だが、スージーの状態を見たゲートの監視員が、大したチェックもせずに素通りさせてくれた。
おかげで、日が落ちる前に街に入ることが出来た。
とうとう、ここまで来た。
ジャイアントヒルは、かなたの生活圏の完全に外に位置している。
直前の冒険の記憶や人生でもっとも遠い旅の高揚感で気分はハイになっているが、状態はズタボロだった。
スージーは大破寸前、弾薬は底を付き、資金も底をつき、二人は怪我を負っている。
街に入って、まずドラム缶のお届け先、掘り出し物屋「パラダイス」を尋ねた。
地図を頼りに探すと、街の外れに大きなパラダイスの縦看板を見つけた。
そこの底に、パラダイスとは名ばかりの素人が掘ったような塹壕の奥に、その店はあった。
かなた 「こんにちはー、ドラム缶のお届けにあがりましたー」
店長 「ヘイヘーイ、ちょっと待ってねー」
さも如何わしい人物像を予想していたが、普通のおじさんが出てきた。
店長 「えーっと、あー!紅幕団さんとこからのドラム缶ね!待ってたんだよ」
店長 「手伝うから、そこに降ろそう」
かなた 「ここでいいんですね、わかりました」
よっこらせと、薄汚いドラム缶を降ろした。
店長 「・・・・・、うん、特に破損もないし、聞いてた状態通り、上物だ!」
かなた 「あの~、これなんに使うんですか?」
店長 「知らないの?ドラム缶、すごく貴重なんだよ!」
店長 「ある人は橋に使い、ある人はインテリアに、またある人はひたすら押してトレーニング!」
店長・熱 「巨大な水筒に、風呂に、ただの重しに、荷物の肥やしに・・・ドラム缶は万能資材なんだぞぉぉぉぉぉ!」
かなた 「はぁー、そうなんですかー・・・・・」
別にドラム缶では無くてもいい物ばかりだった。
店長 「うーむ、伝わらないかなー、この熱い思いが・・・」
店長 「・・・・・、ぶっちゃけね、用はこの世界の人はドラム缶が好きなんだよ!だからなんにでもドラム缶を使わないと気がすまないの!好きだろ、ドラム缶」
かなた・無感動 「いえ、別に・・・・・」
店長 「ぐぬぬぬー伝わらないだと~!!!貴様はそれでもハンターなのか!その珍しい形の赤いドラム缶を見てみろ、なんだか無性に押したくならないか?」
かなた 「なりませんが?」
店長 「きぃさまぁぁぁぁぁ!」
そこに、メギが両目を十字に輝かせて駆け寄ってきた☆☆
メギ・☆★ 「うわぁ~、エキゾチックなドラム缶ですね~」
メギ・★☆ 「あたし、押したいですぅ~❤」
スージーに乗っていたはずのメギだが、店長の熱い想いにあてられておかしくなっていた。
店長 「だろー、ほーらお嬢ちゃん、あめ玉を上げよう」
メギ 「ワーイ♪」
かなた 「・・・・・・・・・・」
メギの態度に少しだけ機嫌を良くした店長にサインをもらい、その足でオフィスに向かう。
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メギ 「かなたっ! あんなめんどくさそうなオヤジの戯言に一々付き合わないの!!!」
かなた 「えっ、メギさんおかしくなったんじゃなかったの?」
メギ 「演技に決まってるでしょ、もう日も暮れたのよ!宿だってまだ決めてないんだからね」
かなた 「演技だったんだ、良かった~」
メギもやっぱりアレな感じの人かと、ちょっと心配したのでホッとした。
だが、かなたは気づかなかったが、メギの手は何かを押したそうにワシャワシャしていた・・・・・?
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日が暮れているのにオフィスはごった返していた。
たぶん、キャラバンの一件のためだろう。
かなたは、受付で今回の依頼の報酬 1000G を現金でもらう。
それから、お尋ね者課で賞金の申請手続きをした。
お尋ね者課は個室で中の会話は聞こえないようになっていた。
職員 「スナザメをやったって!ほんとかよ」
かなた 「運が良かったんです」
証拠写真と撃破した位置の情報、戦闘記録を提出して、ドッグタグとサインで情報の紹介をする。
30分ほど待たされた後。
職員 「申請が受理されたよ、おめでとう」
かなた・笑顔 「(やった❤)ありがとうございます」
職員 「砂ザメの賞金が 20000G 、契約書無しだから、事後契約手数料を3割引かせてもらって、君の取り分は 14000G だよ」
職員 「賞金はカードに入れておくから、それでいいね」
かなた 「おーぉ、いちまんよんせんごーるどだぁ~❤」
3割の手数料はどう考えても暴利だが、それをどうすることも出来ないし、どうなるものでもない。
それに、ヨルレイクの3年間でコツコツ貯めた貯金のほぼ2倍の額を半日で手に入れてしまった!
かなたは、職員と握手を交わしてオフィスを出た。
オフィスには素顔で入れない メギのいるスージーに戻り、結果を報告する。
かなたは、実はまだ、知り合って1日のメギを、その事実を忘れて幼馴染のように信頼していた。
かなた・嬉 「メギさん、やったよ、賞金14000G」
かなたは、大金を手に入れて危ういほどに浮かれていた。
メギ 「・・・・・バカ!」
かなた 「!?・・・・・何で?」
メギ 「あたし達、まだ、初対面なのよ!いきなりそんな金額を駆引き無しに言わないの!」
かなた 「あっ!そうか、・・・・・でも、メギさんは仲間でしょ?」
メギ 「・・・・・・・・・・」
彼女への信頼は素直に嬉しいのだが、その純粋なのか、バカなのか判断に困る反応は、危険だと感じていた。
(当然かなたにも言い分はあったが、幼稚な考えなので無視しましょ。)
かなたは、当然喜んでもらえると思っていたのに怒られて、しかもその理由が少し納得いかなかったので機嫌が悪い、とゆうか落ち込んでいた。
さっきまで、ほっときゃ勝手に自滅するぐらい浮かれ気分だったのに・・・・・。
かなた 「・・・・・メギさんは仲間なんですよね?」
メギ 「分かってないわねー、ほんとバカ!」
メギ 「あたしが、賞金を折半にしましょって言ったらどうする?」
かなた 「いいですよ、メギさんには助けられたもん」
メギ 「バカッ!あたし達は仲間でしょ」
メギ 「このお金はチームのお金なの、最低限必要なお金は個人的にもらうとしても、後は活動費でしょ」
メギ 「それにね、もし折半する事になっても必要経費を差し引いた後にしないと、かなたが割を食うのよ!」
かなた 「だって、メギさんはそんなタイプじゃないもん!」
メギ 「かなたはね、他の人にも同じことをしそうだから怒ってるの!」
かなた 「・・・・・・・・・・」
かなたは、自問した。
確かに横に座っているのが他の人でも、そうする様な気がしないことも無い・・・・・。
かなた 「・・・・・わかった、気をつけるよ。」
かなた 「・・・・・ありがと」
バカ正直な「ありがと」を聞いたメギは、初対面の彼に、自分もかなりお人よしな説教をしていた事に気が付き、顔が真っ赤になった、自分のキャラってこんなだったかな?と自問してみたり。
メギ 「どういたしましーーーてっ!!!」
メギは照れ隠しに かなたのほっぺをつねった。
かなた 「いたた、何すんのー」
メギ 「さーて、宿を探しましょ!今日は少し豪華なものが食べたいわね~♪」
かなた 「あっ、それいいね~♪」
その夜はちょっと豪勢な夕食に、並に上等な蚊に刺されないホテルで宿泊した。
こうして、嵐の1日は終わり、二人は幸福だった。
あとがき
MM世界の街は、中世の都市国家のように街単位で国家を形成している。
大きく発展する町は、当然、強力な兵隊を囲い、一般人の士気も高い。
弱肉強食の世界にあってなお、街の人たちは争いを拒み、平和を願う。
願うだけで手に入る平和などありはしないことを知りながら・・・
そんな世界で、そんな世界を良しとしない人たちがいる。
ある者はハンターに、ある者は盗賊に、ある者は犯罪組織に、そしてある者はモンスターに。
彼らの利害関係は様々だが、一つ共通しているのが、
「街の人間は、なぜ立ち上がらないのだろうか?なぜ、ただ殺されるのを待つだけなのだろうか???」
確かに、街で生産される食料やその他の補給物資は生存に欠かせないものだ。
この不毛の世界でそれらを生産するのは命がけではあった。
だが、極限に追い込まれてなお、祈ることをやめない人間も多い。
グラップラーを壊滅させて脅威が少なくなったマドの町だが、世界が平和になったわけではなく、むしろ世界は混沌の度合いを深めている。
マドの町は大丈夫だろうか。
次の脅威が訪れたとき、マリアはもういない。
マリアの子も、そのとき町にいる保証は無い。
マリアの子が冒険で訪れた町は?知り合った人は???
世界を変えるためのゲームではないので、ゲームをクリアーしても実は世界が何ひとつ変わってない!
結局、それぞれのサバイバルは自分しだいなんですね。
そう考えると、悲しいんだけど・・・・・
マドは・・・・・
もう、無いよね、やっぱり。