「イカレタンク」 と呼ばれる、戦車の野生化現象である。
野生化したCユニットは人間の操作を受け付けず、この状態になったら、破壊するしか方法が無い。
暴走したCユニットには 「怒り」 に似た感情が現われると言われていた。
(ただし、感情の中でも「怒り」だけ)
ニコラたちは3時間遅れで かなた達の後を追っているはずだった・・・。
救助隊を救助に向かう ニコラ隊。
砂漠を並に快速で飛ばしている。
時折出現する、軽装甲車両を破壊する攻撃力を持つ クラス4 のモンスターを自動で迎撃しながら。
襲い掛かるモンスターより、車内の嵐のほうが激しかった。
----------
改めて、Cユニット(車両統合制御システム用中核コンピューター)の「スリー」が自己紹介を始めた。
スリー 「オイラはスパシーボのスリー」
「スリーは 3 じゃねーぞ、オイラの名前がスリーだ!」
メギ 「なんなのよ、何でスパシーボがしゃべってるの?」
ニコラ 「何でって、Cユニットは喋るだろ」
スリー 「そうだぜ、今時のCユニットはな♪」
ニコラとスリーの常識では、Cユニットが喋っても問題ないらしい。
メギ 「バカいわないでよ、Cユニットは喋らないわよー!」
ニコラ 「何言ってやがる、声を出さなくてもモニター越しに会話してるじゃねーか」
ニコラ 「 ワーニング とか コーション とか、話しかけてくるだろ?」
メギ 「それは会話とは言わないわよ! 入力された情報を計算して出力してるだけよ、スイッチのオンとオフよ!」
ニコラ 「・・・・・、えらいドライだな、戦車は生き物だよ、奴らにだって意思はあるんだぞ」
確かに、高性能な部品を組み合わせ、半自動化されたロボットタンクは、見方によっては人造複合生命体
と呼べなくも無い。
メギ 「あたしだって、消極的意思があることぐらい解かってるわ」
メギ 「だからってね、積極的なお喋りCユニットなんてありえない、Cユニットが無駄口を叩くわけ無いでしょ!」
スリー 「無駄口だぁー、このやろー!!!」
メギ 「ほら、これよ、こんなおかしなCユニット、ありえないでしょ! 変よ、へん!」
スリー 「変体扱いすんじゃねぇぇぇぇぇ!!!」
ニコライ 「お前ら、今はそれどころじゃねーだろーが!!!」
スリーは、確かに変だった。
スパシーボシリーズにも、量子回路やバイオチップが実装されているため、スパシーボだけでもある種のハイブリッド生命体だ。
しかし、彼の場合、能動的会話が成立し、感情的な反応を返してくる。
感情を持つコンピューターなど、Cユニット以外のコンピューターを含めても聞いたことの無い話だった。
メギ 「ニコラ、ひょっとして」
メギ 「・・・・・・・・・・」
メギ 「この戦車はイカレタンクじゃないでしょうね?」
メギは、自分の工具箱の中で一番重たいハンマーを構えていた。
ニコラ 「おわぁぁぁぁぁ!!!、まてまて、落ち着け、コイツはイカレてねーから!!!」
スリー 「俺がイカレてる?・・・・・(セルフチェック中)・・・・・!、何言ってやがる、俺はどこもイカレてねぇぇぇぇーーー!!!」
メギ 「一々、叫ばないでよ、やっぱり、これは「怒り」よ、イカレてなくても、イカレる前に壊さないと!」
ニコラ 「違う違う、こいつは寝起きが悪くてな、いつも目が覚めた後はしばらくこうなんだよ、寝起きでハイになってるんだ、ハイテンションなだけなんだ」
スリー 「お前らのが、よっぽどテンション高けーだろーが!」
メギは、納得がいくまでハンマーを収めそうにない。
ニコラが気を抜けば、途端にスリーに襲い掛かりそうだった。
メギ 「ふしゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
スリー 「きしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
あとがき
高度に知能化されたロボット戦車、どこからが暴走なのか?
とあるハンターが、お尋ね者と戦車で戦っていた。
実力は拮抗し、集中力が切れた方が確実にやられる。
そんな緊張した戦局で、長期戦は人間のほうが不利だった。
すでに戦闘開始から6時間が経過していた。
どちらも相応のダメージを負っている。
次の直撃をあてた方が勝負を決めそうだ。
モンスターが先に仕掛けてきた、ハンターは気力を振り縛り、重くなった体を引きずって操縦桿を操作する。
モンスター懇親の一撃、ハンターは・・・・・、交わした!
絶好の反撃チャンス!
しかし、ハンターは軽い脳震盪を起こしトリガーを引けない!!!
「ドォォォォン!バァァァァァン!!!」
戦闘は終了した。
辺りに静けさが帰ってくる。
戦車の105mmから発砲後の硝煙が昇っている。
最後の一撃はモンスターに命中しモンスターの胴体は真っ二つに吹き飛んでいた。
車内には疲労からか脳震盪でか分からないが、ハンターが意識を失っている。
彼は最後のトリガーを引けたのだろうか・・・・・?
夕日を背中から浴び、立ち尽くす戦士のシルエットが砂漠に伸びていた。
高性能Cユニットには人格や個性がある程度備わっていると思う。
アルファ とまではいかなくても。
同じモデルにも個性があり、それぞれの戦車にはハンターとの相性がある。
バトー戦車のCユニットはバトーそのものかも・・・
飼いならされた野バスは喋るかもね。
ちなみにスリー君の寝起きは、しいてゆうなら 喜 の感情の暴走状態です。
暴走しているわけではないですし、他の感情もちゃんと機能してますが、あえていうなら 喜 のイカレタンクで、ハイテンションです。
人格プログラムの暴走で野生化すると仮定すると、哀 楽 のイカレタンクも存在するのかな?
そういえば、うちの戦車が最近、やけにウザいんですけど・・・