IS学園天文部-リメイク前-   作:山石 悠

3 / 37
 みなさん、お久しぶりです。僕と、この作品のこと、覚えていますか?

 星好きの主人公、溝口星矢がお送りする北極星(ポラリス)を目指す物語(ただし、ギャグ多め)。

 「ああ……なんか、去年そんな話見たな……」的な感じで思い出していただければ、とりあえずはそれで十分です。

 作者の大学受験も無事終了し、無事に更新を再開できそうです。
 これから、少しずつ、また更新していきたいと思います。


 今回は、更新再開のお知らせも兼ねた番外編です。
 本編だと、いきなり天体観測が三話分になってしまい、お知らせには使いづらいものですから。後、天体観測の話を書く体力がなかったのもありますけど。

 それで、今回はセシリア嬢編です。本編では結ばれない、星矢とセシリア嬢の恋物語的なナニカ。
 時期は、本編で次に書く天体観測が終わった翌日でしょうか(クラス対抗リーグマッチ終了後)。それと、セシリア嬢は一夏に惚れてない設定です。

 では、これ以上書き連ねてもしょうがないので、そろそろ本編に行きましょうか。

 それでは、お楽しみいただければ幸いです。


午前3時のティータイム(セシリア・オルコットの場合)

 世界は、大昔から何一つ変化していない。文明の進歩など、表面的な差異でしかないのだ。

 

「セシリア……」

 

 いつだって、遺伝子に刻まれている本能こそが、人間の本質だ。

 

「なんですか?」

 

 だから、

 

「その……」

 

 いくら自らを飾ろうとも、

 

「……しても、いいか?」

 

 この唇に伝わる、恋の熱に勝てる者は――

 

「ええ、もちろんですわ」

 

 ――――いないのだ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 自室にあるPCでのテレビ電話には、嫌な奴(おじ)が相変わらず無駄に肥えた姿で映っていた。

 

『いいかね、セシリア』

 

 開口一番にこれだ。何がいいのか、全く分からない。

 傲慢な表情と高圧的な口調の合わせ技に、ガリガリと精神を削られていく。

 

『君はまだ15歳で、おまけにイギリスの国家代表候補生だ』

 

 何度聞いたか分からない言葉を繰り返されるという苦行。

 できることなら、今すぐ通話を切ってしまいたい。が、そうはいかないのが現実だ。

 

『君は、陛下が直々に任じられた誇りある代表候補生という地位にいる』

「……ええ、そうですわね、叔父様」

 

 体面的にも、こんな下郎を「叔父様(身内)」と呼ばなければならないことに虫唾が走る。

 

『だから、君はオルコット家のことなんて気にしないで、存分に自らの任じられた使命を果たすべきだ』

 

 『分かるかね?』とダメ押し。

 溜め息を、これ以上堪えられなかった。

 

 親切な親類のふりをして、その実はオルコット家の地位と財産を狙う薄汚いハイエナ。それが目の前の画面に映るナニカの正体だ。

 月に一度はこうして私に権利を譲渡するように迫るが、決して認めない。お母様を始めとする先祖の皆様が築いてきた、誇り高きオルコット家を喰い物にすることなど許されないことなのだから。

 

 画面を見るだけで沸き起こる衝動を、必死に抑え込む。そして、一度だけ大きく深呼吸して気持ちの整理を試みる。

 ……よし、落ち着いた。

 

「叔父様、(わたくし)は大丈夫ですわ。代表候補生としての任もオルコット家当主としての仕事も。どちらも、私自身が望んだ道ですから」

 

 ――――貴族たるもの、辛いから止めるなんて寝言は申しません。

 

 そうだ。こんな男にオルコット家を明け渡すくらいなら、代表候補生の方を諦める。今でこそISにも愛着があるが、最初は家を守るためのものでしかなかったのだから。

 

『……ふん、そうか』

 

 その返事は、先ほどまでの口調と違い苛立ちを隠せていなかった。

 これ以上は面倒なことになりそうなので、話を終わらせることにしよう。

 

「では、話は以上なら、もう切らせていただいてもよろしくて? 明日が期限の課題が残っていますの」

『……そうか。ではな、セシリア。オルコットの名に恥じぬように頑張りなさい』

 

 そして、テレビ電話は終了した。

 

 ……………………。

 

「…………はあぁぁ~~~」

 

 “貴族たるもの、常に余裕を持って優雅たれ”というが、この時だけはさすがに無理だった。

 

 大きく息を吐き出す。そして、勢いよくベッドに飛び込むと、枕に顔をうずめた。

 

「ああ、もうっ! や~か~ま~し~い~~~~~っっ!!」

 

 人前では決して見せられないような姿だが、もう仕方がない。そう、仕方がないのだ。

 

「何が『オルコットの名に恥じぬように』ですの! 恥なのはそっちじゃないですかあぁぁっ!!」

 

 ジタバタと両足がベッドを叩く。スプリングが音を立てて軋むのも気にならなかった。

 

 

 両親が亡くなるまで、みんな優しい人達だったと思う。貴族としての高潔さと優雅さ、大人としての優しさと賢しさ。それらを備えていて、どこのだれにも負けない最高の家族だと思っていた。

 

 なのに、両親が亡くなってから何かが狂ってしまっていた。

 次の当主は誰か、遺産はどうやって相続するのか、私は誰が面倒を見るのか…………数々の問題を前に、みんなが自らの欲望をむき出しにした。

 

 ……結局、人の本質は遺伝子に刻まれた欲望であり、私の知る人の姿など幻想に過ぎなかった。

 

 ――――人はね、進歩したことなんて一度もないの。

 

「……『人類は、自らを嘘で飾る技術を磨いただけなんだ』」

 

 そう言ったのは、お母様とお父様だ。

 周囲に愛想笑いを浮かべているだけだったお父様はともかく、貴族の鑑だと周囲に自慢できるようなお母様までそう言うのが疑問でならなかった。

 

 そして、

 

「…………どうして、そんなこと……」

 

 その時の二人の表情を、私は今でも忘れられない。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 土曜日の午後、IS学園の庭園に人はいない。

 どの人も部活に勤しんだり、友達と遊んだり、ISの訓練をしたりと忙しい。わざわざ、庭園でこの一時を費やそうと思う人などいないのだ。

 

 しかし私は、この時間をこうして過ごすと決めていた。忙しい日々の中で、すべてを忘れる憩いの一時を過ごすと。

 

 

 庭園にはティータイム用のテーブルとイス。そこに腰掛けた私は、ティータイムを楽しんでいた。

 白磁のカップを傾けると、琥珀色に煌めく紅茶の香りが鼻腔を刺激した。喉を通る甘美な紅茶が、日頃の疲れやストレスを癒す。

 

 カップをソーサーに置くと、手元の文庫のページを捲った。右下に向けられていた視線が左上に向かい、白い紙に印字された26種の文字をなぞっていく。

 

 静かな時間が流れる。

 風の音をベースに、時折、紙をめくる音とカップとソーサーの音が聞こえてくるだけだ。

 

 

 この時だけは、すべてを忘れられる。

 学園の課題も、代表候補生の任務も、オルコット家の当主としての責務も。ありとあらゆる重荷を忘れ、今だけは本当の私でいられるのだ。

 

 

 最終ページのピリオドを見届けると、静かに本を閉じた。

 表紙には“Through the Looking-Glass,and What Alice Found There(鏡の国のアリス)”の文字が印刷されている。

 

 とりあえず……という感じで選んだが、少し外してしまった気がする。

 推理小説は考えこんでしまうし、SFやホラーは趣味ではないし……と消去していくと、自動的に残ったのが児童書やファンタジーだけだったのだ。

 しかし、鏡の国のアリスなんて比喩的な含みのある小説を選んだのが間違いだった。いっそのこと、“Lord of the Flies(蠅の王)”くらい突き抜けるべきだったかもしれない。

 

「……はあ」

 

 溜め息をついたところで、再燃した感情は消えない。

 

 

 私は、何のために生きているのだろう。

 

 両親が亡くなり、私の人生は大きく変わった。

 成人しないうちに名門貴族オルコット家の当主と代表候補生になった私は、幼い少女からISがある現代の英国淑女代表となった。そのことは、全く後悔していない。それは貴族の責務(ノブレス・オブリッジ)として当然のことでしかないのだ。

 

 しかし、“Cecilia(セシリア) Alcott(オルコット)”個人としての私は、あの幼い頃の“Cecil(セシル)”から何も変わっていない。

 

 家族の愛に飢えて人とのつながりを求めながら、しかし肩書という現実がそれを認めない。

 本来、自己の要素を入れるべき場所に肩書と責務を詰め込んだ。その結果が、成長する余地を失った虚無的な少女(わたし)なのだ。

 

 

 頭を振って一瞬だけ悩みを振り払うと、大きく息を吐き出しながら空を仰いだ。

 秋の空は高いというけれど、この梅雨を前にした空も十分に高い気がする。爽やかな風が長い髪を揺らし、花の色香が鼻孔をくすぐった。

 

 そろそろ、夢の一時も終わりにしなければならないだろう。

 

 本をそっとテーブルに置いた。残りの紅茶を飲み干すと、カップとソーサー等をワゴンに載せた。

 そして、すべて片付けた私は、ガラガラと音を立ててワゴンを運んでいく。

 

 ここに、後片付けをしてくれる使用人はいないのだ。

 

 

 

 

 

 ワゴンに積んだものを、事務棟に返却した。

 

 この学園は生徒が多国籍であるため、その宗教や文化活動が阻害されないような配慮がされている。クリスチャンのためのチャペルなんていうのは分かりやすい例だが、私が借りているティータイム用のセットもその一つだ。

 すべてを用意するのは困難だったため、学園でティータイムをするのは無理だと思っていた。だから、こうして用意してくれるのは本当に助かっている。

 

 

 

 事務棟を後にすると、寮に戻った。

 授業の宿題にしろ当主の仕事にしろ、手ぶらな今では何もできない。それにISの訓練をしようにも、ISスーツを下に着ておくのも貴族としてどうかと思うので着ていないのだ。

 

 

 寮のエントランスを通り、隅っこにあるエレベーターの前を通り過ぎて階段に向かう。

 別に故障中というわけではないのだが、使われることはあまり多くない。クラスメイト達が自然と階段を使うようにするため、私もなってしまっていた。

 

 タッ、タッ、とリズミカルに階段を上がっていくと、人の影が現れた。反射で立ち止り、相手の顔を見やる……と、そこにいたのは見知った顔だった。

 

「あ、セシリア嬢」

 

 その人物は、私に気付くと「おお」と片手を上げた。

 

「せ、星矢さん!」

 

 会うだなんて思っていなかったこともあり、妙に声が上ずった。

 

 突然のことに心臓が跳ねるが、すぐに気持ちを切り替える。齢が二桁を超える前からしていることもあり、今では手慣れたものだ。

 あくびをしながら、半分くらい寝ている彼を見つめた。……さっきまで寝ていたのだろうか。

 

「今、起きたんですか?」

「まあな。昨日……というか、今日だな……天体観測で徹夜したから」

「天体観測、ですか」

 

 天体観測で徹夜とは、何とも彼らしい。

 幼い頃、私もメイドのチェルシーを巻き込んで天体観測をしたことがある。あの時は、何時間も見ていたような気分だったのに、実際は30分少々だったというのを聞いて驚いた。星を見て一徹というのは、かなり大変なのだ。

 

「一人で、黙々と星を見るって、考えるとすごいですわね……」

 

 思わずそうつぶやくと、彼はポカンと首をかしげた。

 

「一人じゃないぞ」

「え?」

 

 一人じゃ、ない?

 

「山田先生も一緒だ」

 

 胸に、針を刺された気がした。

 

 夜間に部活動をするには、顧問の同意と同行がなければならない。だから、天文部の顧問である山田先生が一緒にいるのは、自然な道理である。

 

 そんな言い訳を考えながら、痛みを訴える胸を必死に押さえた。

 

 なぜ、そう思ったのだろう。

 彼が、女性と二人で一夜を過ごしていることが、無性に許せなかった。自分でもおかしいと分かってはいるけれど、そう思ったところで押さえられる感情ではなかった。

 

「あ、あの……」

「ん? どうした?」

 

 彼の顔が接近した。パーソナルスペースを過度に犯さない程度ではあるが、それでもいつもより近いことには違いない。

 高鳴る鼓動が聞こえないように祈りながら、自分から彼に近づいた。

 

「わ、私も……」

 

 心臓が加速する。

 もう、気持ちを抑えることができなかった。

 

「ほ、星が見たいですわ!」

 

 あなたと、一緒に。

 

 

 

 

 

 揺さぶられているのを感じて、意識が微かに浮上した。

 

「おーい、もう夜だぞ。起きろ、セシリア嬢」

 

 遠い意識の中で、どこかチグハグな言葉が聞こえてきた。

 眠気に従ってベッドに沈む体を起こした。周囲を見渡すと、そこは私の知っているベッドではない。

 ……そうだ、私は星を見るために星矢さんの部屋に来ていた。そして、準備を済ませてから仮眠していたのだった。

 

「起きた? もう、消灯時間とっくに過ぎたぞ」

 

 彼は半分くらい笑いながら時計を見せてくれた。時刻は、すでに午前2時を迎えている。

 

「仮眠だって言ってるのに、寝すぎだよ」

「す、すみません……」

「ああ、いや、気にしなくていいから。……起こすの忘れてた俺も悪かった」

 

 どうやら、23時に起きた彼は私を起こすのを忘れて星を見ていたらしい。そして、ついさっき私の存在を思い出して、起こしたのだった。

 

 その言葉を聞いて、顔が熱くなった。恋人でもない殿方の部屋でしっかり寝てしまったこととか、その他もろもろの恥じらいがこみ上げてきたのだ。

 

 だから、思わず彼をポカポカと叩いてしまったのは、恥ずかしかったからでしかない。

 

 

 しばらく彼を叩いて眠気を飛ばした私は、早速星を見ることになった。

 星矢さんの部屋は北向きで、星矢さん曰く、今日に関してはラッキーらしい。

 

「今日は満月だからな。南向きだと月光が邪魔なんだよ」

 

 月が星を見るのに影響するなんてイメージはなかったが、どうやらかなり影響が大きいのだそうだ。

 

「北向きっていうのは、こういう時に便利だよな」

 

 と、その顔はとても嬉しそうだ。その顔を見るだけで、私も嬉しくなる。

 

 ベランダで時折吹きこむ夜風に髪を流しながら、チラリと彼を盗み見た。

 私より10cmほど高い彼は、普段の演じているようなものではなく、心の底から笑っていた。瞳は星明りを反射してキラキラ輝き、興奮を抑えられていない表情は、いつもより彼を幼く見せた。

 

「星が」

 

 彼がこちらを振り返った。

 

「星が、大好きなんですね」

 

 答えを聞くまでもなかった。この表情を見て、彼が星好きではないと思う人はいない。そのくらい、彼の笑顔は輝いていた。

 

 

 

 しばらく、彼に星の話をしてもらった。北極星、北斗七星、周極星、歳差運動等々、基本的なことばかりではあるけれど、私には目新しいことばかりだった。

 

 そして、星を見始めた頃から北斗七星が30°程動き、気づけば3時を過ぎていた。

 

「なあ、セシリア嬢」

「なんですか?」

「楽しいか?」

「ええ、楽しいですわ!」

 

 ちょっと非日常だからだろうか、実は星好きだったのだろうか。

 どれが真実かは分からないが、この時間が永遠に続けばいいと思っていることだけは真実だった。

 

「そっか、それは良かったよ」

 

 彼は安心したようにそう言った。

 星好きというのは、○○マニアの中では受け入れられやすい方だが、行き過ぎればその限りではない。だから、彼も楽しんでもらえているか不安だったのだろう。

 

「いきなり星が見たいなんて言うから、どうしようかと思ったんだよな」

「っ!」

 

 そこで、私は彼を困らせてしまったことに気が付いた。恥ずかしさと悔しさで、左手の握り拳に力が籠る。

 彼は不思議そうな表情をしながら、私を見ながら首をかしげた。

 

「なあ、どうして星が見たかったんだ?」

「そ、それは……」

 

 どうして、だろう。

 

 ただ許せなくて、ただ知りたくて。

 

 ただ――――

 

「…………あ」

「ん?」

 

 気づいた。

 今、私は、自分の感情を知った。

 

 この時、幼いCecil(セシル)が成長していたことを、私は初めて理解した。

 

「どうしたんだ?」

 

 彼が顔を窺う。

 心が熱く燃え上がり、幼いままでは抱くことのなかったであろう衝動が、私の体を突き抜けた。

 

 ――――ただ、一緒にいたい。

 

 そっと、彼の首元に腕を回す。

 微かに強張る様子にすら、愛しさを感じた。

 

「星矢さん」

 

 間違いない。

 

 これは、恋だ。

 

 熱い恋情。

 ただ、ひたすらに相手を求める、留まることを知らない激情だ。

 

「私、あなたのことが、」

 

 首にまわした腕に力を込める。

 強く熱を帯びる彼の頬が、私のそれと重なる。

 

「ちょ、ちょっと、せ、セシリア……」

 

 頬が触れ、体温が伝わり、心臓が焦ったように鼓動する。

 耳元にかかる吐息が、鼓動をどこまでも加速させる。

 

 そして、そっと、彼の耳元に口を寄せた。

 

「好き、なんです」

 

 そういう、ことだったのだ。

 

 

 出会えた時の胸の高鳴りは歓喜。

 

 私ではない女性といることを嫌だと思ったのは嫉妬。

 

 一緒にいたいと願っていたのは色欲。

 

 触れ合いたいと思ったのは肉欲。

 

 

 結局、私もそうだ。

 

「あなたに、恋してるの」

 

 貴族の誇りだとか、そういうものは、結局のところ飾り物なのかもしれない。

 

 でも、それでいい。

 

「きっと、あなたに銃口を向けたあの時から」

 

 お父様は、すぐ頭を下げる人だった。

 威厳というモノを持たず、誇りというモノを捨て去っていた。それは、貴族として確実に間違いであったといっていい。

 

 貴族とは、誇り高くなければならない存在だ。

 平民達からもらう多大な報酬と畏怖の代わりに、それを受けるだけの立場であるという証としての責務を背負わねばならない。

 その責務こそが、頼られるだけの地位と、強さと、威厳だった。

 

 地位はあれど、強くもなければ威厳もない父。貴族としては不完全で、“貴族としての私”にとって失望の目を向けるべき人間だった。

 

 ずっと、父は間違いだと信じていた。

 

「この想いは、始まっていたんです」

 

 私は、貴族ではなかった。

 貴族というのは、ただの飾りでしかなかった。

 

「ただ、あなたの傍にいたかったから」

 

 私は、人間だった。

 貴族というモノ達は、等しく人間だった。

 

「ただ、あなたを感じていたかったから」

 

 頭を下げるのは、いつだって当主である母の代わりだった。

 威厳を見せないのは、貴族以外の人と仲良くなる手段だった。

 

 母ができないことを、オルコット家当主ができないことを、父がした。

 人間を捨て貴族になることを決めた母の代わりに、父は貴族を捨てて人間となった。

 

 だからこそ、父は母を愛し、母もまた父を愛した。

 

「この衝動が、恋だと気づいてしまったから」

 

 貴族であることは誇りだ。

 誉れ高き名門貴族、オルコット家当主“Cecilia(セシリア) Alcott(オルコット)”にとって、貴族であることは当然のことに過ぎない。

 

「この気持ちを、止めることなどできなかった」

 

 しかし、私は人間だ。

 

「だから、」

 

 a British girl(ありふれた英国生まれの少女)である(わたし)にとって、本物だといえるものは――――

 

「あなたの気持ちを、教えてくれませんか?」

 

 ――――この身を焦がす、本能だけだ。




 今回は、大した星のネタはないですね、すみません。

 最近、書きたいことが書けなかったのですが、何とかこれだけは書ききれてよかったです。
 ですが、告白までしてその先はほとんど書いておりません。冒頭の所で結果は察し、どんな感じかは想像にお任せします。

 父親との件が解決したのかはよく分かりません。結局は、彼女自身の自己完結ですから。相反する感情との折り合いの付け方は、これから見つけていくものでしょう。


 というわけで、今日から更新再開です。

 とりあえず、目下のところは『IS学園天文部』、『The place for a short rest~発明家と魔法少女~』の更新を再開しようと思います。
 途中でストレス発散に書いた『捧ぐ未来』については、気が向いた時に更新するかもしれない、くらいです。

 大学生活が始まれば、忙しくなって更新が遅れる可能性は十二分に考えられますが、ゆっくりでも更新していきたいと思いますので。

 これからも、どうぞ、よろしくお願いします。








 後、私事ですが、彼女できました。
 今後、恋愛パートに幅が出る……かもしれない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。