-カサドの町-
「闘神が復活する!?」
町の広場にサイアスの声が響く。一旦カサドの町へと戻ってきたルークたちは、鏡の中から解放した少女たちを家に送り届けた後、ミスリーから四つのキーの真実を聞かされていた。
「はい。闘神都市を動かせるようになるというのは、同時に闘神ユプシロンの復活を意味します」
「闘神……昔話には良く出てくるけど……」
「歌なんかにもなっているわね。世界をー闇で覆う悪鬼ノス。立ち向かうはー美しき黄金の女神ー。その名はー闘神ーシータ。少年パズーはその美しさに、時を忘れて七十日ー」
ミスリーの言葉にマリアが幼い頃に聞いた童話を思い出す。魔人と対等に渡り合った闘神の伝説は、今なお人間界に残されているのだ。ロゼも吟遊詩人の歌を棒読みで歌ってみせる。しかしそれは、ある程度博学でないと出来ない所行。
「こう言っては失礼ですけど、ロゼさんって意外に学がありますわよね……」
「こういうの知っていると、年寄り連中の受けが良いのよ。結果、神官としてお金をガッポリ稼げるって訳」
「そんなことだろうとは思ったけどね……」
「ある意味流石ですかねー」
チルディの疑問に笑いながら答えるロゼ。胸の前でお金のマークを作るロゼに志津香が呆れ、トマトが感心する。ロゼの歌を聴いて昔を思い出していたハウゼルが口を開く。
「因みに、その歌は真実よ。魔人ノスと七十日間にも渡って殴り合いの死闘を演じた闘神シータがそのモデルとなっているわ。私もその現場を見たから、良く覚えているの」
「魔人ノス……」
「奴と七十日も……」
「ふん、大した事ではないな」
ハウゼルの言葉を受けたルークが真剣な表情になり、リックも同様に顔を強ばらせる。いや、それは二人だけではない。リーザス解放戦に参加し、間近でノスの強さを見ている者たちは、一様にそれがどれ程凄い事かを感じ取っていた。ただ一人、ランスだけは気に止めた様子を見せなかったが。
「リーザス解放戦時に戦ったと言っていたな……やはり、それ程の相手か?」
「ああ。正直、二度と戦いたくない相手ではあるな……」
「ノスは魔人の中でも間違いなく最上クラスの実力者よ」
「少なくとも、そのノスに近い実力は持っているという事になるわね……」
闘神都市に来てからリーザス解放戦の話を少しだけ聞いていたサイアスはルークに問いかける。人間界でもその名を広く知れ渡らせている魔人ノスとは、やはり噂通りの剛の者であったのか気になったのだ。その問いに頷きながら、ノスの事を思い出すルーク。自分は途中からの参戦であったが、その実力は記憶にまざまざと残っている。ハウゼルもノスの強さを認め、レイラが厳しい表情をしながら闘神の強さを予想していた。自然と場の空気が重くなる。
「大丈夫ですよ。ルークさんとランスは、魔人ノスを倒したんだもの!」
「ま、魔人ノスを!?」
「そうか……そうよね。前向きに考えないとね」
その空気を払拭したのはかなみ。あのノスに自分たちは勝ったのだからと言い、皆を勇気付けた。ミスリーはリーザス解放戦の話を聞いていなかったので驚いているが、他の者たちは一度合流した際に軽く解放戦の話を聞いていたため、それを思い出して希望を抱く。魔人は決して倒せない相手ではない。そして、それと同等の実力を持つ闘神もまた、倒せない相手ではないのだ。
「(カオスはないんだけれどね……士気に関わるから、黙っておいて方がよさそうね……)」
ロゼには思うところがあったが、それを口にするような野暮な真似はしなかった。そんな中、話を聞いていたハウゼルが一番側にいたトマトに尋ねる。
「ねぇ……ノスはどうやって倒したの?」
「それはもう凄かったんですかねー! ルークさんがズババババっと斬って、ランスさんもどりゃぁぁぁって斬って、ノスがあーれーと……」
「ビックリするくらいに判りませんわ!」
「というか、その時トマトさんは気絶していたでしょ」
トマトの説明にチルディが突っ込みを入れ、ノス戦の最後をトマトが見ていない事をマリアが突っ込むと一同に笑いが起こる。そんな中、話を聞いていたハウゼルが頬をポリポリと掻きながら苦笑する。
「あはは……随分聞いていた話とは違うわ……」
「聞いていた話?」
ルークがハウゼルにそう問いかけると、ハウゼルは苦笑したままそれに答える。
「アイゼルは教えてくれなかったんだけれど……サテラ曰く、ノスの裏切りに怒り、真の力を解放したサテラがシーザーと共にノスをけちょんけちょんにして一言。てめーは私を怒らせた……と」
「清々しいほどの嘘だな……」
「というか、サテラはノス戦のときいなかっただろうが……」
ルークも苦笑し、フェリスは呆れたように口を開く。ぶぇっくし、とサテラのくしゃみが聞こえたような気がした。
「しかし、闘神が復活するとなると猶予は無いな。もう一度塔の中へ……」
「た、た、た、大変ですぅぅぅ!!」
ルークがそう皆に告げようとすると、突如青年団のキセダが慌てた様子で広場に駆けてくる。何かあったのだろうか。
「どうした?」
「と、塔の中から大量のモンスターが現れて……ま、町に向かってきているんです!」
「なっ!?」
「いくぞ!」
キセダの言葉を受け、目を見開く一同。何故モンスターが突如町に向かってきたのか。疑問を胸に抱きつつ、カサドの町を守るためルークたちは駆け出した。
-研究コア 地下一階-
「はぁ……はぁ……」
何とかディオから逃げて来たヒューバートとフリークだったが、再び窮地に陥っていた。二人を囲んでいるのは、大量のモンスター。中でもカイトクローンは強敵だ。迫ってくるモンスターを次々と倒していく二人だったが、流石に息も切れてきた。
「くそっ、敵の数が多すぎるぜ。何だって急にこんな……」
「恐らく、闘神が稼働したからじゃろうな。動物と同じでモンスターの本能が危機を感じ取り、敵を駆逐するという闘争本能を駆り立てられておるのじゃ」
フリークの言う通り、目の前のモンスターたちはどこか目が血走っている。先頭にいたカイトクローンの攻撃を受け流して剣で斬りつけるヒューバート。
「この数はやべぇぞ……」
「そんなもん、見りゃ判るわい。お主の父親は一人で一個師団を相手にする根性を持っとったというのに……この程度でびびるな!」
ヒューバートの弱音にフリークが一喝する。ヒューバートの父、トーマとは親友の間柄だ。比べるのは悪いと判ってはいても、息子のヒューバートにはどうしてもその面影を重ねてしまう。
「びびってる訳じゃねぇ……俺はこんな所で死ねないだけだ。親父みたいに……騎士の誇りとか……そんなもんで死にたくねえんだよ。親父はそれで本望だろうが……そんなものは……無駄死にだ……」
ヒューバートがそうフリークに返す。父トーマの死は認めている。親父らしい死に様だと。だが、それを自らも真似したいと思っている訳では無い。足掻いて、足掻いて、泥水を啜ってでも生き延びる。それが、ヒューバートの信条。
「ならば、お主はデンズの死も無駄だと思っておるのか?」
「…………」
フリークがほほえみ男を魔法で吹き飛ばしながらそう問いかける。それを聞き、一瞬押し黙るヒューバート。しかし、吐き捨てるように言葉を返す。
「無駄だ……無駄だよ……俺なんかを助ける為に……死ぬなんてな……」
「…………」
それは、デンズへの侮辱ではない。ヒューバートが責めているのは、自分の不甲斐なさ。フリークもその言葉に一瞬押し黙るが、すぐに口を開く。
「お主にだって、命を賭けてでも守り抜きたい者が一人はおるじゃろ?」
「…………」
その沈黙が何よりの答え。思い浮かべるのは、親友の皇子。先の解放戦で生死不明の状態だ。だが、必ず生きていると信じている。あいつともう一度会う為に、こんな所で死ぬ訳にはいかない。そのヒューバートの表情を見たフリークは静かに口を開く。
「そういうもんじゃよ……」
「ちっ……おらっ、雑魚はさっさとどきな!」
フリークの言葉に舌打ちをし、ヒューバートは目の前のモンスターたちを次々と斬り倒していく。フリークもそれに続くように魔法を放つ中、考えを巡らせる。
「お主の言うように、このモンスターたちの暴走は厄介じゃな。他にも影響が出ていなければいいが……」
-カサドの町-
「真空斬!」
「おらっ!」
「火丼の術!」
ルーク、フェリス、かなみがモンスターを葬る。突如町を襲った大量のモンスター。町の人たちを放って下部司令エリアへと向かう訳にもいかず、ルークたちは町の防衛に躍起になっていた。
「がはは、俺様の敵ではない!」
「あてなの時代の予感なのれす」
すぐ側ではランスとあてな2号が敵を倒している。他の者たちも、町のいたるところに散らばってモンスターを退治していた。倒せども、倒せども、塔の中から湧いてくるモンスターにチルディが眉をひそめる。
「キリがないですわ……」
「頑張って! モンスターの数も無限ではないわ!」
レイラが言うように、塔の中にいるモンスターは有限だ。今が一番のピークのはず。ここを乗り切れば、多少は落ち着くはずだ。
「くっ……ボクも……」
「はいはい、あんたは動かないの」
「いたいの、いたいの、とんでけー」
サーナキアも戦いに参加しようとするが、先程のディオとの戦いでのダメージが重く、今は町の広場でロゼとシィルの治療を受けている。この町の人たちは自分たち派遣隊の子孫だというのに、自分はその町の人たちを守る事も出来ないのか。悔しさに唇を噛みしめるサーナキア。
「火爆破!」
「電磁結界!」
「氷雪吹雪……」
「業火炎破!!」
「エンジェルカッター」
志津香、ナギ、ウスピラ、サイアス、エムサの五人が全体魔法を放つ。大量のモンスターを一気に駆逐するとなると、やはり魔法使いの力は心強い。先程のディオの戦いであまり役に立てなかった鬱憤を晴らすかのように敵を殲滅していく。
「下がってください。これより前には絶対に出ないように!」
キューティが町の人たちに指示を出しながら、ライトくんとレフトくんを巧みに操りガードを行う。警備隊隊長の本領発揮と言ったところか。町の人たちを守るという点において一番大事な役割を担っているのは、実は彼女かもしれない。遠くでは真知子もそれに協力している。
「何で急にこんな事に……」
「奴らがキーを奪っていった事と何か関係があるのかもしれませんね」
チューリップを構えながらマリアが疑問を口にすると、近くで敵を斬り伏せていたリックがそれに答える。ディオがキーを奪った直後にモンスターが町を襲ってきたのだ。そう考えるのが自然だろう。
「キーとモンスターの関わりですかー?」
「間接的な理由……多分、闘神が復活したからモンスターが怯えている……」
「なるほど! やっぱりセスナさんってスゴイや!」
トマトがリックの言葉を理解出来ないでいるが、セスナがぼそりとそれに答える。それは実に的を射た答えであり、メナドが感心する。
「モンスター。普段は見逃していますが、この闘神都市を破壊する気ならば容赦はしない!」
闘神都市で長い間暮らしているミスリーはモンスターたちとも共存しており、普段は互いに争うような事はしていない。だが、闘神都市を破壊するつもりならば話は別だ。自分はこの都市の守護者。それを見過ごす訳にはいかない。腰を落とし、向かってくるモンスターに向かって回し蹴りを放つ。マリアの修復を簡易的にとはいえ受けた彼女は、他の者たちと比べても遜色が無いほどにまで戦闘能力が戻っていた。モンスターの数は確実に減ってきている。もう少しで山は越えるはずだ。
「それより、南の方の警備は本当にいいのですか?」
「そうでごんす。がら空きでごんす!」
キセダとカネオがそうルークに問いかける。彼ら青年団もまた、勇気を振り絞って防衛に参加していた。彼らの言うように、南の塔の方向はたった一人の警備しか向かわせていなかった。だが、ルークはその問いに平然と頷く。
「大丈夫だ。あちらにいるのは、最強の仲間だからな」
「…………」
「サイアス、どうかした……?」
ルークの言葉を聞いたサイアスが黙り込み、南の塔の方面にいる人物を思う。ウスピラが異変を察知した瞬間、南の塔の方角から巨大な火柱が上がる。彼女だ。あのような強く美しい炎、今の俺には出せない。サイアスは自然と拳を握りしめていた。
「凄い……サイアスの炎よりも上……」
「ああ……俺より上だ……」
ウスピラが火柱を遠くに見ながらそう呟く。その言葉が胸に突き刺さる。そう、炎には絶対の自信があった自分よりも、彼女の炎の方が上なのだ。そのサイアスに向けて、ウスピラは言葉を続ける。
「あれを追い越すのは……大変そう……」
「っ……!?」
いつもと変わらぬ口調でウスピラが言ってのける。彼女もあの火柱を上げている主は判っているはず。それでもなお、その言葉を言ってくれるというのか。呆然としているサイアスに、ウスピラが振り返る。
「追い越す気なのでしょう……?」
「……ああ、勿論だ!」
それは、仲間としての信頼。炎にかける思いを知っているからこその言葉。どんな励ましよりも、誰のアドバイスよりも、その言葉が、信頼が、サイアスを高みへと上げる。
-カサドの町 南の塔方面-
「ふぅ……こんなものかしらね」
手に持っていたタワーオブファイアの銃身を地面に下ろしながら、ハウゼルが辺りを見回す。そこには、今なお轟々と燃えさかる炎と、灰と化したモンスターたち。その数は100を越えているだろう。これ程の戦果を上げておきながら、ハウゼルには傷一つ無い。これが、魔人。
「んっ……?」
ハウゼルがふと気配に気が付く。まだモンスターが残っていたようだ。ハウゼルがそちらを見やると、そこにはイカマンが立っていた。かなり怯えた様子だ。
「そんなに怯えないで。向かって来ないなら、倒したりはしないわ」
穏やかな表情をイカマンに向けるハウゼル。すると、イカマンは安心した様子でその場から去っていった。
「さて……そろそろ町へ戻ろうかしらね」
そう呟きながらカサドの町へと戻っていく。ラ・ハウゼル、心優しき魔人であった。
-上部中央エリア 通路-
「きゃはははは、強ーい!」
通路を歩いているのは、ここまで完全に居所が知れていなかったジュリア。モンスターが多く通路を徘徊しているというのに、笑いながらその通路を歩いていた。その横には、サングラスにスーツを身につけたハニーが二体。
「俺の使命は、ジュリアちゃんの身辺警護だ。不用意な行動は身の破滅を呼ぶぜ」
「警備は万全だ。命に代えても俺がジュリアちゃんをお守りする」
「きゃはは、ケビンちゃんもコスナーちゃんも格好いい!」
このハニーはシークレットハニーのケビンとコスナー。その実力は高く、襲い掛かってくるモンスターを次々と倒していた。行方不明の間ハニーキングの下にいたジュリアは、仲間たちがカサドの町にいるという情報を教えて貰い、こうしてシークレットハニーの警護を受けながらカサドの町へと向かっていたのだった。
「ハニーちゃんの修行のおかげでジュリアちゃんもますます無敵になりましたー。きゃはは!」
笑いながら通路を歩いて行くジュリア。この血で血を洗う闘神都市の戦いにおいて、彼女一人だけ纏う空気が違っていた。
「ん?」
その時、ジュリアはあるものを発見する。それは、宙に浮かんだ窓。
「きゃはははは、面白ーい。みんなにも見せてあげましょう!」
「ジュリアちゃん、俺が持つぜ」
ジュリアはその窓を掴むと、開く事無く町まで引っ張っていく事にする。窓の向こうから、えー開いてよー、という言葉が聞こえた気がするが、ジュリアは気にしない。ケビンが持つのを代わり、目指すはカサドの町。それはもう目前まで迫っていた。
-上部動力エリア 通路-
静かな通路に一つの足音が響く。ディオだ。とある場所を目指し、ディオはこうして通路を歩いていた。
「……んっ?」
そのディオの目の前に現れたのは、目の血走ったモンスターたち。それも、尋常ではない数だ。ふと気が付けば、いつの間にか後ろにもいる。通路を埋め尽くすかのような大量のモンスター。前後両方に数十体、併せれば100は超えるだろう。
「何だ、貴様ら?」
「がぁぁぁぁぁ!!」
ディオの下に集まったのは本能だったのかも知れない。最も禍々しい殺気を放つこいつを倒さねばならないという、野生の勘。ディオの問いに反応するかのようにうしバンバラが攻撃を仕掛けてくる。
「遅いな……雑魚が!」
だが、気が付けばうしバンバラはその顔を右腕で掴まれていた。いつ掴んだのかすら判らぬ程のスピード。そしてそのまま、顔面から地面へと叩きつけられる。石造りの床が少し崩れた音と共に、ディオがゆっくりと視線を周りのモンスターに移す。
「うっ……」
それは、周りにいたモンスターの中でも割と冷静な状態であったざしきわらしの声。ディオの右腕には、うしバンバラの首。床に叩きつけると同時に、ディオが腕力だけでねじ切ったのだ。血が滴り落ち、恐怖に彩られたその断末の表情を周りのモンスターたちにあえて見せつけながらディオが笑う。
「ククク……人間が一番なのだが、別に私は苦悶の表情と声を味わえるのならば、モンスターでも構わないのだぞ……?」
「こ、こんなの相手にしちゃ駄目なのー!」
そのディオの殺気に恐れをなし、ざしきわらしを始めとした冷静なモンスターたちは一目散に逃げ出す。だが、既に恐怖で殺気立っている多くのモンスターたちは無謀にもディオに向かっていってしまう。それは、自ら処刑台へと向かう死の行進。
「ククク……クカカカカ!!」
通路にディオの笑い声が響く。これより繰り広げられるのは、一方的な虐殺。
-研究コア 地下一階-
フリークの懸念通り、モンスターの被害はあちこちで出ていた。そんな中、フリークとヒューバートは床に座り込んでいる。辺りには、モンスターの死体の山。何とか全滅させたのだ。
「やるもんじゃな。文句を言いながらも、剣はよく振れておったわい」
「そういうじいさんも、年寄りとは思えん動きだ」
フリークとヒューバートが互いを労いながら一息つく。以前からの知り合いではあるが、こうして肩を並べて戦うのは初めてであった。
「本当に年寄りなのか? ただのじいさんにしておくには勿体ないぞ」
「がはは、まだこれからじゃて。ミスリーの行方も知りたいしの……」
「ミスリー?」
聞き慣れぬ単語にヒューバートが問いかける。人名のようだが、一体何者なのか。
「ワシの仲間じゃ。この闘神都市の番をしていたはずなのじゃが、姿が見えん」
「…………」
それは、普通の人間からでは出るはずのない言葉。空中に浮かぶ都市の番をしている者と仲間だというのだ。相手も、そしてフリークも普通ではない。
「なぁ、じいさん。そろそろ教えてくれてもいいんじゃないのかい……この都市の事、そして、あんたの正体を……」
それは、当然の疑問。何故フリークが闘神都市に拘るのか。先のディオは何故フリークを知っていたのか。そして、仲間だというミスリーとは一体。謎だらけだ。
「……メリムという娘からはどの程度の事を教えて貰ったんじゃ?」
「この都市が兵器だって事くらいさ。だが、そうじゃない。俺が知りたいのは、じいさんと都市の関係だ」
その言葉にフリークは一度視線を落とす。フリークは悩んでいた。ヒューバートが真実を語るに足る人物であるかを。だが、決意したかのようにすぐに顔を上げ、ヒューバートに向き直る。
「良いじゃろ……ワシの誓いと、これから取る行動を教えよう……それを良く聞き、自分の意思で今後どうするかを決めるのじゃ……」
「誓い……?」
ふぅ、と一度だけため息をつき、フリークは己の鉄の頬を右腕でこつん、と叩いた。金属音が通路に響き渡る中、フリークが口を開く。
「もう気が付いとるじゃろうが、ワシはあのディオと同じ、闘将と呼ばれる過去の遺物じゃ。そして、さっきのばかでかいのが闘神セ……ユプシロンじゃ」
「神……あいつは別格って事か?」
「そうじゃ。その力は魔人とも対等に渡りあえる。本来24体作られる予定であった20体目、最後の闘神が奴じゃ。そしてワシは、計画が途中で頓挫したが、本来は24体目の闘神であるオメガになる予定じゃった……」
フリークが己の右腕を見やる。かつての友セルジオ、いや、今は闘神ユプシロン。その彼に比べればなんと細い腕か。本当ならば、自分も闘神になるはずであった。どこかもの悲しさを含んでいるフリークの姿を見ながら、ヒューバートが口を開く。
「……なりそこなったのか?」
「うむ……戦争が始まったのが理由の一つ。そして、その戦争の最中に最高責任者であるワシの親友が死んだのがもう一つの理由じゃ」
「親友?」
「M・M・ルーン。それが親友の名前じゃ」
「なんだと!?」
その名前は流石にヒューバートでも知っている。多くの書物に名前が残されている、聖魔教団を創った伝説の魔法使いだ。聖魔教団とそれを滅ぼした裏切りの魔法使いの話は、簡略化されて童話や演劇、歌にもなっている程だ。そんな伝説上の人物と親友とは、目の前の老人は想像以上に大物であったらしい。
「凄ぇな……じいさん、そんな奴とダチだったのか」
「ああ……親友じゃった……そう……親友だからこそ……奴を……ワシが殺した」
その言葉にヒューバートは目を見開く。M・M・ルーンを殺したという事は、目の前のフリークは伝説にその名を残している人物という事になる。
「じいさん……まさか、伝説に出てくる裏切りの魔法使いっていうのは……」
「……ワシじゃ。怒りに我を忘れ、人類も魔人も見境無しに殺そうとする闘神を止めるには……それ以外に方法は無かった……」
そう呟きながら、フリークはかつて結んだ友との約束を思い出す。
『もし、私が間違った方向に進んでしまったら……恩師フリーク、貴方が私を止めてください。貴方に否定されたのなら、私は自分の死に疑問を抱かなくて済みます』
今まで何度思い出した言葉だろうか。本当に最後の瞬間、ルーンは疑問を抱かずに逝けたのか。答えは定かではないが、フリークに迷いはない。迷えば、友の約束を汚す事になる。
「間違った方向に進んだルーンを殺し、主を失った影響で戸惑い動けなくなった闘神をワシが封印したんじゃ」
それが、歴史には語られていない魔人戦争の結末。話を聞き終えたヒューバートは何故か押し黙っていた。直後、フリークを睨み付けながらその胸ぐらを掴む。
「なぜ……なぜ破壊しなかった……封印から解かれ、落ち着きを取り戻した闘神が最後の指令を遂行しようと考えるだろう事はじいさんも判っていたんだろう? だからこそ、ビッチの邪魔をしようとしたんだろうが!」
もしフリークが闘神を破壊していれば、ディオを破壊していれば、こんな事にはならなかった。デンズも死なずにすんだ。八つ当たりなのは判っている。だが、ヒューバートは声を荒げずにはいられなかった。
「その通りじゃ……じゃが、いつの日か……再び人類が魔人に戦いを挑もうとするとき……この闘神都市はきっと……きっと役に立つと思ったんじゃ……」
「魔人との……戦い……」
それは、あまりにもスケールの大きな話だ。人類圏、いや、ヘルマンという国の中でさえ治められていない今の人類には、あまりにも。
「闘神を完全に制御する方法さえ判れば、必ず人類の役に立つ。魔人戦争が終結してから数百年、ワシはその研究をずっと続けておる……」
「…………」
ヒューバートがフリークの服を離す。数百年、進歩のない人類を見守りながらいつか来る未来を信じ、研究を続けていたフリーク。それは、到底想像が及びもつかない領域。自分が文句を言える立場ではない。フリークも胸を掴まれた事など気にしていない様子で言葉を続ける。
「それと……ユプシロンの素体になった人間はセルジオと言う。こちらも、ワシの親友じゃ……」
「ユプシロンが……」
「他にも倒された闘神に親友は多くおった。デルタ……ゼータ……中でもシータとラムダは別格じゃったな……」
ノスと壮絶な殴り合いを繰り広げた伝説の闘神シータ。ガルティアと闘神ラムダの壮絶な死闘は歴史には刻まれていないが、聖魔教団と魔人の間に深く刻み込まれている。5人衆の仲間たちを、そして、他の闘神たちを思い出す。みな、自分より先に死んでいった。
「ワシは闘神都市の暴走を止める。闘神も……闘将も……聖魔教団が残した遺産の暴走は、全てワシが止める!」
「じいさん……」
フリークは胸の前で右拳を握りしめる。それが、聖魔教団の生き残りである自分の成すべき事。
「ワシはルーンの……皆の思いを背負っておる。ワシが皆の意思を引き継ぐのじゃ!」
「それが、じいさんの誓いだな?」
「うむ……ここに誓った」
握りしめた右拳で、鉄の胸を叩くフリーク。
「それは……?」
「魂じゃ!」
それは、親友セルジオの言葉。彼の思いもまた、フリークの魂に刻み込まれている。その思いを聞き終え、ヒューバートは自嘲気味に笑い出す。
「ふっ……ははは! 駄目だ……俺なんかが聞いてもどうしようもない話だな……あまりにもスケールがでかすぎる……」
「いや、お主の力も必要じゃ」
ヒューバートの嘆きをフリークが首を振って否定する。最後の闘神ユプシロン、最強の闘将ディオ。どちらもフリーク一人で抑えられる相手ではない。期待されているという言葉にもヒューバートは表情を緩めず、悔しそうに床を叩く。
「クソッ……俺がもっと早くビッチの奴を殺していれば……」
「お主の責任ではない。ワシの責任じゃ。初めからちゃんと話しておくべきじゃった」
闘神都市の秘密をあまり口外するのはマズイと考え、ヒューバートには必要最低限の事しか頼んでいなかったフリーク。今思えば、この男をもっと信用すべきだったのかもしれない。
「今からでも何とかならねえか?」
「何とかするしかない……それが、ワシの誓いじゃ」
「なるほど……話は聞かせて貰ったぞい」
ヒューバートとフリークが決意を固めている中、突如第三者の声が響く。慌てて声のした方向を見やる二人。そこには、小さな少女の精霊。
「精霊……?」
「双葉じゃ。可愛いじゃろう?」
そう言いながら通路の影から現れたのは、世界にその名を轟かす大魔法使い。雷帝、カバッハーン・ザ・ライトニング。双葉と呼ばれた雷の精霊がカバッハーンの方へ飛んでいく。
「じじい、聞こえたかー」
「おうおう、聞こえておったよ。ご苦労じゃったな」
「雷帝!? くっ、こんな時に……」
「おお、よせよせ。お主らと争う気はない」
剣を構えようとするヒューバートを手で制すカバッハーン。すると、カバッハーンに続くように新手が通路から現れてくる。
「その通りです。我らは争うつもりはありません」
格闘家、神官、技師、命を助けたシャイラとネイ。次々に通路から出てくる一同をヒューバートが見ていると、ある人物がいる事に気が付いて目を見開く。格闘家が担いでいる人物は、死んだと思っていた仲間。
「デンズ! 生きていたのか!?」
「あ、あにぃ……よがっだ……無事だっただ……」
「馬鹿野郎……今は俺の心配じゃねぇだろうが……」
深手を負っているが、目の前のデンズは確かに生きている。額に手をやりながら嬉しそうに呟くヒューバート。
「兄ちゃんも無事だったんだな」
「お前ら……そうか、でかい借りを作っちまったな」
「何言っているんですか。先に命を救って貰ったのは私たちですもの」
シャイラとネイの姿を見てヒューバートは驚く。見れば二人とも両肩に傷を負っている。この二人が命がけでデンズを救ってくれたのだろう。思わぬ形で恩を返して貰ったものだ。それを横目に、フリークとカバッハーンが向かい合う。
「雷帝カバッハーンじゃな。争う気がないというのは?」
「ふむ、ヘルマンの知恵袋、フリーク殿じゃな。お初にお目に掛かる。失礼じゃが、今の話は聞かせて貰った。その話とこちらが掴んだ情報から鑑みるに、今は争うべきではないと判断したまでじゃ」
そう口にしながら、カバッハーンはもう一人の精霊を呼び出す。双葉と対になる精霊、萌だ。その小さな頭を優しく撫でながらカバッハーンは言葉を続ける。
「この子の掴んできた情報によると、闘神ユプシロンは魔人パイアールに敗れた」
「なんじゃと!?」
「マジかよ……」
その情報にフリークとヒューバートが驚愕する。魔人という存在にも驚かされるが、フリークにとっては親友セルジオが敗れた事にもなるのだ。
「今はユプシロンを改造している最中のようじゃ。そのタイムリミットは……」
「二日でしゅ!」
萌が腰に手を当てながらハッキリと断言する。それに小さく頷き、カバッハーンはフリークたちの目を見据える。
「という訳じゃ。明日には闘神都市が一部分稼働し、明後日にはユプシロンの改造が完了する」
「……いや、むしろ改造のお陰で猶予が出来たと感謝するべきかの」
「その付属品が魔人だけどな……ちっ!」
本来なら一刻の猶予も無かったはず。だが、魔人のお陰で二日という猶予が出来た。とはいえ、止めるのであれば当然明日中だ。ユプシロンを完成させる訳にはいかない。
「どうじゃろうか。今はゼスとヘルマンなどという人間同士で争っている場合ではないと思うのじゃが」
「……同感じゃ。共に闘神都市を止めようぞ」
カバッハーンとフリークが互いに頷き、ガッシリと握手を交わす。その横で、デンズの様子を確認したヒューバートがアレキサンダーに近づいていく。
「色々あったが、こっからは味方だ。よろしく頼む」
「こちらこそよろしくお願いします。敵は強大。ですが、我らの力を合わせれば必ずや勝てます」
「後はルークさんたちと合流出来ればいいのですが……」
ヒューバートとアレキサンダーも握手を交わす。それを見ながら、セルがぼそりと呟く。今は少しでも戦力が欲しい所だ。聞き覚えの無い名前にフリークが首を捻る。
「ん、誰じゃそれは?」
「ワシらの他にも仲間が沢山おるのじゃよ。今は互いに離ればなれになってしまっておるがな。中にはワシ以外にも二人の四将軍がおるし、悪魔やリーザスの赤い死神なんかもおるぞい」
「なんと……それは是非とも合流したいものじゃが……」
フリークがそうそうたる面子に驚く。一体それだけの面子がこの闘神都市に何をしに来ていたのか気に掛かるところだ。だが、行方が判らない以上合流は難しい。そんな中、ヒューバートが顎に手を当てて口を開く。
「合流……出来るかもしれねぇな……」
「えっ!?」
「兄ちゃん、それは本当かよ!」
まさかのヒューバートの発言に一同が目を見開き、ネイとシャイラが身を乗り出して尋ねる。
「ああ、アリシアって嬢ちゃんを攫う際、カサドっていう町の教会に行ったんだ。その教会は迷宮内の隠し階段から繋がっていてな。奴らはあれだけの大人数でありながら、上部司令室の映像にはそれ程映っていなかった。って事は、塔以外の場所で寝泊まりをしていたんだ。外で野宿という可能性も有りはするが、カサドの町を拠点にしている可能性は……」
「十分にあるという訳ですね!」
香澄の言葉に頷くヒューバート。意外な人物の手によって、絶望的と思えていた今すぐの合流が現実的になってきた。フリークがヒューバートに向き直って問いかける。
「それで、そのカサドへはどう行くのじゃ」
「それは……どうだったかな……メリムに任せっきりだったしなぁ……」
「こ、この先の転移装置を使って……少し行けば隠し階段があるだ……」
「やれやれ、少しは見直していたというのに……」
頭を掻いているヒューバートに代わり、セルの治療を受けていたデンズが答える。意外にもしっかり覚えていたらしい。ばつの悪そうな顔をしているヒューバートを見ながら、フリークは軽くため息をつく。
「では、カサドを目指すとするかの」
「皆さん揃っていればいいのですが……」
自分たち以外の面々は合流しているのだろうか。セルが今だ行方の知れていないみんなを心配する中、フリークたちとカバッハーンたちの連合はデンズの案内の下、カサドの町を目指す事になる。この場所からなら、到着はすぐのはずだ。
-イラーピュ 草原-
闘神都市の端に位置する草原。そこに一人の魔人が立っていた。
「…………」
それは、魔人メガラス。ハウゼルと別れた際の合流場所として指定した場所であったが、いくら待ってもハウゼルはやって来ない。
「何かあったのか……?」
サテラと違い、ハウゼルが遅刻をしたり場所を間違えたりする訳がない。となれば、何かあったのかと考えるのが自然だろう。だが、ハウゼルの事だから多少のトラブルは自力で解決するはず。となれば、下手に動けば入れ違いになる可能性もある。このような事態に備え、二人はある約束事を決めていた。片方が集合場所に着いてから、相手が24時間以内に現れない場合に限り、相手を捜しに行くというものだ。今は夕方の6時頃。
「後……16時間……」
メガラスが草原に立ち尽くしながら、静かに時が来るのを待つ。
-カサドの町-
「ふぅ……ようやく片付いたな……」
「あー、疲れたわー」
モンスターの襲撃が完全に止んだ訳ではないが、ようやく一段落ついた。流石に疲労から一息ついているルークたちだったが、そこへ教会のシスターであるシンシアが駆けてくる。
「み、皆さん! 仲間だと仰られる集団が教会の地下から……」
「集団?」
教会の地下から出てきた怪しい集団がいると報告に来るシンシア。その後ろから、件の集団がこちらに向かって歩いてくる。
「雷帝!」
「シャイラさん! ネイさん!」
やってきた集団を見て声を上げる一同。サイアスとルークは先頭を歩いていたカバッハーンに駆け寄り、キューティは途中で離ればなれになってしまったシャイラとネイの無事に安堵する。
「セルも無事だったのねー」
「ええ、ロゼさんも無事で何よりです」
ロゼががっしりとセルの肩に手を回して無事を労う。正直、ここまで音沙汰の無かった戦えない者であるセルの生存は厳しいと考えていたからだ。
「皆さん、無事で何よりです」
「他にもアレキサンダーと香澄ちゃんがあっちにいるぞい。それと、意外なお客人もな」
「えっ! 香澄も一緒なんですか!? よかった……」
リックが言葉を漏らすと、カバッハーンがまだいると口を開く。助手である香澄の無事に安堵するマリア。この闘神都市には自分が無理矢理連れてきたようなものなのだ。どこかで責任を感じていたのだろう。カバッハーンの言葉にルークは眉をひそめる。
「意外な?」
「お、来たようじゃな」
ルークはカバッハーンが指定した方向を振り返る。そこには、アレキサンダーと香澄の他に、剣士と巨漢の男、そして老人が歩いていた。
「あれは……?」
「ヘルマンの!?」
「ヒューバートさん! デンズさん!」
ルークはここへ来てようやくヒューバートとデンズに出会う。ヘルマン軍の出現にリックが驚愕の声を出すが、元々の仲間であるメリムは嬉しそうだ。リック同様二人を訝しんでいるルークの側に志津香が近寄ってくる。
「大丈夫。あの二人は信用できるわ」
「……そうか、あの二人が逃がしてくれたっていう二人か」
「ええ」
ルークはもう一度ヒューバートとデンズの顔をしっかりと見る。二人とも一流の戦士の顔つきだ。それともう一人。後ろにいる老人も二人同様ただ者では無い。すると、ミスリーが突如大声を出す。
「フリーク様!」
「ミスリー! ここにおったのか!」
フリークに駆け寄るミスリー。長い事会えていなかった旧来の仲間だ。その喜びはここにいる誰よりも大きかった。
「少し情報の整理が必要そうだな」
「そうですね。自己紹介などもしなければならないでしょうし」
ルークがそう呟くと、真知子がそれに頷く。互いに掴んでいる情報の整理は必須。カバッハーンも頷き、ルークに向き直りながら口を開く。
「ならば、自己紹介は後回しじゃ。一度どこかでゆっくりと話し合おう」
「それならフロンの所だな。だが、防衛は……」
ルークが青年団をチラリと見ると、キセダとカネオが胸を張って答える。
「任せてください。今はピークを過ぎましたし、青年団だけで何とか守ってみせます!」
「話し合いの時間くらい、何ともないでごんす!」
「そうか……では頼む」
出会った頃の全てを投げ出していた青年団の姿はもうない。頼もしいものだ。この場を彼らに任せ、ルークたちは互いの情報整理のためにうまうま食堂へと向かう。そんな中、メナドがぽつりと呟く。
「これで……いないのはジュリアさんだけか……」
「あっ……」
戦闘能力のない真知子や香澄は他のメンバーと一緒にいたため無事だったが、こうなるとジュリアは一人という事になる。彼女がこの闘神都市で生き残れるのだろうか。否が応にも、最悪の想像が頭を過ぎる。かなみの表情も重い。
「大丈夫よ。悪運だけは強い子だから……」
「そうですわね。ひょっこり帰ってきそうな方ですもの……」
同じ親衛隊であるレイラとチルディがそう口にする。あれだけ脳天気な娘だ。案外何事も無かったかのようにひょっこり帰ってくるだろう。そんな話をしながら、うまうま食堂の扉を開ける。
「おばちゃん、おかわり!」
「はいよ。良く食べる娘だねぇ」
「「「ひょっこり帰ってきたっ!!」」」
いつの間に戻ってきていたのか。横にハニーを携えながら暢気にご飯を食べているジュリアに一同が驚く。思わず突っ込んでしまうかなみ、メナド、チルディのリーザス三人娘。
「ほぇ?」
口元にご飯粒をつけながら、ジュリアが暢気そうに口を開く。これにて離ればなれになっていた仲間たちは全員集結。最終決戦に向け、その準備は着々と済みつつあった。
[モンスター]
カイトクローン
魔人カイトをモデルにした人口生命体モンスター。モデルがモデルだけあり、その戦闘能力は高い。
ほほえみ男
さけび男の上位種モンスター。いつも微笑んでいる。
イカマン
愛らしいイカのモンスター。この世界における雑魚の代表格だが、一般人では倒すのは難しい。
ざしきわらし
一つ星女の子モンスター。特定の場所に住み着くと幸運をもたらすとされている。両手につけた狐と狸が友達。
シークレットハニー
ハニーキングの護衛を任されるイカしたハニー。戦闘能力は高い。ケビン&コスナーはシークレットハニーの中でも更に上位の存在。