ランスIF 二人の英雄   作:散々

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第76話 レプリカ

 

-防空コア 地下二階-

 

「こっちです。こっちに階段があるんですかねー」

「流石に途中まで攻略が済んでいると楽で良いな」

 

 トマトとサーナキアが先頭を歩き、一同は防空コアを進んでいく。自分の戦果を誇るように張り切って案内をするトマト。防空コアの中は研究コアや食料コアに比べてかなり複雑な迷宮になっていたが、二人のお陰でここまでは迷う事なくやって来る事が出来た。トマトの後に続いて地下二階の奥にある部屋の中に入ると、そこは緩やかな水路が流れている行き止まりの部屋だった。

 

「むっ、行き止まりではないか」

「いえいえ、ここに秘密があるんです。タコさーん、お願いしますですかねー!」

「ちょぷー!!」

 

 トマトが水路に向かって叫ぶと、その声に反応するように水中から十体のオクトマンが現れる。即座にバスターソードを抜くルーク。この剣はメリムが宝箱から発見したもので、幻獣の剣よりは斬れ味が良い為一応装備していたのだ。だが、こちらも無敵鉄人の剣ほどではないが重量のある剣であり、どちらかというと柔剣寄りのルークにはあまり合っていなかった。とはいえ背に腹は変えられない。バスターソードを構えてオクトマンを見やるルークだったが、その頭をロゼとフィリスに叩かれた。

 

「っ……」

「雑魚敵戦は絶対安静って言ってるでしょ」

「傷が広がったらどうするんだ、全く……」

「そうです、ルークさん。ここは私に任せてください。オクトマンは炎に弱いはずですから、火丼の術で……」

 

 かなみが巻物を口に咥えて火丼の術を放とうとするが、それを見ていたオクトマンが慌てて止める。

 

「ちょ、ちょっと待つだん!」

「かなみさん、大丈夫ですかねー。このタコさんたちはトマトたちに負けて改心したんですかねー」

「そうだん! もう悪いことはしないだん!」

「へぇ……凄いわね、トマトさん、サーナキアさん」

 

 たった二人でこれ程大量のオクトマンを倒したとなると、相当の労力だっただろう。レイラが感心した様子で二人を誉めると、サーナキアが胸を張ってそれに答える。

 

「ふっ……騎士であるボクの敵ではなかったけどね」

「……どっちかっていうと、トマトの姐さんの方が活躍してただん」

「なっ!?」

「がはは。サーナキアちゃん、強がるのはいかんぞ」

 

 オクトマンの呟きにサーナキアが顔を赤くし、ランスが笑い飛ばす。トマトがオクトマンにぼそぼそと何かを言うと、十体のオクトマンが一斉に並び始め、水路の中にオクトマンの橋が出来る。

 

「さぁ、この橋を渡った先に階段がありますです」

「これを渡るんですか……」

「うっ、ぷにょぷにょしてイヤな感触……」

 

 トマトがさあ渡れと言わんばかりに橋を指差すが、かなみは唖然とした様子で眺めていた。マリアが一歩踏み出してみると、オクトマンの柔らかい頭がイヤな感触を生み出す。しかし、これを渡らないと先には進めない。渋々と渡り始める一同。

 

「……飛んでこ」

「あっ、汚いぞフェリス!」

 

 全員が足の裏に嫌な感触を感じながら渡っているその横を、パタパタと羽を動かして飛んでいくフェリス。ランスだけでなく、他にも恨めしそうな視線をいくつか感じていた。そんな中、橋になっているオクトマンは突如視線を感じる。見てみると、それはセスナの視線。

 

「じー……」

「ん、何だちょぷ?」

「美味しそう……」

「ちょ、ちょぷー!!」

「そんなの食べたらお腹を壊しますわよ」

「血が足りない……」

 

 チルディに引っ張られていくセスナ。こうしてルークたちは着実に防空コアの攻略を進めていった。

 

 

 

-下部動力エリア-

 

「うっ……ここは……」

 

 気を失っていたサイアスが目を覚ます。ぼんやりとした意識の中、なんとか頭を整理する。ディオから逃げるため水路に飛び込んだが、どうやらそのまま気を失っていたようだ。腰に手を当ててみると、包帯が巻かれている。治療をしてくれたというのだろうか。一体誰が。視界が晴れていき、視線を横に向ける。そこに座っていたのは、絶世の美女。

 

「あら、目を覚ましたのね」

 

 美女がこちらを向いて微笑んでくる。どうやら彼女が自分を治療してくれたらしい。となれば、やることは一つ。

 

「貴女は……女神か何かかな?」

「えっ……?」

 

 口説く。これだけの美女を前にして口説かないのでは男が廃る。すると、ヌッと美女の横からもう一人別の何かが顔を覗かせる。岩のような肌で表情すら判らない。明らかに人間ではない。身構えるため即座に立ち上がろうとするが、腰に激痛が走る。

 

「くっ……」

「駄目よ、いきなり動いては。私たち二人とも治癒魔法は使えないから、応急処置しかしていないのよ」

 

 傷口からの出血は止まっているが、暴れればすぐに傷口が開いてしまいそうな状態。痛む腰に手を当てながら、サイアスは周囲を見回す。どうやらこの部屋は研究室か何からしい。

 

「どうやら助けていただいたみたいだな……感謝する」

「気にしなくていいわ」

「別にタダで助けた訳ではない……」

 

 美女がそう答えるのを遮るように岩のような男が口を開く。ようやく働いてきた頭で目の前の二人を見る。そして、気が付く。彼らの見た目が、ルークから聞いていた特徴と一致する事に。

 

「まさか……魔人ハウゼルと魔人メガラスか?」

「えっ!?」

「俺たちの事を……知っているのか……?」

 

 ハウゼルが驚いたようにこちらを見る。メガラスも表情は判らないが、今の声から察するに多少は驚いているようだ。ため息混じりに言葉を続けるサイアス。

 

「知り合いに魔人に詳しい男がいてな。まさか魔人に助けられるとは、随分と貴重な経験をしたものだ……」

「魔人を見たというのに、あんまり驚いていないのね」

 

 そのサイアスにハウゼルが不思議そうに尋ねてくる。流石に何の情報もない状態で魔人と会えばサイアスも焦りもしただろうが、ルークからこの二人は危険の少ない魔人と聞いていた。旧友であるルークの言葉を信じていたからこそ、二人の魔人に対して初見から冷静に対処が出来る。

 

「そうですね……貴女のような美女が魔人という事には多少驚きましたけどね」

「え……えっと……」

 

 サイアスの言い回しに困惑した様子のハウゼル。まさか魔人である自分にそんな事を言ってのける人間がいるとは思っていなかったのだろう。その二人の間に割り込むようにメガラスが入ってくる。

 

「その知り合いというのは……ルークという人間か……?」

「なっ!?」

「どうやらそうみたいね」

 

 メガラスの言葉を聞いたサイアスは目を見開く。魔人にルークの存在が知られている。それは、一体何故。これまでとは一転、サイアスは二人を警戒しながら、静かに口を開く。

 

「何が目的だ……」

「あっ! そんなに警戒しないで。別に変な事は考えていないから」

 

 ハウゼルが慌てて取り繕うが、サイアスは警戒を緩めない。何せ天秤に掛かっているのは、大事な友人の命なのだ。

 

「では、何故?」

「その男に興味がある……」

「興味……?」

「メガラス、それじゃあ伝わらないでしょ。えっと……先日私たちの仲間がその人間にお世話になったみたいなの。あっ、お世話って言っても敵としてという意味じゃないわ。ルークという人間と一緒に共闘したみたいなのよ」

 

 寡黙なメガラスに代わり、ハウゼルが説明を始める。それを聞いたサイアスは眉をひそめ、訝しげにハウゼルを見やる。

 

「魔人と共闘……?」

「数ヶ月前に私の仲間がリーザス城に攻め込んでしまったみたいなの。そのときに尻ぬぐいをしてくれたとかで」

「リーザス解放戦の事か……確かに魔人が攻め込んできたとは聞いていたが……ルークの奴、そんな事までしていたのか……」

 

 リーザス解放戦の真相は殆ど報道されていなかったし、ましてや魔人と共闘したなど人類に混乱を招きかねないため、徹底的な情報封鎖をされていた。ルークと再会してそのような話をする余裕も無かったため、サイアスはハウゼルの口からリーザス解放戦の真実を聞く事になる。

 

「仲間がお世話になった人間だし、それに……」

「それに?」

 

 そう口にしながら、ハウゼルはホーネットの笑顔を思い出して静かに微笑む。

 

「ふふ。色々あって、その人間に少しだけ興味があるの。どういう人間なのかなって」

「やれやれ……魔人にまで興味を持たれるとは、俺の友人はとんでもない男だな……」

 

 サイアスがわざとらしくため息をつく。ハウゼルがその様子を静かに微笑みながら見ていると、メガラスがルークの事を話すように急かしてくる。

 

「聞かせて貰えるか……? ルークという人間の事を……」

「そうだな……命を助けて貰ったことだし、大した話は出来ないがそれでもいいかな?」

「ええ、それでいいわ」

「了解した。それと、申し遅れた。俺はサイアス・クラウン。ルークの友人だ」

 

 二人に名乗りながら、サイアスはどこまで話していいのかを冷静に考える。流石に結界を無効化出来る能力を話すのはマズイ。共闘したというのなら知られているかもしれないが、確認も取らずに話す訳にはいかない。当たり障りのない事でも話すかとサイアスが考えていると、その前にハウゼルが問いかけてくる。

 

「そうだわ。そういえば、その傷はどうしたの? かなりの深手だったけど」

「これか……最強の闘将という相手にやられてしまってね」

「なんだと!?」

「闘将ですって!?」

 

 サイアスの言葉を聞いたメガラスとハウゼルが声を上げる。二人とも魔人戦争の経験者。闘将の恐ろしさはよく知っているのだ。

 

「まだ生き残っている闘将がいたなんて……」

「…………」

「二人とも、闘将の事は知っているのか?」

「ええ、良く知っているわ。かつて、魔法使いが束ねる教団と魔人の間で戦争があったの。その教団が主戦力として使っていたのが、闘将よ」

「なるほどな……魔人と戦争したほどであれば、あの戦闘力も頷ける……」

 

 サイアスがディオの強さを思い出す。ルークや自分だけでなく、赤い死神リック、悪魔フェリス、四将軍ウスピラ。それだけの人材が揃っていながら、まるで歯が立たなかったのだ。魔人と戦争したと聞き、その強さにようやく納得がいったというものだ。

 

「という事は、闘将というのはその教団が作り出した戦闘兵器という事か?」

「そういう事。あれ程完成された自立兵器を作り出すなんて、私たちも驚いたわ……」

「自立兵器ではない……」

 

 人間が作り出したとは思えぬほどの高度な技術にハウゼルが感心していたが、そのハウゼルの言葉をメガラスが否定する。自然とハウゼルとサイアスはメガラスに向き直る。

 

「自立兵器じゃない……?」

「あれは……おぞましい存在だ……」

「おぞましい? それはどういう事だ?」

 

 ハウゼルとサイアスがメガラスに問いかける。魔人戦争を経験したハウゼルも、闘将の真実までは知らなかった。だがメガラスは、魔人戦争の最中に闘神都市に潜入し、その真実が記された資料を読んでいる。だからこそ、あの存在を嫌悪する。

 

「あれは……元は人間だ……」

「なっ!?」

 

 サイアスが絶句する。全身機械人形のようなあの闘将が、元々は人間だったというのか。となれば、ディオも元は人間なのか。そんな事をサイアスが考えていると、ハウゼルが神妙な面持ちで口を開く。

 

「そう……教団の人間たちは自らを強化してあの戦争に望んだのね……そこまでして、私たちを……」

「違う……そうではない……」

「違う……? それは……まさか!?」

 

 メガラスの言葉を聞き返そうとしたサイアスだったが、あるおぞましい結論に至り目を見開く。そしてその予想は、最悪な事に的中していた。

 

「あれは……望まぬ者たちの体を無理矢理改造し……絶対服従の魔法を使い……永久に戦わせるようにした兵器だ……」

「なっ!?」

 

 メガラスが吐き捨てるように言う。これが闘将の真実。聖魔教団は蛮族と呼ばれる人間を人体実験し、脳と左目だけを残してそれ以外の体を金属へと改造。魔力の供給さえあれば永久に戦える兵器としたのだ。勿論中には自ら望んで闘将になった者もいたが、大半は半ば強制的に改造させられた者。その際、絶対服従魔法の掛かりが悪ければ即座に廃棄されたのだ。それは、あまりにも人道に外れた行為。

 

「闘将は絶対服従魔法によって……一部の例外を除いて……強制的に戦わせられていた……」

「そんな……」

「何百年経っても腐っている人間はいるものだな……」

 

 ゼスの上層部を思い出してサイアスが吐き捨てる。例え魔人を倒すためとはいえ、そのような蛮行は許されるはずがない。だが、教団という組織がそれを遂行していたということは、その上層部はさぞかし腐っていたことだろう。それは恐らく、今のゼス以上に。

 

「それじゃあ……私たちの同胞を虐殺したあの闘将も……」

「いや、それが例外の一つだ……奴は自らの意志で殺しを行っていた……服従魔法にも掛かっていなかったらしい……」

 

 ハウゼルとメガラスがかつて嫌悪した闘将を思い出す。多くのモンスターを無残に殺し、高笑いを浮かべていた闘将。戦争末期では姿を見なかったところから考えると、どこかで戦死したのだろう。険しい表情をしている二人を見ながら、サイアスが口を開く。

 

「ルークの言っていたとおりだ……あんたら二人は、話の通じる魔人らしい」

「えっ?」

「…………」

「人体実験……その事にこれだけ嫌悪感を露わにしてくれるんだからな……」

 

 ルークの言葉を信じていたとはいえ、心の奥底には魔人への警戒心が無くはなかった。だが、この二人は違う。ゼスの上層部よりも、よっぽど自分たちに近い感情を持っている。

 

「あんたらになら……話だけではなく、直接ルークに会って貰ってもいいかもしれ……」

 

 サイアスがそう言いかけたとき、遠くから大きな音が響き渡る。壁が破壊された音であろうか。それに続き、何やら金属音が響く。それは、戦いの音。

 

「…………」

「近いわね……」

「戦っているのか……一体誰が……」

 

 サイアスが顔を歪ませる。誰が戦っているのかは判らないが、片方は自分の仲間の可能性が高い。では、相手は一体何者か。そう考えたとき、戦闘音が聞こえている通路から声が響いてくる。

 

「ククク、カカカカカ!!」

「この声は……くそっ!」

 

 瞬間、サイアスは腰を押さえながら走り出していた。一歩踏み出すごとに激痛が走る。まだとてもじゃないが走れる状況ではない。だが、行かねばならない。この先で戦っているのは、間違いなく奴なのだ。

 

「待って、その傷じゃあ……」

「仲間が襲われている可能性がある! 放っておく訳にはいかん!」

 

 ハウゼルが呼び止めるが、振り返ることなくサイアスは駆けていく。心配そうにその背中を見送るハウゼル。追う義理はない。追う理由があるとしたら、ルークの情報を聞く為。だがそれも、自分たちの興味本位レベルの事。あのような怪我を負いながら、無理して戦場に戻るような人間に義理立てする理由は、魔人にはない。だがその背中が、何故かホーネットやシルキィと重なる。ケイブリス派との不利な戦いの中、仲間たちの為に多少の傷を押して戦場へと出て行く姿が。

 

「メガラス、頼みがあるんだけど……」

「行くぞ……」

 

 ハウゼルがついて行かないかと提案する前に、メガラスが即答する。

 

「メガラス……」

「あの人間の為ではない……」

 

 ハウゼルが礼を言おうとするが、それを手で制すメガラス。ここに来てハウゼルは気が付く。メガラスの体から、殺気が溢れ出ている事を。

 

「あの笑い声……忘れもしない……奴だ!」

 

 多くの同胞を無残に殺した闘将。その中にはメガラスの使徒も含まれていた。忘れない、忘れられる訳がない。ハウゼルを引き連れ、メガラスはサイアスの後を追っていった。

 

 

 

-防空コア 地下六階-

 

「「「うわぁぁぁん、覚えてろ!」」」

 

 泣きながらセェラァ、ブレザァ、ジャンスカの女の子モンスター三体が逃げて行く。突如ランスに文句を言って襲いかかってきたが、返り討ちあった上、散々体をまさぐられたのだ。

 

「あれはシャイラとネイの親戚か何かか?」

「そういう訳ではないと思いますが……」

 

 ルークの問いかけにシィルが汗を垂らしながら答える。ルークたちは防空コアの最深部、地下六階までやって来ていた。

 

「ぶるぶる……寒いですね……」

「アスマさん、もう少し暖かくならないんですかねー?」

「黒こげになりたければ火力を上げられるが?」

「あはは……それは止めておいて」

 

 防空コアの地下四階から以降は、異常なまでの寒気が迷宮を覆っていた。ナギが炎魔法で周囲を暖めながら進んでいたが、この地下六階は特に寒さが厳しい。通路を進む全員が体を震わせていた。

 

「アスマさん、ウスピラさん。そんな格好で寒くないんですか?」

「魔法の中心地にいるから、私はさほどではない」

「大丈夫……寒さには強い……くしゅん!」

「氷の将軍だからって、やせ我慢しなくても……」

「地味にわたくしも結構な露出という事を気が付いて欲しいですわ……ぶるぶる……」

「以下同文……ぶるぶる……」

 

 マリアがナギとウスピラを心配している横で、地味に露出の高いチルディとフェリスが人一倍震えていた。

 

「ランス様……何か着てもよろしいでしょうか……?」

「馬鹿者、それは絶対に許さん。それよりももっとこっちに来い。あー、ぬくぬく」

 

 ナギに次いで露出の高いシィルが震えているが、ランスはそのもこもこ頭に手を入れて暖まっていた。

 

「ぐぅ……ぐぅ……」

「セスナ殿! ここで寝るのは危険です!」

「ロゼは平気そうだな」

「ま、普段から裸マントで過ごしてたりするからねぇ……」

 

 セスナが死にかけている横でロゼが平気そうに頭を掻く。その面々を見回しながら、サーナキアがふふん、と鼻をならす。

 

「みんな情けないな。心頭滅却すれば、この程度の寒さなど気にもならない」

「それだけガチガチに鎧を着込んでいれば、温かいに決まっていますわ!」

 

 勝ち誇っているサーナキアに対し、チルディが頬を膨らませる。そうこうしていると、通路の最奥まで辿りつく。そこには巨大な扉があり、この厳しい冷気はその扉の向こうから流れてきていた。

 

「この部屋で最後か……冷気もここから来ているな……」

「一体扉の向こうには何が……」

 

 ルークが扉を見上げ、かなみもそれに続くように見上げる。かなり巨大な扉だが、押せば簡単に開きそうだ。それ程重い扉という訳ではないらしい。ルークとリックがゆっくりと扉を開けていくと、とんでもないものが皆の目に飛び込んでくる。扉の向こうには、巨大なドラゴンがいたのだ。

 

「おわっ!」

「ランス様、ド、ド、ド……」

「ドラゴンだわ!」

 

 目を見開く一同。流石のランスも相当に驚いている。そんな中、ナギが一歩前に出る。

 

「ドラゴン狩りは初めてだな」

「いけません、アスマ殿!」

 

 平然とした様子で魔法を放とうとしていたナギをリックが慌てて止める。魔人程ではないにしても、人間が勝とうとするのならば多大な犠牲を払わねばならない。それ程までにドラゴンは強いのだ。下級のドラゴンであれば討伐した経験のあるルークも息を呑む。目の前のドラゴンは、明らかに格が違う。すると、目の前のドラゴンがゆっくりと目を開け、言葉を発する。

 

「人の子か……何用があってここに来た……よもや、ユプシロンの空を守れなかった愚か者を見に来た訳ではあるまい……」

「はぁ? 何を訳の判らない事言ってやがる」

 

 ランスがそう文句を言った瞬間、ドラゴンが盛大にくしゃみをする。

 

「びゃっくしょい!」

「うおっ!」

「きゃっ、寒い……」

 

 そのくしゃみが強烈な冷気となってルークたちに襲いかかる。どうやらこの迷宮の冷気はこのドラゴンが生み出しているもののようだ。鼻を啜りながら言葉を続けるドラゴン。

 

「用が無いなら、早々に立ち去れ。人の子にこの寒さは危険だ」

「お前が冷気を出しているんだろうが! さっさと止めろ!」

「ラ、ランス……あんまりドラゴンを刺激しないで……」

 

 ランスの物言いにマリアが怯えながら苦言を呈すが、ドラゴンは特に気にしていない様子だ。どうやら寛大な性格らしい。

 

「何十年も風邪をひいたままでな……体温調節が上手く出来ないのだよ、すまんな……」

「ドラゴンも風邪をひくのね……」

「おおっ、そうだ。人の子よ、薬を取ってきてはくれないか。我らドラゴン族が傷ついた際に治療をしてくれた魔法使いの部屋に行けば、風邪薬くらいあるはずだ」

 

 レイラが興味深げに眺めていると、ドラゴンが唐突に頼み事をしてきた。どうやらこの闘神都市にドラゴン用の風邪薬があるらしい。ニヤリと悪い顔をするランス。

 

「聞いてやってもいいが、何か見返りがないとなぁ。ドラゴンなんだから、俺様に相応しい超ハイパーなアイテムくらい持っているだろう?」

「むぅ……それが持っているものといえば、この鍵くらいなのだよ」

 

 ドラゴンが巨大な手で小さな鍵を掴んで見せてくる。その鍵を見た瞬間、メリムが叫ぶ。

 

「あれです! あれがSキーです!」

「なるほど……ならば取ってくる価値はあるな。ドラゴン……そうだ、名前はあるのか?」

「うむ……我が名はキャンテル」

 

 ルークがそう問いかけると、ドラゴンが名乗りを上げる。

 

「ではキャンテルよ。薬を取ってくるので、交換条件としてその鍵を頂きたい」

「行ってくれるか! ありがたい。だがこの鍵は……いや、背に腹は代えられん。その条件を飲もう」

「それと……ここに俺たち以外に人は来なかったか?」

「いや、数十年ぶりの来客者だ」

「そうか……」

 

 ルークが眉をひそめる。どうやら防空コアに志津香たちは寄っていないらしい。早く見つけなければ、片目の状況ではモンスターたちに殺されかねない。そう心配する様子に勘付いたのか、ルークの腹にヒーリングを掛けていたロゼが呟く。

 

「大丈夫よ……そう簡単に何かあるようなタマじゃないわ」

「ああ……」

 

 未だに志津香たちが片目を失っていると勘違いしている二人。そんな中、ランスがキャンテルに問いかける。

 

「で、その薬というのはどこにあるんだ?」

「うむ……浮力の杖の上層部にあるはずだ」

「浮力の杖!?」

「これは……ついている……」

 

 マリアが声を上げ、セスナが呟く。防空コアの次に行こうと思っていた場所だ。何とタイミングの良い事か。

 

「メリム。浮力の杖までの道案内を頼む」

「任せてください」

 

 キャンテルから依頼を受け、今度は浮力の杖を目指すことになったルークたち。一度お帰り盆栽で町へと戻り、教会の地下から浮力の杖を目指すことにする。一方その頃、下部動力エリアでは激闘が繰り広げられていた。

 

 

 

-下部動力エリア-

 

「おい、人形。本当にこの先に闘神があるのだろうな?」

「ククク、黙ってついてこい」

「もし嘘だった場合、ドカーンとなる事を覚悟しておけ」

 

 少しばかり時間は戻る。サイアスを取り逃がしたビッチとディオは飛行艇には戻らず、ディオが場所を知っているという闘神都市の主、闘神が置かれているという部屋を目指していた。ビッチは常に爆弾のスイッチを握りしめており、ディオがおかしな事をしないよう警戒していた。そんな状態で通路を歩いている二人だったが、突如小柄な人形が角から出てきてその道を塞ぐ。

 

「人よ、ここを通す訳には参りません。戻ってください」

「あぁ、何だ貴様は?」

 

 ビッチが人形に問いかけると、小柄な人形がそれに答える。その声は女性のものだった。

 

「私はレプリカ・ミスリー。このユプシロンを守る闘将です。人類には、この闘神都市はまだ不要な物。お願いですから戻ってください」

「ククク、私の知らぬ闘将だな」

 

 それは、かつてフリークと共に聖魔教団を壊滅させた闘将。この闘神都市で数百年もの間、たった一人で番をしていた女性だ。ミスリーの名前を聞いたディオが笑いながら前に出る。ミスリーが誕生したのはディオが活動を停止した後であるため、彼女の事を知らないのだ。

 

「貴方も闘将ですか……ですが、洗脳されていない……」

「当然だ。あの程度の魔法で私は縛れるものか。私の上に立つ者など、存在してはならぬ。ククク……」

 

 ミスリーが目の前の闘将の姿をもう一度見る。目と口が半分ずつしか無く、白と黒に半分に分かれた特徴ある顔。それは、かつてフリークより聞かされていた最強の闘将。

 

「貴様……ディオか!?」

「クカカカカ、新入りでも私の名前は知っているのか。邪魔だ、どけ」

 

 ディオが鬱陶しげに手で合図するが、ミスリーはその場に立ったままディオを見据える。

 

「……ここを通す訳にはいかない。ユプシロンは、動かしては駄目なのです」

「ククク、私にお説教かね。無意味なことをする娘だ」

 

 不気味な笑みを浮かべるディオ。それに呼応するように放たれた殺気を感じ取り、ミスリーはすぐに臨戦態勢に入る。

 

「どうしても行くと言うなら……私を倒してからにしなさい!」

「なら、そうさせて貰おう。下がっていろ」

「わたくしに命令をするな!」

 

 ディオが強烈な殺気を放ちながら、ビッチを後ろに下がらせる。ミスリーが腰を落とし、そのまま勢いを付けた素早い蹴りをディオに繰り出す。

 

「たぁ!」

「ククク」

 

 それは十分達人の域と言える蹴り。だが、ディオはその一撃を首だけ動かして難なく躱した。

 

「てやぁ!」

「カカカ」

 

 連続して蹴りを繰り出すミスリーだったが、一撃も当たらない。フリークからディオの話は聞いていた。危険すぎる闘将。だからこそ、隙をついて封印したと。

 

「まだまだ!」

「何だ? 随分と滑稽な踊りだな?」

 

 挑発を交えながら、ディオはミスリーの連続蹴りを躱し続ける。ここに来て、ミスリーは早くも驚きと恐怖を覚えていた。強いとは聞いていた。だが、同じ闘将である自分とここまで差があるのか。

 

「くっ……はぁっ!」

「遅い」

 

 ミスリーが渾身の蹴りを放つが、その右足を左腕で受け止めるディオ。そのままミスリーの体を宙づりに持ち上げる。

 

「ククク、本気で最強の私に勝てるとでも思っているのかね?」

「くっ……離せ……」

「離してやるとも。ふん!」

 

 掴んでいた足を思い切り振り回し、放り投げるディオ。勢いのついたミスリーは壁に激突し、轟音と共にその壁が崩れ落ちる。

 

「ぐぁっ……」

「どうだ。望み通り離してやったぞ?」

 

 ゆっくりとミスリーにディオが近づいていく。すぐさま体を起こし、ディオに再び蹴りを繰り出す。

 

「たぁっ!」

「ふっ……」

 

 それを今度は肘で受け止めるディオ。金属音が周囲に響き渡る。ミスリーがディオの様子を見るが、全力で放った蹴りはまるで効いていないようだ。驚愕しているミスリーに対し、ディオはそのまま高速の手刀をミスリーの右肩に向けて突き出す。金属の肉体が貫かれ、右肩に深々と手刀が突き刺さる。

 

「は、速い……」

「ククク、カカカカカ!!」

 

 ディオが笑う。見慣れぬ闘将で期待したが、この程度かと。やはり最強は自分しかいないと。馬鹿にされたと思ったミスリーが左腕で殴りかかるが、その腕を掴まれ再度投げ飛ばされる。壁に激突し、またも壁が崩れ落ちる。

 

「弱い……弱すぎる……」

「馬鹿な……これ程だなんて……」

 

 ふらふらと立ち上がったミスリーだが、気が付けば目の前までディオが近づいてきていた。すぐに殴りかかるが簡単にその腕を掴まれ、お返しとばかりに左肩目がけて手刀を放たれる。深々と左肩に突き刺さる手刀にミスリーが声を漏らす。

 

「がっ……」

「しかし、闘将と戦うのは楽しくない。私は死を恐れる表情を楽しみにしているというのに、表情がない人形なのだからな」

「くっ……がぁっ……」

 

 ミスリーが反撃しようとするが、ぐりぐりと突き刺さった手刀を動かされ悶絶する。それを見下すように見ながら、更に言葉を続けるディオ。

 

「脳だけの存在だから、仕方ないか……せめて声で私を楽しませてくれよ。恐怖に震えた声でな」

「負ける訳には……いかない……」

 

 ミスリーが声を絞り出す。勝てない。自分ではディオには勝てない。だが、フリークとの約束がある。闘神都市を守ると約束をした。数百年もの間、その約束を守り続けてきた。こんなところで朽ちる訳にはいかない。

 

「フリーク様が言っておられました……」

「フリークだと……?」

「魔人との決戦の日の為、この闘神都市を止めておくと。ユプシロンの制御方法が発見されるまで、誰も動かしてはならないと……」

「娘。貴様、フリークの仲間か!」

 

 フリークの名前を聞いたディオの様子が一変し、ミスリーの頭を掴んで持ち上げる。自分を封印した闘将、フリーク。ディオが最も殺したい相手だ。頭を掴まれて持ち上げられながらも、ミスリーは気丈に振る舞う。

 

「娘ではない……私は、レプリカ・ミスリー……人間であるときに、お兄様につけられた誇りある名前だ……」

「レプリカ……カカカ、そうか。恐らくミスリーという娘が死んで、その模造品が貴様という事だな。出来損ないにはピッタリの名前だ」

「模造品などではない……」

 

 ディオの予想は当たっている。魔人戦争の際に巻き込まれて死んだある国の王女。その死体を利用して兄が闘将を作り出したのだ。レプリカ・ミスリー。兄のことは尊敬していた。名前も誇りであった。だが、レプリカという言葉だけは、彼女を傷つけていた。

 

「私は……私は模造品などではない……」

「模造品だよ、貴様は」

 

 そう言い放ちながら、ディオが自身の手刀に闘気を纏わせる。先程までとは違う、ディオの渾身の一撃だ。

 

「フリークの仲間であるのなら、これ以上の遊びは不要。死ね!」

 

 手刀がミスリーの脳に向かって突き出される。食らえば間違いなく死が待ち受けているだろう。フリークとの約束の為、ここで死ぬ訳にはいかない。だが、ディオに掴まれていて体が動かない。迫り来る手刀を見据えながら、ミスリーは呟く。

 

「私は……私はミスリー……」

「ミスリー・ソウ・カレンだな?」

「っ!?」

 

 それは、ミスリーが人間であったときの名前。久しく聞いていなかった名前にミスリーが驚愕するのとほぼ同時に、ディオの体目がけて炎を纏った蹴りが繰り出される。

 

「炎舞脚!!」

 

 フリークの名を聞いて注意が散漫になっていたディオにその蹴りが直撃する。少し後方に吹き飛んだディオだったが、殆どノーダメージ。やってきた男、先程取り逃がしたサイアスを見ながらニヤリと笑う。

 

「わざわざ戻ってきてくれるとはな……ククク……」

「女性のピンチは放っておけないタチでな。立てるか?」

「何故……私の名前を……」

「闘神都市に写真が置いてあったのを、偶然見ていてな」

 

 戦闘の音を聞いて駆けつけたサイアスだったが、戦っているのは見知らぬ闘将。通路の角から様子を窺っていたが、ミスリーという名前を聞いてピンと来る。この闘神都市で見たミスリー・ソウ・カレンの写真と、目の前の闘将がどことなく雰囲気が被るのだ。そして、レプリカ・ミスリーという名前。気が付けばサイアスは飛び出してしまっていた。だが、それは無謀な行為。

 

「ククク、その傷で戦うつもりか? それとも、まともに動けない人形を連れて逃げる気かな?」

「ふっ……」

「人よ……その傷は……」

「サイアスだ。俺も君と同じで、自分の名前は気に入っているんだ。そう呼んでくれ」

 

 ディオの指摘したとおり、無理に動いたサイアスは腰の傷が開き、血が滴り落ちていた。だが、サイアスは腰を押さえながらもいつもと同じ口調でミスリーにウインクをする。それを見ていたビッチは非情な指示を出す。

 

「やれ。そのゼスのクソを出来損ないの人形ごと殺せ!」

「言われずとも」

「悪いな。大して役には立てそうにない……だが、やるだけやってみるさ」

 

 ミスリーの体を起こしながら、サイアスが両腕に炎を纏わせる。魔法が効かないディオにこの炎が無意味である事は判っている。だが、これが自分の戦闘スタイルであり、それを崩す気はさらさらない。ディオが手刀に闘気を纏わせながら、こちらに向かってくる。今度こそ助からないかもしれないな、とサイアスが覚悟を決める。しかし、突如ディオがビッチを庇うように体を横に動かす。その瞬間、サイアスの後方から灼熱の光線が飛んで来た。

 

「ファイヤーレーザー!!」

「ハウゼル!?」

 

 サイアスが振り返ると、そこには駆けつけたハウゼルの姿。魔人であるハウゼルが駆けつけてくれた事には驚いたが、それ以上に驚いている事があった。目の前で燃えさかる炎を見ながら、サイアスは目を見開く。

 

「この炎は……俺よりも強い……だと……」

「大丈夫? 何とか間に合ったみたいね」

 

 ハウゼルがサイアスに駆け寄る。だが、サイアスは燃えさかる炎を見ながら表情を緩めない。

 

「まだだ……奴に魔法は効かん……」

「えっ!?」

 

 ハウゼルがサイアスの言葉を受けて炎の方向を見る。すると、燃えさかる炎の中に無傷のディオが悠々と立っていた。そのディオにビッチが声をかける。

 

「おお、わたくしを守るとは殊勝なところもあるではないか」

「死ぬ間際に誤ってボタンを押されては面倒だからな」

 

 ようやく自分の立場が判ってきたかと頷いているビッチに振り返ろうともせず、ディオは平然とそう答える

 

「(そう……この程度の炎では即死ではないからな……ククク、こいつにはボタンを押す間もなく即死して貰わねば困るのだよ……)」

「……あいつ、まさか!?」

 

 ハウゼルが目の前の闘将を見て目を見開く。それは、古い記憶。だが忘れもしない。あの闘将を自分は良く知っている。その名を叫ぼうとしたハウゼルだったが、それよりも早く奴の名を叫ぶ者がいた。

 

「やはり貴様だったか……闘将ディオ!」

 

 その言葉と共に、サイアスたちとディオの間にメガラスがいつの間にか姿を現す。それは、サイアスが目に止められぬ程のスピードであった。目の前に立つ二人の魔人を見ながら、ディオは嬉しそうに笑い出す。

 

「ククク、カカカカカ!! 覚えているぞ。貴様ら、魔人だな。殺し損ねた相手は良く覚えている」

「ま、魔人……!?」

「大丈夫だ、ミスリー。この二人は味方だ……」

 

 魔人を倒す為に闘神都市を守っていたミスリーにとって、突如現れた二人の魔人はディオ以上に警戒すべき相手。だが、命を助けられたサイアスにそう言われ、ミスリーは黙り込む。どうせこの状態では、魔人を相手には戦えないからだ。不気味な笑い声を上げていたディオはひとしきり笑った後、後ろにいるビッチに向かって振り返ることなく話しかける。

 

「おい貴様。帰り木は持っているな?」

「ん、何だ急に。当然持っているが」

「なら、上陸艇に戻っていろ。巻き込まれたくなければな……」

「貴様、そんな事を言って逃げる気ではないだろうな! この爆弾の有効範囲はかなり広いのだぞ。おかしな真似を見せれば……」

「一時間だ」

「ん?」

 

 ディオがピンと人差し指を立てる。意味が判っていないビッチが呆けたような顔をしていると、ディオは不敵な様子で言葉を続けた。

 

「一時間で戻らなければ、爆発させろ」

「……貴様、大丈夫なのだろうな?」

「当然だ」

「ちっ。必ずそのクソ共を血祭りに上げろ!」

 

 一度だけ舌打ちをし、ビッチが帰り木で帰還する。魔法を放とうとも考えたサイアスだったが、どうせこの位置関係ではディオに邪魔されてビッチまで魔法は届かない。無駄な体力を使うのは避け、去っていくビッチをただただ悔しそうに見送るのだった。

 

「ククク……さて、仕切り直しだな」

 

 この場に一人残されたディオは不気味な笑みを浮かべながら、目の前の四人を見回す。魔人二人と相対しながらこの余裕。やはりこの闘将は狂っている。

 

「サイアスと模造品は相手にならんな。そこの女魔人は……確か魔法主体だったな」

「むっ……」

 

 ハウゼルがディオを睨み付ける。多くの同胞がコイツに惨たらしく殺された。だが、この闘将は魔法を無効化する。正直、自分では負けはしないがトドメを刺すのは難しい。そんな中、メガラスがスッと一歩前に出る。

 

「貴様の相手は……俺だ……」

「カカカ、そうか。覚えているぞ。貴様の部下の頭蓋骨は今でも私の部屋に飾ってあるよ、クカカカカ!!」

 

 ディオがそう笑った瞬間、メガラスの姿が消える。少なくともサイアスにはそう感じた。次の瞬間、激しい金属音が鳴り響く。それは、メガラスの剣とディオの手刀が交差した音。いつの間に間合いを詰めたのか。そして、ディオはそれに反応したというのか。

 

「殺す!」

「私が貴様をな、クカカカカ!!」

 

 




[人物]
レプリカ・ミスリー
LV 30/50
技能 けんかLV1
 闘将。フリークと共に聖魔教団を滅ぼし、その後は一人闘神都市を守っていた。その肉体にはミスリル銀が使用されており、あらゆる魔法を無効化するという特徴を持つ。本名はミスリー・ソウ・カレン。兄につけて貰った名前を誇りに思ってはいるが、レプリカという言葉には心を痛めている。

キャンテル
 闘神都市を守るドラゴン。魔人戦争では防空ドラゴンを率いて魔人たちと戦った歴戦の勇士。だが最終的には魔人の侵入を許してしまい、その事を今でも悔いている。


[技能]
けんか
 格闘の派生技能。格闘や拳法に比べ一枚落ちる技能だが、何でもありという戦いには一番適している。


[装備品]
バスターソード
 メリムが宝箱から発見した剣。攻撃力は高いが、重量があるため柔剣のルークには向いていない。

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