科学で魔法を始めよう   作:ロイ

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地道に達成

「書簡にはお主にまかせると書いてあったが、朕に何用だ?」

宴会後、ジェームズ1世とロイの二人だけで話す、部屋の外には護衛が居る、何か有ったら直ぐに飛び込んでくるだろう。

「ヴェールズ王子を脱走させないのですか?」

「ふん、あいつにそれを耐えられたらどれほど良かった事か」

「王家の復興は考えないのですか?」

「無理だろう。朕はもう年だ。ヴェールズは逃げるのをよしとしないだろう」

「モード大公は?」

「……」

「……」

「朕にアレを思い出させるな!」

「貴方の弟です」

「ゲルマニアには感謝している。弟を殺さずに済んだからな。だが!朕はアルビオン王家の為にも奴を許すわけにはいかんのだ」

「もし、彼が諦めるとしたら?」

「あり得んな、朕と戦ってまで追放をしなかったのだ」

「ですが王家の存亡となれば話は違うかもしれません」

「…やけに奴に肩を持つな、目的はなんだ?」

「ブリミル教の影響を減らすためです」

「それとこれとはどう言う関係だ?」

「まず、レコン・キスタですが。再三の要求にも関わらず、ロマリアは遂に異端認定をしませんでした。聖地奪還を掲げながら、始祖の末裔たるデューター家を攻撃する。間違いなくロマリアも絡んでいるでしょう」

「ふむ」

「そして次は間違いなくトリステインを襲う筈です。しかし流石にゲルマニアかガリアでその勢いは止まらざるをえません。その時、ロマリアは動くでしょう。陰謀が上手いロマリアなら疲弊したレコン・キスタを自壊させる事が可能です」

「アルビオン、トリステイン王家を壊せばブリミル教も打撃を受けるのではないのか?」

「いえ、自身が直接統治することで影響力は一層強まります。王家を撃ったレコン・キスタを悪とし、仇討ちとして自身を正義とすれば民衆も付いてくるでしょう。ですが、後継者が居れば国は返さざるをえない筈です」

「だが推測に過ぎない」

「はい、ですがロマリアがデューター家の敵を異端認定しないのが既に可笑しいのです。可能性は充分に有るかと」

「………分かった。エルフとの縁を切る事を条件に認めよう」

「ありがとうございます。監視役は誰を?」

「こちらで用意する。心配するな」

「分かりました」

「明朝、書簡を貰いにこい」

「分かりました。私はこれで失礼します」

この時点で、王はロイを信用した。

 

交渉は終わる。が、ここまでが表向きの要件だ。

 

 

 

夜、寝静まった頃。ロイは自分を見えなくしてから王宮を探る。目的は宝物庫、それも重要な秘宝を置く方だ。

 

 

とまあ、一番豪華な門の前に来たロイだが、こんな時でも看守は居た。ひっそりと侵入する為にロイは宝物庫の上から床を溶かして入る。

 

 

秘宝の数は少なかった。戦争資金の為に大半は売ったのだろう。だが幾つかは王家として売るわけには行かない秘宝もあった。ロイが探し当てた始祖のオルゴールもそうだ。始祖のオルゴールはネオ・オーブへ転送される。そしてレプリカを錬金で作る、更に門のロックを脆くした。その後ロイは床を直し、自分の部屋に戻って休む。

 

 

翌日の朝、ロイは王から二つの書簡を貰う。一つは公表用、もう一つはモード宛だ。同時に証拠として風のルビーも渡される。序だがヴェールズからアンリエッタ宛に手紙も頼まれた。風のルビーはヴェールズの戦死後貰っていくつもりだったがこれは幸いだった。今となってアルビオンだけは始祖のオルゴールとルビーを結びつけていないのでそれは渡されなかった。渡されても意味はないけどね。

 

 

同時刻、ルイズ一行がラ・ロシェールから出発。今日はアルビオンとトリステインが一番近づく日。

 

 

昼ごろ、レコン・キスタの総攻撃が始まる。ロイはジェームズにモードの監視任務を言い渡された者と共にラ・ロシェールに到着し、休憩。一番いい宿なんか半壊していたので二番目に高級な宿に泊まる。

 

 

夕方にルイズ一行がスカボローに到着。乗ってたフネはレコン・キスタに売るための物資を運ぶフネだった。そこで行われる会話をルイズは堪えた、しかし総攻撃を知ると、ワルドも慌てて風でフネを押すが、時間がどうしても間に合わず。王宮に着く前に決着は付いた。ロンディニウムでそこら中レコン・キスタを称える声に我慢できなくなったルイズは逆賊たるレコン・キスタを罵倒する。

 

 

運が悪かったのは、その罵倒がレコン・キスタのさる中隊長に聞かれた事だ。上層部の誰かの家族だと思われたたが、この一声で内通者として認識された。それでめっちゃ攻撃される。

 

 

ワルドとサイトが死ぬ気で応戦し、とにかく逃げる。だが援軍がドンドン出る。「私はトリステインの大使よ!」とか言ったら色々やばそうなので、慌てて逃げる。そしてまた変装してラ・ロシェールへ戻る。ホント、何しに来たんだか。

 

 

余談だが、サイトとワルドの戦闘における相性が中々いいと判明した。主にサイトが近距離で攻撃と撹乱し、ワルドが後ろで補佐と精密攻撃。なんかハイになったルイズとしては使い魔と婚約者のコンビが良いので嬉しそうだ。任務が失敗したのを自覚したのは2時間後。

 

 

翌日の早朝、ルイズ一行が疲労困憊でラ・ロシェールに到着し、そのままロイと同じ宿に泊まる。

 

 

ロイは少しだけ悩んでいた。トリステイン側には交渉をした事を知られたくない。何となく面倒なことになりそうだからだ。しかし、引き受けてしまった以上、渡さなければならない。監視役の方は直ぐに姿を消すので任せられないし、どうしようかと悩んでた時にパーカーを着た少年、ピンクっぽい少女、顎髭の男を見つける。

 

 

丁度良いから押し付けた。大体こんな感じで水のルビーは貰えるだろうと思ってのことだ。適当に書き添えを置いて渡した。王家の紋章と筆跡で信じてもらえるだろ。

 

 

手紙は偶然手に入れた物だが、ルイズはやはり水のルビーを貰った。予測していたとはいえ、アンリエッタさんは王家の秘宝をなんだと思ったんだろう?

 

 

風のルビーはネオ・オーブへ送られ、壊れない程度に研究を許可した。二つの書簡は時期が来るまでゲルマニアで保存する。

 

 

アルビオンでの戦争が一時終了し、ゲルマニアでは逆に物資の蓄えを始める。

 


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