科学で魔法を始めよう   作:ロイ

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開始前

その日、戦争の影響でボロボロなトリステインでは複数のルートから大量の噂が流れる。

 

 

曰く「今の状況は全部ゲルマニアのせいだ」、曰く「トリステイン軍は負けなしである」、曰く「ゲルマニアを倒せば金は奪い放題」、曰く「聖戦に参加しないゲルマニアは異端だ」、曰く「ゲルマニアはエルフと内通してて人間を滅ぼそうとしている」。

 

 

事実も混ざってるからこそ信憑性が高い。ゲルマニアは聖戦に参加してないのは公然たる事実だ。「トリステイン軍は負けなし」と言うのはたしかに被害こそ甚大だが此処数回の戦争では負けたことはない、最終的には勝っている。

 

 

真実を織りまぜた様々な噂はトリステイン国民の「打倒ゲルマニア」機運を高まらせる。それは平民だけでなく、貴族にも広まっている。一人の言葉は信じられなくても三人に言われれば信じてしまう。噂が貴族間で伝わるのは速い、信じる貴族も増え。なかなかヤバイ事になる。

 

 

それを止めようとするマザリーニとラ・ヴァリエール公爵であるが、宗教ルートと商業ルート、さらに裏情報でもこの内容が飛び回り、手の施しようがない。それでも女王マリアンヌだけでも乗らないように説得するつもりだったが、軟禁されたアンリエッタの影響で手遅れであった。

 

 

即座にゲルマニア進軍が決定。ヤバイと見てちゃっかり亡命の準備をしてるモット伯はしっかり者である。ゲルマニアの紹介で亡命先はクルデンホルフだ。緩衝地帯としての効果を見込んで残されたクルデンホルフは今後も活躍しそうである。

 

 

ラ・ヴァリエール公爵は真剣に考えていた。家族か、国か、名誉か、命か。それは只の現実逃避である。ルイズがロマリアに居る以上、同盟国のトリステインを裏切る事は出来ない。ならば、やるべき事は一つ。

 

 

SIDE ロイ

 

私が何より驚いてるのは、このハルケギニアに土下座の文化があった事だ。それをやってるのがラ・ヴァリエール公爵なのはどうでもいい。

 

「それでゲルマニアに忠誠を誓うのか?」

「はい」

「その代わりトリステインを見逃せと?」

「いえ、ルイズにゲルマニアと敵対させないために取り戻すのに協力して貰いたい」

あり得ないな。公爵家はトリステイン王族の分家だ。担ぎ上げるには十分すぎる。誰一人残すつもりはない。

「なら貴様はゲルマニアになにを齎してくれる?」

「ブリミルの血筋。カトレアをギナと結婚させます」

今更そんな物に意味はない。トリステインは一からつくり直すつもりだ。トリステイン王族の血筋、ブリミルの血筋は邪魔でしか無い。

「いいか?トリステインがちょっかいを出さなければこちらは何もしない。説得する相手が違うだろう?」

「もう止めようがありません」

コイツが弱気になるとは。だがそれはどうでもいい。

「ならばそれは貴様らの責任だ。提案は却下だ」

 

 

 

 

 

 

 

ったくメンド臭い。今更何を言っている。

 

さて、世代交換の準備でもするか。取り敢えずキュルケは宰相につかせる。いずれ最高責任者にする必要があるが、国民を納得させるのも容易ではない。トリステインを更地にしての再開発は意識をそらすためだ。見える利益があれば誰もが飛びつくだろう。流石にそれだけで納得するとは思えないので他の手も用意してあるが。

 

 

本国も、ゆっくりと転移準備を進めさせよう。前回のように急ぐ必要はない。それでも我らがゲルマニアに要られる時間は限られている。キュルケの件は直ぐに実行しよう。リュティス郊外ではタバサと充分にいちゃつけただろうし。

 

 

トリステインの再開発にトリステイン王族の血筋は残さない。徹底的に消す。まあ、恐らくはロマリアに逃げるのでどうとでもなる。ゲルマニアが直接手を下すのは評判が悪いからな。

 

 

この戦争、恐らくは徴兵するまでもなく大多数の国民が参加するであろう。駆逐するついでにガリア方面に追い出すか。そして建物などを吹き飛ばせば使える土地になる。

 

 

ボロボロなら一から作り直した方が速い。トリステインの利権を一掃し、完全にゲルマニアに組み込めば反乱も起こりにくいだろう。憎しみは逃げ出したトリステイン王族に被ってもらおう。

 

 

後は、キュルケとタバサにプレゼントかな。

 

SIDE OUT

 

 

「タバサとの結婚を認める」を条件にキュルケは宰相になった。普通は同姓の結婚は認めないものである。そしてタバサとキュルケの血を採取し、遺伝子を解析する。この仕事はネオ・オーブに任せられないので、ロイ自身がやった。二人の遺伝子を半々で組み合わせ、出来る限りの最高のコーディネートを施す。二人の子供である。

 

 

思考が随分父親っぽくなったロイだが、娘同然に育ててきたキュルケには幸せになってもらいたいものだ。渡すのは最高の日にしないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徴兵するまでもなく、トリステイン国民は大量の参加者がいた。マザリーニは既に諦め、マリアンヌは国家一致団結に勝利を見出す。

 

 

ゲルマニアが餌に食らいついてる内にロマリアはサハラへ進軍。例のアレでギナは今度はネフテスへ派遣された。衛星情報を彼らに教える役である。

 

 


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