科学で魔法を始めよう 作:ロイ
「断然足りんな」
否定するのはガリア王のジョゼフ。
「そうでしょうか?」
報告しているのは使い魔のシェフィールド。
「ああ、ゲルマニアのゴーレムはスクウェア以上の魔法を使うのだろ?ならばこのカウンターが通用するかどうかも怪しい」
「しかし、この大きさでこれ以上のカウンターは…」
「盾だ」
「はい?」
「カウンターの力を凝縮した盾を作れ」
「武装面でも騎士に似せると言う事ですね」
「そうだ。それと数をちゃんと揃えろ。倒すにしても、消耗するにしても数は必要だ」
「了解しました」
「それとゲルマニアがエルフと内通しているとの情報を大々的に流せ。ゲルマニアが短期でここまで発展できるのはエルフの援助が有ったからと宣伝しろ。ゲルマニアに動揺は広まらないだろうが、ロマリアの連中なら信じるだろ」
ヴィットーリオは別だが。
「ではモード大公の件も流しましょうか?」
「いや、あれは逆にゲルマニアの影響力を高める。あれでも王族だ。ゲルマニアに有利な発言をすればロマリアは動きにくくなる」
「分かりました」
「それと元女王と接触しろ」
「へ?」
事態はそう簡単には進まない。
SIDE ロイ
こちらも情報は流した。ピンポイントでロマリア上層部に届いてるはずだ。
レコン・キスタを作ったのはガリア。額にルーンが有る謎の人間が良くレコン・キスタの盟主と話している。その人間があのゴーレム、ヨルムンガンドを操っていた。ヨルムンガンドはカウンターを使う、それはエルフの技術だ。ジョゼフはエルフに協力してもらっている、と自分で考え出すように情報を流す。
随分遠まわしな情報だが。ヴィットーリオに届けば問題はない。これを理解できるのもヴィットーリオとロマリアの上層部だけだろう。自分で辿りつた結果は信じやすい。だがヴィットーリオがこれを鵜呑みにする事は無いだろう。
シャルロットと言う最高の口実も有るんだ。聖地を目指すならガリアが最短のルートだが、ゲルマニアを攻撃する理由は二つ。戦力確保か、武器確保だな。
ゲルマニアはハルケギニアの武器供給源なので下手に手は出せない。だが、それは攻撃される理由にもなる。
その点、ジョゼフはヴィットーリオより優秀だ。武器販売を止めたら動けなくなるロマリアに対し、ガリアはヨルムンガンドがある。使った金属の量から考えて15体は有る筈だ。充分主力になり得る。これでガリア軍はゲルマニア製の武器が手に入らなくても生産力を回復するまで持ちこたえられる。
全く。こちらにMSが無ければ相当やばかったぞ。新しいコンセプトの兵器を作り出すとは。MSを前にした初期の地球連合の気分が少し分かってしまったではないか。
政治、開発、経済、陰謀、全部ほぼ一人でやってのけたジョゼフは化物だな。
取り敢えずトリステインは終わりだな。このまま誰についていくかで終わり方が決まる。奴らは運が悪いとしか言い用がない。先代の王と教皇は皆、王としては平凡だった。ここで鬼才のジョゼフとヴィットーリオが現れ、ゲルマニアに我らが干渉した。
アルビオンとトリステインが持たない訳だ。もともと小国なのに王が突き抜けていない。
まあいい。方針はガリアとロマリアをぶつける方向で行く。
SIDE OUT
SIDE ヴィットーリオ
なんですかコレは。
ガリアはエルフと繋がっている。ゲルマニアもエルフと繋がっている。これが本当なら我らは既に終わっています。
上層部はガリア攻撃を主張していて、兵士達はゲルマニアへの攻撃を言っている。
我らの目的は聖地です。最強のゲルマニアとは戦う必要が無い。ガンダールヴを手に入れた今、場違いな工芸品は使い道を得る。まあ、その前に彼らの精神ケアをしなければなりませんが。ミス・ルイズの爆発魔法、ガンダールヴの戦闘能力、鍛えればかなり使えるでしょう。
問題はガリアとゲルマニアの同盟ですね。本質的にはありえませんが、何らかの理由で一時的に保つ必要があると判断された場合、最悪の事態になります。出来ればこの二つで戦争させる、最低でも同盟は解消しなければ。ガリア攻撃は口実では内戦となりますが、ゲルマニアが援軍を出さない確証はない。
ここらでゲルマニアと和解できないだろうか?大隆起を知ったらジョゼフは全力で支持しそうだが、ゲルマニア王はどうだろうか?
現在、風石の鉱脈の上で何か図形を書かせているらしいですが。もしそれが風石の効果を打ち消す物なら頭を下げても手に入れたい。だが、もしそうだとしたらそれを使ってトリステインとロマリアから何か引き出す為に使うでしょう。ゲルマニアだけ無事でも意味は有りません。怪しいですね。下手に太隆起の情報は漏らせません。
それよりも今は兵士を抑える事ですね。そしてトリステインは早めに吸収しましょう。
SIDE OUT
悲しみに明け暮れたアンリエッタと混乱したルイズはヴィットーリオが居る事でトリステインと交渉が出来たので大分良くなった。
アンリエッタは毎日ブリミルへ祈る。それは自分を保つための儀式だ。
ルイズは家族との手紙で少しずつ落ち着く。それに加え、教皇に虚無の使い手としてに認められ、協力を頼まれた。目的は聖地奪還。ルイズとサイトはエルフの凶暴性(嘘)をよく聞いており、教皇のお言葉もあって協力するための訓練は惜しま無い。
そしてシェフィールドとアンリエッタが接触してしまった。ヴィットーリオも護衛、監視などをつけていたが、始祖の使い魔は苦労したものの、それをかいくぐった。
次の日、アンリエッタはルイズに話をする。
「ねえルイズ。お願いがあるの」