが立っていた。

 

「ちょっと、ルーク! 知り合いなら彼女を止めて!」

「コパンドン」

「なんや?」

「気の済むまでやれ」

「流石、話が判る! 三十路目前同盟再結成やー!!」

「駄目だこいつ、あっちの味方だ!」

 

 グッとサムズアップでコパンドンの行動に理解を示すルーク。今年28歳。ドタドタと応接間を駆け回る三人を見てシトモネがクスリと笑う。偶然とはいえ、コパンドンのお陰で重い空気が少し弛緩してくれたようだ。

 

「はいはい、騒ぐのはいいけどあんまりやり過ぎないでよ」

「なんや、ロゼやん。あんたかて二十代後半やろ?」

「別に私は気にしてないもーん。あんたら二人が気にし過ぎ」

「うっ……」

「ぐっ……」

 

 コパンドンの振り下ろした鉄製のお御籤を必死の形相で真剣白羽取りするシャイラ。その手はぷるぷると震えており、中々にシュールな光景が繰り広げられていた。散々楽しんだロゼはここらが締め時だろうと手を叩き、頭に血の上っていたコパンドンを止める。痛い所を突かれ、項垂れる三十路目前同盟の二人。

 

「ところで気になったんだけど、なんで株なんてやってるの? 大吉くんだっけ? そんな感じの運命の男捜しをしてるんじゃないの?」

「勿論、今も捜しとるがな! でもな、いくらうちが美貌と性格を兼ね備えた完璧ギャルでも、大吉くんが振り向かない事もあるやろ? ランスもそうやったし」

「あー……」

「ハイ、ソウデスネ」

「なんや、ロゼやん。そのわざとらしい棒読みは。ほんまムカつくわー」

 

 コパンドンは以前、お御籤で大吉を出した強運の持ち主であるランスにアタックし、見事玉砕した経験を持つ。ルークとロゼ、シトモネの三人はそれを知っているため、ランスの名前に反応を示す。というか、どちらかというとコパンドンの自信に飽きれたというのが真実だが。

 

「そんな時に武器になるのが金や! 地獄の沙汰も金次第。そう、金の力でイケメンの大吉くんをものにするんや!」

「うーむ、ここまで来ると清々しい」

 

 ゴーっと目の中の炎を燃やすコパンドン。流石のロゼもこの情熱にはただただ感嘆するしかなかった。

 

「ん? ちょい待ち。もしかして、ランスと一緒に行動してたりするんか?」

「ああ、勘が良いな。今は一緒じゃないが、同じレジスタンスに所属している。拠点に戻ればランスもシィルちゃんもいる」

「むっ……やっぱあのもこもこちゃんも一緒か……でも運命やわー。こうしてランスと再会出来る機会が訪れるなんてー」

「俺たちとは奇遇で、ランスとは運命なのか?」

「女は都合の良い柔軟な頭の持ち主なんやー」

 

 苦笑するルーク。だが、コパンドンは言いつくろいもせず平然と言ってのける。やはり中々に豪胆な性格。知り合いの中でもトップクラスに押しの強い人間だろう。

 

「というか、あんだけキッパリ振られたのにまだ諦めてないの?」

「まだ見ぬ大吉くんより既に出会った大吉くん! あん時のうちは金が無かった。でも、今のうちには金がある。これならランスが振り向く可能性も……」

「厳しいぞ」

「へ?」

「流石に判っているんだろ? ランスが誰を一番大切に思っているのかは」

「うっ……ルーク、意地悪やわー」

 

 コパンドンは聡明な女性だ。共に過ごした時間は短いとはいえ、あの二人の絆はまざまざと見せつけられている。意地悪だと断ずるコパンドンであったが、同時にルークもあの悪魔の親子の後姿を思い浮かべ少しだけ複雑な表情を浮かべていた。

 

「でも、うちは諦めへん! そこに可能性がある限り、何度でもアタックしてランスを振り向かせて見せるわ!」

「ランスさん狙いですかー。でも、リア女王もランスさん好きですかねー。意外とモテモテですかねー」

「うっ……」

 

 トマトの物言いに主のダブルピース姿を思い浮かべるかなみ。逃れられない現実がそこにあった。

 

「という訳で、うちもそのレジスタンスに協力させてくれへん?」

「今のゼスでレジスタンスをやる事がどういう意味を持つかは判っているよな? 危険だぞ」

「そんなもん判っとるわ。でもな、多少の危険に恐れていたら幸せなんかつかめんのや。なー、仲間に入れてーな」

「ふむ……」

 

 悩む素振りを見せるが、正直こちらには旨みしかない。戦力としては主力とはいかないまでも脇を支えるには十分。ランスへのぞっこんぶりを見るに裏切りや離脱の心配もない。以前にも共に戦った事があるため連携も問題なし。そして何より、ちゃんと確固とした意志を持って行動出来る人物である。

 

「所属希望はランスの部隊だな?」

「もちのろんや! 勘忍なー、ルーク。こんな美人が仲間にならへんで」

「まあいいさ」

「でも、この借りは忘れへんで。ちゃーんと利子つけて返すから期待して待っときや」

「ほう、それは期待しておく」

 

 バシバシとルークの背中を叩くコパンドン。満面の笑みだ。よっぽどランスと再会出来るのが嬉しいのだろう。これならばその橋渡しになったこちらも嬉しいというものだ。

 

「じゃあ、そろそろ帰りましょうか」

「そうですね」

「……あぅ、あそこに宝箱を見つけてしまったですかねー……」

「うわ、マジだ」

「今はこの力が憎いですかねー……」

 

 下山する流れになっていたが、ふいにトマトが部屋の隅に置かれている宝箱を発見してしまう。先程の流れから、中身は見なくても察しがつくというもの。げんなりとした様子で落ち込むトマト。今はただ宝箱に愛される自分の能力が憎い。

 

「宝箱!? なんや、あのババア。たんまり溜め込んどるんか? あるいは買い占めた株か……とりあえず貰っとこ!」

「まあ、ちょっと待ちなさい。ルーク、どうする?」

「……館の中から全員を見つけ出すのは無理でも、目についたのならさっきの子と一緒に葬ってやりたい。シトモネ、中身は見なくていいから、罠がないかだけ調べてくれ。俺が開ける」

「は、はい!」

 

 駆け出そうとするコパンドンをロゼが引き留め、ルークにどうすべきか首を傾げる。この広い館の中から全ての死体を見つけ出すのは骨が折れる。そこまでする義理は無いし時間も無い。だが、目についたのならば丁重に葬ってやりたい。冒険者が自業自得で命を落としたのとは違い、彼らは無理矢理ここに連れて来られ命を奪われたのだから。それがルークの心情であった。何で止めるのかと抗議するコパンドンにロゼが宝箱の中身を説明する。

 

「うげっ! マジかい……」

「マジよ」

「……ルークさん、罠はないみたいです。鍵も掛かっていませんでした。何か引っ掛かっているみたいなんで、ちょっと開けにくいかもしれません」

「すまんな。見えない位置まで下がってていいぞ」

 

 シトモネを後ろに下がらせ、ルークは宝箱へと近づいていきその前にしゃがみ込む。そして、ゆっくりと蓋を開けた。

 

「……!?」

 

 瞬間、ルークが目を見開く。そこには予想通りのものが入っていた。即ち、少年の生首。予想外だったのは、その少年の口に導火線に火の付いた爆弾のようなものが咥えさせられている事。導火線の火は、ルークが蓋を開けると同時に点く仕掛けになっていたのだ。通常、宝箱の罠というものは中身を守るために外に向けられるようついているか、あるいは宝箱そのものが罠という二種しかない。今回はそのどちらでもないため、シトモネは何かが蓋に引っ掛かっているのを感じたが、それは罠ではないと断定したのだ。しかし、これはシトモネを責められない。誰が予想出来るというのだ。宝箱の中に収められている宝を破壊する罠が仕掛けられていると。

 

「罠だっ!」

「えっ!?」

 

 ルークが即座に宝箱を蹴り飛ばす。瞬間、宝箱に詰められた少年の生首が爆発した。無残に四散し、肉片が周囲に飛び散る。同時に、爆弾から吹き出した煙が部屋に立ち込める。小規模の煙幕のようだ。爆発の威力は大したものではなく、ルークは傷を負っていない。当然だ。あんな小さい宝箱に詰められる火薬などたかが知れている。無理にもっと詰めていれば、流石にシトモネが気付いていた。これが、ギリギリのラインなのだ。

 

「…………」

 

 天井から落ちてくる影。その手には短刀。狙うは、不意を突かれているルークの首。そう、これがルークに気付かれずに暗殺を成すギリギリのライン。

 

「(死ねっ!)」

 

 

 

出発前

-アイスフレーム拠点 ブラック隊詰所-

 

『ルークさん、どうしたんですか?』

 

 それは、出発前の出来事。その少女はルークに呼び出されていた。

 

『頼みたい事があってな。今回の任務……というより、相手が尻尾を出すまで継続して欲しい任務だ』

『相手……?』

『どうやら、俺の命を狙っている奴がいるみたいだ。治安隊本部で危うく殺されかけた。気配の消し方から察するに、恐らく暗殺に特化した奴だな』

『ええっ!? ほ、本当ですか……』

『ああ。だからこそ、頼みたい。奴は間違いなくまた来る。その時は……』

 

 

 

-モヘカの館 応接間-

 

「なにっ!?」

「……っ!」

 

 暗殺者の振り下ろした短刀の切っ先はルークの首まで届かなかった。その間に割って入ったのは、忍者刀。こちらの凶刃を止めるは、ルークの懐刀たる隠密。

 

『俺を守ってくれ。これは、かなみにしか出来ない事だ』

 

 リーザスの忠臣、見当かなみ。普段の任務をシトモネに預け、ルークの周囲に気を回していたからこそ、ギリギリで反応出来た。見れば、ルークも首筋と心臓部を抑えながら剣を抜き臨戦態勢に入っている。流石の反応速度。だが、かなみがいなければ重傷は免れなかっただろう。やはり相手は相当の手練れ。かなみは殺意を向けながら暗殺者を睨み付ける。

 

「何者っ……えっ!?」

「くっ、まさか貴女に……」

 

 顔を布で覆っていたが、隙間から覗くその目に見覚えがある。そう、前もこんなシチュエーションであった。苦悶の表情を浮かべる暗殺者であったが、すぐに背筋が凍る。

 

「お前がやったのか?」

「(まっ……ずいっ……)」

 

 向けられた殺気に対し、場数を踏んでいる自分が確かに恐怖を覚えた。その殺気を向けているのは、暗殺すべき対象であったルーク・グラント。その殺気は自分の命を狙ったからという理由だけではない。少年の死体を利用したやり口に対し、静かなれど確かな怒りを向けていたのだ。既にルークは剣を振りかぶっている。間に合うか。いや、間に合わせなければならない。そうでなければ死ぬ。

 

「ぐっ……おぉぉぉぉぉっ! がぁっ……!」

 

 ルークが剣を振り下ろすのと、暗殺者が後方に飛びずさったのはほぼ同時。剣を振り下ろした体勢のまま、ギロリとその暗殺者を見据えるルーク。その視線の先に立つ暗殺者の顔を覆っていた布がハラリと落ち、素顔が露わになる。

 

「ぐぅっ……」

 

 ルークの剣は届いていた。布と共に暗殺者の額に生々しい傷を負わせており、ボタボタと血が流れ落ちている。後一歩暗殺者の回避行動が遅れていたら、脳天から真っ二つに斬られていた事だろう。

 

「……かなみ、すまん。助かった」

「は、はい……」

「な、なんだなんだ!?」

「誰やあいつ!」

 

 知らない顔だ。となれば、やはりこの男からの怨恨ではなく、この男はあくまで誰かの使いに過ぎないという事か。ルークはそんな事を考えながら、自分を守ってくれたかなみに礼を言う。事態を飲み込めないでいる仲間たちも、とりあえずルークとかなみが構えているのを確認してすぐさま臨戦態勢に入る。状況は判らないが、少なくとも目の前のこいつは敵だからだ。

 

「何者だ?」

「……くそっ! どうしてっ!」

 

 ルークが目の前の刺客に問う。とはいえ、これ程の手練れが簡単に口を割るとは思えない。一応の儀礼として聞いたに過ぎない行動であった。だが、予想外の事態が起こる。

 

「どうして貴女がその男を守るんですかっ! かなみさんっ!!」

「えっ!?」

 

 一同の視線がかなみに集まり、かなみの頬から一滴の汗が流れる。とはいえ、こんな事でかなみを疑うような浅い付き合いではない。ルークは暗殺者から視線を外さぬまま、横に立つかなみに問う。

 

「かなみ、知り合いか?」

「はい……名前はコード……ゼスの忍びです……」

「やはりそうか」

 

 ゼスの忍びとなれば、恐らくかなり上の立場の者の使いだろう。ルークも件の暗殺者はゼス上層部からの刺客であると判断していたため、ゼスの忍びというのはある種予想通りであった。

 

「それと……」

「ん……?」

「一度……命を救われています……見逃されて……」

「……そうか」

 

 それは己の未熟さを曝け出すのと同意。絞り出すような声でルークに事情を告げるかなみ。そのかなみに少しだけ優しい口調で声を掛け、そのままコードへと問う。

 

「コード、お前の目的はなんだ?」

「どうしてですかっ、かなみさん! その男は、その男こそ全ての元凶なんですよ! どうしてそんな外道と一緒にいるんですか!? どうしてそんな男を守るんですかっ!?」

「(こいつ……)」

「(何よ、まるで話にならないじゃない……)」

 

 ルークには一瞥もくれず、かなみに対し問いを投げ続けるコード。その目はどこか血走っている。それを見たルークとロゼは眉をひそめる。暗殺に失敗して焦っているのか、あるいはかなみと敵対した事に動揺したのか。どちらにせよこの男、まともな状態ではない。

 

「る、る、る、ルークさんを外道とは聞き捨てならないですかねー!!」

「落ち着け、トマト! 手傷を負わせたとはいえ、油断できる相手じゃねーぞ!」

 

 ぶんぶんと剣を振り回して怒るトマトを引き留めるシャイラ。先ほどの一連の動きに自分たちは反応出来なかった。ルークから一撃受けているとはいえ、致命傷には程遠い。下手に刺激して自分たちをターゲットにされては危険。今この場で奴の相手が出来るのはルークだけなのだ。

 

「今すぐその男から離れてこちらに来てください! かなみさんっ!」

「どうして……?」

「えっ……?」

「どうして私に拘るの……? あの時も……」

 

 かなみが口にしたのは、アダム砦に侵入した時の事。あの時、かなみはコードに見逃された。もしコードがその気であったならば殺す事も捕らえる事も可能だっただろう。そして今、彼は何故か暗殺しようとしていたルークではなく自分に拘っている。その理由がどうしてもかなみには判らなかった。

 

「どうしてって……好きなんです!」

「えっ……?」

「好きなんです! 愛しているんです、かなみさんっ!!」

「うわっ、マジか……」

「(最低の告白ね……)」

 

 呆気に取られるかなみ。この答えは想定外だったのだろう。何せコードとはアダム砦で初めて会った存在。まさか自分に好意を持っているとは思わなかったのだ。必死な様子のコードを見て、当事者以外の女性は若干引いている。この場で、この状況でその言葉を口にするのか、と。

 

「だから、こちらに来てください! その男と一緒にいちゃいけない!」

「…………」

「かなみさんっ!」

「……ごめん……なさいっ……」

「……えっ?」

「私、貴方の気持ちには……」

 

 世界が反転する。息が苦しい。今、あの聖女のような女性は何と言ったのか。美しく聡明なかなみさんは何と言ったのか。ゴメンナサイ。そう、自分を受け入れてはくれなかったのだ。

 

「あっ……あぁっ……あぁぁぁぁぁぁ!!! お前がぁぁぁぁぁ!!」

「っ……!?」

 

 髪を掻きむしり奇声を上げたかと思うと、部屋の至る所に魔法陣が出現した。ルークが目を見開く。魔法使いではないため同じ魔法陣か確証がないが、つい最近も似たような事態が起こった。そして、その予想は的中する。

 

「がぁぁぁぁ!!」

「うおっ、なんだ!?」

「ツギハギの化物っ!?」

 

 魔法陣から転移魔法で呼び出されたのは、巨漢の合成魔獣。身体中にツギハギの跡が残っている化物だ。ルークだけではなく、バーナードもこの姿には見覚えがある。パットンを攫う任務で奴隷観察場に忍び込んだ際に出会った魔物だ。

 

「こ、こここ、殺せ! かなみさん以外っ……こ、殺せっ!」

「がぁぁぁっ!」

「(まずいな、数が多い。志津香がいれば一気に数を減らせたんだが……)」

 

 ルークが周囲を見回し、状況を判断する。自分やかなみにとっては敵ではない。だが、シトモネやバーナードではタイマンに持ち込んで勝てるか微妙な相手だ。フォローしようにも数が多く、手が回らない。ただでさえタフな相手、時間を掛ければそれだけ仲間がピンチに陥る。シトモネでは全体魔法に詠唱時間が掛かる。かなみの火丼の術では威力が低い。こんな時、即座に強力な全体魔法を放てる志津香がいれば。そう悔やむルークであったが、ルークもコードも知らなかった。この場にはもう一人全体攻撃を放てる者がいる事を。

 

「がぁぁぁっ……!?」

「なっ……ぐっ……!?」

「えっ?」

 

 突如響く衝撃音と魔獣たちの悲鳴。コードも自身の体を抑えるようにして衝撃に耐えている。突如全身を痛みが襲ったのだ。すぐさまコードは視線を上げ、ルークも後ろを振り返る。

 

「やっぱりな。今日ははずす気せーへんかったわ」

「大……吉……?」

「なにせ、ランスと再会出来るのが決まった記念日やもんな!」

 

 鉄製のお御籤を構えたコパンドン。その背後に薄らと見える『大吉』の文字。見れば、お御籤からも大吉の札が飛び出している。

 

「お御籤占い師のみ使える神聖な攻撃や! よってらっしゃい、見てらっしゃい。威力はお御籤の結果次第、ハズレりゃ自分たちが痛い一発博打の全体攻撃!」

「って、おい! そんな博打ならやる前にちゃんと言えよなっ!」

「まーまー、大当たりやったんやから堪忍な」

「やるじゃない、こんな隠し玉があったなんて」

 

 この技は玄武城の事件の際にルークもロゼも見ていない。結果は運次第の博打技。シャイラの言う事は尤もだが、今は最善の方向に転んでくれた。一撃で倒すとはいかなかったが、合成魔獣たちは大ダメージを受けて弱っている。これならばいける。

 

「全員、ロゼを守りつつ敵を各個撃破しろ! 冷静に戦えば、負ける相手じゃない!」

「はいっ!」

「了解!」

「任せて欲しいですかねー!」

「ふっ、暴れるとするか……」

 

 ロゼを中心に周囲を囲み、目の前の合成魔獣を撃破していく一同。少し離れた位置に立っていたルークとかなみはその場で合成魔獣を撃破していく。最早勝ち目はない。そう悟ったコードは髪を毟りながらかなみを見る。美しい。それなのにどうして振り向いてくれない。あの男だ。あの男がかなみを洗脳しているのだ。

 

「おっ、お前がぁぁぁぁ!!」

「…………」

 

 短刀を構え、血走った目をしながら全速力でルークに向かって駆けてくるコード。それをしっかりと見据えながら、ルークはブラックソードを構えた。コードは強い。単純なレベルでは推し量れない、暗殺に特化した強者だ。実際、ルークも危うかった。巡り合わせさえ違えば、この男はルークでもランスでも暗殺出来たかもしれない。

 

「死ねぇぇぇぇっ!!」

 

 だが、先にも記した通りコードの強さは暗殺特化。暗躍し、絡め手を積み重ねた結果によるものだ。だからこそ、こうして正面切って突撃をしてきた場合……

 

「冷静さを欠いた時点で、お前の負けだ」

 

 ルークが負ける道理が無い。

 

「真滅斬っ!!」

「がっ……」

 

 コードが短剣を振るうよりも早く、間合いに入ってきたコードの体をルークの剣が斬り伏せた。勢いをつけて走ってきていたため、きりもみしながら吹き飛ぶコード。鮮血が宙を舞う。数秒の後、ドゴッという音と共に勢いよく床へと叩きつけられるコード。

 

「あっ……あっ……」

 

 生きている。全身に痛みが走るが生きている。だが、ダメージが大きすぎて立ち上がれない。天井を虚ろな瞳で見上げたまま、コードは立ち上がる事が出来なかった。縋るように腕を伸ばし、異変に気が付く。ボタボタと真上から落ちてくる血。それは、今しがた伸ばした右腕の先端から零れ落ちてくるもの。

 

「あぁぁぁぁぁっ!!」

 

 右腕の肘から先にあるべきものがない。そう、今の一撃でコードの右腕は綺麗に切断されていたのだ。ルークを殺すべく短剣を持って前に突き出していた右腕ごと、ルークの真滅斬はコードの体を斬り伏せたのだ。全身に走るのも当然痛みだけではない。真滅斬の直撃を受けた胸部からも激しく出血している。鎖帷子をつけていたのに、あの一撃はそんな防具お構いなしとばかりに粉砕せしめた。勢いよく叩きつけられた影響か、鼻と左足の骨が折れている。情けない事に鼻血も止まらない。

 

「やっぱやべーな、一撃かよ……」

「流石はルークさんですかねー!」

 

 合成魔獣を倒しながらシャイラが感心したように声を漏らす。強い、強いとは思っていたが、こうして改めて見せつけられると最早他に言い表す言葉が無い。外道呼ばわりした相手を一撃で返り討ちにし、トマトはご機嫌の様子で剣を振るっていた。

 

「あぁぁぁっ……うぁぁぁぁっ……」

 

 激しい出血の中、現実が受け入れられずただただ奇声を上げるコード。そのコードの視線に、ルークの姿が映る。ブラックソードを握ったまま、横たわるコードを見下ろしているのだ。

 

「お前の主はパパイア・サーバーか?」

「あっ……」

「パパイア? あの四天王の?」

「この怪物は、あの女の作った合成生物だ。それを召喚したという事は、こいつとパパイアは間違いなく繋がっている」

「あんた、パパイアに恨まれるような事したの?」

「さぁな。思いつく限り、記憶にはない」

 

 合成魔獣の存在は奴隷観察場で知っているし、パパイア本人とも会っている。何故彼女が自分の命を狙っているかは判らないが、十中八九コードはパパイアの手の者。ロゼの疑問に答えつつ、再度コードを見下ろすルーク。

 

「どうなんだ?」

「いっ……」

「…………」

「言えないっ……」

「……そうか」

 

 まあ、予想はしていた。頭に血が上ろうとも、この男は手練れの忍び。自分の主の名を口にするようなタマではない。拷問も意味を成さないだろう。忍びならばそういった修行には慣れているだろうし、何より右腕を斬られて殺されかけているこの状況でもまだ口を割らないのだから。これ以上は無駄だと判断したルークが静かに剣を構え、コードの首目がけて振り抜こうとする。

 

「……待ってください!」

「…………」

 

 それを止めたのは、かなみであった。寸止めの形で剣を止めるルーク。そのままゆっくりとかなみに視線を向ける。

 

「ルークさん……」

「…………」

「その……」

「……そうだな」

 

 ルークはコードの首に向けていた剣を戻し、そのまま一歩離れた。

 

「こいつの処遇はかなみに任せる」

「えっ……?」

「但し、覚悟と責任を持て。後悔する事になっても、決してそこで立ち止まるな。俺から言えるのはそれだけだ」

 

 そのままルークは残り少なくなった合成魔獣退治に駆けていく。その背中を見送りながら、かなみは静かにコードへと近づいていった。

 

「あっ……ああっ! かなみさん……」

「…………」

「ぼ、ぼく、さっきも言いましたけど、貴女の事が好きなんです……だから、一緒にどこか遠くに逃げましょう……ねっ……だって、この世界は腐っているから……」

「……ごめんなさい」

「えっ……」

 

 悲しげな表情でコードにそう答えるかなみ。呆けた表情の彼を見下ろしながら、ゆっくりと言葉を続ける。

 

「私、好きな人がいるの……だから、貴方の気持ちには答えられない」

「そん……な……やっぱり……やっぱりあいつが……」

「……コード。貴方には前に一度見逃して貰った。だから、今回は一度だけ見逃す。でも、もしもう一度あの人を……ううん、私の仲間の誰かを狙ったら……」

「かな……み……さん……?」

「私が貴方を殺します」

 

 静かに、されどハッキリとかなみはそう言い放った。その言葉の意味を噛み締めるコード。これは、決別の言葉。かなみは自分を受け入れない。自分の恋は今ここで終わったのだ。かなみが自分の命を助けたのは、あくまであの時の借りを返したに過ぎない。貸し借りの無くなった今もう一度ルークを襲えば、その時は殺すとハッキリ宣言したのだ。自然と涙が溢れてくる。嗚咽が止められない。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ! あぁぁぁぁぁっ!!」

「終わったの?」

「はい……」

 

 かなみが決着をつけた頃には、部屋にいた合成魔獣はすっかり片付いていた。ロゼの問いに頷くかなみ。そう、これでコードとは決着がついた。闇に生きる者として、腕を失うのは死活問題。心も体も折れた彼はもう立ち上がれないだろう。

 

「……帰るぞ」

「はい」

 

 少年たちを弔ってやりたかったが、そうも言ってられない。ルークたちは帰り木を使って麓まで降り、アイスフレームへの拠点へと帰るのだった。

 

 

 

-街道-

 

「本当に良かったの?」

「ん?」

 

 その帰り道、ルークはロゼにこんな事を聞かれた。

 

「かなみに判断を任せて」

「そうだな……かなみが前に見逃されたというのを気にしている様子だったからな」

「殺しておいた方が良かったんじゃないの? もう立ち直れないと思うけど、万が一立ち直ったら狙われるのはあんたよ」

「それも含めて、判断をかなみに任せた」

 

 そう口にし、少し先を歩くかなみの背中を見ながらルークは言葉を続ける。

 

「かなみには、いずれ俺の横に立てるようになって欲しいと思っている」

「今はまだそうじゃないの?」

「そうだな……後一歩ってところか。強さは文句ないんだが、どこか一歩引いている。遠慮とも少し違うか。精神的な問題だな」

「ああ、そういう事。なんとなく判るわ」

「俺はこれでもかなみの事はかなり信用している。だけど、多分かなみはそうは思っていない。自分はまだ信用されていないというか、志津香や真知子さん辺りに劣等感みたいなものを感じている気がするんだ」

 

 ルークに対しても一歩も引かない志津香。前線に立てないからこそ己の分野でルークの役に立つべく精進する真知子。この二人に比べ、かなみの立ち位置は違う。真の忠臣になるべく精進しているが、ルークに対しては認めて貰いたいという面が強く表れている。この辺は性格も関係しているのだろう。パイアールと戦った時のかなみの啖呵を思い出しながらルークは頭を掻く。

 

「闘神都市では少し良い傾向だと思ったんだがな。自信は持ちきれなかったみたいだ」

「言ってあげればいいじゃない。頼りにしてるぞって」

「言った事はあるさ。それじゃあ駄目なんだ。かなみが自分で自信を持たないとな」

「その為にコードを利用したって事?」

「成り行きだがな。ただ、自覚を持つ良い機会になるかもしれないと思ったんだ」

 

 真滅斬の一撃で殺せなかったのは偶然。コードが無意識に急所を庇っていたのだろう。その後も直前までは首を刎ねるつもりだった。だから、今の状況は本当に成り行きだ。

 

「自分を危険に晒しても、かなみの成長を促す価値があるって事?」

「ああ」

「随分と評価してるのね」

「当然だ」

 

 ハッキリとそう答えるルーク。当然だ。どれだけ長い付き合いだと思っている。今回とて、かなみを信用していなければ自分を囮にしてコードを炙り出すような作戦は取れていない。

 

「コードがこのまま消えても、万が一もう一度襲ってきても、かなみには良い刺激になってくれたはずだ」

「コードを振る時、大分思いつめた表情していたものね。で、あの時のかなみの返答は聞こえていたんでしょ? なんか言ってあげないの?」

「さあな。俺には何も聞こえちゃいなかった」

「うわー、ないわー……」

 

 ロゼが肩パンをしてくるが、ルークはさあなと肩を竦めてそれに答える。酷い男だと呆れた表情を見せる中、シトモネと共に先頭を歩いていたはずのかなみがこちらまで下がってきた。空気を読んだのか、ロゼが一歩後ろに下がる。

 

「あの、ルークさん」

「どうした? 前で何かあったか?」

「いえっ……そのっ……さっきはすいません!」

 

 頭を深々と下げるかなみ。とはいえルークには言いたい事はすぐに察しがついていた。

 

「勝手に割って入って、勝手に殺さない事を決めて……ルークさんを危険に晒すのに……」

 

 そのかなみの頭に、ぽんとルークの手が置かれる。かなみが優しい温もりを感じていると、ルークが静かに口を開いた。

 

「なに、簡単に殺されてやるほどやわじゃあない」

「…………」

「それに、何かあったら守ってくれるんだろう? 今回みたいに」

「っ……はいっ! 勿論です!」

「なら、それでいいさ」

 

 その言葉に、かなみは自身の胸が熱くなるのを感じた。そうだ、ルークさんの言うように今回は守れたのだ。自分の手で、この人の命を。ならば迷わず突き進む。コードに対してあのような決断を下したのは、間違いではなかったと。

 

「(絶対に後悔しない……今回の事は、絶対に……)」

 

 静かにそう決意するかなみ。だが、かなみは理解していなかった。いや、かなみだけではない。ルークも、そしてコードの雇主であるラガールですら捉え切れていなかった。コードという男の闇の深さを。

 

「ははっ……あははっ……あはははははははははははははははははははは!!」

 

 だが、無理もない。この男はルークにもラガールにも、真の意味での自分を曝け出していなかった。それを見せていたのはたった一人。それに気が付けた可能性があったのも、たった一人。

 

「ふ、ふふっ……ふひっ……ふひひひひひひひひひひひひひ!!」

 

 だが、かなみはコードの発した僅かな闇の合図を見逃した。結果、彼を生かすという選択を取ってしまった。

 

「そうか……いらないんだ……こんな世界……」

 

 かなみはこの時の決断を、後に激しく後悔する事になる。

 

 




[人物]
コパンドン・ドット (6)
LV 14/27
技能 お神籤LV1 経営LV2
 ポルトガル出身の冒険者。思わぬ偶然からルークと再会。ランスを振り向かせるべく、アイスフレームへの参加を決意する。所属は当然グリーン隊。開き直った女は強い。かつての不幸はどこ吹く風、ランスと知り合ってからバシバシ金運が舞い込み、かなりの私財を蓄える程にまでなった。

カドカー・モヘカ
 ゼス出身の魔法使い。あくどいやり口で株を買い漁り、金融界の魔女と呼ばれる程の存在であったが、その実少年を誘拐・虐殺していた狂人。コパンドンに成敗され、ルークにその首を刎ねられた。


[モンスター]
うしうしバンバン
 二つ星女の子モンスター。うし使いの上位種であり、うしに乗らずともそのパワーを内に秘めている。意外と強烈な一撃を持っており、油断すると中級冒険者でも危ない。

とりたま
 一つ星女の子モンスター。羽が生えており、空を飛ぶことが出来る。女の子モンスターでは珍しい系統。たいやきうぐぅと仲が良いとかなんとか。

プロレス男
 筋肉質な人間型モンスター。マスクを被っており、素顔は見えない。マスクや出で立ちは出没する土地によって違っており、ゼスに出没するのは青いマスクに金髪のタイプ。


[料理/食材]
いかなご
 割と簡単に取れるサカナ。見た目は悪いが佃煮にすると美味い。みかんとバーナードの好物。これを食べれば強くなれる気がするとはバーナードの談。


[その他]
愛と勇気の戦士
 シャイラとネイのこと。主に闘神都市に出没した。一応、ロゼは68話にてこの口上を聞いている。連載的には三年半前。ひえっ……

続・ペトロ山脈の首を求める幽霊
 6編に続いた。やったね。詳しくは『外伝1 記念小話集』を参照のこと。メナドとかなみの喋り方にはわざと差をつけています。メナドの方が怪談は上手い感じで。戦国編に続く。多分。

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