ランスIF 二人の英雄   作:散々

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第37話 セルの切り札

 

-翌朝 レッドの町 宿屋-

 

「えぇい、これだけの人数が揃っておきながらあっという間に負けるとは、全く持って使えん奴らだ!!」

「面目ありません、ランス殿……」

 

 宿にランスの怒声が響き渡り、バレスが深々と頭を下げる。ハウレーンは父のその姿を見ながら悔しそうに唇を噛みしめているが、ランスに何も言い返す事が出来ない。サテラが去った後に駆けつけたセルとロゼの治療を受け、宿にいた者は何とか動けるまでには回復していた。今も部屋ではセルとロゼが治療を続けている。

 

「死亡者0っていうのが奇跡ね。まあ、遊ばれていたって事なんでしょうけど」

「ロゼさん……」

「良いじゃない。命あっての物種、悔しんでないでこの幸運に感謝しなきゃ」

 

 兵の治療をしていたロゼのその呟きは部屋にいた者たちの胸に突き刺さる。そう、これだけの惨敗であったにも関わらず、解放軍に死人は出ていなかった。その事にリーザス兵たちはプライドを傷つけられていた。そのリーザス兵たちの態度をバッサリと切り捨てるロゼ。この辺りは価値観の違いというものだろう。

 

「あれが魔人の力なのね。強すぎるわ……」

「ぼくたちに勝ち目はあるのかな……?」

 

 かなみとメナドがそう言葉を漏らす。普段であればその弱気な態度に他のリーザス兵が活を入れているところだろうが、全員が魔人の強さをまざまざと見せつけられた直後であるため、全員が難しい表情を浮かべるだけでメナドのその言葉を否定出来なかった。場の空気が一層暗くなる。と、不安そうにしているメナドの肩に手を乗せながらルークが口を開く。

 

「勝てるさ。いや、勝たなきゃいけない」

「肝心なときにいなかったくせに何を偉そうに!」

「馬鹿、ルークとリックさんは外でガーディアンを一体足止めしてくれていたんでしょ!」

「我らが為す術なく敗れたガーディアンと同種の者を、たった二人で足止めするとは……」

 

 ランスがルークに文句を言うが、志津香がその言葉に反論する。二人とも相当に傷ついていたが、たった二人でガーディアンを一体足止めしたことは大戦果と言えるだろう。だが、リックはランスに向かって深々と頭を下げる。

 

「いえ、肝心なときに駆けつけられなかったのは事実です。申し訳ありません、ランス殿」

「ふん!」

「それで、どうするの? シィルちゃんは攫われちゃったし、放っておくわけにもいかないわ。やっぱり、聖剣と聖鎧を見つけてシィルちゃんと交換して貰うしか……」

「馬鹿言え! 誰があんな女の言う事を聞くか。これからハイパービルに向かい、力尽くでシィルを奪い返す!」

「そんな、無茶よ!」

 

 マリアの提案を切り捨て、魔人を倒すと宣言するランス。その言葉に周囲がざわつく。先程為す術もなくやられたばかりだというのに、ランスは平然と魔人を倒すと口にしたのだ。驚いている一同をぐるりと眺め回し、ふん、と鼻を鳴らすランス。

 

「俺様を誰だと思っている。空前絶後の超英雄、ランス様だぞ! 魔人なんぞクズ同然だ」

「負けたくせに」

「あれは不意を突かれた上に、寝ぼけていたから負けただけだ! 正々堂々戦えば俺様の圧勝に決まっている!」

 

 志津香の呟きに反論するランス。そんな中、黒の三副将が一歩前に出てきて進言をする。

 

「しかしランス殿。ジオの町への侵攻はどうするつもりで?」

「むっ?」

「もたもたしていたのでは、各地から敵が集結してきます」

「ジオの町を奪還するのは、今がチャンスなのです!」

 

 確かにジオの町奪還は今が最大のチャンスだ。そんな中でサテラの要求に応えていれば、どうしても後手に回る事は確実。十分に準備を進めてきた彼らがそれを惜しむ気持ちも十分に判るというものだ。不愉快そうに三人を見ていたランスだが、そのランスが言い返すよりも先にルークが口を開く。

 

「いや、今は魔人サテラの要求が最優先だ」

「ルーク殿。確かに親しいシィル殿が心配なのは判りますが、大事の前の小事に構っていては……」

「逆だ。先を見据えているからこそ、魔人サテラに会いに行く必要があるんだ」

 

 サカナクが小事と口にした瞬間、ランスから強烈な殺気が湧き出す。それを敏感に感じ取ったリックがランスとサカナクの間に入るように一歩前に出ている中、ルークがサカナクの言葉を否定する。次いで、ロゼの治療を受けていたエクスが口を開く。

 

「奪われた聖盾は魔人討伐に必須の代物です。今なら魔人サテラが持っていることが判っているから取り返しやすいですが、もし時間をかけている間に他の魔人と合流されてしまったら非常に厄介な事になります」

「なるほど。もしそんな事になったら、誰が持っているかも判らない聖盾を取り返すのは相当困難になるわね。はい、治療終わり。治療費は後でリーザスに請求するからね」

「それに兵を指揮する私たちがこんな状態では、ジオに攻め込んでも苦戦する事は目に見えているわ」

 

 エクスとロゼの言葉に続き、レイラも今はジオに町に攻め込むべきではないと口にする。セルとロゼの治療で一応動けるようにはなったものの、全員完治とまではいっておらず、今なお二人からの治療を受けている状態なのだ。こんな状態で下手に戦えば、いらぬ被害を生み出しかねない。三人からのフォローを受けたルークは小さく頷き、サカナクの顔を見ながらハッキリと口にする。

 

「そしてこれが一番の理由だが、シィルちゃんを放っておくわけにはいかない。俺たちにとっては決して小事なんかではない」

「当然だ! シィルは英雄であるこの俺様の奴隷だぞ。人の所有物に手を出しやがって……ただのお仕置きでは済まさんぞ!」

「そうね、シィルちゃんを無事に取り返さないと!」

「エクス、リスの手掛かりは掴めたか?」

 

 ランスの言葉を受け、マリアがグッと小さく拳を握りしめる。その横には決意したような表情を浮かべるランと志津香。その様子を目に入れながら、ルークが以前頼んでおいた事をエクスに尋ねる。

 

「何だ? リスの手掛かりなんて知ってどうする?」

「聖剣と聖鎧を持っていなければ会っても貰えない可能性があるからな。ローラがこの態度を崩さないのであれば、下手するとシィルちゃんの命も危ない。それでエクス、どうなんだ?」

「リスの手掛かりも聖剣と聖鎧の隠し場所も掴めていません。ですが、一つだけ気になる事が……」

「気になる事?」

 

 エクスが含みを持った言い方をしてくる。それを問うルーク。

 

「自分を元はリスだと名乗る青年が見つかりました」

「は? リスではなく、人間が見つかったのですか?」

「ええ、人間が見つかったんですよ。一応言いくるめてこちらで保護しています。お会いになられますか?」

 

 ハウレーンが呆気に取られたような声を上げる。何故リスを捜していて人間が引っかかるのか。ルークも難しい表情を浮かべている。

 

「……そうだな、一応会ってみるか。案内してくれ」

「了解です」

 

 

 

-レッドの町 白の軍詰め所-

 

 エクスに案内されて白の軍の詰め所までやってきたルーク、ランス、かなみ、志津香の四人。エクスが部下に指示を出し、それを受けた部下が件の人間を呼びに行く。少し待っていると、奥から白髪の青年が連れて来られた。ルークとランスの二人に気が付くと、青年は嬉しそうな表情で駆け寄ってくる。

 

「ランスとルークだ! 久しぶり!」

「誰だ? 俺様のファンか? 男のファンなぞいらんぞ」

「ランス、僕だよ。リスだよ」

「……?」

 

 人懐っこい感じで話し掛けてくる青年だが、ランスにもルークにも見覚えはない。すると、リスと名乗った青年は両手を大きく広げながら言葉を続ける。

 

「ほら、人間になったんだ。ランスの言ったとおり、気合いと根性があれば何でも出来るんだね!」

「なっ! まさか、本当にあのリスか!?」

「信じられない……」

 

 気合と根性という言葉を受け、ルークとかなみが同時に驚く。その言葉を知っていると言う事は、彼は紛れもなくあの時に出会ったリスなのだろう。ランスの適当な言葉を真に受けて旅立ったリスだったが、この短期間で本当に人間になって戻って来た。正しく奇跡的な出来事である。あの場にいなかった志津香とエクスは話の流れが判らず、不思議そうにしている。

 

「大変だったけど、ローラへの愛が僕を支えてくれたんだ。もう誰も僕たちの愛を邪魔する事は出来ない!」

「そうだ、貴様の女のせいで大変な事になっているんだ! 責任を取れ!」

「えっ? ローラが何かしたの?」

 

 ランスに食って掛かられるリスだったが、当然人間になるための努力をしている間に起こっていた事など知る由も無く、ポカンと口を開けている。

 

「まあ、色々とな。お前から説得して貰えるか?」

「それってローラに会えるって事?」

「ああ、そうだ。ローラのいる所まで案内しよう」

「やったー! ずっとローラに会いたかったんだ!」

 

 無邪気に喜ぶリスを横目に、ルークは呆気に取られた様子のエクスに振り返る。

 

「助かった。この男が件のリスに間違いない」

「リスが人間に、ですか。流石に驚きましたよ……」

「ああ、俺も驚いた」

 

 白の兵の怪我の状況を確認したいというエクスをその場に残し、一行は詰め所を後にする。そのままリスを引き連れ、うし車に乗ってローラの待つラジールの町へと向かった。

 

 

 

-ラジールの町 酒場-

 

「大分お疲れの様子だな。すまない」

「いえ、お気になさらないでください」

 

 酒場では相も変わらずローラがミルクセーキで飲んだくれていた。アムロとレィリィからの命令でローラが町から出ないように見張っている男も、変わらぬ光景にいい加減疲れた様子を見せていた。その男に一声掛けつつ、ルークたちは酒場の中へ入っていく。すぐさまこちらに気が付いたローラがギロリと睨んできた。

 

「何よ! 何度来たって聖剣と聖鎧は……」

「ローラ! やっと会えた!」

「……えっ?」

「僕だよ、リスだ! 君と暮らすため人間になったんだ!」

「えっ……そんな、嘘よ……だって、リスは死んだんじゃ……」

 

 動揺しながらルークの方を見てくるローラ。その彼女にルークは苦笑しながら返す。

 

「だから、勘違いだって言っていただろ」

「死んでないし、嘘でもないよ、ローラ。何を話せば信用して貰えるかな? 君との出会い? 両親に反対されたときの言葉? 何でも聞いてくれ!」

「ほ、本当にリスなの……?」

「そうだよ」

「……リス!」

 

 ローラがリスの胸に飛び込んでいき、二人は熱いキスを交わす。

 

「リス……リス……」

「これからはずっと側にいるよ、ローラ」

「二人とも幸せそう……」

 

 泣きじゃくるローラと、その体を抱きしめるリス。完全に二人だけの世界を作り出していた。乙女チックな恋愛に憧れているかなみは、その様子を羨ましそうに眺めていた。そのとき、ランスがいらいらしながら口を開く。

 

「って、そんな事は後でやれ! どうだ、リスを目の前に連れてきてやったんだ。盗んでいた物を返して貰おうか!」

「ローラ、何か盗んだりしたのか?」

「そんな事していないわ。一体何の事かしら」

「なっ……貴様、どういう……」

「はい、預かっていたこの聖剣と聖鎧は返しますね」

 

 盗んだという事実をしらばっくれながら、ローラは預かっていたと主張してテーブルの下から聖剣と聖鎧を取り出す。何か言いたげなランスだったが、とりあえず聖剣と聖鎧を受け取る事にしたようだ。そのやり取りを見ていたルークがぽつりと呟く。

 

「灯台もと暗しとは言うが、白の軍はあれを発見できなかったのか……?」

「何言っているのよ。ルークだって彼女と酒場で会ったのに、発見できなかったんでしょ」

「……どうだったかな?」

 

 志津香の言葉にとぼけながら頭を掻くルーク。何はともあれ、聖剣と聖鎧を遂に取り返したルークたち。再度二人だけの空間を作り出しているリスたちをそのままにし、レッドの町へと引き返す。目指すはレッドの町の側に立つ巨大建造物、ハイパービル。

 

 

 

-ハイパービル 入り口-

 

 ただ高さのみを追求した謎の巨大建造物、ハイパービル。いつ誰が建てたのかも判っていない謎のビルだ。ここで魔人サテラが待っている。先程までの四人に加え、今はセルとアレキサンダーがついてきている。レッドの町に報告に寄った際、自分たちもついて行くと志願したのだ。因みにリーザス軍の者たちは傷ついた部隊の状況を再確認するのに忙しく、ついて来ていない。あの状況でヘルマンに攻め込まれたらまずいため、あちらも早急に立て直す必要があるのだ。同様に、ランとミリも部隊長であるため居残り。トマトもついて来たがっていたが、魔人が相手という事もあり却下されていじけていた。

 

「しかし、セル殿。魔人戦で役に立つかも知れない魔法があるというのは本当ですか?」

「はい。もしかしたら、私の会得しているある魔法がお役に立てるかもしれないのです。解放軍の方々の治療はロゼさんがやってくれるとの事でしたので、お邪魔になってしまうかもしれませんが同行させて貰います」

 

 アレキサンダーの問いにそう答えるセル。聡明な彼女がここまで言い切る魔法とは、一体どのようなものなのか。

 

「いや、シィルちゃんがいなくて回復にも困っていたところだ。頼りにしている。だが、あまり無理はしないように」

「戦闘は私たちに任せておいて」

「さあ、ビルに入るぞ!」

 

 ランスがのしのしとビルの中に入っていく。ルークたちもその後を追うが、その背中を追いながらかなみがランスに尋ねる。

 

「ランス。聖剣と聖鎧をサテラに渡すの……?」

「かなみ、お前は渡した方がいいと思うか?」

「それは……」

 

 珍しくランスが意見を問う。思わぬ返しに困った様子のかなみ。彼女の立場からすると難しいところだろう。シィルのことは心配だが、聖装備はリーザス奪還の為には必要不可欠なものだからだ。答えを出せないかなみに代わり、セルが答える。

 

「人の命は何物にも代えられません。まずは聖剣と聖鎧を渡し、シィルさんを解放して貰うべきです」

「……そうですね。ランス、ひとまず聖剣と聖鎧は……」

 

 セルの言葉を受け、考え込んでいたかなみも同意する。だが、そのかなみの決断をランスは笑い飛ばす。

 

「がはは、どちらかというせこい考えをする必要はない。欲しい物は全ていただくのが俺様のやり方だ! 聖装備もシィルも全て俺様の物、どれも渡す必要なんて無い!」

「ふ、お前ならそう言うと思っていたよ」

 

 ルークが苦笑する。確かにどちらか一つしか選ばないなどランスらしくない。欲しいものがあれば全て独り占め、それがランス流だ。

 

「でもランス、サテラの逆鱗に触れたらシィルちゃんがどんな目にあうか……」

 

 その志津香の言葉に、ランスが一言だけ返す。

 

「シィルに手を出したら、殺す」

 

 確かな殺気を含んだその言葉に、かなみの背中を一筋の汗が伝うのだった。

 

 

 

-ハイパービル 1階 第一エレベーター前-

 

 ビルの中に入り、少し進んだところにあるエレベーターの前までやってきたルークたち。そこにサテラの姿はなく、代わりにサテラのガーディアンであるシーザーとイシスが立っていた。こちらの姿を見るとシーザーが話しかけてくる。

 

「ランスダナ。聖剣ト聖鎧、持ッテキタカ?」

「がはは、知らんな!」

「サテラ様ハ201階デ待ツ。聖剣ト交換デ、コノエレベーターヲ動カスIDカードヲ、聖鎧ト交換デ女ヲ返シテヤル」

「手の込んだ事で」

 

 志津香が声を漏らす。どうやらあちらも馬鹿では無いらしく、二段構えでの交換手段を準備していた。シーザーがランスの態度を確認し、言葉を続ける。

 

「持ッテイナイナラ用ハナイ。出直シテ来イ」

 

 エレベーターの前から動かないシーザー。イシスは喋れないため、黙って横に立ったままである。だが、何故かルークの方をジッと見てきていた。一同は一度この場から離れ、作戦会議をする。

 

「201階など上ってられんぞ」

「入り口の案内板に書いてあったが、奥にもう一台エレベーターがあるはずだ。だが、そちらのエレベーターだと50階くらいまでしかいけないらしい」

「そこからはどうするつもり?」

「歩きましょう。200階程度、鍛錬と考えれば軽いものです」

「イヤに決まっているだろ!」

「自分の基準で考えないで欲しいわ」

 

 アレキサンダーの提案を却下するランスと志津香。自分もそう口にしようと考えていたルークはアレキサンダーに集中している非難を我が事のように感じていた。

 

「何とかIDカードを手に入れる手段はないのか?」

「ランス、IDカードを手に入れてもエレベーターの前にはガーディアンが陣取っているじゃない。どうするつもりなの?」

「かなみさん。エレベーターであるなら、乗り込み口はこの階だけでは……」

「あっ……」

「がはは、へっぽこ忍者は発想力が乏しくて困る」

「ちょ、ちょっと思い込みの勘違いをしていただけじゃないの! そんなに笑わなくても良いでしょ!」

 

 セルの言葉を受け、かなみが顔を真っ赤にする。それに追い打ちを掛けるランスと、更に顔を赤くさせて抗議するかなみ。と、いつの間にか少し離れた位置の壁を確認しに行っていたルークが戻ってくる。

 

「55階にこのビルの管理コンピュータがあるな。そこまで行けば何か判るかもしれん」

「それじゃあ、とりあえず55階を目指しましょう」

「(聞かれて無くて良かった……)」

「おう、ルーク。今かなみの田舎忍者っぷりが炸裂してな……」

「きゃぁぁぁぁ! 言わないでよ!」

「戦場においても平常心を心掛ける。素晴らしい心持ちです」

「そういうのとは少し違う気が……」

 

 パーティーの期間が浅いアレキサンダーとセルはそれぞれ違う捉え方をしていた。恐らく、セルが正しい。

 

 

 

-ハイパービル 55階 制御室-

 

 第二エレベーターで50階まで上がり、その後階段で55階まで上がってきたルークたち。その階は巨大な制御室になっており、所々にコンピュータが置かれていた。

 

「しまったな。コンピュータ関連なら、真知子さんを連れてくるべきだったか?」

「確かに、管理コンピュータを見つけたところで私たちには何も出来ませんよね」

 

 かなみがルークの呟きに同意した瞬間、一番奥にあった巨大コンピュータがルークたちに話し掛けてくる。モニターには何やらドットで表現された人の顔が浮かんでいる。

 

「オハヨウゴザイマス ワタシハ ハイパービル セイギョコンピュータ エロヤックALV」

「誰だ? 変な声で話すのは」

「このコンピュータが喋っているようですね」

「すごいわね。マリアが見たら大喜びするわ」

「オマエタチハ デバッガー チガウノカ? ワタシハ 322ネンカン デバッガー マッテイル」

「デバッガー?」

 

 セルが首を捻る。真知子がいれば何の事だか判ったのだろうが、この場にいる者の中にデバッガーという単語を理解している者はいなかった。

 

「良く判らんが、多分違うな」

「ソウカ ザンネンダ 56カイニ イル バグヲ タオシテ モライタカッタ ノダガ」

「ほう、デバッガーとは力仕事をする者の事なのですね」

「なんだろう、絶対違うような気がする……」

 

 アレキサンダーの言葉に真っ向から反論したい気に晒される志津香。だが、自身も言葉の意味を判っていないためそれは出来ず、もやもやとした何かだけが残る。

 

「そうだ、それを倒したら頼みを聞いてくれないか? 第一エレベーターを使いたいんだ」

「ソンナコト オヤスイ ゴヨウダ デハ タノンダゾ」

 

 そう言い残し、エロヤックALVの声が止む。

 

「何はともあれ、エレベーターを動かす手段が見つかったな。行こう」

「うむ、バグ程度簡単に蹴散らしてくれる」

「私たちがデバッガーです」

「魔法を使っても大丈夫かしら。これだけコンピュータが多いと不安になるわね」

 

 ルークたちはバグを倒すべく上の階に上っていった。

 

 

 

-ハイパービル 201階-

 

「離してください」

「うるさいな。少しは静かにしろ、まったく……」

 

 サテラが退屈そうにしながらランスが現れるのを待っている。部屋の奥ではシィルが縄で縛られており、身動きが取れないでいる。

 

「ランス様、シィルは必ず来てくださると信じています……」

「ふん。ランスが聖剣と聖鎧を持ってきたら纏めて殺してやるからな」

「えっ!? そんな、約束が……」

「あはは! 人間なんかとの約束など、サテラが守るはずないだろう?」

 

 驚愕するシィル。そのシィルの表情を笑いながら、サテラは足下をうろちょろしていたバグを踏み潰す。

 

「みぎゃ!」

「それにしても、このビルはバグが多いな。覚えておけばいつか何かの役に……立つ訳ないか。ああ、それにしても暇だ。1階にシーザーとイシス、両方を置いてきたのは失敗だったな」

 

 ぶつぶつと呟くサテラ。ガーディアン二体はサテラの遊び相手も務めているため、暇つぶしにどちらか一体を残しておくべきだったと後悔する。そのサテラを見るシィルの表情は曇っている。

 

「(ランス様、魔人は約束を守る気はありません……どうかお気をつけて……)」

 

 

 

-ハイパービル 1階-

 

「…………」

「ン? ドウシタ、イシス」

 

 エレベーターの前で立っていたシーザーの肩をイシスが叩く。何事かと振り返ったシーザーはイシスが指差す方向に視線をやる。目に飛び込んできたのは、何故か動いているエレベーター。一階で止まっていたはずなのに、今は110階辺りを示している。そしてその表示は、111、112と上昇していく。

 

「ドウイウ事ダ、エレベーターガ動イテイル! マサカ、人間共カ!?」

 

 IDカードがないと動かせないはずのエレベーターが動いている。不測の事態に焦るシーザー。主であるサテラが負けるはずはないが、不測の事態というのは連鎖するものである。言いしれぬ不安が二体のガーディアンを襲っていた。

 

 

 

-ハイパービル 第一エレベーター内-

 

「がはは! バグなんぞ俺様の手に掛かったらただの雑魚モンスターだ!」

「何言っているのよ、結構苦戦したくせに」

「バグって強いんですね……」

「素早い割に攻撃力もありますからね。あの足技は参考になります」

「セルさんがついてきてくれていてよかったよ」

「みなさん、大丈夫ですか?」

 

 エレベーター内でセルの治療を受けつつ、ルークたちは201階を目指していた。56階に大量発生していたバグを倒し、エロヤックALVにエレベーターの使用許可を貰ったのだ。程なくしてエレベーターが200階に到着する。これはルークの判断。一気に201階まで上がった場合、目の前にサテラがいたら準備もないまま戦うことになってしまうからだ。201階に上がる階段を目指しながら、サテラとの戦い方について話し合うルークたち。

 

「それで、どうするの? 何か作戦は?」

「当然、俺様の圧倒的な強さで叩き伏せるだけだ! そして倒した後は……ぐふふ……」

「とりあえず、フェリスを呼び出しておくか。勝てる可能性もこれで多少は……」

「待ってください」

 

 フェリスを呼び出そうとするルークをセルが止め、それを見ていたアレキサンダーが口を開く。

 

「そういえば、何か役に立つ魔法をお持ちとの事でしたね」

「はい。魔人サテラですが、私が何とか出来るかもしれません」

「えっ!?」

 

 全員が一斉にセルを見る。そのままセルが言葉を続け、自身の魔法とそれを使った作戦を説明する。その説明を聞いたルーク以外の全員は即座に賛成する。ルークは一瞬複雑な顔をしたが最終的には賛成する事になり、ルークたちは201階に上っていく。しかし、ルークたちは気が付いていなかった。自分たちの乗ってきた第一エレベーターが1階に向けて動き出していた事を。更なる驚異となる二体のガーディアンが迫ってきている事を。

 

 

 

-ハイパービル 201階-

 

「ふぁ……なんだか眠くなってきたな……」

「あの、トランプでもしますか?」

「おっ! ……って、馬鹿言うな! なんでサテラが人間なんかと遊ばなきゃいけない!」

 

 絶賛暇を持て余し中のサテラ。部屋の隅で縛られたままのシィルが眠そうにしているサテラに向かってそう提案をすると、サテラは一瞬嬉しそうな顔を見せる。だが、すぐに表情を引き締めてシィルを怒鳴りつける。そのとき、部屋の入り口から一人の男が現れる。

 

「がはは! スーパー英雄のランス様、参上!」

「ランス様!」

「えっ、どうしてここに……? シーザーとイシスが見張っていたはずだが?」

「ふん、あんな奴ら俺様の相手ではなかったわ! 軽く捻り潰してやったぞ!」

「なんだと!?」

 

 ランスの言葉を聞き、サテラの目が見開かれる。あの二体が人間如きに負けるはずがない、そう信じていたからだ。

 

「馬鹿な!? 人間如きにシーザーとイシスが負けるはずない!」

「弱すぎて相手にもならなかったぞ。さあ、次はお前だ! 軽く叩きのめしてやる」

「シーザーとイシスを侮辱するな! 貴様、殺してやる!」

 

 二体のガーディアンを侮辱された事に怒り、サテラが鬼の形相でランスに迫る。それを見たランスはクルリと体を翻し、部屋から出て行く。

 

「待て、逃げる気か! 八つ裂きにしてやる!」

「がはは、鬼さんこちら、手の鳴る方へ!」

「ば、馬鹿にするな!」

 

 サテラが怒り狂いランスを追う。それをちらちらと確認しながら、ランスはとある部屋へと逃げ込んでいった。すぐさまその後を追い、勢いよく扉をぶち破って部屋に入る。部屋の奥にはランスの姿。

 

「もう逃がさないぞ。殺す!」

 

 部屋の奥にいたランス目がけて飛びかかるが、そのランスがニヤリと笑う。

 

「馬鹿め、罠に掛かったな!」

「え?」

 

 瞬間、サテラは気が付く。部屋の四方に結界志木と呼ばれる金属が立っている事。それぞれの結界志木にルーク、かなみ、志津香、アレキサンダーの四人がそれぞれ側に立っている事。そして、自分が部屋の中心にいる事。すると、今し方サテラが入って来た扉から一人のシスターが現れ、その女性に向かってルークが叫ぶ。

 

「セルさん、今だ!」

「はい! ワルヤテジ閉テシ間空ノ遠永カンナ物魔イ悪……魔封印結界!」

 

 セルがそう叫ぶと、四方の結界志木から発生した強力な魔力が部屋の中心にいたサテラに向かって放たれる。その魔力の直撃を受けるサテラ。無敵結界のお陰でダメージこそないが、強力な魔力に身動きが取れなくなる。

 

「し、しまった……いきゃ……」

「がはは、そのまま永遠に封じられてしまえ! 俺様の命令を聞くくらい従順になったら出してやってもいいがな!」

 

 これがセルの切り札、魔封印結界だ。準備や発動条件が厳しいため実戦で役に立つ機会は少ないが、対象を永遠の空間と呼ばれる異次元に封じる恐るべき魔法である。対象を倒す事は出来ないが、セルが許可しなければ二度とこちらの世界に戻ってくる事は出来ない。それは魔人のサテラでも同様である。永遠に封じられるというランスの言葉を聞き、サテラの表情が恐怖に歪む。

 

「い……やだっ……サテラ、封じられたくない……」

「…………」

「まだホーネット様の……ホーネットの役に立っていない……こんなところで……」

「っ!? セルさん、やはり魔法を止めろ!」

「……!!」

 

 魔法を止めさせようとしたルークだが、その言葉とほぼ同時に部屋の中にイシスが飛び込んでくる。部屋の中心まで猛スピードで駆けていったイシスはそのままサテラを突き飛ばし、自ら身代わりに結界の中心へと入っていった。

 

「イ、イシス……」

「なっ! 自分からあの強力な魔力に飛び込むなんて……」

 

 無理矢理イシスが結界の中に入った事により魔力が暴走する。凶悪ともいえる魔力をその体に受け、イシスの体がボロボロと消滅していく。そんな中、崩れゆく体でイシスはルークの方を見てくる。言葉は発せず、表情も判らないガーディアン。だが、ルークにはイシスのことがどこか物悲しそうに見えた。

 

「イシス……」

 

 ルークのその呟きも魔力の暴走音にかき消される。先の決着をつけられなかったことを悲しんでいるのだろうか。しかし、イシスの体が完全に消滅しきる前に魔法が止まる。セルが先程のルークの叫びに反応し、途中で魔法を中断していたのだ。胴体は消滅し、頭部だけになったイシスが床に落ちる。

 

「イ、イシスぅ……貴様らよくも!」

「がはは、予定は狂ったが十分消耗したな。覚悟するんだな!」

 

 サテラがふらつく体でイシスに近寄っていき、その頭部を大事そうに抱える。満身創痍の状態であるサテラにランスが剣先を向けるが、それに割り込むような形でシーザーが部屋に駆け込んでくる。素早さではイシスに劣るため、遅れての到着となったのだ。サテラの目の前まで一直線に掛けていったシーザーが主に進言する。

 

「サテラ様、ココハ撤退ヲ! サテラ様ハ消耗シテイマス!」

「くっ……」

 

 悔しそうにランスを睨んだ後、胸の中にあるイシスの頭部に視線を落とす。

 

「こいつらを八つ裂きにしてやりたいが、早くイシスを修復してやらないと……」

「な!? そのガーディアン、まだ生きているの!?」

「頭さえ無事なら修復は可能だ。だが、この恨みは忘れないぞ! 次に会うときは覚悟しろ!」

 

 頭部だけになってもまだ生きていることにかなみが驚愕している中、部屋の中にいた全員を睨みつけていたサテラがシーザーに担がれる。そのままシーザーは出入り口の扉とは逆の壁に向かって駆けていく。

 

「ランスさん、ルークさん、魔の者を逃がしてはなりません!」

「待て! お前に聞きたいことが……」

「えーい、まだその体を味わっていないんだ! 勝手に逃げるな!」

 

 ルークとランスが叫ぶが、一歩も止まることなくシーザーは壁を破壊し、サテラを抱えたままビルから飛び降りる。ルークがすぐさま大きく空いた壁の穴に駆け寄って下を見下ろすが、その姿はすでにどこにも見当たらなかった。みすみす取り逃がした事に志津香が顔を歪める。

 

「くっ……もう一息だったのに……」

「ランス殿、ひとまずシィル殿と聖盾を!」

「ああ、勝手に攫われたんだ。たっぷりとお仕置きしてやらんとな!」

 

 アレキサンダーの言葉に促され、奥の部屋へと駆けていくランスたち。程なくしてシィルが無事であった安堵の声や、聖盾を取り返した事によって聖装備が遂に全て揃った歓喜の声が聞こえてきた。だが、ルークはシーザーが破壊した壁の前に立ち尽くしながら拳を握りしめていた。

 

「サテラ……やはりお前はホーネット派なんだな。ならば、何故こんな事をしている……」

 

 

 

-ハイパービル近辺 街道-

 

「むかつく、むかつく、むかつく! 奴ら、絶対八つ裂きにしてやる!」

「サテラ様、アマリ暴レルト体ニ触リマス」

「くそっ! とりあえずジオの町に向かってくれ。今あそこにはあいつがいるはずだ」

 

 サテラの指示を受けて森を駆けていくシーザー。そのシーザーに担がれているサテラは大層悔しそうにしていた。

 

「イシスを修復するには魔人界に戻る必要があるな。イシス、この戦争が終わるまでちょっとだけ我慢していてくれ」

「…………」

 

 サテラが胸の中に抱えているイシスの頭部に話し掛ける。イシスも無言ではあるが意識はあるようで、サテラのその言葉に少しだけ反応したように見える。

 

「サテラ様、今度ハ言語機能モチャント付ケテアゲテ下サイ」

「ん、そうだな。だがここまでボロボロにされるとは……イシス復活まで何年かかるかな……ああ、むかつく!」

 

 サテラのガーディアンは驚異的な強さだが、職人気質であるサテラは納得のいかないガーディアンは途中で次々と壊してしまうため、一体作るのに長い年月が掛かる。その貴重なガーディアンを大破させられた事に、また怒りが再燃する。

 

「ソレト……」

「ん?」

「今度ハ寝ボケテ男性器ヲ付ケナイデアゲテ下サイ」

「ああ、判っている。イシスは女の子だからな」

「…………」

 

 魔人の中でも知っている者の少ない驚愕の真実をさらりと話しながら、シーザーはジオの町に向けて駆けていくのだった。こうして、ルークたちは遂に聖装備を全て揃える事が出来た。だが、この一件で侵攻が遅れている隙に、ジオの町にはヘルマン各地から部隊が集結していた。

 

 

 

-ジオの町 ヘルマン司令部-

 

「いよいよ明後日、リーザス反乱軍に殲滅戦を仕掛ける!」

 

 司令部には各地の部隊を纏めていた司令官が集まっていた。まだ到着していない司令官が数人いたが、部屋にいる者はみな強者の空気を纏っている。その中でも一際強烈な空気を纏うのは、部屋の中央で先程から声を荒げている男。この男こそ、ヘルマン第3軍総司令官にして、人類最強の男という呼び名で大陸にその名を轟かしている強者、トーマ・リプトン将軍だ。

 

「作戦は昼の会議で話した通りだ。戦力的には我が軍の圧倒、計画通りに戦えば負ける事はない!」

「はっ!」

「各部隊、準備は進んでいるか!」

 

 トーマの言葉を受け、司令官たちが順々に口を開く。

 

「ガイヤス隊2000、いつでも出発できます!」

「我がダルム隊2000も準備万端でございます!」

「シルビア隊1000、士気も高くいつでもいけます!」

「デストラー隊は、魔物の部隊10000を率いていつでも出撃可能です」

「ナビオ隊1000もいつでも大丈夫です。先陣は是非私に……」

「ナビオ、貴様のふぬけ隊に先陣など勤まるか。トーマ将軍、先陣はこのダルムにお任せを……」

「静かにしろ! 先陣はデストラー隊に決定したはずだ!」

 

 トーマが二人の司令官を一喝する。それを受けたデストラーが薄く笑いながら一歩前にでる。

 

「はっ! 我が部隊だけでも十分撃破可能です。なんなら明日にでも出陣しても構いませんが?」

「全部隊揃っての出撃というパットン皇子の命令だ。ミネバ隊を待たねばならん」

「ミネバ副将には今セピアを向かわせています。明日には到着するかと……」

「それではミネバの到着を待ちながら、各自明後日の決戦に備えろ」

 

 シルビアの報告を聞き、トーマが再度の確認を皆に告げる。

 

「出発は明日の夜。テラナ高原で休息の後、その明朝よりレッドの町を攻める!」

「はっ!」

 

 全ての司令官が敬礼をし、会議が終了する。決戦前の最終確認のために指揮官がこの場を後にし、司令部にはトーマ一人となった。先程までの喧騒が幻かと思われるような静寂が司令部を包む中、一人の男が突如闇の中から現れる。

 

「準備は万全か……?」

「魔人アイゼルか……貴様の手など借りずとも、我らだけで十分殲滅は可能だ」

「まあ、そう言うな。明後日は私も手を貸してやる」

 

 そう言い残し、アイゼルはまた闇の中へ消えていった。それを見送るトーマ。その表情はどこか苦々しげであった。

 

 

 

-ジオの町近辺 街道-

 

「ミネバ様、お急ぎ下さい。既に他の指揮官は集結しています」

「判っている。全く、騒がしい娘だねぇ……」

 

 そう急かすのはミネバを呼びに来た司令官、セピア・ランドスターだ。その彼女の声を面倒くさそうに聞きながら部下を引き連れて歩いていたミネバだが、急に森の方に視線を向ける。

 

「……悪い、少し話がある。立場上こいつらに聞かせられる話じゃない。こっちに来てくれるかい?」

「は? はい、判りました」

 

 ミネバにそう言われ、部下をその場所に待機させた二人は森の中へ入っていく。しばらく歩き、到底話し声は聞こえない位置まで来たところでセピアが問いかける。

 

「それで、話というのは?」

「……悪いねぇ」

「……えっ? ぐふっ!!」

 

 突如腹に強烈な一撃を入れられ、崩れ落ちるセピア。その彼女を見下ろしながらミネバが後ろに声をかける。

 

「タミ、この女をうし車に乗せてレッドの町へ。さっき渡した手紙も一緒にな」

「はっ、ミネバ様」

 

 いつからそこに控えていたのだろうか。木の後ろからタミと呼ばれた巨漢の男が現れ、気絶しているセピアを肩に担ぐ。

 

「ですが、危険な橋では?」

「ふっ、大したことないさ。本当ならこんな事する気はなかったんだが、反乱軍が頑張るもんだから欲が出ちまってねぇ……この戦争は長引かせるよ」

「はい」

「トーマの奴にはそろそろ隊長の席を空けて貰わないとねぇ。ヘルマンの英雄、名誉の戦死……ご立派じゃないか」

 

 口元に笑みを浮かべながらミネバが部下たちの元へ戻っていく。陰謀渦巻く中、ジオの町の決戦は着実に迫っていた。その決戦において、遂にルークは魔人と対話を果たす事になる。ずっと聞きたかった事についての対話を。そしてその対話は、非常に多くの者の運命を変えていく事になるのだが、まだそれを知る者はいない。

 

 




[人物]
リス
 元モンスターの青年。ランスの言葉を信じ、人間になるべく努力していたら案外何とかなってしまった。恋人のローラとはラブラブ。今は結婚式の準備を進めており、一応恩人ということでルークとランスも招待する予定。


[モンスター]
バグ
 コンピュータのあるところに現れるモンスター。一説にはコンピュータが生みだしている生成生物という意見もある。小さな体だが、素早い動きに強烈な攻撃と意外な強敵である。その姿はハニーキングすら震え上がらせるという。


[技]
魔封印結界
 四本の結界志木と呼ばれる金属を使い、対象を異空間へ送り込む神魔法。準備が大変なため実戦で使える機会は少ないが、その威力は絶大であり、サテラ程度の魔人なら為す術もなく異空間へ送り込まれる。


[その他]
エロヤックALV
 ハイパービルを管理するスーパーコンピュータ。バグに悩まされていたが、ルークたちに退治して貰い本来の機能を取り戻す。

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