SAO~デスゲーム/リスタート~   作:マグロ鉱脈

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過去最多の文章量です。
本当は分割しようかとも思いましたが、流れ的に切れ目が無いので止めました。
いつもメモ帳で執筆して、バイト数で分割するかどうか決めているのですが、今回は20キロバイトを余裕で超えてしまいました。


Episode6-7 傭兵の帰還

 一転攻勢とまではいかずとも、キャッティの参戦はオレ達の戦い方を劇的に変える。

 元より連携も何もない。最低限互いを害さないように立ち回りながら、好き勝手に攻撃し、危険を感じたらカバーに入る。ただそれだけだ。

 だが、ボスが2体ともなれば、本来ならば自殺行為ではあるが、それぞれを1対1に持ち込めれば、1人は回復するだけの時間を得られる事になる。

 そして、それが自殺行為にならないのは、元よりオレ達がそれぞれソロで戦っていたが故に乱戦も強敵との単体決戦にも慣れていた事、そして2体で1体分のボス相当のHPしかない事だ。

 苦痛のアルフェリアのHPバーは3本の内の1本が削り終わり、シャドウ・イーターもHPバーが残り1本の上に最後の1本も6割を切っていた。

 だが、決してオレ達も優勢ではない。既に戦闘時間は軽く1時間を超え、動きに精彩さを欠け始めている。

 特に顕著なのがクラディールだ。元よりメインウェポンではなく片手剣を主軸に戦うというストレス、シャドウ・イーターの牽制と苦痛のアルフェリアの多腕攻撃を回避し続けるという攻撃数に対する処理、その2つの負担が徐々に攻撃と回避から防御へと彼のスタイルを移行させつつある。

 回復アイテムも個人が持てる量には限界があり、少量でもダメージの度に回復を繰り返せば在庫は確実に減少する。それは焦りを生み、一歩の踏み込みを狂わせ、更にダメージを負う原因となる。キャッティはそれが如実に表れている。

 オレの場合、1番の不安は武器の耐久値だ。本来ならば長期戦を見込めるはずのクレイモアがダメージを負い、いつ破損してもおかしくない状況だ。かと言って双子鎌も決して耐久値が高い部類ではない。ボス撃破まで持つか否かといったところだろう。

 もちろん、悪い事ばかりではない。火球やブレスの前に目を攻撃され続けたせいか、シャドウ・イーターはそれらの攻撃を控え、牽制に留めている。あくまで肉弾戦に持ち込んでこちらの肝を冷やさせるが、それでも遠距離攻撃をしてこないのは大きな利益だ。

 苦痛のアルフェリアもついに腕を残り8本まで失い、1度にできる魔法攻撃の数も減った上に、常に懐に入り込もうとするクラディールに張りつかれている為にシャドウ・イーターに魔法援護できないでいる。

 一進一退の攻防。確実に互いに削り合っている。だが、このままでは押し切られるのはオレ達の方だろう。その前に、この戦いの流れを決する攻撃を決めねば、敗北するのはオレ達だ。

 

「もう一息よ! 気合を入れていくわよ!」

 

 キャッティが音頭を取り、オレはシャドウ・イーターを右から、彼女は左から回り込む。シャドウ・イーターはオレ達を尻尾で払い除け、そのモーション中にブレスの溜めモーションを被せ、オレに緑の炎を吹き浴びせようとする。最初の1回目と違い、慣れてきたのか、攻撃精度は増したが、回転攻撃の度にオレはシャドウ・イーターの口元から炎が零れていないかチェックしている。迅速な回避行動により命中を免れる。

 ブレスの隙を見てキャッティが腹を斬ろうとするが、それより先にシャドウ・イーターはプレスを仕掛ける。寸前でブレーキをかけ、キャッティは真ん中の脚を斬るに留まり、離脱する。

 四方手裏剣を抜き、オレはシャドウ・イーターに投げつける。もはや目を狙わず、とにかく命中させる事を念頭に入れている。

 今回仕込んであるのはレベル1の麻痺だ。仮に麻痺が入れば儲け物だが、そもそも蓄積能力が数頼りの四方手裏剣では時間を置いて当て続けても意味がない。

 だが、数でごり押ししようにも、そもそも四方手裏剣自体の在庫が既に半分を切っている。火球とブレスの中断の為にも最低限の枚数を残しておかねばならない。ましてや弱点でもない部位に当てても蓄積量は微々たるものだろう。

 シャドウ・イーターが突進をしかけてくる。だが、今度は尾で上手く舵を取り、直線から曲線の攻撃を織り交ぜるようになった。避けきれなかったキャッティがその巨体に弾かれ、大きくHPを失う。倒れて転がる彼女の前にすかさず入り、ブレスを吐くより先に手裏剣を投げて目潰しを行う。

 スタン状態だったのだろう。数秒置いてフラフラと立ち上がったキャッティは燐光紅草を口に含みながら、1度距離を取る。だが、シャドウ・イーターは手負いを逃がすまいと再度の突進攻撃を仕掛ける。

 だが、シャドウ・イーターは転倒も厭わずに強引な鋭角の方向転換を行う。クラディールがキャッティの危機を察知し、苦痛のアルフェリアの腕攻撃をキャッティとシャドウ・イーターを結ぶ直線状に誘発させたのだ。

 徹底的に苦痛のアルフェリアを傷つけまいとするシャドウ・イーターの習性を利用した防御策。それは同時に攻撃のチャンスを生む。オレはクレイモアを横転したシャドウイーターの心臓部があるだろう場所に突き立てる。

 緑色の炎が混じった涎を撒き散らしながら絶叫を上げ、のた打ち回りながら体勢を立て直したシャドウ・イーターは、まるで宿敵のようにオレを睨む。奴のAIにヘイト設定があるかは知らないが、少なくともオレに対しての怒りと憎しみは格別らしい。

 

「これで6本目ぇえええええええええええええええ!」

 

 と、そこにクラディールの雄叫びが響く。宙を舞い、地面に叩き付けられた苦痛のアルフェリアの腕だ。ここぞという時にフランベルジュを抜いてソードスキルを放つクラディールの戦術は、狙いを付けた腕にダメージを蓄積し続け、コンスタントに腕を破壊していく。

 そして、腕を破壊される度に弱体化する苦痛のアルフェリアを守る為に、シャドウ・イーターはより攻撃に重点を置けなくなっていく。

 オレの心臓への一突きはかなりのボーナスが乗ったのか、ソードスキルも≪両手剣≫のボーナス補正が無くとも、シャドウ・イーターの最終バーを2、3パーセントは一気に削ったようだ。ついにイエローゾーンに到達したシャドウ・イーターだが、ついにその隠されたボス能力を解放し始める。

 防御の為にはあって無いような薄い鱗、それが剥げ始め、緑色の火の粉が漏れ始める。

 完全に立ち止まって停止したのは演出か知らないが、この機を逃さずキャッティが柔らかい腹部を斬り裂くも、慌てて彼女は逃げ出す。

 

「気を付けて! 接近するとダメージを受けるわ!」

 

 ここに来て炎系モンスターだけの特権、発熱による攻撃防御か。オレは思わず舌打ちする。

 だが、それは諸刃の能力なのだろう。キャッティが腹部に与えた攻撃はソードスキルでもないも関わらず、通常攻撃ではあり得ない程に減っている。

 ならば一気に攻撃を仕掛けたいと言いたいところだが、キャッティのHPの減少具合からもせいぜい接近して良いのは5秒が限界だろう。それ以上は大きくHPを削られ、その後のカウンターで一撃昇天もなりかねない。

 慎重に立ち回る。オレとキャッティは頷き合うが、それを無視するようにシャドウ・イーターはこれまでにない高速移動を見せる。

 目で追えるレベルではあるが、その巨体の速度が跳ね上がったとなれば、当然回避もより困難になる。しかも制動がいる突進攻撃ではない。ただの移動が突進級の速度なのだ。

 炎による攻撃防御と移動速度の向上。それと引き換えの防御力の低下。試しに手裏剣を投げるが、命中前に燃え尽きてしまう。どうやら生半可な遠距離攻撃は一切通じさせないようだ。

 仮にここにいるのが数を揃えたレイドならば、司令塔の腕にもよるが、恐らく大パニックになっているのではないだろか?

 もはや決死の覚悟を決めた、文字通り最後の切り札を使ったシャドウ・イーターが敵を纏めて葬る為、敵陣を駆け回る。その度に放熱ダメージが与えられ、矢による射撃攻撃はほとんど無力化同然。かなりの混乱が予想されるだろう。

 本来ならばシャドウ・イーターのこの能力もたった3人程度のプレイヤーに追い詰められて解放するものではなかったはずだ。その能力のコンセプトが必ずしも現状で最大限に効力を発揮するものとは考え辛い。

 とはいえ、元より苦戦していたのが、崖っぷちに追い詰められたという意味では、十分にシャドウ・イーターの新たな能力は危険極まりないのだが。

 とりあえずは逃げに徹する。オレがそう思って動いた時だ。

 足が水に捕らえられる。馬鹿なと下を見れば、足首まで黒い水が浸っていた。

 

「おいおい冗談だろ!? さっきまでここは岩場だったはずだろーが!」

 

 思わず怒鳴ってしまうが、そんな事お構いなしにシャドウ・イーターは火の粉を撒き散らしながらオレに突進攻撃をしかける。

 これ以外に回避する方法は無いが、できるか? オレはあえてシャドウ・イーターに突進する。

 シャドウ・イーターの目に驚きが浮かぶ。恐らく奴はオレが回避行動に出ると考え、その為に尾で舵を取る曲線突進に切り替えるつもりだったのだろう。

 受けて立つ。そう言うようにシャドウ・イーターが大口を開け、緑の炎を含んだ涎を垂らしながら牙を剥く。

 突撃攻撃が命中する。まさにその寸前でオレはスライディングをし、その腹部をすり抜ける。通過中に火の粉を浴びてダメージを受けるが、速度上昇と放熱で強化された突進攻撃に比べれば微々たるものだ。逆に双子鎌で腹部を引き裂いていく。

 尾で追撃しようにも、自らが高速化したことによるタイミングのズレか、オレを追い越してから1秒も経たない頃に激しい水飛沫を上げて尾の叩き付け攻撃が発生する。

 レベル1の毒の蓄積を免れるべく、岩場へとオレは逃げ込む。レベル1の毒が発生する蓄積を免れ、オレは素早く周囲を見回す。

 戦闘に没頭し、なおかつ光源が壁に配置された燭台の緑色の火しか無かったせいで分かり辛かったが、水溜まりの面積が増加し、泥と岩場を水没させ始めている。

 

「水が……逆流し始めている!?」

 

 その原因にいち早く気づいたのはキャッティだ。これまで黒い水はこのボス部屋から洞窟を通じて外に流れるばかりだったが、今や逆に、緩やかにだが水がボス部屋の方へと流れ込んでいる。

 

「チッ! 恐らく雨だ! 外は大雨で、この地下に大量の雨水が流入してきやがった!」

 

 クラディールが言うように、雨が最も確率が高い原因だろう。

 そもそもこのダンジョンは所々に水没していたと見られる要素があった。恐らく、大雨などでこの地下の排水能力を上回る水が、道中にあったあの無数の滝によって供給されてしまった時、このダンジョンは一時的に水没するようになっているのだろう。

 思えばオレ達が街を出発する以前に雨天の気配があった。オレ達は既にかなり長時間、このダンジョンに潜っている。その間に地上では大雨が降っていたとしたら?

 以前クラディールはミュウを引っ掛ける為にスコールの嘘を吐いたが、まさに嘘から出た真と言ったところか。まるで嬉しくないが。

 そもそもこのステージ自体が密林……まさに亜熱帯といったステージだったのだ。もしかしたら、このステージは長期間の快晴と長期間の雨天を繰り返す事になっていたのかもしれない。

 オレがいたのは所詮は約10日間程度だ。その程度ステージの全容を把握したと思い込んでいた事自体が間違いだったという訳か。

 

「時間制限のオマケ付きか。コイツら水没して死ぬと思うか?」

 

「死なないでしょうね。ここをねぐらにしてるような連中よ」

 

「だよな。まぁ、この水没スピードならあと1時間くらいなら何とか戦えるだろ」

 

 足場になる岩場の面積と水没した面積が6:4か。レベル1の毒消しアイテムの在庫は十分だし、オレの毒耐性は高いから、最悪水による移動速度制限を受けながらでも≪歩法≫スキルを活用すれば、ギリギリ戦えない事は無い。だが、キャッティとクラディールはそうもいかないだろう。

 何としても短期間でシャドウ・イーターだけでも斃さねばならない。だが、そのシャドウ・イーターは燃え盛り、オレ達を近づかせまいとする。

 今この瞬間もクラディールは1人で苦痛のアルフェリアを引き受けてくれている。既に彼の盾は欠け、全壊まで時間の問題だろう。どちらにしても時間は無かった。そう頭を切り替える。

 燐光紅草を口に含み、回復しながらオレは連続火球を回避しながらシャドウ・イーターへと接近する。火の粉を放出する事により、脆弱な遠距離攻撃を回避できるようになった為か、火球やブレスの阻止ができなくなってしまった。弱点が無くなり、今までの鬱憤を晴らすようにシャドウ・イーターは火球を連射する。

 

「糞が! これじゃ近づけねーぞ! 馬鹿みたいに撃ち過ぎなんだよ! 加減を知りやがれ!」

 

 オレの罵倒が効いたのかは知らないが、途端にシャドウ・イーターは口を閉ざし、火球もブレスも止める。それだけではない。これまで放出していた火の粉が消え失せた。

 何かの罠か。オレは慎重に距離を取ったまま、安易にシャドウ・イーターの間合いに入らないようにする。

 だが、時として慎重とは臆病となり、決定的なチャンスをつかむ機会を逃す事になる。

 攻めない者に勝利の女神は微笑まない。そんな事、これまで体験した幾多の戦いで分かっていたはずなのに、オレは見逃してしまった。

 息絶え絶えに、シャドウ・イーターは特に黒い水が濃い場所に向かうと、その頭を突っ込んで水を飲み始める。そして、数秒の後に再び力を取り戻し、全身から火の粉を放出し始める。

 補給行動か。まるで影のように黒い水を飲む姿……なるほど、確かに『影を喰らう者』に相応しいだろう。絶好のチャンスを見逃したのは怨めしいが、あの攻撃防御が有限、その上、火球とブレスによって時間短縮できるという大きな情報を得た。

 先程の水の話と同じだ。恐らくシャドウ・イーターには一定期間で使用できる緑の炎の量が決定しているのだろう。普段は供給量と蓄積量だけで消費量を賄う事が可能だが、切り札たる火の粉の放出を行うと急速に蓄積量を失う事になる。そして、先程の連撃で蓄積量を失い、なおかつ供給量が消費量を大きく下回り、ガス欠状態になってしまったのだ。

 概念としてはオレ達のスタミナと同じだ。今の行動は、いわばスタミナ切れで何もできなくなっていた所にスタミナ回復させるアイテムたる黒い水を補給した。それだけの話だ。

 試してみるか。流れを変える決定打を。オレは双子鎌も両腰に差す。なおかつクレイモアも抜かない。

 

「どういうつもり? まさか諦めた?」

 

 微塵もそう思っていないといった顔でキャッティは悪戯っぽくオレに尋ねてくる。

 返すのは無言。諦めたわけではないが、相変わらずオレらしい無茶と無謀と無理を押し通す上に、ほとんどオレの第6感に従った作戦だ。

 だが、オレは何よりも自身の第6感を……本能を信頼している。鼻が利くのもそうだし、背筋に走る冷たい危機感も、何もかも、オレ自身が誇りに思う先祖代々受け継いできた狩人の血がもたらす最大の武器だと信じている。

 無手となろうともシャドウ・イーターは攻撃の手を緩めない。当然だ。自らの限界を搾り尽くしているのは奴の方だ。短期決戦は望むところだろう。

 最初に仕掛けてきたのは突進攻撃。また腹をすり抜けようかと、先程と同様にあえてシャドウ・イーターに突進するも、オレの中の本能が囁く。

 

『違う。奴はそれを誘っている』

 

 選択するのは奴を限界まで引き付けてのスプリットターン。それと同時に繰り出されたのは腹部によるプレス攻撃だ。あのまま腹下をすり抜けようとしていたら、オレは押し潰されていただろう。

 今度は連続火球だ。これを潜り抜けながら距離を狭めるか?

 

『駄目だ。利用して距離を取れ。姿勢を低くしろ』

 

 オレはあえて爆風を受けて体勢を派手に崩し、そのまま地べたを転がる。その頭上を、いつの間にか溜めモーションを発動させた苦痛のアルフェリアの口内から放出された黒い閃光が通り抜ける。

 

「す、凄い」

 

 何を呆けてるか知らないが、そんなキャッティの呟きをオレの耳は拾う。

 より精神の深部へ潜る……昔のように研ぎ澄ます。SAOの頃の、常にギリギリの戦いに身を投じていた頃に。

 思い出せ。より過酷な戦いがあったはずだ。その時、最も役立ったのは経験に基づいた推測だったか? それともアイテムや攻撃に対する知識だったか? 違うはずだ。いつだってオレを救ってきてくれたのは、他でもない、オレ自身の脳髄が叫ぶ本能の声だったはずだ。

 

「おじぃちゃん。オレは……」

 

 過ぎったのは、オレをヤツメ様と呼んだおじぃちゃんの顔だ。誰よりもオレを狩人としてこの本能を買ってくれて、認めてくれていた、大好きなおじぃちゃんの顔だ。

 オレはヤツメ様じゃない。オレは……オレは……

 

「オレは狩人だ! そうだろう!? 糞トカゲぇええええええええええええ!」

 

 ブレスを掠めながらの最大限の接近。一見すれば自ら攻撃防御に突っ込む上に相手の間合いに正面から入り込む無謀。だが、オレの本能は今こそが最大の好機と、垂涎している。

 ブレスの終了と同時にシャドウ・イーターの火の粉が消える。キャッティもまた、このチャンスを……そして補給行動を阻害すべく駆ける。だが、ブレスと連続火球で間合いを離された彼女では間に合わないだろう。

 では、オレだけで妨害できるか? 双子鎌でソードスキルを発動させれば可能かもしれないが、確実ではない。

 だから、選択するのは四方手裏剣。両手のそれぞれの指の間に挟み、まるで爪のようにそれを放つ。スタミナ切れの状態のように、完全に無防備となり、通常状態でもあったはずの目を守る緑の炎すら失ったシャドウ・イーター、その巨大な1つ目に。

 のけ反り、鼻先にのったオレを掴み下ろそうと前肢を伸ばすが、その鋭い爪は巨大な1つ目が逆に仇となって自らを傷つけるばかりだ。オレはその間にもシャドウ・イーターの爪を避け、あるいは掠りながら、ひたすら手裏剣を用いた近接連撃を喰らわす。

 途端に顎から地面に叩き付けたシャドウ・イーターによってオレは地面に放り投げられる。幸いにも黒い水に衝突し、口内に水が流入して一気に毒が蓄積するが、落下によるダメージは微量も無かった。

 すぐに復帰したオレが見たのは、狙い通りレベル1の麻痺状態になったシャドウ・イーターの姿だ。

 キャッティは≪カタナ≫のソードスキル【轟鬼】を発動させる。上段に構えたカタナを長い溜めモーションの果てに射程距離も歩幅一歩分と短い単発ソードスキルで、まず余程鈍いモンスターでもない限り当たらない、俗に『産廃』なんて嘲笑われていたソードスキルだが、こうした麻痺中のモンスターにはその極めて高い威力を発揮する。しかも狙ったのは弱点だろう、今は守るものがない大きな1つ目だ。

 嘲笑される一方でSAOで多くのプレイヤーに≪カタナ≫の恐ろしさを叩き込んだ、まさしく鬼の一撃のソードスキルはシャドウ・イーターのHPを1割も奪い取る。どうやら火の粉の放出が無くなった時点で防御力低下は無くなるらしい。仮に防御力低下状態が継続していたならば、今の一撃で残りのHPを全て奪い取っていただろう。

 目を集中して狙うキャッティの邪魔をせず、オレが狙うのはこれまでダメージが蓄積させ続けた右前肢だ。

 双子鎌を構え、≪戦斧≫のソードスキル【パンプキンペイン】を発動させる。SAOでは『カボチャ砕き』と親しまれた、乱雑な連続系ソードスキルだ。無論、これも両手同時に発動させる。元より火力が低い双子鎌は、こうして片手使用のソードスキルを左右の手で重ねる事で火力を一気にブーストできる仕様なのだろうと、オレはぼんやりと思う。

 麻痺で叫ぶこともできないシャドウ・イーターの右前肢が斬り飛ばされる。それを見届けた段階でオレはキャッティをラリアット気味でシャドウ・イーターから引き離して離脱する。

 

「ぐげぼぉ!?」

 

 距離を稼いでオレが停止すると同時にキャッティは黒い水に突っ込んだ。幸いにもすぐに転がるようにして岩場に上がったお陰でレベル1の毒にはならなかったようだ。

 レベル1の麻痺は30秒。だが、シャドウ・イーターは15秒目で復帰の兆しを見せ始めた。それ以前に本能の警鐘があった為、即座に離脱を決めたが、どうやら正解だったらしい。

 やはり命を相手にするのは良い。獣じみた本能を持つ相手ならば尚更だ。これぞ狩人の戦いだ。山を守り、獣を狩り、神を祀り、時としてその神たる化物を相手にしてきた先祖達の血のざわつきが、クゥリという仮想世界で命を得たプレイヤーではなく、『久藤 篝』という人間の脳髄に生きた実感を与えてくれる。

 シャドウ・イーター……DBO始まって以来の最高の敵だ。SAOではお前よりもずっと厄介な難敵はいたが、ここまで『命』を感じる敵はいなかった。プレイヤーですら、牙を抜かれた子犬のような奴ばかりだった。思えば、PoH……お前だけがオレがオレらしくなれる殺し合いの相手だった。あの時の戦いは今でも思い出せば指先が震える。

 このDBOでは、あのコボルド王すらもここまでオレの脳髄に釘を打ち付けるような痺れを与えてくれなかった。奴は理性的であり、知性的過ぎた。本能という領域に到達できなかったか、持っていたとしても戦いでは捨て去った。ああいう王にして『戦士』の戦い方も嫌いではないが、それだけでは物足りない。

 ダークライダー……そうだ。奴からは似たようなものを感じた。所詮オレが戦ったのは奴のレプリカだ。ならばオリジナルはどれ程の……

 

「あ、あなた……どうしてそんな顔を……」

 

 文句でも言いたいのか、オレの深く深く研ぎ澄まされていた意識を濁らせるように、キャッティの言葉が純化を辿っていたオレの意識を元に戻してしまう。

 

「悪い悪い。後でメシ奢ってやるからラリアットの事は許せって」

 

 キャッティのまるで恐ろしい物でもみるような表情と目に、オレは随分と怒らせたみたいだなと反省する。シノンを蹴飛ばした時もそうだが、やはりおんにゃのこは丁重に扱わないとな。何せSAOでは女性プレイヤーと密接に共闘するなんて片手の数ほども無かったし、いい加減に学習しなければ。

 意識は再びシャドウ・イーターに割かれる。どうやら右前肢を失っても歩行には問題ないらしい。だが、移動速度は低減するだろう。油断はできない。燐光紅草を食し、先程の爆発のダメージ分回復しておく。

 黒い水を補給するかと思ったが、どうやらそれは隙になると判断したらしく、口内に緑色の炎を漏らし始める。今までよりも溜めのモーションが長いのは、やはり蓄積量が無くなり、供給量で必死に攻撃分を賄おうとしているからだろう。

 だが、そうして放とうとした火球は、放出の威力に耐えきれずに体勢を崩したシャドウ・イーターによって、他でもない守りたかったはずの苦痛のアルフェリアに命中してしまう。

 まさかの敵側のサポートに驚きながら、クラディールは大きな隙となった内にまた1本、苦痛のアルフェリアの腕を斬り落とす。

 シャドウ・イーターは嘆くように喉を鳴らす。もはや奴のHPはレッドゾーンだ。ここまで来れば、後は油断することなく攻め続ければ撃破も可能だろう。

 オレとキャッティは左右に分かれ、最後の攻撃を仕掛ける。だが、シャドウ・イーターはオレ達を迎撃しようとする気配は無い。静かにその場で佇んでいるだけだ。

 そして、小さく、だが、確かにシャドウ・イーターの口が開き、『それ』が漏れた。

 

 

 

『ゴメ、ン、ネ。ズッ、ト、マモッテ、アゲル、ッテ、イッタ、ケド。アルフェ、リア……ゴメ、ンネ』

 

 

 

 危険。冷却されていたオレの本能が、冷え込みながらも発したのは、手負いの獣が行う最後の攻撃。その矛先はキャッティだ。

 ラビットダッシュを発動させ、オレはキャッティの横腹に強烈な蹴りを見舞う。言った直ぐ傍から優しくない扱い方だが、今は命の方が優先だ。

 完全に不意打ちだったせいか、キャッティはオレの蹴りを見事に受け、そのまま蹴飛ばされる。

 それとほぼ同時に全身の剥げた鱗、火の粉を放出していた部分から、まるでブースターのように緑の炎を放出し、その巨体を加速させたシャドウ・イーターが、これまでにない加速で突進攻撃を仕掛ける。

 それは自らの肉体を破壊しながら仕掛ける、自らの血肉を焼いてしかける決死の特攻。気づけばオレの手はクレイモアを握り、その場に突き立てていた。凍り付きかけていた本能が最後にオレを守る為に、その緊急防御を行う。

 巨体と激突し、岩場を削り、ついに切っ先が砕け、そのまま押し込まれながらクレイモアは砕ける。咄嗟に双子鎌を抜いて防御に使う。満タンに近かったオレのHPは削りきれなかったようで、5割を残すに止まる。双子鎌も軋むだけで済み、なんとか折れずに済んだ。

 だが、スタン状態になったオレを逃がさないと言わんばかりに、シャドウ・イーターは残された左前肢の手を振り上げ、壁際まで追い詰められたオレを叩き潰さんとする。

 刹那のタイミングでスタン状態から復帰したオレは何とか体を動かし、直撃は回避するも、左腕をシャドウイーターの左手と壁で挟まれ、完全に拘束される。しかもこの一撃がオレのHPを3割、いや2割半まで削り取る。

 この動きの速さ……見切られていた! 最初からオレがキャッティを庇うと見抜いて、最後の賭けに出てやがった! オレの本能を、コイツは自らの本能で察知して、作戦を立てていた!

 

『オマエ……キケン! アル、フェ、リア……マモ、ル! マ、モル! マモ、ル! マ……モル! ダ、カラ、ココデ……シネ!』

 

 まるで言葉を覚えたての子どものように、シャドウ・イーターは宣言する。

 ああ、そうか。お前はただ守りたかっただけなのか。

 オレは最初、シャドウ・イーターと苦痛のアルフェリアは主従関係にあると考えていた。シャドウ・イーターの方が上にある、彼女を支配する関係にあると。

 だが、これまで彼女を守ろうとする姿を見て違うと分かった。このバケモノは、ただ自分の愛する者……ご主人様を守ろうとしているだけなのだ。

 オレを拘束したまま、自分の左手を巻き込むのも厭わず、シャドウ・イーターはブレスの溜めモーションを取る。

 仮にここでオレを殺したとしても、先程の自らを燃やしながらの突進分と自分をまきこむブレスを受ける分のダメージを考慮すれば、もはや碌に交戦できない程にHPは失われるだろう。

 正しく決死。自らの終わりを厭わない殉死の覚悟。命を持つ者だからこそ放てる、自らの死すら受容して牙を剥く恐ろしい戦意。

 オレを助けるべく受けた蹴りから体勢を立て直して走り出そうとするキャッティ、オレに駆け寄ろうとするが苦痛のアルフェリアによって妨害されるクラディール、その2人が視界に映る。

 2人とも邪魔をするな。これはオレの物だ。コイツがオレを、愛する者を守る為にどんな事をしてでも排除せねばならない最大の敵として認めてくれたからこそ、オレに向けてくる最大限の敬意を払った殺意だ。

 

 

「そう……オレだけの戦いだ!」

 

 

 緑の閃光。これまでにない強烈なブレス。それがシャドウ・イーターの口内から解放される。

 それは確かにオレの体を焼き尽くした。

 勝利の確信。それが巨大な1つ目に滲む。自らの全てを投げ打った最後の攻撃だ。それも当然だろう。そして、その代償分の成果は得た。

 

 オレの体を……体の1部である左腕を僅かな欠片も無く消し去った。

 

 ふわりとオレはシャドウ・イーターの首筋に着地する。

 使ったのは≪歩法≫のソードスキル【ムーンジャンプ】。その場で高く跳び、1回転するだけのソードスキルであり、ジャンプの間はそれなりの速度が出るが、最高到達点から着地まで無防備になる為、使いどころが難しいソードスキルである。本来ならば回避よりも踏破が困難な高い壁などに利用すべきものなのだろう。

 久しぶりに味わう凄まじい不快感。オレは失った左腕を……肩から先を自ら斬り落とした事を、シャドウ・イーターに最大の賛辞として贈る。だが、それは言葉で示す気はない。

 ソードスキル発動。産廃四天王とすら言われた≪戦斧≫の単発突進型ソードスキル【アースライザー】。自らの左腕を切断した双子鎌の片割れを逆手に持ち、姿勢を低くしてシャドウ・イーターに突き立てる。

 アースライザーが産廃たる理由。それはその威力とモーションにある。と言うのも、アースライザーは戦斧を地面に刺し、助走し、相手に接触する段階で斬り上げるというモーションなのだが、助走距離が短ければまともな威力が出ず、また直進しかできない為に見切られ易い。オマケにボス戦では武器が突き刺さりにくい硬質の素材の床が多い為に、巨体が多くてソードスキルも当てやすいボス戦ではそもそも使用できない事が多々ある。

 先程キャッティが見せた轟鬼とは違い、正しく産廃。まさしく活用方法の欠片も無いソードスキル。

 だが、それはある日、思いもよらない形で脚光を浴びる。あの【閃光】がこのソードスキルを徹底分析し、1つの……恐ろしく扱い難い活用方法を編み出したのだ。

 このソードスキルの利点は助走距離によって火力が増すという点、そして助走段階からソードスキルが発動している点だ。

 つまり『巨大なモンスター』の背中で発動させれば、ソードスキルで斬りながら疾走して離脱できるという点だ。

 当初こそ『さすが【閃光】様だぜ!』と戦斧愛好者にもてはやされたが、そもそも巨大モンスターなど数える程度しかおらず、背中にのる事自体がリスキーの上、背中に乗るような暇があるなら普通にソードスキルを当てた方が効率が良いと、結局は産廃の烙印を消し去る事が出来なかった。

 さぁ、味わえ。散々SAOで産廃扱いされたアースライザーの威力を。

 助走開始。発動したソードスキルの赤い光は、その刃と共にシャドウ・イーターの背中を斬り裂いていく。

 オレを自らのブレスで完全に見失っていたシャドウ・イーターは、斬られ始めてようやく自らの決死の攻撃が不発に終わった事を悟ったのだろう。オレを叩き潰そうと尾を振り上げ、自らの背中に叩き付けようとする。

 だが、そこまでは予想の範囲内だ。もはや自らの命に執着しないコイツならば、必ず自分のダメージも厭わずにオレを攻撃してくるだろうと分かっていた。

 助走完了。尾が迫り来る中、一気に双子鎌の片割れを突き上げる。それは尾と交差し、その肉に食い込み、赤黒い光を散らしながら競り勝つ。

 切断こそできなかったが、半分まで断った尾を振るいながら、アースライザー終了後の滞空状態……想定よりも威力が出過ぎて宙で無防備を晒すオレに、もはや肉眼では確認できない程のHPを残したシャドウ・イーターが向いてその口内で緑色の炎を溢れさせる。

 ブレス……いや、あれよりもわずかに溜めモーションが短い火球だろう。だが、既にヤツは火球の威力に耐えきれず、狙いを付けられないはず。ましてや、自らのブレスで残されていた左前肢も焼け落ちてしまった。これでは反動に余計に耐えられないだろう。

 だが、シャドウ・イーターは残された4本の脚、その爪全てを深く地面に突き立てる。なるほど。あれならば反動に耐え、比較的近距離のオレにも火球を命中させられるだろう。

 オレは双子鎌を手放し、乱暴に最後の手裏剣をつかむ。残されたのはたったの1枚。だが、恐らく≪投擲≫のボーナスもソードスキルも無しでも奴のHPを削り切れるだろう。

 早撃ち勝負か。悪くない。

 

「悪くないぞ、シャドウ・イータァアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 初めてオレはこの最高の敵の名を呼ぶ。それと同時に四方手裏剣をその巨大な1つ目に投擲する。火球とブレス前はその目が無防備にある。奴もこの最後の一瞬、どちらが速いかの世界で勝負を挑んだはずだ。

 背筋がぞくぞくする。危機感や恐怖からではない。もっと別の何か……オレを焼き焦がすような何かがオレを駆け巡る。

 着地し、降って来た双子鎌を右手でキャッチし、オレは左腕の切断面から漏れる赤黒い光を目にするも止血包帯も使わない。

 背後で今までと異なる悲鳴を上げる苦痛のアルフェリアを感じながら、その眼球に手裏剣が突き刺さったシャドウ・イーターを見つめる。

 

『アルフェ……リア……ゴメ、ンネ……タスケ、ラレ……』

 

 それを最期に、シャドウ・イーターは、どす黒い体を溶かし、緑の炎を燃え上がらせる。

 悪いな。早撃ち勝負は、どうやらオレの勝ちだったようだ。

 その灰とも言えぬ黒い泥の中、オレが見たのは1匹の、まだ幼体だろう、小さなマッド・イーターの亡骸だ。その首にはピンクのリボンが結ばれている。

 オレが最初に感じた既視感、そして本能が選択した麻痺攻撃、それはこの正体を見れば正解だったのだろう。シャドウ・イーターはマッド・イーターだからこそ、あの外見であり、たとえボスになろうとも麻痺に脆弱だった。

 だが、そんな事はどうでも良い。そんなのはつまらない答え合わせだ。

 

「あんな姿になったご主人様でも守ろうとしてたんだな。自分がどんなバケモノになろうとも」

 

 苦痛のアルフェリア。苦痛から逃れる為、暴れる以外にできない哀れな女。そんな女をご主人様として愛し、守ろうとしたのは、こんな小さな1匹の彼女のペット……いや、友達か。

 守る事しか知らなかった。守ることができなかったからこそ、それ以外に彼女の為にできる事が分からなかった。

 見捨てる事など……絶対にできなかった。

 

「守るんじゃねーんだよ。殺すしかねーだろうが。あんな姿になって、苦しがってるんだ。それ以外にねーじゃねーか。それ以外に……救う方法なんてのはさ」

 

 ボス戦の最中なのは分かっている。だが、もはや胸の内で秘めておくだけなどできない。

 この世界で、生きている奴らがいる。そして、そいつらはオレ達と殺し合い、その命を魅せ付け、散っている。

 この世界では、たとえ電脳の意識を持とうとも、生きている存在がいる。

 それは腐敗のコボルド王であり、ダークライダーであり、あの幽霊の少女であり、シャドウ・イーターであり、恐らく……苦痛のアルフェリアも同様なのだろう。

 

「お前のお友達を救ってやるよ。だから、コレを貰うぜ?」

 

 ピンクのリボンを手に取る。アイテムストレージに収容できるらしく、アイテム名は【親愛の証】だ。今はその詳細を見る暇はない。戦っている仲間がいる。彼らの元に急がねばならない。

 オレは傭兵だ。報酬を貰ってこそ依頼を受ける。今回はご本人様からのご依頼ではないが、お友達が救われたならばコイツも赦してくれるだろう。たとえ、苦痛のアルフェリアを守ろうというコイツの遺志を蔑ろにするものだとしても。

 だが、最期の最後に、シャドウ・イーターが口にしたのは守れなかった事ではなく、助けられなかった事だ。

 オレは思う。きっと苦痛のアルフェリアがバケモノになってしまった事を、だれよりも悔やんでいたのはシャドウ・イーターだったのだと。

 もう助けることはできない。だが、苦痛から解放という形で救うことはできる。

 せめて救いのある死を。ただボスだから斃すではなく、その苦痛から解放する為の死を。それがせめてもの情けだ。

 片腕になって持てる重荷は減ったのに、無駄に新しい物を背負い込んでしまった。オレはそこまで万能ではないが、無理と無茶と無謀は代名詞だ。

 これくらいの依頼、必ずやり遂げてやるよ。

 




30話を突破して、主人公がようやく傭兵精神を取り戻しました。
何とかあらすじ詐欺にならなくてよかったと思います。
これから先は傭兵の醍醐味である『騙して悪いが』や『ブリーフィング内容と違う』を散々味わってもらいたいと思います。

それでは皆さんの素敵な傭兵ライフを34話に願って、

Let's MORE DEBAN!

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