SAO~デスゲーム/リスタート~   作:マグロ鉱脈

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文字数も最多ならばエピソードの毎の話数も最多になってしまいました。
消化試合のような気もしますが、きっちりと書いていきたいと思います。
シャドウ・イーターが強過ぎたんです。
それに比べれば苦痛のアルフェリアは、もう少し強くしても良かったかなと書いていて後悔しました。


Episode6-8 堕ちた者達

「あなたって死にたがりなの!? 頭のネジの締め方が何本かおかしいと思ってたけど、ここまで馬鹿だったなんて思わなかったわよ!」

 

 キャッティに合流直後に口に燐光紅草を押し込まれ、止血包帯で欠損によるHP流出を止めてもらい、オレは口内に広がる草の味を堪能しながら随分と心配をかけたみたいだと漠然と思う。

 まぁ、確かにオレはHPがレッドゾーンだったし、彼女からすれば自分の身代わりで仲間が死にかけたように映ったのだろう。

 

「死なねーよ。大事な依頼があるからな。それよりも、さっさとアルフェリアを斃すぞ。このまま放っておくわけにはいかねーからな」

 

 シャドウ・イーターから勝手に受託した依頼。苦痛のアルフェリアを何としても斃し、その苦痛から解放する。それは一刻も早く成し遂げねばならない。

 だが、クラディールはまさしく馬鹿でも見るかのように、オレの参戦を首を横に振って拒否する。

 

「せめてフルまでHPを回復させてから物を言え、アホガキがァ。スタミナも危険域だろうが」

 

 クラディールの言う通りではある。まだ苦痛のアルフェリアのHPは2本目のバーが3割程度残っている。逆に言えば、これまでほぼクラディール単身で半分近いHPを削ったという事になる。

 集中力の欠如が目立ってはいるが、苦痛のアルフェリアはもはや強敵ではない。3本腕泥人間を生み出すこともできず、攻撃の要である多腕も半分まで減り、切り札であるどす黒い波動と口から放つ閃光は溜めモーションがあからさま過ぎて回避は簡単だ。

 十分にオレも回復を済ませ、スタミナも充実した頃に参戦する。シャドウ・イーターと勝手にではあるが、前報酬で以来契約した手前、せめてオレの手でトドメは刺したいところだ。ラストアタックボーナスがオレに入って高確率でレアアイテムも入手できるだろうが、そんな物は苦痛のアルフェリアをこれまで抑え続けてくれたクラディールにでも押し付ければ良い。

 とはいえ、そうなるとライバルは仲間の2人という事になる。キャッティはカタナの耐久値にそろそろ不安が出ているから攻撃も慎重だ。クラディールも集中力が切れた上に盾は半壊状態であり、フランベルジュも完全破損寸前。そして、オレ自身もクレイモアを失い、手裏剣は残数無く、双子鎌も片割れは落としたまま、右手に残ったものだけである。

 オレ達も苦痛のアルフェリアも火力不足が顕著になりつつあるが、1番ラッシュがかけられるのは武器破損のリスクさえ恐れなければキャッティだ。だとするならば、トドメを刺す確率が1番高いのはキャッティだ。

 それに何より、既に足場となる岩場は全体の3割まで減り、大半が水没してしまっている。脱出の事も考えれば、残り30分以内に決着を付けねばならないだろう。

 

「あー、そう言えばだけどよ、あの馬鹿はどうしたんだよ?」

 

 これで残り腕の数も5本。オレは関節が4つしかない、やや太めの腕を斬り飛ばす。元々クラディールがある程度ダメージを蓄積していたものを横取りした形だが、腕を幾ら斬ったところで個人にボーナスは入らないので、クラディールも手間が省けたと言わんばかりに次の腕に取り掛かっている。

 まずは腕を全て斬り飛ばし、安全を確保した上で斃す。それが今のオレ達が無言で共有している作戦だ。下手にラッシュをかけて腕で離脱を妨害されてどす黒い波動を直撃してしまう……なんて事も十分あり得るからだ。

 苦痛のアルフェリア自体はHPも防御力も低い。攻撃手段さえ時間をかけて奪い尽せば、後は出が速いソードスキルを3人で連発すれば数分とかからずに撃破も可能になるだろう。

 

「あの馬鹿って、あのプレイヤーの事? あの船着き場まで連れて行って、それで終わり。脱出まで面倒見てたら貴方達の救援に来れないじゃない」

 

 キャッティがオレの話に乗って来て、事の顛末を教えてくれる。

 今にして思えば、あの野郎も哀れな奴だ。仲間に見捨てられ、暗い地下で独り死を待つだけ。しかも仲間を引き寄せる為の餌として無駄に嬲られ続けたに違いない。

 腐ってもこんなダンジョンに挑んだ連中だ。それなりの上昇志向があるはずだ。だが、今回の1件でリタイアするだろう。もう彼らの心は折れた。1度挫折すれば、そう簡単に戦場に帰還する事などできない。

 

「ゴキブリはゴキブリらしく残飯を漁ってりゃ良いものを。欲を掻いて身の丈以上を望むから破滅するんだよ」

 

「クラディール先生は辛辣だな。オレでもちょっと同情してるのに」

 

「……真っ先に見捨てた事を肯定した奴の発言じゃねぇなァ」

 

「そうよね。この人でなし」

 

 オレも人の心を持つ身として、これ以上なじられたら泣いてしまう。

 ついにアルフェリアのHPが最終バーに突入した事を目にしつつ、オレはどうにか2人とも……特にクラディールはリラックスできたみたいだなと、一安心する。

 過度の集中状態は精神を削り取り、それは些細なミスを誘発する。ましてや集中力が下落している状態ならば尚更だ。

 だが、こうして互いにまだ余裕があると感じられるような、自分が気張る必要はないと油断はせずとも肩の力を抜けるような、そんな会話を挟めば気も楽になる。そして、それが結果的に延命に繋がる。

 

「……あのさ、2人に言いたい事があるんだけど、良い?」

 

 と、キャッティが何やら話したい事があるような、殺し合いの最中に相応しくない、何処か爽やかな表情を浮かべる。まぁ、彼らからすればこれは苦境続きのボス戦であり、相手の命を奪うという感覚は無いのだろう。

 オレの場合、既に苦痛のアルフェリアを1つの命として認めてしまった。故にこれは単なるボス撃破ではなく、命を奪う『殺し』と認識してしまっている。その辺りの認識の違いか。

 だが、どうにも重要そうな話らしく、オレもクラディールも無言で認可を下ろす。

 

「私さ、今パーティに誘われてるんだ。だから、それを受けようと思う」

 

「おい、止めろ! 今すぐ口を閉ざせ、馬鹿!」

 

「ガキの言う通りだァ。それ以上は死亡フラグって言うんだよ」

 

 この女は何という恐ろしい真似をしでかすのだろうか。この場面で、明らかにそれは『私、今から死にます』って発言だろうが。

 オレとクラディールに同時に責められ、キャッティは押し黙る。だが、すぐに決心したように、再度口を開く。

 

「ううん。今だからこそ言いたいの。クゥリ……クラディール……ありがとう。私だけだったら決心が付かなかった。私だけだったら、迷ったまま、何も選択できないまま、惰性のままにソロを続けて、きっと何処かで死んでた。だから、本当にありがとう。私は、これから仲間と一緒にこの世界を生きてみる。誰も見捨てないで、誰かが見捨てられていたらこの手で助けながら生きたいの」

 

 オレはともかく、クラディールも彼女に何か言ったのだろうか? まぁ、それは詮索しても仕方がない話だ。

 憑き物が落ちたような顔をしたキャッティに、オレは自然と口元が綻ぶ。彼女は羽毛のように自分を守ってくれる孤独の中で生きるのを止め、求めていた仲間との日々を選んだ。その選択の手助けをできたのならば、オレも誇らしい。

 クラディールは恥ずかしいのか、苦痛のアルフェリアからさらに1本腕を奪い、ひたすら戦いへと気持ちをぶつけている。存外、オレよりも彼の方が素直ではないのかもしれない。

 

「うん。そっか。それが良い。それが良いに決まってる」

 

「へぇ」

 

「ほぉ」

 

 と、オレの発言が何か癪に障ったのか、2人とも気持ち悪い笑顔を浮かべる。そんなに気に喰わない事を言っただろうか?

 

「いつも生意気そうな顔してるけど、可愛い顔で笑えるじゃない。もしかして、そっちが素なの?」

 

「キャッティ、きっとアレだ。反抗期でついつい母親に口汚い乱暴な態度を取っちまって、そのまま癖になって治らなくなっちまったんだ」

 

「失敬な! オレは母さんには優等生面を崩さない良い子ちゃんだ、ボケが!」

 

 ハッ! し、しまった! 思わず零れた失言をこの性悪2人が見逃さないはずがなく、ニヤニヤしながら苦痛のアルフェリアの攻撃を避けている。器用過ぎるだろ、おい。

 とはいえ、オレが口汚くなったのはSAO時代だ。散々女プレイヤーと間違えられた挙句、コンプレックスを拗らせてこんな風になってしまったのだ。帰還後についつい母さんにこの口調で話しかけてしまい、大泣きされて以降は細心の注意を払って口調には気を付けて家族とは会話するようにしている。

 話題変更。閑話休題。リラックスも過ぎると油断になる。ほとんど消化試合だが、まだ戦いは終わっていないのだ。

 キャッティが≪カタナ≫の回転型ソードスキル【風鈴風車】でクラディールとオレが斬りつけたばかりの手首を狙い、見事に切断する。姿勢を低くした状態から地を這うような回転切りである風鈴風車は、叩き付け攻撃をした直後で狙いにくい苦痛のアルフェリアの手首を狙うには適しているソードスキルだろう。

 これで残り3本。単純計算で1人1本を相手取れば良いだけだ。

 元より速度も無い腕攻撃だ。あくまで数による飽和攻撃と避けづらい薙ぎ払いが近接主体の苦痛のアルフェリアは、既に武器を失ったに等しい。

 だが、ボスの本番はいずれも最終HPバーに到達してからだ。SAOでもDBOでもコンセプトは変わらないだろう。必ず最終HPバーでは、何かしらの能力を解放してくるに違いない。

 そして、苦痛のアルフェリアの最終HPバーがイエローゾーンに入ると同時に、その変化は起きた。

 苦痛のアルフェリアの多腕、それも随分と数が減って3本しか残っていないが、こうしてみれば、他の腕よりも一回り太い、人間らしさを残した腕が左右に1本ずつ残っている。

 恐らくは、あれこそが苦痛のアルフェリアの本来の腕なのだろう。切断するのは難しそうだし、それだけのダメージを重ねれば先に彼女のHPが消滅するだろう。

 だから、オレは最悪の場合、レッドゾーンに到達したら苦痛のアルフェリアの腕が全て再生し、乱打を仕掛けてくるのではないかと戦々恐々としていたのだが、動きを止めた苦痛のアルフェリアはその頭を手で覆い、うめき声を上げる。

 

『アァ、アァ、アァ……アァ! イタ、イ! イタイ! イタイィィ! ダ、レカ、タスケ、テ! タ、スケ、テ!』

 

 それは酷く曇っているが、確かに若い女の声だ。

 背筋が凍るとはこういう事を言うのだろう。苦痛のアルフェリアが漏らす叫び声が、より化物から人間的なものへと変質し始めている。

 クラディールとキャッティは完全に動きを止め、ようやく目前のボスが単なる単調な攻撃を仕掛けるだけの怪物ではなく、人間的な存在であると無意識に理解したのかもしれない。

 だが、今はそれに気を取られている場合ではない。これは苦痛のアルフェリアがついに最後の能力を解放する前兆だ。

 腕の再生か? それとも魔法攻撃の強化か? はたまたオートヒールか? ここからが本番ならば、こちらも死力を尽くし、その苦痛を鎮める死を与えるまでだ。

 

「は?」

 

 しかし、苦痛のアルフェリアの『それ』を見た瞬間、オレは思わず間抜けな声を上げてしまう。

 彼女が選んだのは、その太い2本の腕、本来の手で自らの胸を引き裂く事だった。

 一体何をしている? 苦痛のアルフェリアのどす黒い……まさしく足下の黒い水の源泉とも言うべき黒い体液を撒き散らし、自らのHPを削っている。

 自らの手で裂かれた胸、その奥でオレが見たのは金属の輝きだ。

 アレが痛みの根源? いいや、オレの予想通りならば違うはずだ。だが、アレもまた苦痛のアルフェリアの痛みの1部を担っているのだろうか?

 

「まさか……」

 

 途端にオレの中で1つの、ようやく終わりが見えた死闘を再び最悪に戻す推理が成り立つ。

 

「クラディール! キャッティ! ソードスキルを放て! ここで苦痛のアルフェリアを仕留める!」

 

 何かしらのモーション中という事もあり、カウンターを警戒して動けなかったクラディール達に頼むよりも早く、オレはラビットダッシュで苦痛のアルフェリアの懐に入って乱撃系のソードスキルであるパンプキンペインを放つ。だが、元より2本で1つの武器である双子鎌だ。片方だけではいかにソードスキルでブーストをかけても威力が低過ぎる!

 オレから危機感を受け取ってくれたのか、クラディールもまた切り札であるフランベルジュを抜き、≪両手剣≫の突進型ソードスキル【アイゼンスピア】を放つ。プレイヤーごと槍の如く突進して突きを放つ≪両手剣≫の花形ソードスキルだ。単純な突進刺突攻撃ではなく、DEX次第で速度が周囲に衝撃波も撒き散らす事が出来る、極めて強力なソードスキルである一方で、モーション前後の隙、あまりの威力とスピードで制動が利き辛い、クールタイムが長いなどが欠点だ。

 キャッティが選択したのは≪カタナ≫のソードスキル【斬鉄】。ソードスキルでも希少な通常攻撃の威力をブーストするソードスキルだ。正眼の構えからモーションを起こし、そこから僅か5秒間だけ通常攻撃をソードスキルのブーストを付与する。それを発動させ、跳躍と同時に苦痛のアルフェリアの頭部へと斬撃を放つ。

 

 

 だが、それは奇しくも同じカタナの斬撃によって阻まれ、逆に大きな隙が出来たキャッティの胸を鋭い刃が裂く。

 

 

 落下し、転倒しながらも転がって距離を取って立ち上がったキャッティの顔色は芳しくない。その胸には斬撃を受けた証の赤黒い光が漏れている。欠損ではないのですぐに傷口も消失して光の流出も無くなるが、あれ程に明らかにダメージ表現が出るのは高威力の攻撃で大幅にHPが削られた証拠だ。

 見ればキャッティのHPは3割も減少している。オレが見る限り、キャッティの胸を裂いたのは通常攻撃だった。

 

「ああ、糞。お前のせいだぞ。とんでもない死亡フラグ立てやがって」

 

 毒づいてキャッティを励ましながら、苦痛のアルフェリアの胸が突き出したカタナを持つ腕、それの主の登場をオレは後ずさりながら見守るしかなかった。

 それは死骸。右腕と頭と胸。それ以外は失われ、臓物と骨が露出している。その体表は、苦痛のアルフェリアの黒い体液で汚れてはいるが、純白の毛が獣のようにびっしりと生えている。

 右手にカタナを持つガルム族の死骸。あの胸で光っていたのは、あのカタナだろう。麗しい波紋と、あのどす黒い体液に蝕まれながらも美しさを損なわない刀身、まさしく名刀であり、その刃の輝きは妖刀と呼ぶに相応しい。

 死骸は苦痛のアルフェリアの胸から這い出すと落下する。彼女の眼前で、死骸に黒い水と泥が集まり、欠損した肉体を補い始める。

 誰も動けなかった。オレも、クラディールも、キャッティも、新たな脅威の誕生を、ただ茫然と見つめるしかなかった。

 生み出されたHPバーはたったの1本。しかし、それはオレ達にとって果てしなく遠い1本となるだろう。

 その名は〈堕ちた英雄リ・ラーガイ〉。

 この世界は≪ガルム族の英雄ラーガイの記憶≫……つまり、この世界を形作る記憶の持ち主という設定を持つだろう存在。コボルド王と同じで名前の前に再生を意味する『リ』があるところを見ると、ここにいるのは死した英雄という事だろう。

 同じ轍を踏むとはこの事か。オレは思わず自分の愚かさに嗤いたくなる。コボルド王戦でも散々推理の為の情報を与えてもらいながら、真相に気づけず、ボスの能力に翻弄されてしまった。

 今回も同じだ。この展開は予想する事ができたではないか。

 まず、ラーガイは南の人間の街に向かった。理由は森の異変を確かめる為。オレは『大空洞』というメインダンジョンに向かったのだろうと、勝手に思い込んでいたが、それは大きな間違いだ。彼の情報でそんな物は1つとして存在していなかった。

 彼は何故森の異変を感じ取り、森の探索ではなく南の人間の街に向かったのか? 敵対しているはずの人間の街に何故?

 簡単だ。如実に森の異変の影響を受けていたのが人間の街だからだ。そして、それは恐らく人間の街の水源たる湖に毒が混じっていた事だろう。この水源の大元は『大空洞』にあるだろうから、オレも彼は漠然と『大空洞』に向かったのだと思い込んでしまった。

 だが、そもそも『大空洞』はガルム族の戦士が神と契約した場所という情報を得ていた。それも人間の街での聞き取り調査でだ。ならば、ガルム族がそれを知らない道理など無い。

 大切な水源だ。そこに異変があったならば、英雄以前にガルム族の生活に影響が及ぼされるはずだ。だが、ガルム族で散々利用した公衆浴場の水が少しでも汚染されていただろうか? 幸せそうに暮らすガルム族達が汚染された水で苦しんでいただろうか?

 明らかに影響を受けていたのは人間の街だけだ。これを英雄は気づいた。そして、オレ達が拠点としていたガルム族の都であるヒムンバと人間の街、その直線状には忘れられた井戸があった村の跡地がある。

 当然、ラーガイが通ったのも同じルートだろう。そこで彼はスミスが言うように、『本来存在するはずのないモンスター』である腐敗した迷い人に出会い、この場所こそが異変の根源だと察知したとしたら?

 英雄と呼ばれる程の戦士だ。解決する為に、仲間を危険にさらさない為に、単身で井戸の底に潜ったに違いない。その証拠に、幽霊の少女は言っていたではないか。

 

『お兄ちゃん、どうかあの「お姉ちゃん」を助けてあげて。とても痛がってるの。全てを呪ってしまいたくなるくらいに。闇を持たない人に「お姉ちゃん」を止められない。たとえ、狼さんの英雄でも……』

 

 あの言葉の中の『お姉ちゃん』とは苦痛のアルフェリアの事だろう。ならば、『狼さんの英雄』とは誰の事だ?

 決まっている。ガルム族は狼の獣人だ。その英雄ともなればラーガイ以外に存在するはずがない。堂々と世界の名前に『ガルム族の英雄』と記載されていたではないか。

 いかに英雄といえども単身では、苦痛のアルフェリア、無数に生み出される3本腕泥人間、シャドウ・イーター、足下の毒の水、これらの悪条件では勝てる道理など無かったのだろう。敗れた彼は苦痛のアルフェリアによって取り込まれた。あるいは、その胸を貫いたまま絶命し、塞がっていく傷口と共に内部で融合してしまった。

 真相はこんなところだろう。体の半分以上を赤黒い泥によって形成された、堕ちた英雄は雄叫びを上げる。

 同時に苦痛のアルフェリアは残された3本の手に青い光の球体を生み出し、これまでの光弾ではなく、レーザーのような持続した線の魔法攻撃を仕掛けてくる。再び前衛を得た彼女は、シャドウ・イーターの時と同じで魔法攻撃に徹するつもりらしい。

 新たな魔法攻撃。それは確かに厄介だ。だが、それ以上に、オレは『英雄』と呼ばれる者の格を教えられる。

 カタナの真骨頂とも言うべき神速の踏み込み。5メートル以上の距離を、まるで映像ファイルが破損したかのような、馬鹿らしい程に見切れない速度で詰めたリ・ラーガイがカタナを振るう。

 鎌でガードできたのは、皮肉にもリ・ラーガイが速過ぎたせいで、意識ではなく本能が防御行動を取ってくれたお陰だ。だが、ガルム族の手斧からも分かるように、彼らの筋力は人間の比ではない。極めて高く設定されているだろうSTRと神速の踏み込みが加わった一閃を無事にガードできるはずもなく、オレは押し切られて宙を舞い、苦痛のアルフェリアの魔法攻撃を直撃してしまう。

 

「クゥリ!」

 

 オレの名を呼ぶキャッティだが、そんな暇があるはずなどない。リ・ラーガイはまるで体を捩じるように、右手に持つカタナの切っ先が彼の左側へと押し込むように構える。それはまるで力を溜めるような仕草だった。

 一閃。それと同時に放たれたのは、緑ではなく碧。翡翠やエメラルドを彷彿させる雷。軽く8本を超えた雷は地に立ち、荒れ狂い、キャッティに襲いかかる。

 雷撃ダメージを受け、キャッティもまた吹き飛ばされる。ただでさえ、その前に胸を斬られたダメージを残っていたキャッティのHPはレッドゾーンだ。

 追撃されば命は無い。オレがカバーに入ろうとするより先に、碧の雷撃の溜めモーション中に奴の背後に回ったクラディールがフランベルジュで斬りかかる。

 だが、それを見越していたのか。リ・ラーガイは左肘を背後に突き出し、その打撃をフランベルジュを振り上げていたクラディールの鳩尾に打ち込む。

 冗談のようにクラディールの鎧が凹み、破片が散り、吹き飛ばされる。それもよりもよって苦痛のアルフェリアの方向であり、容赦ない彼女の腕の一撃によって クラディールは再度吹き飛ばされ、壁に叩き付けられた。

 一瞬で覆された。それもたった1体の死体によって。オレは身震いする。なるほど。これは確かに苦痛のアルフェリアもシャドウ・イーターも、HPも防御力も低く設定していなければいけない訳だ。

 クラディールもキャッティもHPがレッドゾーン。回復を始めているが、それを逃す程に目前の動く屍は甘くない。オレは魔法攻撃を回避しながら、リ・ラーガイの懐に入り込む。コイツを相手に間合いを取るのは逆に悪手だ。あの神速の踏み込みからの斬撃と雷撃攻撃を封じるには、奴の間合いで近接戦を挑む他無い。

 だが、左腕が無いオレには大きな死角がある。左側からの攻撃は防ぐ事が出来ず、全て回避せねばならない。せめて2人が最低限の回復を済ますまで、堕ちた英雄を相手取る他ない。

 スタミナはまだ危険域にない。リ・ラーガイはオレに向かって上段から斬撃を放ち、即座に返して斬り上げてくる。スプリットターンで背後を取ろうとするが、恐るべき反応で旋回し、逆に膝蹴りを放ってくる。それを鎌の柄で受け流し、咄嗟に逆手に構えて浅くだがリ・ラーガイの脇腹を薙ぐ。

 減ったHPは3パーセント程度か。悪くないダメージだ。リ・ラーガイもまたHPや防御力は低い。所詮は死体という事であり、彼本来の能力は引き出せていないといった所だろうか。

 勝てない事は無い。ただし、それは誰かが再び苦痛のアルフェリアに張りつき、彼女の魔法攻撃を封じる必要がある。苦痛のアルフェリアはリ・ラーガイもお構いなしに魔法攻撃を仕掛けている。それは彼のHPを削ってくれるという嬉しい部分があるが、同時に接近戦を仕掛けているオレを狙ったものである事から、回避する為に距離をとらねばならないデメリットがある。

 危険と分かっていながらもリ・ラーガイから跳んで離れる。それと同時に、リ・ラーガイがその場でカタナを振るう。同時に迸るのは碧の雷であり、それは雷の刃となってオレに向かって飛ぶ。

 命中寸前で体を倒し、背中を地面に叩きながらも雷の刃の回避に成功する。だが、倒れ込んだオレに、あの神速の踏み込みによる攻撃が迫る。

 斬。その一閃はオレを庇う為に間に入ったクラディールの盾を真っ二つにする。元より大きく破損していた盾では、リ・ラーガイの斬撃を防ぎきれなかったのだ。

 

「ガキ! お前は苦痛のアルフェリアを引き付けろ!」

 

 フランベルジュで何とかリ・ラーガイと剣戟で以って攻撃を防ぎながら、クラディールが叫ぶ。

 

「貴方は片腕が無い! そんな状態でこんなバケモノと戦えるわけないでしょう!?」

 

 参戦したキャッティが背後から斬りかかろうとするが、回し蹴りでリ・ラーガイは近づけまいとする。その動きは精彩さと理性と知性が欠けているように見えるのは、やはり彼が死体だからだろう。それでなお圧倒するのは英雄であるが故か。

 2人は充分にHPを回復していない。せいぜい4割程度だ。リ・ラーガイの攻撃にもよるが、2発でも通常攻撃を受ければ死ぬだろう。

 文字通り、1発も受ける訳にはいかない戦い。その中で苦痛のアルフェリアの横槍があれば、待っているのは先程のオレの再現だ。

 

「……任せた。死ぬんじゃねーぞ」

 

「誰に物言ってやがる。そういうのは死亡フラグを立たせたキャッティに言いやがれ」

 

「私も死ぬ気はないから安心して、あのバケモノ女の足止めをしてきて頂戴」

 

 頼もしい限りだ。オレは燐光紅草を食べながら、苦痛のアルフェリアの懐に入る。

 もうすぐその苦痛を終わらせてやる。接近されると同時に腕攻撃を放つ苦痛のアルフェリアは、オレが少しでも胴体に攻撃を入れられそうな間合いに入ると、即座にどす黒い波動で牽制してくる。

 苦痛のアルフェリアのHPは残り2割。だが、それを押し切るには時間がかかりそうだ。腕にコンスタントにダメージを与えるしかないだろう。

 しかし、たとえダメージは微量しか与えられずとも、オレが接近している限りは魔法攻撃を停止している。既に3本しかない腕だ。オレを攻撃しながら魔法攻撃など土台不可能であるし、彼女にそれだけ事を考えるだけの思考は既に苦痛で塗り潰されているのだろう。

 斃す。何が何でも斃す。オレは鎌で最後の多関節腕を斬りながら、足下の黒い水を跳ねさせた。どちらにしても、時間がもう無いのだ。2人が早急にリ・ラーガイを斃す事を信じる他ない。

 

 

Δ    Δ     Δ

 

 

 

(強い! こんなのを相手にクゥリは1人で一撃を入れたの!?)

 

 2対1にも関わらず、こちらを圧倒する動きを見せるリ・ラーガイに対し、キャッティは舌を巻く。

 背後を取ろうにも体格に勝るリ・ラーガイはそのリーチを活かした蹴りや肘打を放ち、正面から突破しようにもその剣術はまさしく豪傑の斬撃。クラディールが何とか破損寸前のフランベルジュで受け流しを主体にして一身に攻撃を引き受けてくれているが、それも時間の問題だろう。

 投げナイフ。これしかない。太腿に備えた投げナイフの本数も残り3本程度だが、他にもブーツや裾の中にも数本隠している。それらをキャッティは使用していく。

 さすがに体術では投げナイフを防ぎきれないらしく、次々とナイフは命中するも、刺さったのは1本だけだった。

 即座にアイテムストレージから追加の投げナイフを手にする。投げナイフの利点は武器枠を削らない事だが、同時に身に付けておける本数にも限界がある。専用の鞘やギミックを準備しなければ、アイテムストレージの外では武器と違って耐久値が減少し、瞬く間に砕けて無くなってしまう。

 だが、すでに弱点は見つけた。キャッティは見出した光明を口にする。

 

「泥で構成された肉体は反応が遅い上に脆いわ! そこを集中的に狙って!」

 

 背後から観察し続け、投げナイフの回避行動を分析し、キャッティは即座にリ・ラーガイの致命的な弱点を暴き出す。

 返事を返す余裕もないクラディールだが、袈裟斬りを受け流すに留まらず、そのままカタナを弾いてリ・ラーガイの体勢を崩し、逆にリ・ラーガイの泥で構成された腹を薙ぐ。それは一撃でリ・ラーガイのHPを1割奪い取った。

 獰猛な笑みでクラディールは自身の一撃が入った事を歓喜する。その目は生と死の間であるからこそ、自分を鼓舞するように真っ直ぐだった。

 

(やっぱり強い。クゥリも、クラディールも、私なんかよりもずっと強い)

 

 思い知らされる、そもそも彼らの異常な強さをキャッティは理解する。

 どれほどの苦境でも相手の喉元に喰らいつこうとする凶暴さと第三者の目から見ても本能としか言いようがない野性的な直感を武器に、死の境界線ですら臆する事無く戦うことができるクゥリ。

 いかなる人生を歩んだのか、キャッティとは比較にならない程の戦闘経験に裏打ちされた、確固たる自らの戦闘理論に基づいて攻撃を繰り出し続ける技巧派のクラディール。

 羨ましいとは思う。だが、妬ましさはない。キャッティは素直に彼らの強さに憧れを抱き、同時に今の自分が手にしてはならない物だと確信する。

 クゥリの戦い方は、彼自身が言っていたように、無理と無茶と無謀だ。誰かに理解してもらえるような戦い方ではない。まさしく、個人の生存と勝利を突き詰めた、孤独な戦い方だ。そして、それはソロであるからこそ、より力を発揮する。

 クラディールの場合、自分の技術に自信を持っているからこそできる紙一重の攻防だ。そうでもなければ、あの破損寸前のフランベルジュで剣戟などできるはずもない。

 クゥリの戦い方など自分は得られない。クラディールの戦い方にも到達していない。それが分かるからこそ、彼女は自身を持って言える。

 自分には仲間が必要だと、キャッティは胸を張って言える。

 仲間に頼ることは恥ではない。むしろキャッティは先程の観察と分析のように、集団戦でこそ己の才能を発揮できると、自らを評するに至った。

 攻撃はあくまでリ・ラーガイの気を逸らす程度の牽制で十分であり、アタッカーであるクラディールを信用していれば、リ・ラーガイのHPは削れるのだ。

 それこそが最善。それこそが最上。キャッティは迷うことなく、投げナイフとカタナによって、背後からリ・ラーガイを攻め続ける。

 ついにリ・ラーガイがクラディールではなく、キャッティの方へと牙を剥く。反転しながらの斬撃だが、間合いは既に読んでいる。安全の為に雷の刃を警戒して身を伏せておくが、正解のようで彼女の頭上を碧の雷の斬撃が飛来していく。

 本能に頼る必要などない。臆病であれば良い。自己肯定を重ねる事が、キャッティの動きを更に高めていく。

 周囲が良く見える。油断のない余裕が、これ程の強敵を相手にして生まれている事に、彼女自身が驚いていた。

 だからこそ見えた。リ・ラーガイとの剣戟で押し込まれたクラディールの足下、そこがすでに黒い水によって水没し始めている事を。

 一瞬の動きの鈍り、移動制限がかかり、クラディールがバランスを崩す。それをリ・ラーガイは見逃さず、両手持ちからの逆袈斬りを放つ。避けられないと見たクラディールは相殺すべく、ダウナーブレードを発動させる。上段からの斬撃で本来ならば隙を作らねば当たらないソードスキルだが、それを相手の攻撃軌道を見切った上で迎撃に利用しようというのはまさしく見事としか言いようがない。

 だが、クラディール自身も心の何処かで期待していたのだろう。

 この戦いが終わるまで、フランベルジュは折れずに済む。ここまで持ち堪えてくれた相棒が負けるはずがないと信じていたのだろう。

 刃毀れ著しい上に、黒騎士によって刀身を半ばまで断たれ、大きな亀裂を残したフランベルジュが、ソードスキルの衝撃とリ・ラーガイの高いSTRかつ両手で放たれた斬撃に耐えられるはずが無かった。ましてや、刃と刃が激突したのは他でもない、武器を切り替える必要性を彼に与えた黒騎士に付けられた刀身の傷だった。

 砕け、そして折れる。半ばから折れたフランベルジュは完全破損にこそ至らず、形を残しているが、火力もリーチも激減してしまった。早急に片手剣に切り替えねばまずいと判断したキャッティは迷う。

 ここでクラディールを庇うように正面に入り込めば、間違いなく自分は斬られる。1発ならば耐えられるだろうが、窮地に立たされることは間違いない。

 

(馬鹿を言わないで。仲間を見捨てる? そんな事、私はしない!)

 

 他でもないクラディールが認めてくれた強さだ。彼を守る為に使わずして何に使えというのだ? キャッティは内から囁く悪魔を握り潰し、自らの善性に従ってリ・ラーガイの正面に立つ。

 

(1発ならば今のHPで死ぬ事は無い! それにカタナはスタン蓄積能力が低いからスタンの心配もないから、軽装の私でもダメージを受けながら動ける! だったら1つしかない!)

 

 上段に構えながらの必殺。単発型ソードスキルの轟鬼を、ラーガイに斬られながら放つ。まさしく肉を切らせて骨を断つ。この攻撃にはリ・ラーガイも対応しきれず、まともに脳天から直撃し、そのHPを大きく減らす。

 全てを削りきれ! キャッティは心の中で願う。だが、リ・ラーガイのHPの減少はレッドゾーンに止まった。

 斃しきれなかったが上々。キャッティはバックステップを踏みながら繰り出された斬撃をカタナで防ぐ。幸いにも力が入っていなかったのか、リ・ラーガイにしては軽い攻撃であり、カタナを弾き飛ばされる事も折られる事も無かった。

 距離を取ったとなれば雷撃だろう。そう思ったキャッティだが、リ・ラーガイは黒い水の中で片膝をついた。

 回復。ジリジリとだが、リ・ラーガイのHPが回復し始める。シャドウ・イーターは黒い水を飲んで炎の力を補給したが、リ・ラーガイはレッドゾーンまで到達すると黒い水に浸って回復を行うのだろう。

 これはまさしく好機だ。ボロボロとリ・ラーガイの泥だった部分は崩れつつあり、あの回復行動をせねば肉体を維持できないのだろう。

 

「一気に斃すわよ! クラディール!」

 

 仲間の名を呼び、キャッティはリ・ラーガイへと迫ろうと一歩を踏み出そうとする。

 だが、おかしかった。返す返事も無ければ、背後から動く気配もない。まさか何かしらのデバフを受けたのかと振り返ると、そこには茫然と目を見開き、口を小さく開閉して折れたフランベルジュを見下ろすクラディールの姿があった。

 

「何を呆けているの!? 今がチャンスよ! ほら、早く!」

 

 フランベルジュが折れてしまった事にショックを受けたのだろうか? キャッティは彼がその程度で動けなくなるはずがないと思いながら、折れた愛剣の柄を握りしめる、その震える手に触れようとした。

 それは仕方なかった。ボス戦の中で、互いに命を預けねば死が待つ戦いの中で、仲間の挙動を疑えという方が無理がある。

 赤黒い光。それがキャッティの視界を漂った。

 クラディールは怪我を負っているのだろうか? 彼女はそう勘違いしたが、すぐに自らの喉が裂かれたのだとダメージの感覚で理解した。

 クラディールの振るった、折れたフランベルジュ。その鈍った刃がキャッティの喉を斬ったのだ。

 

 

「ひ、ひは……ヒャハ、ひひゃはhaはハハハは、ははハはハhaハ……ヒひゃハハhahaハはハハhaハはッ!」

 

 

 キャッティの胸を蹴り、そのまま地面に押し倒したクラディールは彼女に馬乗りになり、その両膝で押し潰して彼女の両腕を拘束する。STRに劣る上、完全なる奇襲を受けたキャッティは浅い黒い水溜まりの中で、乱雑に振るわれる折れた剣の攻撃を受ける他なかった。

 僅か十数秒の出来事。クゥリが気づいて何事か叫ぶ。だが、キャッティにはその言葉が聞けなかった。ただ、彼がらしくない程に焦ってこちらに駆け寄ろうとして、苦痛のアルフェリアに殴り飛ばされるのを視界に捉えた。

 何とか抜け出した左手をクラディールに伸ばす。その攻撃を止める為ではなく、彼の狂ったような、震えた瞳を湛えて座らせるその顔に……その頬に触れる為に。

 キャッティの頬を涙が伝う。彼女には分からなかった。何も理解できなかった。

 自分の強さを認めてくれたクラディール。彼がいなければ、自分がこの場所に戻る事は無かった。自分を認めてあげることはできなかった。仲間が欲しいという気持ちを受け入れることもできなかった。

 感謝こそすれ、恨むことなどできない。そして、彼女にはこの凶行の真意は分からない。

 だから、キャッティには問うことしかできなかった。

 

「ク、ラ、ディール……どう、して?」

 

 裂かれた喉のせいか、上手く声が発せられず、途切れ途切れになりながらもキャッティは問う。

 震えながらも伸ばした左手は、涎を撒き散らし、まさしく狂喜以外なにもの無かった狂気のクラディールの頬に触れる。

 一瞬だが、クラディールに何かが戻った気がした。

 だが、その『何か』を見極めるよりも先に、キャッティに振り下ろされた両手剣の断面が彼女の顔を潰し、そのHPを奪いきった。

 

 最後に彼女が何を想ったかは分からない。だが、キャッティの体は赤黒い光となり、自らを殺した狂人を血飛沫のように呑み込んだ。

 




絶望「ジェネレーター出力再上昇、オペレーションパターン2」

悲劇「一体いつから――鏡花水月を遣っていないと錯覚していた?」

苦悩「私の戦闘力は53万です」

恐怖「さあどうした? まだ足がちぎれただけだぞ。かかってこい! 使い魔達を出せ!! 体を変化させろ!! 足を再構築して立ち上がれ!! 銃をひろって反撃しろ!! さあ夜はこれからだ!! お楽しみはこれからだ!! ハリー! ハリーハリー! ハリーハリーハリー!」

希望・救済・喜劇・奇跡「「「「…………」」」」←返事が無い。ただのしかばねのようだ。


怒られる前に前書き詐欺を謝罪いたします。誠に申し訳ありませんでした。
全ては計画(プロット)通りですが、憎まれ役の幕引きはしないつもりです。
それでは、35話にキャッティの退場を合唱しつつ、

Let's MORE DEBAN!

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