科学で魔法を始めよう   作:ロイ

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兵器にはテストが必要

「そういえばあそこに居たな」

ロイが思い出したように言う。

「お前のプランに影響が出ない程度に取り戻せないか?」

ギナが言ってるのはルイズの事だ。アンリエッタの付き人となったルイズがレコン・キスタで確認されたがラ・ヴァリエール公爵では力不足で取り戻すことが叶わない。とまあ、カトレアを使ってギナにお願いしたんだが、そんな事をやってやる義理はない。

「その内帰っくるから心配するなと伝えればいい」

「それはどういう意味だ?」

「そうだな。どうせ自分で帰ってくるが、ゲルマニアが手を回したと言ってくれていい。それで好感度は上がるだろうから。時間は一か月以内と言ってくれ。この後直ぐ動くつもりだからな」

「ようし、分かった」

「ただ、これだけは言っておく。無いとは思うが、もしこれでラ・ヴァリエールが調子に乗ったら、兄さんが潰してくれ」

ギナにとってこれはショックだったが、ロイのとってはこれが限界だ。そもそもロイはラ・ヴァリエールに良い感情は無い。基本的に保守的なのに、プライドが高く、政略結婚が嫌いなど半端に義務感が可笑しい。流石にこれ以上要求するなら悪い女に騙されたと判断し、排除する。

「………くっ…了解した」

「ごめん」

「全ては我の責任だ。お前のせいでは無い」

空気が重い、だが線引きはしなければならない。ギナは部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………様、ロイ様、ロイ様」

やや落ち込んでいるロイが漸く気付く。

「ん?キュルケ。帰ってきたのか」

「はい。何か考え事ですか?」

「少しな。で、挨拶ならご飯の時でもいいと思うが、何か用事でも有るのか」

「恋人のタバサが頼みが有ると」

「分かった、通してくれ」

「了解しました」

 

 

 

 

 

 

「彼女がタバサです。お会いした事が有りますよね?」

「ああ、では要件を聞こう」

「母を治して欲しい」

「それで?」

「……?それだけ」

「交渉ではなにか求めるときには他の何かを与えなければならない。君は交渉をした事が無いのか?」

「分かった、何でもする」

「(まともな交渉の経験は無いか)では私が欲しい物をもってこい、その為にはゲルマニアに害を与えない限り、やり方には口を出さない」

「何が欲しいの?」

「土のルビーと始祖の香炉だ」

「…分かった」

「なら少し休んでいくといい。時間に制限は付けないつもりだが、遅すぎると他の者が取りに行く事に成から早めにやってくれ」

「……」

タバサは返事もせずに出て行く。

「ああ、キュルケはまだ話がある」

一緒に出て行こうとしたキュルケを呼び止める。

 

 

 

 

「恋人なんだから手伝ってやればいいよ」

「え?」

キュルケにとっては予想外だった。ロイが言ったからには出来ない任務ではないのだろうが、これはガリアに喧嘩を売る行為だ。ゲルマニア王族と関係が深い自分が関与してもいいのだろうか?

「取り敢えず彼女の正体を」

「知ってます、シャルロット姫なんでしょ?」

「知ってたのか。なら北花壇騎士団の七号だと言う事は?」

「え?それって裏仕事の….」

「そう、だから実力には問題ない。プランを一つ提供しよう、それを実行するかは君たち次第だが、恐らく最も現実的で速い方法だろう」

「でもガリアとは同盟関係じゃ?」

「それは気にしなくていい(どうせ仲良くなんて出来ないからな)。でも一応は君の独断と言う事になる」

「それでプランは?」

「詳細な内容はあとで渡す。簡単に言うと、シャルロット姫の名前を欲しがる連中を利用するんだ。ついでに君への任務だが、恐らくジョゼフを倒す必要があるので、その際にイザベラ姫を救出して欲しい」

「それはまた何故?」

「そこは知らないほうがいい」

「分かりました」

「報酬に、そうだな、王位でも要るか?」

「い、いえ、遠慮します(なんか本気っぽいんだけど)」

本気である。

 

 

 

 

 

ゲルマニアでは両用艦隊が発進する。乗員は常備軍が500。物資は余り有る程持ってきた。ウィンドボナから西へ、海を使う。目的地はトリステインの西海岸の南。衛星を使い、他のフネと出会わないように航海する、その為若干余分の時間がかかるが。同時にロイとロイヤルガードを除いたラウンズ10人が出発。目的地はラ・ロシェール。

 

 

 

 

物資と兵員の輸送は難航したが、ラ・ロシェールには既にレコン・キスタの兵士が約3万集まった。そしてトリステインはクルデンホルフの援助を以てしても2万しか居ない。簡単な法則によれば3倍の兵士が居ないので防御側が有利なのかも知れないが、第一にレコン・キスタの兵は今後も増える、第二にレコン・キスタは正当性を持ちつつ有る、第三にトリステインは防衛する領地が多いので兵を集め難い。更に竜騎兵やフネの優位、盟主の虚無の力(嘘)を鑑みて、レコン・キスタ上層部は侵攻開始を決定する。

 

 

 

 

久しぶりに現れたシェフィールドが布に包まれた巨大な何かをラ・ロシェールの倉庫に運び入れた。まあ、実戦テスト用のヨルムンガンドだが。これが最初に牙を向けるのはトリステイン軍かゲルマニア軍か。衛星からロイも見たのでトリステインじゃね?

 

 


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