二月や三月に流星群は無いと書きましたが、主要な流星群が無いだけで、小規模な流星群や南半球や昼間など、流れている流星群は存在します。……つまり、年がら年中、流星群はあるってことさ!
翌朝、学校に向かっている途中で、うっすらと頬に張り手の跡がある一夏と遭遇した。どうしたと聞くと、箒嬢にやれたと言った。
「……今度は何をやらかしたんだ? 着替えでも覗いたか?」
「違う。鈴の言葉の意味を箒に相談したら、殴られた」
「なるほど」
昨日、鈴音嬢から聞いた中学校の時の告白的な状況になったわけだ。あの時の告白した子が鈴音嬢で、中学校の時の鈴音嬢が箒嬢。……こいつ、全く成長していない。
「せっかくだから、俺からも一撃お見舞いしてやっていいか?」
「いいわけあるか!」
「だろうな。残念だ」
軽口を叩きながら進む。ちなみに、OKが出たら殴っていた。
寮から校舎までの道のりを越えて正面玄関に辿り着く。正面玄関に行くと、何やら人が集まっている。どうやら、掲示板に何か張り出されているらしい。
「なんだろうな」
「さあ。一夏が鈴音嬢に罵倒されて、箒嬢に殴られた件についてじゃないか? 新聞部ならやりそうだ」
「まさか、そんなわけ…………ない。ないさ、きっと」
ずいぶんと自信がないようだ。以前まで抱いていたもしかして強いんじゃないか、というイメージはほぼ崩れている。
一夏は後ろから見ようと頑張っている。しかし、しばらく粘った末に、諦めたようだ。そんなに見たいなら、突っ込んでいけばいいのに。
「普通に突撃したらいいんじゃないか?」
「……女子の集団にか?」
「ああ。さあ、逝ってこい、一夏!」
「行ってこいの字が違わないか?」
「あってるさ」
逝ってこい、だろ?
こういうのは、自信満々に言うに限る。一夏は少し神妙な顔つきになってから、突撃していった。突撃した、と言っても「すみません」とか言いながら道をあけて進んだだけだけどな。
「あら、星矢さん。おはようございます」
「おう。おはよう、セシリア嬢。一夏ならこの先だぞ」
俺を見つけてこっちに来たらしいセシリア嬢に視線を向けて、集団の方を指さす。一番奥に一夏の姿が見えたから、なんとかたどり着けたようだ。途中、変に体をびくつかせているのは、周囲の女子に触られているからだろう。
「掲示板ですか? 何が張り出されているんですの?」
「さあな。それを今、一夏が見に行ってるんだ」
「それもそうでした」
「だな。……っと、そうだ。セシリア嬢。多分、一夏は疲れて帰ってくるだろうから、ここで労わってやればポイントアップだぜ!」
「ポイントアップですか?」
ふと思い出すと、セシリア嬢に何か手助けをした記憶がない。ここは、一度くらいやっておく必要があるだろう。主に、俺の娯楽的に。
「男というのは、疲れてるときや弱った時を察知して優しくしてくれる女性に弱い」
「本当ですか!?」
「ああ。大体はそうだ」
ただ、それが一夏の場合にも通用するのかは、謎なだけで。……あいつ、もしかしてソッチなんじゃないだろうか? 少し距離を置くことを検討しよう。
しばらく様子をうかがっていると、瀕死になった一夏が返ってきた。すかさずセシリアが駆け寄る。うんうん、自分でさせといてなんだけど、殺意が湧くな!
ひとまず殺意は抑え込み、心配してる風を装いながら質問する。
「それで、何が張り出されてたんだ?」
「クラス対抗戦の対戦予定表だよ」
「対戦カードは?」
「一回戦が俺と鈴だ。三回戦で三組、五回戦で四組って書いてあった」
まあ、リーグ戦なわけだし、一組二組が最初になるのは順当な話だ。にしても、やっぱり最初から鈴音嬢か。
「最初から気が抜けない戦いになりそうだな」
「全試合、気を抜くつもりなんてないさ」
「よく言うぜ、素人のくせに」
「うっせえ」
好戦的な笑みを浮かべながら言い合う。やる気(殺る気に非ず)は十分。今の一夏なら、何とかなりそうな気もする。
その、傍から見ると変な笑みを浮かべた俺達は、そのまま教室に歩き出した。
放課後になると、急いでアリーナに行った。クラス対抗戦の練習をするためだ。意味もなく、アリーナまでダッシュで競争したことも追記しておく。
俺と一夏。そして、セシリア嬢に箒嬢の四人はアリーナにいた。
なぜこんなに箒嬢がしょっちゅうISを借りれるのかが不思議だったが、よく考えると箒嬢は篠ノ之束氏の妹だった。そういうのもあって貸してもらいやすいのだろう。
「さて、それじゃあ、やりますか」
「俺、今日は星矢と模擬戦したいんだけど」
「俺とか?」
「だって、いままでやったことなかっただろ?」
よくよく思い出すと、そうだった。そもそも練習に付き合ったのが今回で二回目だし、前回も見ていたりするだけだったので、戦ったことはない。
「星矢って、いつも一人で練習してるだろ? っていうか、ISを使った練習すらあんまりしてないみたいだし」
「まあ、そうだな。今はまだ、体作りと基礎連で十分だからな」
クラス対抗戦が今の目標な一夏と違って、俺は長い目で見ていればいいからな。
それに、実は一緒の場所にいる先輩達に教えてもらったりもしている。少しアドバイスを貰うくらいではあるが、とても参考になっている。やっぱり、今の俺に必要なのは専用機よりも経験や知識なのかもしれない。……専用機は嬉しいし、もう離さないけど。
「だからさ、今日は模擬戦してくれないか?」
「別にいいけど、後で後悔しても知らねえよ?」
「それはこっちのセリフだ」
よろしい、ならば
一夏が雪片弐型を中段に構え、俺は
「さあ、こっちから行くぜ!」
一夏は上空に飛んで炎を躱し、一度様子見かこちらに攻め込んでこない。正直、こっちから攻めることにメリットがない。
「怖じ気づきましたか~?」
「まさか!」
からかってみると、案の定乗ってきてくれた。雪片弐型がただの剣からビームサーベルとなる。零落白夜が発動しているのだ。
一夏のビームサーベルが大きく振りかぶってから振り下ろされる。剣を横に構えてそれを受け流すが、そのままタックルされる形で十メートルほど後方に飛ばされた。
「おらあっ!」
急いで体勢を立て直す。先ほどの勢いのまま一夏が突撃してきていた。
左腕を突き出して
「いっけえええっ!」
「突っ込むのかよっ!」
一夏は炎をよけるようにはしつつも、勢い良く突っ込んでくる。シールドエネルギーはガリガリ削れているはずだが、こちらは向こうの攻撃が一度でも直撃すれば試合終了だろう。零落白夜っていうのは、それだけ威力が高いものらしい。
俺はすぐに
一夏との距離が十メートルは空いたところでシールドエネルギーを確認する。マックスが1500だったのだが、掠っただけで1000台まで落ち込んでいる。
「マジチート装備だな、馬鹿野郎!」
「剣一本でチートなわけないだろうが! そっちこそ、戦略の幅が広すぎなんだよ!」
隣の芝は青く見えるらしい。互いに互いの機体を
一夏の良くも悪くも鬼畜仕様の専用機とライトセイバーに舌打ちしつつ、次の手を考える。
どれくらいかは分からないが、一夏のエネルギーはかなり減っているはずだ。半分から三分の一を想定している。
普通の武装と違って攻撃するのにシールドエネルギーを消費する白式は燃費が悪い機体らしい。そういう意味では、燃費の良い
やっぱり、考えるまでもなく持久戦だな。ヘタに勝負を急がずに相手のガス欠を待った方がイイだろう。
一夏もどうしたらいいのか悩んでいる様だった。……あそこまで縛られたら、逆に悩まなくて済むんじゃないかと思うだが、気のせいだろうか。
「おーい、大丈夫か?」
「ああ、問題ねえよ」
「それは結構、こけこっこー……だな」
「こんな時まで冗談言うのかよ」
こんな時だから言うのさ。
理由なんて、分からない。ただ、今はそうしなければいけないという強迫観念のようなものに従っているだけなのだ。脅迫してくる何者かの正体も分からないというのに。
「さあ、どうする一夏?」
一夏は動かなかった。その真剣な眼差しは、俺の複雑な心情など全て見通しているのではないかとさえ思った。
一夏は今、剣になっているのだ。人馬一体ならぬ人剣一体といったところか。雪片弐型に、一度消えていた輝きが戻る。俺はかすかに目を細めた。
静かだった。いつもの俺達のやりとりとは正反対に。ただ、静かだった。
ジャリッ、とアリーナの土が音を立てる。一夏が一歩踏み出していた。雪片弐型を正眼に構えている。……なんか、必殺技が来る予感。黙って剣を後ろに構える。
「っ、シッ!」
来た!
正面から突っ込んで来た。一夏らしい気がする。これを当てなければ負けるのだろう。逃げればいいのかもしれないが、
……ああ、もう、なるようになれ。
「くらえっ!」
「うわっ!?」
一夏はそれを間一髪でよける。その表情が勝利を確信したものに変わった。天頂に剣を振り上げる。胸を張り、振り下ろしの構え。まさに、最大の一撃を決めようとしていた。
「これで……っ!」
……終わりだ。
一夏の顔が歪む。お前は、これを見たことはなかったよな? 俺の手が腰に回る。
「い……けえっ!」
俺の手には、短剣が握られていた。それは、日本人が見ることができぬ位置に隠れていた
剣を振り上げたままの一夏。俺は、その胸に、
――――
試合が終わり、集合する。これから、反省会だろう。俺が試合内容を思い返していると、一夏が悔しそうに言葉を漏らした。
「あんなの、無えよ……」
「勝てば官軍だ。敗者の言葉など戯言にしか聞こえんな」
「……最低ですわ」
「だな」
「そこ、黙りなさい!」
結果的には、俺が勝った。だが、なぜかブーイングの嵐だった。解せぬ。
「いや、別に否定はしてないぞ。だけど、なんかやるせないんだよな……」
「勝ったと思ったところで、不意打ちくらったからだろ?」
「そうそう。あれ、いつの間に出してたんだよ!」
「最初からだ」
俺は、試合開始時に三つの武装を展開していた。“
「
武装の展開には、集中力がいる。上級者になればなんてことないんだろうが、初心者である俺が土壇場で展開などできるわけがない。だから、あらかじめ展開しておいたのだ。
「そっか。最初から考えてたんだな……」
「予備で出しておいただけだ」
「やられたー」と悔しそうに叫んでいるが、どこかすっきりしている印象も受けた。
納得がいっていないのは、女性陣。というか箒嬢である。
「男なら、堂々と挑むべきだろうに……」
「仕方ありませんわ。星矢さんの得意技ですもの、不意打ちは」
「……おい、箒嬢よりもセシリア嬢の方が毒を感じるぞ」
「そんなことはありませんわ。わたくしは何も気にしておりませんもの、あの時の試合内容など」
「それ、気にしてるってことだからな」
一夏の時の油断したところで一撃を決めるのとは別で、セシリア嬢のは初見殺しを用いた倒し方。……“不意打ちの専門家”の称号を頂戴するには十分かもしれない。断じて欲しくはないが。
それにしても、セシリア嬢……根に持つタイプらしい。
「いいじゃんか、別に。正々堂々やっても勝てないなら、知恵を絞っても。せこいとか言うな、立派な頭脳戦だ」
「何が頭脳戦だ」
箒嬢のお気に召さないらしい。……勝てばよかろう、だろうに。
「まあ、それはともかく。星矢との戦いは参考になったよ。調べたら、鈴の専用機は近接格闘型で、遠距離装備もあるらしいから。同時に使ってきてくれて助かった」
「そうだったのか。なら、どっちもできる俺が適任だったな」
箒嬢は近接、特に剣。セシリア嬢は遠距離、特にBT兵器。そして、面倒なことに二人はどっちかしかできないのだ。もう片方も練習すればいいのに。
「そういえば、鈴音嬢の専用機ってどんなのだったんだ?」
「“
「一つだけ願いを叶えてくれそうだな」
「言うと思った。でも、字が違うからな」
なんだ、神龍じゃねえのか。
「まあ、それはともかく。武装は?」
一夏から聞いた情報をまとめると、こんな感じだ。
機体は甲龍。装備は、翼型の青龍刀“双天牙月”と第三世代兵器である衝撃砲“龍砲”だそうだ。一夏にも分からないらしいが、どうやら衝撃砲というのは、砲身と砲弾が見えないらしい。
「衝撃砲とは、空間に圧力をかけて放つ兵器ですわ」
「……詳しい説明プリーズ、セシリア嬢」
「空間を圧縮することで砲身を形成し、その余剰エネルギーを砲弾とする兵器ですわ。空間、つまり通常戦闘なら気体分子でしょうか。それを砲身と砲弾とするんですの。範囲空間の気体分子を圧縮して砲身を形成するので、死角がないんですわ」
「なるほど。それは、つまり……」
リアル空気砲だな!
「リアル、空気砲……ですか?」
「いかにも」
いやあ、ドラえもんの秘密道具の再現もここまで来たのかと思うと涙が出てくる。人類の技術発展って、すごいな。マジやばいな。もう、いつドラえもんができてもおかしくないんじゃないか?
「り、リアル空気砲とは身も蓋もない……」
「いいじゃないか箒! 空気砲だぞ! 『ドッカーン!』だ!」
「そうだ。『ドッカーン!』だ!」
箒嬢が戸惑い、セシリア嬢はドラえもんを知らないのか首をかしげている。盛り上がっているのは、俺と一夏だけだった。ふっ、第三世代兵器など、俺達の手にかかればそんな認識になってしまうのさ。
俺と一夏は、ひとしきり“リアル空気砲”で盛り上がる。そして、それも落ち着いたところで咳ばらいをした。空気を戻すためだ。
「本当なら、その龍砲の練習をしたいが、そんなことができる装備がある奴はいない」
「そうですわね……星矢さんもダメなんですの?」
「俺は、そうだな……」
「……できないことないかもしれないが、今は無理だ」
「どういうことですの?」
「鈴音嬢の機体を直接見る機会があれば、真似できるかもしれないけど。……あー、やっぱり無理かも」
「どっちなんだ!」
「分かんねえんだよ。まあ、少なくとも今は無理だ」
「そうか……」
“ふたご座”の能力って、よく分かんないんだよな。どこまでできるのか教えてほしい。
「そもそも
「え、どういうことだ?」
「なんか、最低限のことはできるという意味で完成はしてる。だけど、最大限にはしてない……ということらしい」
「だからな、“
“
「と、俺の話は別にいいんだ。とにかく、練習しようぜ。まずは、一夏が箒嬢・セシリア嬢ペアと勝負するところからな」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ! シールドエネルギーがないんだ! そ、それまでは休憩、ということで……」
一夏が必死な形相で俺に懇願する。安心しろ、問題ないさ。だって……
「“
「や、止めろ星矢! エネルギーなんて自然に回復するからさ!」
「いやいや、そんなの時間の無駄だろ? 俺が今すぐしてやるって」
休憩? 何それ美味しいの?
一夏はエネルギー切れのせいで碌に動けない。俺は笑顔を浮かべながら、“
星のネタ
・それは、シリウスというよりは、プロミネンスの方が近い気がした
プロミネンスとは、太陽の表面で吹き上がる炎、と認識するといいかと思う。割とよくある現象で、写真などで見るとカッコいい。
・天の川っぽいが、恒星……太陽と川ならエリダヌス座の役割だろうに。
エリダヌス座は、星座の中でもトップクラスの広さを持っている星座。エリダヌスというのは、川の名前で、太陽神アポロンの息子パエトンが太陽の馬車に乗っている時に落ちたとされる架空の川。ちなみに、川に落ちたのは馬車を御せなくなり、空が火事になるのを防ごうとゼウスが雷で馬車を打ったせい。
・それは、日本人が見ることができぬ位置に隠れていた
南十字は南半球にあり、日本人にはあまり馴染みのない星だったりする。その普段空に現れない様子と、武器として隠し持っていたことをかけてみた。
雑談
今回は星矢と一夏の模擬戦でした。星矢の宣言通り妬く……もとい、焼く(?)ことができました。上手には焼けませんでしたが。
とうとう既出の装備を全部、出せましたね。
衝撃砲って、エネルギーを弾丸にしてるってあったんですけど、エネルギーってあくまで物質ではないのでダメージは与えられないな……と思いますから、空気分子を撃つということにしました。じゃあ、宇宙空間では何を弾丸にするんでしょうか? とりあえず、衝撃砲はリアル空気砲ということで。