ランスIF 二人の英雄   作:散々

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第82話 理性ある獣

 

-下部動力エリア-

 

「ご主人様と一緒に冒険なのれす。楽しいれす」

「うむ、しっかり働けよ」

「それじゃあ、サイアスさんが……」

「ああ。だが、あいつは必ず生きている。メナドも大変だったみたいだな」

 

 フェリスに関して一悶着あったルークとランスであったが、その素振りは互いに他の者には見せていない。その辺りは弁えている二人である。メリムの案内の下、一同は闘将コアを目指していた。コアへの転移装置が置いてある部屋に続いている通路を通ったとき、一同は目を見開く。

 

「これは……」

「ボロボロじゃないか!」

 

 かなみとサーナキアが声を上げる。その通路は壁が激しく崩れ、無数の傷跡がついていた。

 

「おかしいです。以前通ったときはこんな事には……」

「まだ岩埃が舞っている事から考えるに、つい先程までここで戦闘が行われていたようですね」

「間違いないな」

 

 メリムが困惑する中、リックとナギが冷静に状況を確認する。この場所で戦闘が行われていたのだ。それも、つい先程まで。マリアが不安そうに声を漏らす。

 

「戦闘って、一体誰が……?」

「これ程の激しい跡となると……互いに相当の使い手……」

「アレキサンダーさんですかねー?」

「あるいは……」

 

 セスナが地面についた傷を見ながら呟く。ただの戦闘ではない。相当激しい殺し合いの跡だ。残る行方不明者の中からこれ程の傷を残しそうな者と考え、トマトはアレキサンダーの名前を上げる。だが、ルークは別の人物を考えていた。自分を破った最強の闘将、ディオ。では、その相手は。現状ではやはりアレキサンダーが有力だ。魔法使いではここまでの戦闘になりはしない。魔法の効かないディオにとってそれは、一方的な虐殺でしかないのだ。

 

「……何にしても死体がないのは良い事ね。もし私たちの仲間だったとしても、逃げ延びている可能性が高いわ」

「そうですわね」

「先へ急ぐぞ。こんな所でぐだぐだ考えていても、何も進展せんからな」

 

 レイラの言葉にチルディが同意する。一体何が起こったのかと考えて立ち止まっている面々をランスが一喝し、先へ急ぐ事にする。今は一刻も早く闘神都市の探索を進めねばならないのだ。一同が通路を再び歩き出した瞬間、ほんの僅かな残留魔力をウスピラが感じ取り、その歩みを止める。

 

「ウスピラ様、どうかなさいましたか?」

「サイアス……」

 

 キューティの問いかけにも気が付かず、ウスピラはその残留魔力の持ち主の名前を呟く。間違えるはずがない。これは確かに、同じ四将軍であるサイアスのもの。

 

「死んでいなかった……でも……」

 

 自分たちを庇うために食料コアに単身残ったサイアスの魔力がここにあるという事は、やはり殺されてはいなかった証拠である。しかし、同時に先程までここで何者かと戦っていた証拠にもなる。では、一体誰と。ヘルマン軍か、先の闘将か、あるいは魔人か。

 

「必ず……生きている……」

 

 その呟きは、自分への確認だったのだろうか。ウスピラはそう一言だけ呟き、再びその歩みを進めるのだった。

 

 

 

-下部中央エリア-

 

「逃がしたか……」

 

 メガラスがそう吐き捨てる。戦い初めて40分程の所で、突如ディオが逃亡したのだ。追いかけはしたが、流石に地の利はあちらにあるため、まんまと逃げられてしまった。

 

「…………」

 

 メガラスが先の戦いを思い出す。結局メガラスがダメージを負ったのは無敵結界を破られたあの一撃のみ。ハイスピードの速度に、ディオは触れる事さえ叶わなかった。結果だけ見れば自分の圧勝であり、ディオは為す術もなく逃げ出したという形だ。だが、ディオが逃亡する直前はかなり速度に慣れられていた。あの短時間では考えられない程の成長速度だ。

 

「何か……奴には秘密がある……」

 

 メガラスはそう独りごちる。無敵結界を破ったのも、驚異的な成長速度も、何か秘密があるに違いないと。となれば、今の内に仕留めておきたかった。もう少し時間があれば、今ならば倒せた。一時間の約束を聞いていたメガラスは、てっきりディオの撤退は50分程経ってからだと思っていた。しかし、何故ディオはあんなに早く撤退したのか。何かやる事でもあったというのだろうか。何にしろ、逃がしてしまったのは事実。己の失態を感じながら、メガラスは静かに右拳を握る。

 

「次は……必ず仕留める……」

 

 そう呟き、メガラスの姿がこの場所から瞬時に消える。ハウゼルと約束した合流地点を目指し、メガラスは超速で駆けていった。

 

 

 

-闘将コア付近 ヘルマン上陸艇-

 

「遅い……奴め、やはり逃げ出したか……」

 

 約束の一時間を目前に控え、ビッチは上陸艇の中でイライラとしていた。すると、上陸艇の扉が突如開かれる。そこに立っていたのは闘将ディオ。

 

「約束の一時間ギリギリだぞ。で、奴らは殺して来たんだろうな!?」

「いや、時間内では間に合わなかった」

「なにぃ!? この無能人形が!」

「(馬鹿が……魔人相手に生き延びたこいつの凄さが判らねぇのか……?)」

 

 ビッチがディオを怒鳴りつけているのを見ながら、ヒューバートは額に汗をかく。ビッチの話では、魔人と対峙していたはず。それをこうして生き延びてきたのは、正しく驚異なのだ。ビッチの言葉を適当に聞き流し、ディオが口を開く。

 

「ククク……それと、戻ってくる前に司令部で確認してきてやったぞ。奴らは鍵を一つ手に入れ、最後の鍵を目指して闘将コアに向かっている所だ」

「なにぃ!? それでは奴らから鍵を奪う必要があるではないか!」

 

 ディオが司令部のモニターで調べた事柄を告げる。どうやらメガラスから撤退する際に、司令部に寄ってきたようだ。だが、一体何故そんな事をしたのか。ビッチがぶつぶつと愚痴る中、ディオが不敵に笑って提案をする。

 

「そう心配するな。私がこれから闘将コアに向かい、奴らを皆殺しにして鍵を奪ってきてやる」

「また単独行動を取るつもりか! まさか……今度こそわたくしを裏切るつもりでは……」

 

 わざわざ自分から言い出したその提案をビッチは疑うが、ディオは気にせず言葉を続ける。

 

「そんなに心配なら、貴様らは先に闘神のいる司令部に向かっていろ。あそこならモニターで私の動向が判るはずだ。不穏な動きをすれば、すぐにでも爆弾を爆発させろ」

「むっ……」

「鍵を手に入れたら、それで闘神を起動し都市を地上へと動かす。それと、これが闘神の動かし方を書いた文献だ」

「ほう、気が利くではないか」

「……どういう心変わりだ?」

 

 ビッチに文献を手渡すディオ。それをパラパラと読むビッチを横目で見ながら、妙に素直なディオにヒューバートは疑いの眼差しを向ける。明らかに人の言う事を聞くような奴ではないと思っていたからだ。真剣な表情で問いかけてきたヒューバートに対し、ディオはニヤリと笑う。

 

「なに……そろそろ私も地上が恋しくなったのだよ」

「ほう。人形風情でもそのような感情があるのか?」

「ククク……司令部で確認したが、この闘神都市には町があるようだ」

「(カサドの町の事か……?)」

 

 ディオの口から発せられた町という言葉にヒューバートが反応する。闘神都市の機能を一部起動させるため、その町から神官を攫ってきたのはヒューバートたちだ。当然覚えている。

 

「だが、人口は僅かだ。あれでは足りんのだよ……」

「足りない……?」

「ああ、あれでは私が少し遊んだら一ヶ月も持たん。殺しこそ我が愉悦。となれば、地上に降りるしかないだろう? ククク……」

 

 不気味な笑みを浮かべるディオを見ながら、ヒューバートは内心後悔していた。

 

「(フリークのじいさん……俺は動くタイミングを誤ったのか……?)」

 

 ここへ来てヒューバートは気が付く。この闘将は、絶対に動かしてはいけないものだった事を。その前に自分は動かねばならなかったのかもしれない事を。だが、もう遅い。最強の悪意はこうして動いてしまっている。そんな中、ビッチが意外な命令を出す。

 

「いや、鍵を奪ってくるのはいいが、奴らを皆殺しにする必要は無い。適当に人質でも取って、鍵だけ奪ってこい」

「……どういう事だ?」

「貴様の腕が信用ならんという事だ。なんだかんだで全然殺せていないではないか。この無能人形が!」

 

 ビッチがディオを怒鳴りつける。確かにディオはここまで一人も殺していない。重傷を負わせたルーク、セスナ、サイアスは死んでいるかもしれないが、定かではない。ヒューバートたちとは違い、ビッチはディオの強さを疑い始めていた。

 

「奴らは闘神を蘇らせた後にゆっくりと料理してやる、ケヒャケヒャ。この文献によれば、闘神は無能な貴様と違うようだ。とてつもないパワーでありながら、再起動させた者の命令に忠実らしいからな」

 

 ビッチがディオから手渡された文献を手で叩き、それを示す。

 

「いいな、司令部からわたくしが見ているのを忘れるな。貴様が戦うような素振りを見せれば、すぐにドカーンだからな!」

「……いいだろう、了解した」

「ちょっと待ってよ! ここであいつらを殺すのが得策でしょう!」

 

 ディオが静かに了承するが、慌ててイオが止めに入る。イオにとっては、ルークはすぐにでも殺したい相手なのだ。そんな命令、了承できるはずがない。

 

「何だ、イオ。わたくしに逆らうのか?」

「でも……なら、私も闘将と共に鍵を奪いに……」

「なるほどな……ククク……」

 

 ディオは気が付く。イオの目の歪みに。恐らく殺したい相手がいるのであろう事に。

 

「邪魔だ、女。貴様はこいつらと共に司令部にいろ」

「くっ……」

「ケヒャケヒャ! もうすぐだ……もうすぐ最強の闘神がわたくしの手に……」

 

 ビッチが上機嫌に笑いながら、上陸艇を下りて下部司令エリアへと向かおうとする。ヒューバートとデンズもそれに続き、立ち尽くしていたイオが渋々それに続こうとする中、予想外の事が起こる。ディオが話し掛けてきたのだ。

 

「ククク……そう心配するな。闘神になぞ奴らは殺させんよ。私が殺すのだからな。誰を殺したいのか知らんが、貴様の望みはすぐに叶う」

「なっ!?」

 

 イオが目を見開く。自分の心が、この闘将に読まれているとでもいうのか。その反応を見たディオは不敵に笑う。

 

「だがな、分を弁えるのだな。もし私を利用しようなどと考えているのであれば……殺すぞ」

「何よ……ビッチに利用されている分際で……」

「ククク……それももうすぐ終わる。そうなれば私は自由に奴らを殺せる訳だ。そのときが、貴様の望みが叶うときでもあるな」

「終わる……?」

 

 その不穏な発言に、イオの表情が歪む。

 

「裏切るつもり……? 爆弾があるのを忘れない事ね……」

「ククク……クカカカカ!」

「何をモタモタしている! さっさと司令部に行くぞ! 貴様は闘将コアに向かって鍵を奪ってこい!」

 

 イオがディオを睨み付けながら言葉を放つが、ディオはそれを笑い飛ばす。外からビッチの怒鳴り声が聞こえ、ディオはそのままイオに背中を向けて上陸艇を下りていく。

 

「もうすぐだ……ククク……」

 

 ディオがビッチに手渡した文献を思い出しながら、不敵に笑う。その文献は、ディオにより改ざんされていた。闘神は再起動させた者の命令を忠実に聞く存在などではない。勘違いしているビッチは、闘神に爆弾を取り付けないだろう。となれば、その末路は一つ。これこそが、ディオがメガラスとの戦いを早めに切り上げて行っていた事だ。理性ある獣、ディオ。鎖から解き放たれる瞬間は、もう目前まで迫っていた。

 

 

 

-下部司令エリア-

 

「行ったか……」

「何だったのよ……あいつ……」

 

 つい先程まで闘将ディオがモニターで鍵の動向を確認し、文献を改ざんしていた司令部。その部屋から、二人の女性の声がする。声のした物陰から、もぞもぞとシャイラとネイが出てきた。

 

「流石にあいつがやばそうな相手だってのは、あたしらでも判るぞ……」

「絶対に戦いたくない相手ね……ばれなくてよかったわ……」

 

 戦闘力の低い二人でもディオの禍々しさには流石に即座に気が付き、慌てて身を隠したのだった。あまりにも弱い二人の気配はディオでも気が付かず、そのまま見落として部屋を出て行ってしまった。間一髪助かった二人。あまりにも凄まじい恐怖から、二人とも額に汗を掻いている。

 

「とりあえず、あいつが戻ってきたらまずそうだしここから早く離れましょう」

「いや……そいつは違うな……」

「えっ?」

 

 ネイがこの場を離れようとするが、シャイラがそれを引き留める。何事かと振り返るネイに向かい、シャイラは自信満々に言葉を続けた。

 

「同じ場所にそうそう来るもんじゃない! むしろこの場所に留まっていた方が、今は安全なんだ!」

「なっ、なるほど! 流石はシャイラ、冴えているわ!」

「はっはっは! もう無能とは呼ばせないぜ!」

 

 ヘルマン軍が迫り、鍵を手に入れた後ディオも戻ってくる場所とは知らずに、シャイラとネイは無邪気に笑い合うのだった。

 

 

 

-闘将コア 地下二階-

 

「それじゃあ、今世紀最強の冒険者ランスさん。魔女アトランタを退治してくれるんですね?」

「がはははは。俺様に任せておけ!」

「あてなもやるれす!」

「騎士として、このような状況は放っておけないな!」

 

 ランスが上機嫌に笑い、あてな2号とサーナキアが燃える。闘将コアへとやってきたルークたちの前に、突如チャオという女性が現れたのだ。曰く、魔女アトランタに父の妹の旦那の上司が鏡に閉じ込められたため、アトランタを倒して欲しいとのこと。盛り上がっている四人に冷ややかな視線を向ける一部の者たち。

 

「怪しいなんてもんじゃないわね……」

「そうなのか?」

「というか、父の妹の旦那の上司って他人ですわよね……」

「あれで騙せると思っているのなら……相当に頭が悪い……」

「それだと、騙されているあの三人も頭が悪いことになるのでは……?」

「素直……と言っておきましょう、キューティさん」

 

 ランスたちとは少し離れた位置でボソボソと話し合う他の面々。志津香は丸っきり信用していないようだが、ナギは不思議そうにしている。ウスピラの言葉にキューティが反応するが、真知子がオブラートに包むようフォローを入れる。

 

「しかも、魔女アトランタがNキーを奪って逃げているという辺りも出来すぎですね」

「そうだな……俺たちは、Nキーを探しているなんて一言も言っていないのに、あちらからわざわざ言って来るのが怪しすぎる」

「恐らく、こちらの動向を探っていたんだろうな」

 

 かなみの言葉にルークが答え、フェリスもその意見に同意する。となれば、チャオは十中八九アトランタと繋がりのある者だろう。

 

「それで、どうしますか?」

「今は泳がす。警戒は怠るな」

「了解です」

 

 マリアの問いかけにルークが答え、あえてチャオの頼みを聞く方針で行くことを決定する。リックもそれに頷き、ランスたちの方に歩みを進める。

 

「何をやっていたんだ?」

「いや、気にするな。で、魔女アトランタはどこにいるんだ?」

「こちらです。ついてきて下さい。急がないと!」

 

 チャオが先頭を歩き、アトランタのいるという場所に案内をする。それに付いていく一行だったが、通路の角を曲がったところで突如怪しい影が現れる。

 

「むっ……」

「あ、あら。段取りが……まさか、ジュノーの奴……」

「ん、どうした? チャオちゃん」

「い、いえ、何でもありませんわ。おほほほほ……」

 

 何故かチャオが困惑している中、影が形をなしていく。現れたのは黒い肌をした裸の女性。その手には鏡を持っている。

 

「我の名はアトランタ。貴殿に不幸を与える為に現れた」

「がはは。不幸どころか、素っ裸を見せて貰って幸福だぞ」

「ルーク、あれ……」

「判っている」

 

 ロゼがルークに聞こえるよう小声で呟くのを聞き、ルークも頷く。鏡にはまだ何も描かれていない。すると、アトランタが口を開く。

 

「さあ、そこの貴女。この鏡を見て……」

「えっ?」

「なに……?」

 

 アトランタが鏡をかなみとレイラの前に差し出そうとする。鏡に二人の姿が映し込まれそうになった瞬間、アトランタの両腕が宙を舞った。

 

「その鏡を見るな! 取り込まれるぞ!」

「なっ!?」

 

 ルークがブラックソードを振るい、即座にアトランタの両腕を斬り飛ばしたのだ。チャオが驚愕する。何故この男が知っているのだと。両腕を飛ばされて呻くアトランタの首に、ルークはそのまま剣を突きつける。

 

「今まで捕らえた女性たちを解放しろ。断れば首を飛ばす」

「無駄だ、ルーク」

 

 強烈な殺気を出しながらそう言うルークだったが、ナギがその行動が無駄だと口にする。彼女は目の前のアトランタから発せられている魔力を感じ取り、それが偽物であると気が付いていたのだ。

 

「それは影だ。アトランタではない」

「……そうか」

 

 そう呟いた直後、ルークはアトランタの首を飛ばした。それは、チャオへ釘を刺す意味合いも含まれている行動であった。ごろりと自分の前に転がった首を見て、チャオが少しだけ青ざめる。次の瞬間、アトランタの影は消滅していった。

 

「みんな、鏡には気をつけろ。奴は人を鏡の中に閉じ込める能力を持つ」

「はい、ルークさん」

「絶対に見ないようにするですよー!」

 

 メナドとトマトがそれに答える。鏡が武器だと判っているのだ。そう簡単に取り込まれるほど馬鹿ではない。これだけ警戒していれば、あちらも容易には手を出せないだろう。

 

「さあ、チャオさん」

「は、はい!」

「アトランタのいる場所まで案内して貰えるか?」

 

 静かに笑いながらそうチャオに頼むルーク。頼む相手を間違えた。そう後悔するチャオであったが、最早後の祭りである。目的地である闘将コアの地下五階を目指し、一行は迷宮を進むのだった。

 

 

 

-闘将コア 地下三階-

 

「これが教団の遺産か……」

「すごい数ね……」

 

 ジュザンに案内をされて通路を歩いているサイアスたち。地下三階へと下りてきたサイアスたちの目に飛び込んできたのは、聖魔教団が作った戦闘兵器、マウスの大群。魔力供給がされていないため、動いてはいない。

 

「この闘将コアは詰め所の役割を果たしていましたから」

「なるほどな。そうなると、先程から所々にある小部屋は幹部の部屋か何かかな?」

「はい。個別に与えられた部屋は闘将のものです」

 

 ミスリーから説明を受け、サイアスが側にあった部屋の扉を開けようとする。すると、突如ミスリーが声を出す。

 

「あっ……そこは開けないで下さい!」

「んっ?」

「そこは……私が使用している部屋なので……」

「おっと、これは失礼した。レディーの部屋に勝手に上がり込むなど、男のやる事ではないな」

 

 サイアスがすぐに扉から手を離す。サイアスは本当にミスリーを一人の女性として扱っていた。ミスリーもサイアスが言葉だけの男ではないと薄々感じ始めており、いつの間にか信頼し始めていた。

 

「さぁ、モタモタせずに参りましょう。早くしないと……」

「ああ、ごめんなさいね」

「ひっ……」

 

 ハウゼルがジュザンに近寄って謝罪をするが、即座にハウゼルから離れるジュザン。何事かとハウゼルが不思議そうに尋ねる。

 

「ん? どうかしましたか?」

「い、いえ……あまり私に近寄らないで下さい。わ、私は大きな胸が苦手なんです! そんなにこれ見よがしに揺らさないで下さい! 汚らわしい!」

「汚らわしいって……」

 

 ハウゼルが自分の胸を腕で隠すようにしながら、ジュザンを睨み付ける。それを聞いていたサイアスは眉をひそめ、真っ直ぐとジュザンを見据える。

 

「穏やかな話ではないな。女性の胸は包容力の証だ。8割は優しさで出来ている」

「何を言ってるんですか! あんなもの、ただの脂肪の塊ですよ。美しくない! 真の美しさは、筋肉のついた男性の胸にある!」

「胸の談義は良いから、早く先に進みましょう……」

 

 ハウゼルが胸を隠しながら、呆れたようにため息をつく。その後ろでは、ミスリーが自身の金属製の胸をペタペタと触っていた。

 

「この体では……成長は望めそうにない……」

 

 少しだけ落ち込んでいる様子のミスリー。目指すは闘将コアの地下五階。ルークたちとの合流は、もう目前であった。

 

 

 

-闘将コア 地下一階-

 

「ククク……五階だな……」

 

 そして、最強の闘将も闘将コアへとやってくる。二度目の邂逅は近い。

 

 




[人物]
チャオ
 ルークたちの前に現れた謎の女。ランスに興味がある様子だ。

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