SAO~デスゲーム/リスタート~   作:マグロ鉱脈

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今回は反動と申しますか、少し普段の本作のペースに戻っています。
コメディ要素はかなり少なめの仕上がりになりました。


Episode14-5 陰謀

 昔から戦争が起きる理由など、根本を突き詰めれば数千年前から変わっていない。

 すなわち、『食料』・『資源』・『宗教』の3つだ。

 食べ物が無ければ人は死ぬ。資源が無ければ、やっぱり死ぬ。宗教は精神的な問題だ。

 何が言いたいのかと言えば、ブギーマンは一面に広がる更地に絶句した、という事である。

 場所は≪黄金王ミロスの記憶≫。安定した気候が魅力的であり、多くの農地が確保できるステージだ。出現するモンスターはゴブリン系やオーガ系とファンタジー色が強く、正統派揃いである。厄介なデバフ攻撃や特殊攻撃をするモンスターがほとんど出現しない為か、中層プレイヤーが最初にレベリングに励むのに適したステージだ。

 このステージの利権はほぼ聖剣騎士団が独占しており、彼らの農作物生産を担う食料生産地でもある。最近は環境ステータスの不足により、目当ての食材系アイテムの生産効率が悪い為か、別ステージへの移転が進んでおり、幾つかの農地は独立系中小ギルド、そしてラスト・サンクチュアリに売却されている。

 そして、今回ブギーマンが訪れたのは、ラスト・サンクチュアリが確保する巨大農地の1つである。主な生産物は岩ジャガイモと小雀麦であり、どちらも味は最低であるが、とにかく生産効率がずば抜けている。

 1000人規模のプレイヤーを抱えるラスト・サンクチュアリにとって、何よりも優先しなければならないのは食料の生産効率だ。

 デバフ【飢餓】。発生するとスタミナ回復量が減少し、全ステータスに下方修正がかかり、オマケに被ダメージ量が増加する。放置しているとこれらの効果はより大きくなり、最終的にはHP残量を問わずに死に至る。

 だが、何よりも苦痛なのは空腹感だ。現実の肉体ならば、空腹も過ぎた痛みにかわり、やがてそれを通り越して無気力となる。だが、DBOの【飢餓】はひたすらに空腹感を募らせ続ける。夕食前にお菓子を食べたくなるような、あの耐え難い絶妙な空腹感が続くのだ。

 今以て飢餓の発生条件は確定していない。だが、あるプレイヤーが研究したところ、スタミナ消費が激しい行動を取れば取るほど早期に飢餓が発生した、という報告もあるが、真偽は不明だ。

 プレイヤー達は便宜上これを『飢餓数値』と呼んでいる。この飢餓数値が一定値を下回ると飢餓状態になり、ゼロになると死亡する、というものだ。

 現在、貧民プレイヤーの大半が軽度の飢餓状態にある。耐えられない程ではない空腹感に苛まれ続け、また現状を打破するのにレベリングしようにもデバフ効果で下方修正されたステータスなどの諸々によって戦う事すら絶望的な状況に追い込まれている。多数の貧民プレイヤーを抱えるラスト・サンクチュアリもその例外ではない。

 岩ジャガイモも小雀麦も味こそ最悪であるが、飢餓数値の回復量は悪くないという研究結果もある。それでいて生産効率は良いのだから、当然ながらラスト・サンクチュアリの主力生産物になっているのだ。

 その一大生産地が更地。何があったのか、と問われれば単純明快だ。襲撃されて焼き払われたのである。それもたった1人のプレイヤーによって、その凶行は成された。

 

「えげつないわねぇ」

 

 さすがのエネエナも茶化す事ができないのか、カメラのシャッターを切りながらぼやく。

 

「クラウドアースは聖剣騎士団にラスト・サンクチュアリへの食料販売の停止を訴えてますからね」

 

 深刻な対立状況にある聖剣騎士団と太陽の狩猟団。表面的には友好関係をアピールしているが、それが嘘と偽りで塗り固められたものであり、握手の裏で着々と両者が決戦の日に向けて力を蓄えている事は周知の秘密だ。

 対して、クラウドアースは両ギルドとも明確な対決姿勢は取っていない。そこで、両ギルドはいかにしてクラウドアースを戦力として引き込むか、という駆け引きを続けている。この点で言えば、リードしているのは太陽の狩猟団だ。

 先日のクリスマスの慰霊祭後、副団長のミュウがクラウドアースの理事長ベクターと会談し、攻略中の最前線メインダンジョンの合同攻略の約定を取り付けたのだ。出遅れた聖剣騎士団としては、少しでもクラウドアースのポイントを稼ぎたいところなのである。そして、手っ取り早い点数稼ぎとは、他でもないクラウドアースが目の敵にしているラスト・サンクチュアリとの各取引の停止だ。

 いや、クラウドアースが聖剣騎士団に卸している、環境ステータスをブーストする肥料系アイテムの転売を停止するだけで、ラスト・サンクチュアリは簡単に干上がるだろう。それ程までにラスト・サンクチュアリは窮地に追い込まれているのだ。

 一方で、最強の傭兵と名高いUNKNOWNはラスト・サンクチュアリのパートナー契約である為か、3大ギルドで唯一助力してくれている聖剣騎士団からの依頼を優先的に引き受ける傾向がある。仮に聖剣騎士団がラスト・サンクチュアリを切り捨てれば、UNKNOWNは太陽の狩猟団側に立つだろう。そうなれば、彼の人気とその戦力が敵対ギルドに傾く事になる。

 そんな謀略が渦巻くギルド間抗争に波乱を巻き起こしたのが、今回のラスト・サンクチュアリの大農地の襲撃である。これまでもクラウドアースからラスト・サンクチュアリの嫌がらせ……農地や鉱山への襲撃はあったが、いずれも小規模なものであり、ダメージとしては微々たるものだった。だが、今回は余剰食糧という生命線を消費させる為に大農地一帯を更地にするという本格的な攻撃行動に移って来たのである。

 そして、それを最初に実行したのは【渡り鳥】だというのだから、彼の悪名もまた鰻登りである。

 

「岩ジャガイモってスポンジ食べてる気分になるのよねぇ。バターを塗っても食べれたもんじゃないわ」

 

「小雀麦で作ったパンとか粘土みたいなもんですよ」

 

 そんなどうでも良い話をして気分を紛らわせながら、ブギーマンは環境ステータスが回復中の、干乾びた地面を蹴る。襲撃されたのが3日前であり、元の状態に戻るにはあと3日は必要だろう。これを早急に回復させるには肥料系アイテムが必要なのであるが、その生産レシピはよりにもよって、ほぼクラウドアースによって独占されているのだから致命的だ。

 仮に生産レシピを盗んで生産しようものならば、明確な攻撃行為とみなして、クラウドアースは嬉々としてラスト・サンクチュアリへと宣戦布告するだろう。いかにUNKNOWNが最強のプレイヤーとはいえ、クラウドアースにはランク1のユージーンがいるのだ。彼をぶつければ、UNKNOWNを仕留められずとも時間稼ぎは十分過ぎるほど可能である。その間に本部を陥落させればクラウドアースの勝利だ。

 もちろん、外聞や体裁もある為にクラウドアースもそこまで直接的な攻撃には打って出ないだろうが、それでも【渡り鳥】を使って主要鉱山や他の大農地を壊滅させる程度の報復は行うだろう。そして、UNKNOWNでやり返そうにも、所詮は単身だ。同時に多角的に攻めれば、彼を何処かしらの防衛に回さねばならないラスト・サンクチュアリは後手に回り続ける。長期戦に持ち込みさえすれば、経済制裁された国が干上がる様にやがて自滅するだけだ。クラウドアースはそれをのんびりと観賞していれば良い。

 詰んでいる。どんなカードを切ろうと、ラスト・サンクチュアリの壊滅は時間の問題なのだ。せいぜい彼らが期待できると言えば、聖剣騎士団の貴族主義……大多数の弱者を少数の強者が守るという理念に訴え、代理戦争をしてもらう事くらいだ。だが、そもそもラスト・サンクチュアリの理念自体が大ギルドを否定しているので、聖剣騎士団が本格的に加勢するのはまずあり得ないだろう。

 そして、この地獄への、誰もが嫌がる第1歩を踏み出すという憎まれ役を引き受けたのが、他でもない【渡り鳥】なのだ。彼は事実上、ラスト・サンクチュアリを支持する多くの貧民プレイヤーを敵に回した事になったのである。

 

「【渡り鳥】ってやっぱりヤバい奴なんじゃないですか?」

 

「最初から分かってた事でしょう? 頭のネジが何本か外れてるわよ」

 

 昨日、ワンモアタイムで得た【クリスマスの聖女】の手がかりであるテツヤンは料理教室で出払っていて取材することができなかった。本日はヘカテから引き出した情報で、最近はクラウドアースからの依頼を多く引き受ける傾向があると知り、最近のクラウドアースの動向を調べてみればこの惨状である。やはり、【渡り鳥】への直接インタビューは危険なのではないか、とブギーマンは再認識した。

 

「どういうわけだ?」

 

 だが、そんな中で、ブギーマン達に同行していたキリマンジャロは口元を手で覆い、悩ましげな声を漏らす。

 

「これだけの大規模な襲撃を受けて、どうしてUNKNOWNを用いた報復に出ない? UNKNOWNは傭兵とはいえ、事実上のラスト・サンクチュアリの保有戦力であり、抑止力のはずだ。これだけの被害を受けたなら、UNKNOWNにクラウドアースの農地でも牧場でも鉱山でも……とにかく襲撃依頼を出すはずだ」

 

「言われてみれば確かにそうよね」

 

 情報を集めた限りでは、UNKNOWNは他の依頼で出払っている訳でもない。ならば、ラスト・サンクチュアリとしてはクラウドアースに牽制をかける為にもUNKNOWNに襲撃させるはずだ。【聖域の英雄】とは最強の防衛戦力であると同時にカウンター戦力でもあるのだ。最強プレイヤーを使い放題である事こそがラスト・サンクチュアリの最大の強みのはずである。

 

「それに、あれを見てくれ」

 

 そう言ってキリマンジャロが指差すところには、農地の再生に向けて肥料系アイテムを使用し、新たな岩ジャガイモの苗を植える、逞しいラスト・サンクチュアリの農耕たちの姿がある。彼らは鍬を手に、互いに励まし合いながら農地の回復に向けて努力を重ねているようだ。実に涙腺が潤む光景である。

 壊滅から再生へ。そんなキャッチコピーが似合いそうである。何もおかしい点が無いとブギーマンは思うのだが、キリマンジャロは違うようだ。

 

「皆、活き活きしている。そう思わないか?」

 

「言われてみれば確かに……」

 

 指摘されてみれば、なるほど、農耕たちの表情は更地にされた大農地を再生させるという絶望に満ちた苦行に従事する物ではなく、むしろ活力に満ちている。これはおかしな話である。

 誰かに事情を聞いてみるか、とブギーマンは1番近くにいた男性に話しかけた。

 

「どうも、隔週サインズです」

 

「ん? ああ、記者さんか。悪いけど、取材を受けてる暇は無いんだ。早くこの農地を再稼働させないといけないからね」

 

 鍬を杖代わりにしてもたれながら、にこやかに男は答える。だが、こうして返答した時点でブギーマンのペースだ。

 

「いやね、それも分かってるんですけど、隔週サインズとしては現地人のリポートは外せないところでして。どうですか? やっぱり、これだけ広い農地を復活させるとなると時間がかかるでしょう?」

 

「そりゃね。でも、あと3日……いや、2日もすれば元通りさ。それに、命あっての物種って言うからね。俺の場合は特に気合を入れないと」

 

「と、言いますと?」

 

 そう訊き返すブギーマンであるが、男は途端に口を噤む。というのも、土を踏み鳴らして数人のプレイヤーがこちらに迫って来たからだ。

 武装した2名のプレイヤーを率いるのは、針金のような印象を受ける痩せた男だった。ラストサンクチュアリのエンブレムが胸に刻まれており、その立ち振る舞いからも幹部クラスだろう事は間違いない。

 だが、女性プレイヤーならばともかく、男性プレイヤーの顔と名前を憶えるは大の苦手であるブギーマンにとって、彼がどんな人物なのか思い出せない。

 

「これは隔週サインズの記者さん、取材の前に訪問の一報を入れてくだされなければ困ります。こちらにも都合という物がありますので」

 

「すいません。では、日を改めて……」

 

 編集長ならば苦情を入れられてもスルーするだろうが、これを理由に今後のラスト・サンクチュアリの取材が難しくなっても困る。【渡り鳥】の凶行現場を写真に収められただけでも収穫として、ここは素直に退くべきだろう、とブギーマンは計算した。

 

「いえいえ、折角来ていただいたのですから、存分に取材なさってください。我々に隠すべきものなど何1つありません。だろう、オスマントッコーくん?」

 

「【ナイターノット】様がよろしいならば……」

 

 ああ、そうだ。ナイターノットだった。ようやくブギーマンは、ラスト・サンクチュアリの幹部の1人、そして過激派筆頭である、この痩せた男の事を思い出す。

 ラスト・サンクチュアリを設立したキバオウと初期の頃から肩を並べた古参の1人であり、今はギルドの運営方針を巡ってキバオウと不仲にあるとされている男だ。

 取材チャンスという事もあり、合流したエネエナが蓄音水晶を取り出す。それが起動するのを確認してから、オスマントッコーは語り出す。

 

「あれは3日前の昼過ぎですね。全身に変な甲冑を付けたプレイヤーが襲ってきたんです。後から聞いたら特徴的にもあの【渡り鳥】に違いないって分かりました。とんでもなく強くて、当時はグレイ・スパイダーやギルドNPCが警備してくれてたんですけど、あっという間に全滅しました」

 

 グレイ・スパイダーは大ギルドで配備されていたNPC販売の量産ゴーレムであるが、現在は旧世代として次々と廃棄、ないし売却が進んでいる。ラスト・サンクチュアリが確保したのもそんな1機だろう。

 それでもゴーレムはゴーレムだ。たった1人で、多数のギルドNPCとグレイ・スパイダーを撃破したとは、やはり傭兵とは規格外の連中が揃っているものだ、とブギーマンは再認識する。

 

「【渡り鳥】は全部焼き払うつもりだったみたいです。それで、抵抗した俺は殺されそうになりました。カタナを振り上げられて、アイツ……笑ってて! でも、丁度新設部隊が巡回してくれたみたいで……本当に助かりました!」

 

 当時を思い出したのか、オスマントッコーは涙を流してむせる。その背中をナイターノットは摩り、彼の話を引き継ぐ。

 

「あちらをご覧ください。我々ラスト・サンクチュアリが新規設立しました銃撃部隊です」

 

 そう言ってナイターノットが示したのは、農地を警護する、ラスト・サンクチュアリのカラーリングである白を基調とした、終末の時代で入手可能な全身防具の機甲外殻を装備したプレイヤー達である。武装も外観に相応しく銃器で固められており、ファンタジー調の≪黄金王ミロスの記憶≫では些か浮いていた。

 

「撮っても?」

 

「ええ、もちろん。構いませんよ」

 

 エネエナは認可を取ると、銃撃部隊の写真を数枚撮る。ブギーマンも倣って別角度から何枚か撮るも、やはり女の子を撮った方が楽しいな、と内心で嘆息した。

 

「我々の新設部隊はオスマントッコーくんの危機を救い、密集隊形からの集中砲火によって、あの【渡り鳥】のほぼ一方的な撤退へと追い込む事に成功しました。もちろん、農地を失った以上は防衛という意味で敗北したのは否めません。ですが、あの狂人を追い払うことができるだけの戦力を我々はついに確保できた、という点が重要なのです」

 

「ですが、【渡り鳥】はランク41です。そんな低ランクの傭兵を追い払えたとしてもアピールにはならないのでは?」

 

 もちろん、エネエナも本気で【渡り鳥】がランク通りの実力とは思っていないだろう。だが、決して少なくない数のプレイヤーは、ランクがそのまま実力を示すものだと勘違いしている。宣伝力としては、確かに弱いかもしれない。

 その指摘は予想していたのだろう。ナイターノットは重々しく頷く。

 

「ええ、確かにこれが普通の低ランクの傭兵ならばご指摘の通りです。ですが、相手は【渡り鳥】、SAOを生き抜いた屈指の殺人鬼です。そうした危険なプレイヤーを撃退できたという実績は、今後の我々の励みとなるでしょう」

 

 マスコミ対策はバッチリのようだ。一切の淀みが無い口振りは準備された台本を読んでいるかのようである。

 手札が無い今ではこれ以上切り込むのは難しい。エネエナは視線で、ここは1度退こうと提案する。ブギーマンとしても全面的に同意だ。彼らの復興作業を邪魔したくないし、それに撮るべきものは撮り、聞くべきものは聞けた。

 

 

 

 

 

「蝶は牙が食い込むその時まで、自分が蜘蛛の巣にかかった獲物と気付かない」

 

 

 

 

 

 礼を述べて帰ろうとした時、これまで沈黙を保っていたキリマンジャロがぼそりと呟く。

 

「キミは……」

 

 その呟きを聞き逃さなかったナイターノットは訝しむような視線を向け、キリマンジャロは顔を俯けて帽子を深く被り直し、問答する気はないと言うようにエネエナたちの後を追う。

 ナイターノットは何か言いたそうな顔をしていたが、彼の意識は大農地に踏み込んで来たラスト・サンクチュアリのリーダーであるキバオウに移る。明らかに不満と怒りを堪えた顔をしたキバオウはナイターノットと舌戦を繰り広げる意気込みのようであるが、それはさすがに取材させてもらえないだろうとブギーマンは早足でその場を離れた。

 

「キリマンジャロくん、さっきの言葉の意味は何だい?」

 

 大農地から十分に離れた後に、ブギーマンはキリマンジャロに問う。最後の意味深な言葉は、下手すればナイターノットの怒りを買っていただろう。注意すべきかもしれないが、キリマンジャロは取材中沈黙を保っていた。ならば、最後の言葉は彼なりに我慢できなかったが故の口出しだったのだろう。

 

「今回の襲撃と撃退だよ。まんまとラスト・サンクチュアリは嵌められたのさ」

 

「どういう事かしら?」

 

「全ては脚本通り、と言う意味だよ」

 

 今にも溜め息を吐きたいような口調のキリマンジャロに、エネエナとブギーマンは何を言ってるのか分からないと顔を見合わせる。

 

「恐らく、今回の一連の流れはクラウドアースとラスト・サンクチュアリの共謀だ」

 

「キリマンジャロさん、さすがにそれは無いと思うわよ。ラスト・サンクチュアリは、下手したら餓死者も出かねない程のダメージを負ったのよ? 何もメリットは無いじゃない」

 

「メリットならあるさ。『自信』だよ」

 

 自信? ブギーマンは普段使わない脳の領域を稼働させて、キリマンジャロが言わんとするところを見抜こうとするが、残念ながら彼の頭脳は容易く熱量限界を超えて思考停止する。

 だが、エネエナはさすが元政治部の記者というわけか、何かに気づいたように眉を曲げた。

 答えが見えないブギーマンの為にキリマンジャロは指を立てて解説を始める。

 

「まず、今回のクラウドアースの目的は何なのか、それを考えてみるんだ」

 

「農地への襲撃だろ?」

 

「半分正解。クラウドアースの目的の1つは食糧生産を邪魔する事だろうけど、それは目的の1部でしかないんだ。本当の目的は『ラスト・サンクチュアリの新設警備部隊に実績を作らせる事』だよ」

 

 まるで意味が分からない。どうして敵対勢力に花を持たせるような真似をしなくてはならないのだ? ブギーマンは腕を組んで悩ましげな声を漏らすも、やはり答えは頭の中に浮かんでこない。

 

「都合の良くヒーローなんて登場しない。だからこそ、『都合の良い展開』はより演出として効果的なのよ」

 

 それを見かねてか、エネエナが助け舟を出す。だが、やはりブギーマンにはエネエナやキリマンジャロに見えている物に靄がかかっているどころか、暗闇の中にあって輪郭すら見えてこない。

 

「考えてみてくれ。『あの』クラウドアースが、たまたま新設部隊が巡回してくるタイミングに襲撃を仕掛けるはずがないんだ。仮に情報をつかめていなかったとしても、【渡り鳥】が『あの程度』の部隊を見逃すはずがない。彼からすれば、ボーナス対象が自分から口の中に入って来たようなものさ。依頼内容が『農地を壊滅させる上で障害となる全対象の排除』を含んでいるならね」

 

 ブギーマンはカメラの撮影データを表示し、ラスト・サンクチュアリの新設部隊を改めてチェックする。

 その総数は12人。いずれも≪銃器≫を装備したプレイヤーであり、装備はなかなかのものだ。練度も士気も高い。とてもではないが、『あの程度』という表現は似つかわしくない気がした。

 

「ブギーマン、考えてくれ。どうして大ギルドは≪銃器≫部隊を主力として配備していないと思う?」

 

「それは、≪銃器≫は対策が立てやすいからだろ? 火力も距離減衰が酷いから射程距離なんて実際の半分以下、運用コストも馬鹿高い。しかも装備枠を2つも潰さないと装備できないから、サブウェポンを仕込みづらくて、メインウェポンとしては応用性に欠ける」

 

 火力がステータスに依存しない≪銃器≫は、低レベルのプレイヤーでも場合によっては上位プレイヤー級の火力を引き出せる可能性を持ったジャンルの武器だ。だが、それ故に多くの制約が付きまとう。たとえば、反動を抑える為にはSTRが、射撃精度を高めるにはTECが、より上級の武器程に実用的な運用を可能にするには相応の≪銃器≫の熟練度が求められる、極めて玄人向きの武器なのだ。

 その証拠にメインウェポンとして運用しているのは傭兵でも2人だけだ。1人は銃使いとして名高い独立傭兵のスミス、もう1人は太陽の狩猟団とパートナー契約を結んでいるDBO最高の狙撃主であるシノンである。彼らはまさしく例外中の例外であり、他のプレイヤーはせいぜい唯一装備枠を1つ消費するだけで済むハンドガンをサブウェポンとして仕込む程度である。

 

「新設部隊が装備していたのは【77式2連装突撃銃】だ。連射性能に特化した弾幕向きのアサルトライフルだよ。アサルトライフルの距離減衰はライフル以上だから、数を揃えた密集隊形による中距離攻撃でカバーする新設部隊の運用方法は間違っていない。でも、それをするくらいならばゴーレム1機を準備した方が遥かに効率が良いんだ」

 

 言われてみればその通りだ。密集隊形で射撃する等、要はゴーレムが射撃部隊に互換されただけである。いや、むしろ下位互換ではないだろうか? ゴーレムの方が火力・積載量・耐久力で上だろう。オペレーションが不十分であるという欠点を除けば、先程の農地のような障害物が無い場所ではゴーレムの方に軍配が上がる。

 逆に銃器部隊の真骨頂とは、ゴーレムの進行が制限されるダンジョンや施設内などの閉所における射撃戦にこそあるだろう。

 と、そこまで考えて、ブギーマンはようやく気づく。他でもない【渡り鳥】は新設部隊の到着前に旧式とはいえゴーレムのグレイ・スパイダーを撃破しているのだ。そこまでに手傷を負い、アイテムを消費していた場合も考えられるが、オスマントッコーの話からするに、まだ余裕は十分にあったと考えられる。

 

「彼の依頼には『新設部隊と交戦して追い払われる』事が最初から組み込まれていたんだ。オスマントッコーを殺そうとしたのも、新設部隊が到着したのを見て、プレイヤーに攻撃する事になれていない新設部隊に戦う動機を与える為の演出。そうでもなければ、彼なら数秒の猶予も無くオスマントッコーを殺しているよ」

 

 ぞわり、とブギーマンは背筋が冷たくなる。キリマンジャロが淡々と説明する単純な襲撃に見えたその裏側、どろどろとした謀略の重油が美しい海を汚染するように、彼の心に不安を植え付けていく。

 

「今頃ラスト・サンクチュアリの裏取引を知らない過激派からすれば、クラウドアースの『犬』を追い払えたと有頂天のはずさ。彼らはこの実績から、銃器部隊の増設を目論むはずだ。≪銃器≫スキルさえあれば、低レベルのプレイヤーでも高火力武器が持てるんだ。これ程『見た目』の効率が良い武器は無いからね。対して、過激派を抑えるキバオウはゴーレムの配備を進めたがっている。でも、そのゴーレムはあえなく【渡り鳥】に敗れ、そして新設部隊が彼を撃退した」

 

 高コストのゴーレムは無能のレッテルを貼られて導入が難しくなり、逆に銃器部隊は増設される。過激派からすれば、穏健派を抑えこむ『クラウドアースに一矢報いた』という実績も得られた。クラウドアースの報復を恐れ、過激派を支持しきれていなかった者達を取り込むにも絶好の材料になる。

 

「どちらが今回の襲撃依頼の脚本を書いたのかは分からない。だけど、踊らされたのはラスト・サンクチュアリの方さ」

 

 ここまで言われれば、先程の意味深なキリマンジャロの一言、その真意が分かる。

 スミスがよくサインズ食堂で費用と経費の兼ね合いで唸っているように、≪銃器≫の最大のデメリットとは嵩む弾薬費だ。3大ギルドに比べて資産が無いラスト・サンクチュアリが銃器部隊を増設し、運用していけば、待っているのは過剰収支による財政の圧迫に繋がる未来は見えている。

 クラウドアースからすれば楽なものだ。銃器部隊が配備された農場や鉱山を狙って襲撃し、被害を与えるでもなく弾薬ばかりを消費させれば良いのだ。手持ちの傭兵を失うリスクが常に絡むゴーレム戦に比べれば、依頼料を抑えられるという意味でもコスト削減になる上、そのゴーレムの配備をラスト・サンクチュアリ側が勝手に自粛してくれるのだから。

 クラウドアース側は『ラスト・サンクチュアリの新設部隊に追い払われた負け犬』という評価を受けるが、それは結果的に今回の襲撃の非難を抑える役目を果たす。ラスト・サンクチュアリを支持する貧民プレイヤーからすれば、まさに溜飲が下がる気持ちなのだから。

 そして、先程までのブギーマンたちが思っていたように、直接的な被害である食料生産能力の低下がもたらす食糧配給の減少などによる憎しみは、実際の襲撃犯にして、悪名高い【渡り鳥】が引き受けてくれる。クラウドアースからすれば、実害の無い嘲笑以外にはまるでダメージが無い。

 

「【渡り鳥】も変な奴ですね。そんな依頼を引き受ければ、自分が憎まれ役を押し付けられるだけって分かるはずなのに。しかも、新設部隊に退却させられたなんて不名誉付きですよ」

 

 もちろん、キリマンジャロが述べたのは全て推測にすぎない。だが、ブギーマンは仮に推測が真実であるならば、【渡り鳥】が何を考えているのか、まるで理解できなかった。何が嬉しくて自分にヘイトと嘲笑を集めるような依頼を引き受けたのだろうか?

 

「……『そこにしか、自分の居場所は無いから』」

 

 ブギーマンの疑問に、何故かキリマンジャロが答える。

 

「彼が依頼を引き受ける理由はそれだけだよ。彼は……そういう奴なんだ」

 

 その声音は遠い過去を思い出すかのようだった。

 もしかして、とブギーマンは1つの推測を抱く。もしかしたら、キリマンジャロは【渡り鳥】の事を知っているのではないだろうか?

 尋ねて良いものだろうか、とブギーマンは迷う。キリマンジャロとはそれなりに友好が持て始めた時期であるだけに、安易に踏み込んで良い領域とは思えなかった。

 

「もしかして、キリマンジャロさんって【渡り鳥】とお知り合いなんですか?」

 

 だが、やはりと言うべきか、アッパレと言うべきか、エネエナはブギーマンの逡巡など微塵も配慮しないと言わんばかりにノータイムで切り込む。

 

「え!? いや、俺は……その、彼を良く知る人と知り合いなだけだ」

 

「それってもしかして【黒の剣士】ですか!? ですよね!? そうですよね!? だって、【渡り鳥】を良く知るような人物って、相棒だった【黒の剣士】くらいに決まってますから!」

 

「……そういう事で良いよ」

 

 怒涛のエネエナの攻め込みに、キリマンジャロは帽子を目深く被って頷く。

 

「へぇ、じゃあキリマンジャロくんもリターナーなんだ」

 

「ああ。ほとんど攻略組には関わっていない中層プレイヤーだけどね。運よく生き延びたラッキーだっただけさ」

 

 キバオウのように自らリターナーであると喧伝している者もいれば、不要にデスゲーム体験者だからと頼られたくない、野次馬根性で辛い過去を穿り返されたくない、という理由でリターナーである事を隠している者もいる。キリマンジャロは恐らく後者なのだろう。

 これは、やはりこの話題は深入りしない方が良いかもしれない。記者とはいえ、モラルを失いたくないブギーマンは口を紡ぐ。

 

「なら、教えてもらって良いですか!? 【黒の剣士】と【渡り鳥】、どっちが強いんですか!? それに、何で【黒の剣士】は彼を相棒にしたんですか!?」

 

 先輩、そんなんだから2×歳になっても独身なんですよ!? ブギーマンが躊躇った領域へと土足どころか追加ブースターを装備して強襲をかけるように、エネエナは切りこんでいく。

 だが、キリマンジャロは不快感も示さず、むしろ懐かしそうに喋り出す。

 

「俺も【黒の剣士】とそこまで親しいわけじゃなかったら。でも9:1くらいじゃないかな?」

 

「それって、【黒の剣士】が9割で勝ちって事ですか?」

 

「逆だよ。『殺し合い』なら【黒の剣士】は負ける。よくて相討ちさ」

 

 キリマンジャロは冗談じゃないと言うように苦笑した。

 

「だからこそ、相棒になって欲しかったんだ。隣にいてくれれば、何処までも戦い続けられる。まるで戦う為だけに生まれてきたようなその強さに、きっと【黒の剣士】は惹かれたんだろうな」

 

 

▽   ▽   ▽

 

 

「申し訳ありませんが、この金額でお引き受けできる傭兵はいませんね」

 

「「ですよねー」」

 

 サインズ本部にて、キャサリンとダンベルラバーは声を揃えた。

 昨日は料理教室の取材という名目で、ディア・スリーパーへの潜入取材を回避できたキャサリンたちであるが、本日はさすがに取材を敢行せねばならない。

 幾ら犯罪ギルドが経営する店とはいえ、その程度の潜入取材に経費で高額の傭兵雇用が認められるわけもなく、ポケットマネーで雇える傭兵はいないものかと探してみたのであるが、サインズ3大受付嬢の1人であるルシアは申し訳なさそうに首を横に振った。

 

「短時間雇用に応じる傭兵は何人かいらっしゃいますが、いずれも出払っていますし、それ以外となるとサインズとしても最低報酬を満たしていないと護衛依頼を出すわけにはいかないんです。申し訳ありません」

 

「いや、別に良いんだ。期待していたわけじゃない」

 

 と言いつつ、無念というオーラを全開まで放出するダンベルラバーの気持ちはキャサリンも分かる。

 後に調べたところ、あの店は犯罪ギルドでも比較的穏健なフォックス・ネストが出資している。娼館なども経営している、インモラルな娯楽を多く提供している犯罪ギルドだ。そうであるならば、危険性は決して高くない。

 問題なのは、あのチェーン・グレイヴが関わっているという点だ。彼らは無暗に一般プレイヤーを襲う事はないが、犯罪ギルド最強は決して伊達ではなく、大ギルドの幹部クラスすらも太刀打ちできない程の猛者揃いだと聞いている。そんな連中の虎の尾を踏めば、ダンベルラバーは輪切りにされて死亡、キャサリンは良くて麻薬アイテムで理性を吹っ飛ばされて娼館に売り飛ばされる事になるだろう。

 

「う~ん、そうなると、サインズとしてはお勧めしませんけど、傭兵個人と契約するしかないですね。もちろん、サインズはトラブルの一切に責任を負いませんが」

 

 それは困る。キャサリンは唸りながら、どうしたものか、と知恵を絞る。

 傭兵と依頼主の最大のトラブル原因は報酬だ。依頼主が依頼内容を勘定して導き出した報酬が実際の仕事内容と割に合わなければ、傭兵は追加報酬を要求する。それがサインズ発足前に頻発した問題だ。

 現在はサインズが依頼内容を精査して最低報酬を決定する。ここからいかに『上乗せ』するのが依頼主の駆け引きだ。もちろん、依頼主としては最低報酬で引き受けてもらいたいだろうが、そんな器量が無い依頼主に傭兵は雇われたいとは思わないだろう。何よりも依頼にはイレギュラーが付き物だ。それを勘定に入れて最終的な依頼料を決定せねばならない。

 

「キャサリン、友達として忠告しておくけど、ディア・スリーパーには近づかない方が良いわよ? あの辺りでは変な事件が多発しているって話だし」

 

 事務的な口調から打って変わり、ルシアは友人としての顔でキャサリンを引き留める。

 もちろん、キャサリンもわざわざ狼の巣に踏み込むような真似はしたくない。だが、特集ページのネタの為には虎穴に入らねばならないのだ。

 

「う~ん、せめてスミスさんがいてくれればなぁ。私から頼めば、もしかしたら低額で引き受けてくれるかもしれないけど、今は聖剣騎士団の依頼で出払ってるみたいだし」

 

「へぇ、意外ね。まだ続いてるの?」

 

 クリスマスイヴに男性プレイヤーを地獄の底に叩き落とした、通称『アル中煙草傭兵スミスのルシアちゃんお持ち帰り事件』。てっきりキャサリンはクリスマス限定の火遊び程度かと思っていたのだが、ルシアの口振りから察するに、思いの外に長続きしているようだ。

 

「ん~、まぁね。お互いにクリスマスだけって約束だったんだけど、色々とあってね……。それに、淡白そうに見えて、スミスさんって意外と情が深いのよ?」

 

 あ、これ惚気るパターンだ。キャサリンはルシアがデレデレと語り出す前に緊急脱出を試みる。だが、それを許さないとばかりにルシアはキャサリンの腕をつかんだ。

 

「逃・が・さ・な・い」

 

「逃・が・し・て!」

 

 数分の攻防の末、ダンベルラバーの協力で勝利を収めたキャサリンは、頬を膨らませるルシアと距離を取りつつ、改めて提案する。

 

「他に! 他に当てはない?」

 

「あのねぇ、そんな都合の良い人いるわけないでしょ? スミスさんだって私のお願い補正があっても6000コル程度で仕事引き受けてくれるかどうか怪しいわよ。護衛の短時間雇用なら、せめて1万は準備しなさい。傭兵舐めてるわよ。この金額で受けてくれるのは……ああ、【渡り鳥】さんなら受けてくれるかもね。あの人気まぐれだから」

 

 6000コルでも大金なのに! ちなみにキャサリンの給与は月給2万コルである。ダンベルラバーと2人で出したとはいえ、それでも6000コルは大金なのだ。こんな事ならば貯蓄しておくのだったとキャサリンは後悔する。

 

「【渡り鳥】かぁ。でも、色々と怖い噂があるし」

 

「傭兵としては優秀よ? 大ギルドの依頼ばかりこなしてるけど、それ以外も依頼さえしてくれれば受けてくれるし。……あ、やっぱり駄目だ。【渡り鳥】さんも依頼が入ってるみたい」

 

 結局選択する機会すらないではないか。嘆息するキャサリンは、やはりダンベルラバーの魅せ筋に期待するしかないかと覚悟を決める。

 

 

 

 

 

 

 

「紳士淑女よ、何かお困りかな?」

 

 

 

 

 

 と、そんな時に背後から話しかけられ、キャサリン達は振り返る。

 そこにいたのは、黒い鉄のような重厚な甲冑を身に着けた騎士だ。背負うのは長方形の分厚いタワーシールドと長大な特大剣。そして、何よりも特徴的なのは、複数のスリットの覗き穴があるグレートヘルム……通称バケツ兜である。

 

「【タルカス】さん、何かご依頼でしょうか?」

 

「いや、少し散歩ついでに立ち寄っただけだ。そしたら、何やらお困りのようだからな。ついつい話しかけてしまった」

 

 ルシアも背筋を伸ばして応対するこの男は【黒鉄】のタルカス。聖剣騎士団の幹部、円卓の騎士の1人だ。見た目通りのタンクであり、その揺るぎない防御力と特大剣による高火力を併せ持つDBOでも名高きパワープレイヤーだ。

 

「それで、キミらは隔週サインズの記者のようだが、その様子だと傭兵を雇用できずに困っている、といったところかな?」

 

「ええ。実は俺達、今から少し危険な場所に行くんですが、保険で傭兵を雇いたくて。でも、世知辛いと申しますか……」

 

 言い難そうにダンベルラバーは肯定する。正直、こういう時に大ギルドの幹部と話せる彼の胆力にはキャサリンも度々驚かされる。根は小心者であるが、その魅せ筋で修羅場を潜り抜けられたのは、ここぞという時に発揮するこの度胸があってこそである。

 

「ふむ。だったら私がその護衛を引き受けよう。遠慮は要らんさ。私も隔週サインズの……特にキミのマッスルコーナーは楽しませてもらっている身だからね。あのコーナーは本当に素晴らしい。紹介されるのは素晴らしいイイ男たちばかりだ。そう……実にイイ」

 

 ダンベルちゃんのマッスルコーナーの読者がいたんだ、とむしろその点にキャサリンは驚いた。

 円卓の騎士ともなれば、実力は折り紙付きだ。これならば護衛として不足は無いどころか過剰なくらいである。ダンベルラバーと頷き合ったキャサリンは、護衛の申し出を受け入れたのだった。




↓↓本編の雰囲気を粉々に破壊致します。閲覧にはご注意ください↓↓



オマケ~今日も今日とて暇を持て余す茅場の後継者さんPart4~

茅場の後継者(以下KK)「(´;д;`)」

何処かにいる茅場さん(以下何処茅)「KK君、いい加減に泣き止みたまえ(゜ω゜;)」

KK「だって、だって……半年もかけて準備したクリスマスボスが(´∩`。)」

KK「なんなだよ、アイツ。頭おかしいよ……精神負荷を受け入れるって、そんな真似する為にスタミナ切れ実装したんじゃないんだよ(´Д`。)」

何処茅「駄目だ、完全に心が折れている(;・д・)」

何処茅「KK君は天才型だから、1度折れると立ち直るのに時間がかかるんだ。仕方ない、先輩としてここは一肌脱ごう(´゚A゚`)」

何処茅「KK君! このクルージングイベントとは何かな(*^ワ^*)」

KK「え? ああ、それですか。プレイヤーを『あの場所』に連れていくイベントなんですけど、単純な船旅もつまらないので、色々と手を加えたものです( ´・ω・)」

何処茅「コンセプトは悪くないね。豪華客船を舞台にしているのも、オーソドックスだけど評価できるよ。ドレスコード規定も雰囲気に合わせている。よく頑張ったね( ^_^)」

KK「か、茅場さん、急にどうしたんですか(。´-ω・)」

何処茅「KK君、キミの悪い癖は【黒の剣士】に固執し過ぎるところだ。キミはGMとして着実に成長している。その既存概念に捕らわれない自由な発想を大切にしてもらいたいんだ(*ゝω・)」

KK「…………( _ _ )」

何処茅「たとえば、夏に向けたスクミズ実装アップデート企画とか、あざといゴスロリ装備の開発とか、装備だけ溶かすスライム系モンスターの投入とか、もっと楽しんで良いんだよ(。・ω・。)」

KK「……ボクが間違ってました、茅場さん(/ω\)」

何処茅「分かってくれたんだね、KK君(⌒∇⌒)」

KK「現場任せにし過ぎていたトップの怠慢! それこそがボクの敗因! 人の可能性を甘く見ていました(○^ω^○)」







KK「イレギュラー死すべし! イレギュラーを倒す事とは、ボク自身がイレギュラーハンターになる事だ(# ゚Д゚)」







何処茅「……なん、だと(゚ロ゚;)」

KK「こうしちゃいられない! 早速ボクのアバターを作成しないと(´ω`*)」

何処茅「ま、待ちたまえ、KK君! キミのバトルセンスは壊滅的だ! フレンジーボアすら倒せないキミが逆立ちしてもイレギュラーに勝てるわけがないだろう(´ヘ`;)」

KK「ご安心ください、茅場さん! DBOには魔法が実装されているので、魔法使い系キャラで仕上げるつもりです! それにボクは何も直接的な手段に訴える気はありませんよ。狙うポジションは死の商人! 人は人によって滅びるのが必然なんです\(^ω^\)( /^ω^)/」

KK「それに、実は前々から考えていたゴーレムがあるんです! ほら、どうです、可愛いでしょう(>ω・)」

何処茅「な、何だい……この『変なの』は(゚Д゚;)」

KK「嫌だなぁ! もちろん商品ですよ! きっと馬鹿売れして、プレイヤー共はどんどん殺し合うに決まってます。他にもいっぱい考案あるんです。早く開発に取り掛からないと┌( ̄ー ̄)┘」

KK「さぁ、待っていろよ、プレイヤー諸君! すぐにキミ達に素敵な戦争をプレゼントしに行くからね(≧∀≦)」

何処茅「そ、そうだね。頑張りたまえ、KK君(;´▽`)」


~Fin~


↑は本編とは100パーセント関係ありますので、特に気にしないでください。

それでは、136話でまた会いましょう。

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