科学で魔法を始めよう   作:ロイ

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それは最初から狂っていた

アンリエッタはルイズを尋ねる。アルビオン王家が危険な今、彼女はウェールズ王子が心配で心配でたまらない。そして亡命して欲しいが、こんな事公式に書簡で出せる筈がない。どう考えてもトリステインに戦火が移る。

 

 

しかし、頼れる部下も居ない。グリフォン隊隊長の名前さえこの前知ったばかりだ。マンティコア隊隊長は先代が烈風カリンだった事しか知らない。とまあ、頼れる人間が居ない時に聞いたのがルイズのメイジ殺しの従者?だ。これは頼るしか無いだろう。

 

 

目的はウェールズの亡命なので、表向きの理由は適当にでっち上げた。ルイズは乗せやすい、それがアンリエッタの言葉になると適当な理由でも喜んで動く。国家への忠誠、親友への信頼、この二つが合わさればアンリエッタの言葉は信じられる。

 

ついでだが、マザリーニが信じられると言ったワルドも巻き込んだ。やはりルイズ一人では心配である。ルイズの婚約者だし、大丈夫だろうと考える、普通は。

 

ワルド子爵の実力は確かだ。グリフォンを持つ彼が裏切りさえ無ければルイズをトリスティンへ連れ戻す程度の事は難無くこなせる。そう、彼の裏切りさえ無ければこの旅は安全であった。

 

 

 

同時に、ロイも衛星情報から戦況を分析する。アルビオンで最後の晩餐に参加できるように計算してアルビオンへ訪問する。

 

 

ラ・ロシェールと魔法学園の距離は普通に馬で約2日だ。当然のごとく、ワルドはルイズと一緒にグリフォンに乗るが、馬に慣れないサイトは一人で馬に乗るしか無かった。ワルドは置いて行きたかったが、ルイズにとって使い魔を置いていくのは貴族としてはあり得ないので仕方なく同じ速度で進む。

 

 

一方、ロイは直接アルビオン王宮へ行くのではなく、アルビオン周辺で空賊狩りをしていた。衛星情報からフネの位置は大体把握できる。目的はウェールズの空賊船なので他の空賊と判断されたフネは全部風石を壊した。幸い奴隷(違法)を運ぶフネは無かったので大して面倒な事も無かった。そして六隻目で漸くウェールズの船である。キャプテンが秘宝の指輪を持ってるってのはどうよ?

 

 

何時も通りの空気を遮断して、酸欠させ、錬金で縄を作り、捕縛する。

 

 

目覚めたウェールズの横でロイが「空賊をアルビオンに渡したらどれくらい報酬もらえるかな〜?いや、このまま処分して荷物を王党派との取引に使うか?」と言ってると。縄で縛られたウェールズが

「王党派の用があるのかテメエ?」

「そうだ。彼らも忙しいだろうし、空賊の掃除くらい手伝ってやろう」ニヤリ

「ま、まってくれ。私がアルビオン王太子のウェールズ・デューターだ」

「んなわけないだろう」

「本当だ!変装を解いてくれれば分かる」

「そもそも私はウェールズ・デューターの顔を知らない」

「じゃあこの風のルビーが証明だ」

「本物である証拠は?」

普通に風のルビーの偽物を持ってるメリットなんて無い、今では追撃対象になるし。だが、本物だと証明するのは無理だ。始祖の秘宝は全てディテクトマジックに反応しない、でなければレプリカなんて出まわらないだろう。

「……」

「まあいい。そこまで言うのならこのまま王宮へ行くぞ。黙って出てきたわけじゃ無いだろ?」

「ああ、これは正式な作戦行動だ」

「ここから王宮へはどれくらいかかる?」

「半日もかからない」

「いいだろう。早くしろよ?下手な時間稼ぎはお前が偽物だと言ってるようなもんだからな。私が信じてる内に着かないと死ぬぞ」

 

 

皆さんは頑張ってくれました。10時間の道を風メイジ総動員して5時間でクリアし、王宮へ直接入る。ウェールズを空賊として捕まえたのを見たアルビオンの方々は顔を引き攣るしか無かった。やり方はアレだが、ここまでウェールズを無傷で連れてきたので一応信用は出来る。今のレコン・キスタにここまでして小細工をする必要はないのだから。

 

 

 

ウェールズを捕まえてからの行動と女王の書簡のお陰でロイはゲルマニア大使として認められた。計算通り、レコン・キスタは明日にて総攻撃を開始する。レコン・キスタの55000対王党派の480人では王党派に未来はない。ロイ達は取り敢えずパーティーに参加する。

 

 

 

出発して二日目の午後、ルイズ組は漸くラ・ロシェールに到着する。馬を上手く扱えないサイトが居て、襲撃なんて物も受けたのが、それでも急いだ結果、案外短い時間で着いた。

 

傭兵による襲撃は見事ワルドの狙い通りになり、自分の勇姿とサイトの情け無さをルイズに見せつけた。ルイズとしてはワルドはかっこ良かったが、剣を持つサイトが大量の矢を相手に出来ないとも分かる。評価はあまり下がらない、矢か銃の訓練もさせてみるかとは考えてるが。

 

 

その夜、自分の勇姿を充分印象づけたと考えたワルドはさっさと雇った傭兵達に指示を出した。ガンダールヴも遠距離攻撃では手が出せないのが分かったし、わざわざ決闘をして実力を図るまでもない。

 

 

予想外だったのは嫉妬パワーでサイトが強化されすぎた事だ。そりゃあ、二日も目の前でイチャイチャされて、自分は話し相手さえ居ないのでは耐えられないだろう。そしてルイズの中でサイトの株が大きく上がった瞬間である。

 

 

問題はサイトが敵を全部倒してしまった事だ。七万の大軍を止めた実力をここで発揮してしまったのでサイトがダウンし、ろくに休めなかったルイズも動きたくないので、三人は変装してから宿を変えて、もう一日休む。爆発に慣れていようとも、体力が少ないのは変わらない。実はサイトをこのまま置き去りにしようと思ったワルドだが、ルイズがそれを気にしてたら自分に気を向けられないかもしれないとまで考えたら、諦めた。

 

 

 

 

アンリエッタの個人の思いつきで発動された命令に計画性など有るはずもなく、また、いくら風のスクウェアとはいえ、まだ大した功績のないワルドを信用するほどレコン・キスタは甘くない。

 

 

ワルドに与えられたウェールズ暗殺命令はそこまで重要ではない。そりゃあ戦力差がそれ程あるのにわざわざ暗殺する必要もないのだ。だからワルドもレコン・キスタ側から充分な情報を与えられてない。攻撃スケジュールを知らないワルドは間に合わせるべき時間さえ分からなかった。

 

 

 

 

これで間に合う訳ないだろ。

 

 


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