科学で魔法を始めよう   作:ロイ

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壊れ具合が微妙

第二次攻防戦もあっけなく失敗した。

 

 

ルイズの魔法がオーバーロードし、敵味方を全て巻き込んだ爆発を起こしてしまった。見事に制御に失敗してしまったのだ。虚無魔法のエクスプローションではなく失敗魔法の爆発である。

 

 

精神が安定しなかったルイズの照準は外れ、戦場のど真ん中、空中の一点を起点に爆風が発生し、周りの全てに多大な影響を及ぼす。しかし、破片がないので只の熱い風である。いや、威力的に只のとは言えないだろうが。

 

 

爆風はフネと戦場にいる人間を吹き飛ばし、戦闘不能にする。ヨルムンガンドとモビルタンクは無事だったが、操縦者のジュリオが居なくなったのでそれも鉄+風石の塊になってしまう。

 

 

モビルタンクは操縦士が車内に居るので大きな影響はない。一時的に使用不能になった程度だ。しかし、本当に戦場からヨルムンガンドとモビルタンク以外の全てが消えた。歩兵はかなり速く飛ばされたから助かるのは難しいだろう。フネは中が洗濯機見たいになるだろうが、空が飛べる者は何とか助かると思う。

 

 

エルフの歩兵は居ない。そしてエルフは先住魔法で空を飛べる。被害が少ないと言う事だ。

 

つまりこれは完全なる自爆なんだが、決戦と言うより只の災害だ。グダグダ感は有るが、エルフはまだ動くモビルタンクでヨルムンガンドを撃破し、帰還する。

 

 

ちなみにヴィットーリオとルイズが乗るフネも同時に吹き飛ばされました。

 

 

 

 

SIDE ヴィットーリオ

 

終わりました。

 

ええ、全部終わりましたよ。

 

予想以上の威力でしたが、命中しなければ意味が無いですよ。ですが下手に心のケアをして威力が減っても問題ですし、冷静に怒るなんてルイズには出来ませんし、なるべくしてこうなりましたか。

 

回収しに行ったジュリオはヨルムンガンドが全部壊れたと言ってますし。ルイズは反動で起きませんし、詰みましたか?詰みましたね。

 

もう全軍突撃くらいしか出来ませんが、それは無駄ですね。

 

聖戦失敗、幾度も経験してきた事ですが、大隆起が既に始まっている今、撤退は許されません。

 

ですがいくら策を使っても勝算は有りませんけどね(笑)。はっはっはっはっ!

 

ゲルマニアに頼るしか無いのですか?

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

この状況では撤退するしか無かった。ネフテスの兵器の情報は出回り、誰もが勝てないと分かったからだ。それに謎の爆発を虚無魔法だと発表するのも不可能だった。あんな不完全な魔法が切り札では不安を増すだけである。

 

 

そしてお約束の権力闘争。聖戦の完全失敗はヴィットーリオの致命的な失点である。別にフォルサテの末裔だからって教皇になれるわけではない。確かに手札の一つには成りえるだろうが、決定的要素でもない。

 

 

前回は改革派の支持を集めて上り詰めたが、今回の失態で彼らの支持も失われる。ヴィットーリオは諦めようとした。大隆起は上層部も知っている、殆どが保守派だが伊達に長く生きてないだろう。自分の権力を奪った後の対処法くらいあるだろう、とヴィットーリオはまだ楽観視していた。

 

 

ラグドリアンが隆起した。うまい具合に湖だけが浮遊し、周りの住民は驚いただけに終わったが。ハルケギニア一の観光地(ゲルマニアの湖は知名度がまだ及ばない)が浮上したのは前回の火竜山脈以上の衝撃を人々に与えた。

 

 

民衆から言えば、ゲルマニア人は女王マリアを信じており、他の国はロマリアと自国の王を信じている。クルデンホルフだけは微妙だが。

 

 

この隆起でロマリア上層部は隠しきれないと判断し、大隆起を発表する。纏めると「聖地奪還しないと皆死んじゃいますから全員で戦え」。一方ゲルマニアは自国は安全だととんでも無い内容を発表する。

 

 

これが齎した結果。ゲルマニアは何時も通りの雰囲気。イザベラは慌ててロイと交渉する。ロマリアとジョゼット派は二つの意見に分かれていた。即ち交渉で方法を聞き出すか、戦いで方法を奪うかだ。

 

 

大隆起を止める方法があり、ゲルマニアがそれを知ると言う点は誰も疑わなかった。「少しは疑えよ」と言いたいかも知れないが、魔法技術でも今はゲルマニアが一番なのだ。逆に言えばゲルマニアに為す術がなければ本当に絶望しか残らない。

 

 

流石にゲルマニアと戦うのは得策ではない。取り敢えず交渉すると言うのがガリアジョゼット派とロマリアの判断だ。それを押し付けられたのがそろそろ教皇の座を離れるであろうヴィットーリオである。

 

 

イザベラとの交渉で幾つかの条件でイザベラ派の領地の風石を無力化する事となった。同時にトリステインの風石無力化も進める。ラグドリアンが浮上するまで待ったのは観光地戦略です。

 

 

 

SIDE ヴィットーリオ

 

「条件は同じ。ブリミル教以外の宗教を認める、異端審問の永久的廃止、女王マリアをブリミルより上位の存在と認めることの三つだ」

やはりそうだったか。

「貴方は、全てを知っていたのですか?」

全く同じ条件、この状況では追加してもいい筈なのだが、あえて条件を飲みやすくしているのか?だとすると、前回、無茶な条件を出したのはこれを予測しての事だろうか?

「さあ?こちらは譲歩するつもりはありません。条件を認めますか?」

「……いえ、認められません」

だが、今でもそれは無茶な内容だ。

「成程、貴方なら乗ってくれると思ったのですが」

?……狙いはロマリア内乱か!しかし、今の私の力では…

「分かってくれたようですね。ジョゼット、失礼、シャルロット姫は貴方の使い魔と懇意だそうですね?」

なん…だと?

 

私は……

 

SIDE OUT

 

 


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