科学で魔法を始めよう   作:ロイ

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戦闘だった

「トリステインは順調にロマリアに吸収されつつあるか」

ロイはゲルマニア王宮の執務室で報告を見ていた。

(キュルケの報告は精度は高いが深い部分の内容はないだろうな。嘘を見破るにはまだ対人経験が少なすぎる)

今見ているのは他の内通者から送られてきた物だ。

(タバサには敵討ちを約束している。嘘をつくには悪すぎる相手だ。ならば少なくとも上はガリア攻撃で決めたんだろう)

キュルケの報告は一番で見ている。彼女の報告書はある意味ロマリアからゲルマニアのメッセージであるので、そういう意味での価値は高い。

(今は下の意思統一に苦労しているんだろうな)

ガリア王が流した情報はその意味を失う。結局侵攻を少し遅らせただけである。

(しかし、ジョゼフの作戦がこれで終わるのか?)

有り得ない。こんな無駄な事をするジョゼフでは無い筈である。

(駄目だ。狂人の考えは予想しにくい。奴の狙いは恐らくゲルマニアにロマリアを潰させる事だが、ヴィットーリオはそこまで甘くはないぞ)

 

ドカーンと王宮では有り得ない声が聞こえる。そしてそれに続く軽い振動。

 

(なんだと!?)

「報告します。侵入者が現れました」

伝達速度は速い、事前にあらゆるパターンを想定していたからこそ出来る行動だ。

「何処から侵入してきた?」

「王宮の横の壁を破壊して侵入してきました!」

(まさか)

「侵入者の情報は?」

「赤髪の剣士、推定25歳前後と緑髪のメイジ、推定20歳前後です」

(これは)

「戦い方は?」

「メイジの方は謎の爆発する魔法です。剣士の方は大剣を使います」

(そう来たか)

「陛下には当然伝えただろうな」

「はい!」

「ならば冷静にサハク公の指揮に従え。それと王族とラウンズを王座の間に集めろ、私も直ぐに行く。文官の退避も始めろ。慌てる必要はない、分かったか?」

ロイは極めて冷静に命令を下す。

「了解!」

(これがジョゼフの作戦か。間違いなく二人組はルイズとサイトだろう。ならばラ・ロシェールに居るのはスキルニルか。しかし、ガリアの仕業だと言うのがバレバレだ)

ヴィットーリオはこんな事で切り札たる虚無の使い手を消耗したりしない。使い魔と違って使い手の補充は難しいのだから。

(洗脳なんてつまらない手段を使う奴じゃない。ならば直接命令を下したのは誰だ?ヴィットーリオではない、それ以外では…アンリエッタか。両方共そこまで考え無しだと思わなかったぞ)

だがこの襲撃は絶対に安全である。何故ならばサイトとルイズは人を殺める事が出来ない。逃げる相手も追わない。これで良く派遣できるもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

王座の間では他の王族とラウンズが既に集まっていた。ロイは宝物庫と倉庫の中身を一時的にネオ・オーブへ転送するために少し遅れた。その間にも爆発音が続く。

 

 

(やはり壁を壊しているのか)

「遅くなりました」

「よい」

「陛下、フォー以外のラウンズは外で包囲網を造らせるべきです」

「そのようにしろ」

「「「「「はっ!」」」」」

「それと敵の剣士は連射の銃を持ってる可能性がある、十分気をつけてくれ」

緊急時故に色々省略してしまう。10人は直ぐに出て行った。

「それでロイ様、我々どう動くべきですか?」

素に戻ったマリアが聞く。

「此処で待てばいい。ハウスに向かったら即死だし。文官の撤退も完了しているはず。奴らは必ず此処に来る」

「侵入者を知っているのですか?」

「ああ、詳しい事は後で。取り敢えず剣士の方は兄さんが相手してくれ。セミオートの銃を持ってる可能性があるから危険はないけど気をつけてくれ。主に此処の調度品等に。後これを渡しておく。身体強化の魔法薬だ。副作用は一日の筋肉痛だが、効果はかなりのものだ」

「うむ」

「ステラはこれ。外見的にはハルケギニアの銃と同じだが、ネオ・オーブの特注品だ。精度は保証する。まずこれで敵メイジの杖を撃ち落せ。それで無力化出来る」

「うん」

「他は、まあここでダラダラしてればいいよ」

 

 

結果、コーディネーターはすごいと言う事が判明した。神の左手と言ってもたかが身体強化と武器知識だけだしね。プロ軍人で同じく身体強化されたコーディネーターには叶わなかった。

 

ルイズとサイト、鹵獲される。

 

 

建物の被害はそこそこあるが、人的被害はゼロ。しかし、そこまでは問題ではなかった。

 

SIDE ロイ

 

奴の考えが分からん。

 

この事態は今のゲルマニアにとっては寧ろ歓迎すべき事だ。怒りを装ってトリステインに攻めこむか、ロマリアに攻めこむか。それともロマリアとの裏取引でなにかを引き出すか。使い方はいくらでもある。

 

もしかしてジョゼフはアイツらがゲルマニア王族を傷つけられるとでも考えてたのか?一応はチートとして知られているんだが。実力を図るため…でも無いだろ。デストロイの件で充分だろ。

 

ルイズを洗脳して聞き出した情報では直接の命令を下したのはやはりアンリエッタ。だが、ヴィットーリオは絶対にこんなマネはしないし。それ以外でスキルニルを二体も用意できて、ヴィットーリオに気付かれずにアンリエッタを煽る事が出来るのはジョゼフしか居ない。

 

こんなんでロマリアへ進軍するとでも思われてるのか?それともジョゼフは自分がやったと気付かれないと思ってるのか?

 

そう言えば前回は直ぐにブチ切れたな。デストロイまで出したし。ま、今回は事実を隠蔽して裏で交渉しよう。トリステインとロマリアで同時にな。

 

SIDE OUT

 

 

 

 

SIDE ジョゼフ

 

ここまでされてロマリアを攻撃しないだと?演習だと言う無茶な言い訳まで用意してまですることか?しかもゲルマニア王宮は人員が無傷。ますます分からん。

 

奴らが無傷なのは百歩譲ってゲルマニア王宮の兵士が優秀だと言う事にしよう。しかし、演習だと言うのは幾ら何でも……

 

いや、意外と合理的だな。それで王宮警備の練度が上がるなら容易いものだ。

 

しかし、どんな交渉であれ、ロマリアとの関係は悪化する。これでロマリアとの同盟は容易くなるはずだが、何故ロマリアの上層部はここまでガリアに拘るんだ?

 

SIDE OUT

 

ジョゼフはヴィットーリオの目的、迅速なる聖地奪還を知りません。

 

 


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