IS学園天文部-リメイク前-   作:山石 悠

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第六夜「……あれ? 今度は小熊座か?」

 部屋のベッドでゴロゴロしている俺に、真紀子さんの謝罪の言葉が聞こえてくる。

 

『ごめんね、当日までは詳しいことを教えちゃダメって社長に言われているの』

「そうですか……」

『本当にごめんね』

「いえ、当日を楽しみに待ってます。それでは、忙しいところすみませんでした」

 

 そう言って電話を切った。

 俺の専用機について聞きたかったのだが、真紀子さんの唯一の上司である社長に止められたらしい。なんでも、普段は出社しないで真紀子さん達といった上層のメンバーに仕事を任せている。そして、気まぐれに研究員達がくらっとする程のアイデアをくれるんだそうだ。それでいいのか、ワンダーランド。

 

「あー、どんなのかな……」

 

 真紀子さんが教えてくれたのは、機体や武装が星や星座の名前を使っていること。俺の願いを叶える機体であること。仮称が“宇宙の”であること。これくらいだ。

 とりあえず、ベッドから体を起こした。一人部屋のようで、ベッドは一つしかなく狭い。しかし、気にしてもしょうがないのでやることを探す。

 

「片づけも終わったし、真紀子さんに話を聞くのもしたし……」

 

 食事も電話する前に済ませてある。だから、本当にすることがない。脳内では勉強の二文字がちらついているが、それは最後の手段。学生は、ギリギリまで勉強から逃げるものなのだ。

 

「あ、そうだ」

 

 大事なことを忘れていたのに気が付いた。現在の時刻は八時過ぎで、消灯時間までは後二時間ちょっとある。……ちょうどいい。

 薄手のコートを羽織り、一眼レフカメラと双眼鏡を持って外に出た。

 

 ……途中、織斑先生の二の太刀要らずのような音がしたが、すぐに忘れてしまった。

 

 

 

「……もう少し、厚手でもよかったか?」

 

 予想よりも寒い外気に体を震わせる。気温は大したことないかもしれないが、風が強いせいで寒く感じるのだと思った。

 オルコット嬢が放課後に寄ったかもしれない花園や、来週試合をするであろうアリーナなどを巡りながら、俺は空を見る。

 

「……邪魔だな」

 

 少し開けた場所に出たのだが、ISやその武装の格納庫が邪魔で東の空が見えなかった。アリーナの天井も俺を邪魔する。

 俺は天体観測に適した場所を探していた。

 

「……ないな」

 

 学校の地図を思い出して、よさそうな場所をピックアップしたのだが、この学校には高い建物しかないせいで、なかなか全方位を見ることのできる場所がない。

 残った場所となると、その高い建物の屋上だろうか。天文部の部室に行けば、姉さんが残した記録などから良い観測場所が分かるだろう。しかし、それでは面白くない。俺としては、自力でいい場所を見つけたいのだ。

 

「後、三十分か……」

 

 残った場所、屋上のアテを探して建物を見ていく。アリーナは無理だ。……プラネタリウムにはなりそうだが。

 

「事務棟、学生寮、体育館、校舎……」

 

 思いつく建物を羅列していく。多分一番高いのは文化部棟だろう。IS学園のあるこの島の南東に位置している場所だ。

 俺は明日に行ってみることにして、寮に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 翌日の放課後。俺は山田先生と共に文化部棟にやってきた。天文部の部室は、三階の一番手前。言ってしまえば、一番屋上に近い場所だった。

 

「ここですか?」

「はい。ここが天文部の部室です」

 

 部屋はおおよそ教室の半分ほど。机と椅子があるにはあるが、ほとんどが物置のような状況だ。

 

「これでも片付いた方なんですよ」

 

 山田先生は恥ずかしそうにこちらを見る。俺は中に足を踏み入れた。

 天体望遠鏡、ブルーシート類、防寒用の毛布、天体に関する図鑑や部活記録。そこは設立から十年弱ほどの高校とは思えないレベルの寂れ具合だった。

 

「どうでしょうか?」

「望遠鏡は使ってみないと分かりませんね。ブルーシートはともかく毛布類は一度洗濯しましょう。図鑑は問題ないと思います。ただ、最近になって変更になったことなどがあるので、そこに気をつける必要があるかと」

 

 後は部活動記録だ。三年目を最後に、記録がない。開いてみると、そこには姉さん、溝口夜空が部長として書かれていた。ということは、現在……

 

「……七年目が始まったんですね」

「はい、そうです」

「……あれ? じゃあ、先代の部長は?」

 

 姉さんが三年目の部長。そして、 姉さんは現在大学の四年生だ。姉さんが卒業してからの二年間を守っていた人がいない。

 山田先生は、不思議そうに首を傾げた。

 

「私がここの顧問になった時には、すでに活動していませんでしたから」

「そうですか……」

 

 俺は記録を読んでみる。……やはり、観測場所は文化部棟の屋上のようだ。俺は活動記録を持ったまま部屋を出る。

 

「溝口君、どこへ行くんですか?」

「屋上です」

「でも、屋上には鍵がかかっているはずですけど」

「問題ありません」

 

 活動記録の最終ページ。そこには、三つの鍵が貼り付けられていた。

 

 

 

 文化部棟の屋上は、校舎の屋上と違って全面コンクリートだった。とりあえず、階段のある場所の上……なんと言えばいいのか分からないが、屋上の二階的な場所に登る。

 

「……いいじゃん」

 

 そこは、学園で天体観測するには一番のスポットかもしれない。島の中央にあるアリーナの塔のようなものが少々邪魔なのだが、後はおおむね問題ない。というか、本当はあの塔がいいが高いし危ない。そもそも行けない。

 

「見晴らしがいいですね」

「はい。本当、ベストスポットです」

 

 ぐるりと辺りを見回す。この学園は消灯時間である十一時を過ぎれば、途端に真っ暗になる。本土の方も多少の明かりはあるかもしれないが、せいぜい街灯がつく程度だ。なら、おおよその星座や流星、星団、星雲くらいは見えるに違いない。

 姉さんの記録にも、見たいと思う天文ショーや星や星座は見れると書かれていた。だが、姉さんの年にやっていなかったものは分からないし、街も姉さんの頃より発展しているので楽観はできない。

 俺は一通り確認したいことを確認すると、月齢の入っている手帳を取り出す。すでに、めぼしい天文ショーはこのメモに記されている。

 

「……先生。活動日なんですけど、毎週金曜日の夜から土曜日の朝まで。後は、めぼしい天文ショーのある時。ということでいいですか?」

「天体観測ですか?」

「はい。というか、正直に言いますと、それしかしません」

 

 俺には、ポラリスに行く夢もある。なら、星の見えない日中はISの訓練などに時間を割いた方がいいだろう。そもそも、この部活は合法的に天体観測をするための言い訳のようなものだし、予習しようにも大体の知識は入っている。

 

「私は構いませんけど、時間外部活動申請を出してくださいね。後、私も一緒に見てもいいですか?」

「……面白いか分かりませんよ?」

 

 星というのは、分からない人や大して興味のない人には「うわー、綺麗」で、だいたい終わりだ。所要時間、長くても三十分。俺のように、一徹する人間に付き合っていては飽きる。

 

「実は、ずっと見てみたかったんです。夜に星を見るなんて、ロマンチックですし」

「分かりました。じゃあ、次の金曜日からやりましょう。十一時に、この文化部棟の玄関前に来てください」

「はい、分かりました。……それで、天体観測に必要なものってなんですか?」

「あー、そうですね……」

 

 天体望遠鏡、星座早見、一眼レフとその周辺機器、防寒具、時計。そのぐらいだろうか。俺は、その中から必要なものを選ぶ。

 

「大体の道具は部室にそろっているので、上着と時計があれば十分です」

「夜は冷えますもんね。分かりました、上着と時計ですね」

 

 先生はメモを取り出すとそれをさっと記して、ポケットにしまった。

 

「それじゃあ、帰りましょうか。今日はこのくらいで」

「そうですね」

 

 俺達は屋上と部室の扉に鍵をかけて帰った。鍵は初代のメンバーが作った用意したもので、天文部専用のものらしい。

 

 

 

 

 

 道場の奥にはでかでかと克己などと墨で書が書かれている。それは、この道場に来る者達の心の芯となる言葉であろう。

 中学校の体育で付けたことしかない防具を久々に身に着け竹刀を構えている俺は、じっと正面にいる人物を見つめた。その姿は一種の芸術のように完成されていて、剣を振るう者とは思えぬほどに静かだった。

 

「溝口」

「……何かな、箒嬢?」

 

 苗字は嫌いだということで、名前で呼ぶことになった彼女はいきなり俺に声をかけた。

 いきなり一夏に連れられここにやって来て、あれよあれよという間に彼女と試合することになっていた。

 

「準備はいいか?」

「……とりあえず、一撃でやられないようにする覚悟くらいは」

「そうか」

 

 あっさりと言葉をスルーされて少々辛い。だが、それだけ本気だろう。

 

「……では、行くぞ。一夏」

「ああ…………始め!」

 

 一夏の声が聞こえた。しかし、俺も箒嬢も動かない。箒嬢は相手を見るために。俺は何をしてもいいのか分からないゆえに。

 本当に、箒嬢への攻め方が分からない。これが相当な手練れであるなら、隙の一つでも見つかるのかもしれない。経験者なら攻める検討くらいはつくかもしれない。しかし、俺のような素人には見当すらつかない。

 

「どうしようか……」

「どうした、来ないのか?」

「どうしたらいいのか、さっぱり見当がつかないんだよ」

 

 これは、いわゆるあれだろう。最初のポケモンを選んだ直後でエンディング後の四天王戦に挑むようなものではないか? 五レベのポケモン一匹で、七十レベのポケモン六体を屠れるわけがない。

 

「そうか……なら、こちらから行かせてもらおう」

 

 今、死亡フラグがたちました。

 俺の目の前にいた箒嬢が一気に肉薄してくる。そして、竹刀を振り上げると素早く振り下ろす。急いで竹刀を頭の上に振る。互いの竹刀が大きな音を立てて反対方向に動いた。

 

「面!」

「くっそ……っ!」

 

 こうなりゃ自棄だ! 俺はすぐに体勢を立て直して正眼で構え直す。

 箒嬢も跳ね返ってきた竹刀を強く握り直す。足を強く踏み込むんだ。ダン! と床が鳴り箒嬢の姿がぶれる。胴か。

 右側の胴を狙っているようなので、俺も箒嬢の右側の胴を狙って動く。竹刀を手首だけで左側にずらす。

 

 しかし、すべてが遅かった。

 箒嬢の竹刀は彗星のように軌跡を見せて俺の胴を強くたたく。

 

「胴!」

「胴有り!」

「…………うっはーっ」

 

 一夏の宣告が聞こえ、俺は奇妙な声を上げながら床にへたり込んだ。あっさり終わってしまった。

 あまりの実力差に悔しがることもできず、ただ笑うしかなかった。

 

「なんだあれ、強すぎる」

「そりゃそうだ。去年の剣道の全国大会優勝者だからな、箒は」

「おいおい、素人が全国一位に勝てるかよ」

「でも、一回防いだじゃないか」

「偶然だよ」

 

 俺は中学校の時、ソフトテニス部で前衛だった。前衛というのは相手にアタックされたりすることがあり、反射神経や度胸が必要になる。あの流星の一撃は、間違いなくテニスで培った勘が助けてくれたのだ。

 

「偶然でも、一回防いだだけでもすごいと思うけど、箒はどうだ?」

「溝口」

「なんだ、箒嬢」

「本当に剣道は素人か?」

「素人だよ。体育で一時期やっただけ」

 

 体育でやったといっても防具の付け方だとか構え方くらいで、たいしたことは教わっていない。

 

「それがどうかしたの?」

「なんというか、素人なのは分かったが素人とは思えなくてな」

「何、上手だった?」

「まったく。弱いというのも足りないほどに弱かった」

「……泣いていいか?」

「す、すまん。箒も悪気があって言ってるんじゃないんだ」

 

 淡々と弱いと言われると心に刺さる。一夏も慌てて俺を慰めてくれた。……助かる。

 

「技術の話ではない。そう、心構えの方だ」

「心構え?」

「ああ。なんというか、スーッとしていて、それでいてグワッとしている感じだ」

「……箒、意味が分からないんだが」

 

 感覚派なのだろう。擬音語擬態語で話すなど、どこのプロ野球の監督だろうか。だが、なんとなくは分かる。

 

「だからさ、表面はツンとしてるけど、その奥にブワッとしたものがある感じ。だろう? 箒嬢」

「ああ、そういう感じだ」

「なんで分かるんだ!?」

 

 むしろなんで分からないんだ? まあ、一夏のために少しだけ解説してあげよう。

 

「つまりな、箒嬢が言いたいのは……」

「箒が言いたいのは……?」

 

 一夏がじっと俺を見る。俺は少し面白いことを思いついた。

 

「シーンとしつつ、メラッて感じだ」

「やっぱ、分かんねえよ!」

「いや、メラッではなくないか?」

 

 箒嬢がそう言ってきた。まあ、グワッ、ブワッ、からは少しずれているのだが補足を入れる。

 

「メラッてさ、ボッとしてバンッてなるからそうかと思ってるんだけど、どうだ?」

「なるほど、それなら納得だ」

「納得した!?」

「むしろなんで分からないんだ?」

 

 一夏は訳が分からないと頭を抱えた。なんと愉しいのだろう。

 

「まあ、一夏の悩みはおいておいて。箒嬢、俺ってどうしたらいい? 箒嬢のアドバイスがほしい」

「そうだな……基礎体力をつけることだな。技術はその後の方がいいと思う」

「了解。箒嬢、ありがとうな」

「いや、構わない」

「え、星矢もう行くのか?」

 

 一夏がそう言って呼び止める。なので、チラリと箒嬢の方を見て、爆弾をぶち込んでみた。

 

「ああ。箒嬢と一夏の青春の一ページを邪魔するわけにもいかんだろう?」

「なあっ!?」

 

 箒嬢のリアクションを見てニヤリと笑いを一つ残す。そして、一夏の静止を無視して俺は剣道場を出た。

 ちなみに、箒嬢が言いたかったことは『常時は冷たいが、その内に熱いものを秘めている』と言えば一番分かりやすいと思う。まあ、俺に通じるとは思えなかったのだが、どうなのだろうか。

 

 

 

 

「……なあ、箒」

「なんだ?」

「結局さ、剣道しかしてないんだけど」

「仕方がないだろう、ISの予約が取れなかったのだ!」

「それでも、なんかできることあっただろ!」

 

 ピットで口論する一夏と箒嬢。俺はそんな一夏の肩に手を当てた。

 

「俺は走り込みと筋トレだけだぞ?」

「マジか?」

「マジだ」

 

 本当はオルコット嬢の機体について調べていたりもする。“蒼き雫(ブルー・ティアーズ)”なんてしゃれた名前のISで、遠距離がメインのようだ。

 

「……で? まだ来ないのか、俺達のIS」

「そうだな……」

 

 俺達は周囲を見る。織斑先生はイラついていて、山田先生がその様子に慌てている。そして、その空気に耐えられなくなったのか、すぐに外に飛び出していった。

 そこで、沈黙が流れた。俺は、一つ気になったことについて聞いてみることにした。

 

「なあ、一夏のところにオルコット嬢が来たか?」

「来た来た。なんか、どうしてあんな反論したのかとか聞かれたな。なんか様子が違ってたんだけど、知ってるか?」

「さあ」

 

 男を見る目が変わりつつあるのだろう。と八割方確信しているが、あくまで俺の考えなので言わない。

 

「お、織斑くーん!」

「あ、はい!」

 

 その時、山田先生が入ってきた。そこには、一つのISがあった。

 

「織斑君のISが届きました。名前は“白式”です!」

「白式……」

 

 そこにあったのは、綺麗すぎる白だった。本当にきれいな白。

 

「織斑、初期化(フォーマット)最適化(フッティング)は実践の中でやれ」

 

 織斑先生がそう言った。一夏は力強く頷くとその白に触れた。一夏がそれをそう直すると、カタパルトに向かう。しかし、すぐにこちらを振り返った。

 

「星矢、お先に」

「しくじんなよ」

 

 俺達は拳をぶつけた。そして、一夏はそのまま箒嬢と織斑先生とも会話をする。

 

「箒、行ってくる」

「勝ってこい、一夏」

 

 恥ずかしいのか、顔を赤くしてそう言う箒嬢。もっと素直になったほうがいいと思う。たぶん、一夏は鈍感な方だと思う。

 そして、一夏は織斑先生の方を見る。

 

「千冬姉」

「なんだ?」

 

 織斑先生は、一夏に訂正を入れなかった。一夏は真剣な表情で一言。

 

「行ってくるよ」

「ああ」

 

 たった一言だったが、それで十分だったらしい。一夏は、その真剣な表情のままカタパルトへ向かう。そして、

 

 ――――飛翔した。

 

 俺はその姿を見届けると、外に目を向ける。誰か来そうな気もするが、やはりまだ静かだった。

 俺は口笛を吹きながら専用機を待つ。

 

「一夏のは届いたけど、俺のはまだですかー……っと」

 

 奥から人影が来るのが目に入った。見覚えのある姿だ。

 

「セイくーん!」

「あ、真紀子さん! こっちです」

 

 一夏がオルコット嬢と何か言葉を交わしていると、真紀子さんがやってきた。その手には、ひしゃく型の胸飾り。

 

「……あれ? 今度は小熊座か?」

 

 初めは北斗七星だったのに、今は小熊座になっている。ポラリスの部分がチェーンにつながっていて、そこを中心に回るようになっている。

 俺はそこで気が付いた。これは、こいつからのメッセージだったのだと。北斗七星を使うことで北極星が見つかる。ということは、北極星(ポラリス)……小熊座が目的の達成を。北斗七星がその前段階である準備中を表していたのだ。

 

「ってことは、準備完了ってことか。……真紀子さん!」

「ええ、説明しましょう。これがセイ君の専用機……“星間の夢想家(スター・ゲイザー)”よ!」

星間の夢想家(スター・ゲイザー)……」

 

 スター・ゲイザーという単語は天文学者や星占い師を表すことがあるが、俺に向けられたメッセージはそれではないだろう。

 

 俺に向けられたメッセージ。それは、星を見る人。そして、夢想家。ただ星を眺め、無謀な夢を思い描く。きっと、そんな俺の心は星の海を漂っているのだろう。まさに、星間の夢想家。完璧なネーミングだ。

 嬉しさで笑みが止まらない。最高だ。俺は今、最高にハイだと思う。

 

「とりあえず、展開してね。前の勝負の間に最適化(フッティング)を済ませるから」

「はい。……飛ぼうぜ、星間の夢想家(スター・ゲイザー)!」

 

 小熊座がキラリと光り、俺の視線が何かのグラス越しのものに変化する。

 

全身装甲(フルスキン)!?」

 

 山田先生が驚いたように声を上げた。俺は、自分の姿を確認する。すると、それは先ほど見た白式とは正反対だった。

 黒。それは、夜の闇のように、宇宙の彼方(インフィニット・ストラトスフィア)のように、決して変わることのない黒。そして、それは俺を余すところなく埋め尽くしていた。

 

「今の状態はね、基本形態“星無き夜(スターレス・ナイト)”よ。武装は近距離装備が二つ、遠距離装備が二つ。近距離武装は長剣“北十字(ノーザンクロス)”と短剣“南十字(サザンクロス)”。遠距離武装は発炎機構“焼き焦がす猟犬(シリウス)”と発雷機構“先行する猟犬(プロキオン)”よ」

 

 真紀子さんはそう言ってキーボードをたたき続ける。高速で文字が流れていった。

 

「でもね」

 

 真紀子さんはその言葉で、顔を上げた。奥では、一夏がオルコット嬢の弾丸から逃げ回っている音がしていた。

 

「それの真価は別のところにある。なんて言ったって、それはあくまでも星無き夜(スターレス・ナイト)。基本形態なのだから」

 

 真紀子さんはそう言って笑った。本当に楽しそうに、笑った。




星のネタ
・箒嬢の竹刀は彗星のように軌跡を見せて俺の胴を強く叩く。
彗星というのは、不思議なものです。尾を引きながら姿を見せ、あっという間にいなくなる。短いのであろうその時間は、永遠のように心に刻みつけられることもあります。星矢が見た胴も、一瞬が長い時間に引き伸ばされたような一撃だったでしょう。

・あの流星の一撃は、間違いなくテニスで培った勘が助けてくれたのだ。
面を打とうとしている振り下ろしだったので、彗星ではなく流星に。流星の一瞬の煌めきは、死を前にした星が最期に見せる命の輝きです。その一瞬には、その星の命が詰まっている。そう思うと、さらに流星を楽しめるような気がします。

・「……あれ? 今度は小熊座か?」
小熊座も北斗七星と同じ柄杓の形をした七つの星です。しかし、その形が微妙に違うので、見る人が見れば分かります。星矢は分かる人間でした。

・長剣“北十字(ノーザンクロス)
北十字というのは、白鳥座のこと。夏の大三角を作るデネブがある星でもあります。東京の空でも見ることができる数少ない星の一つですね。

・短剣“南十字(サザンクロス)
南十字というのは、南の十字座のこと。明るい星ばかりで構成されています。そして、正座名に、南の、という冠詞が付くのはこれを含めて四つ存在します。どれも日本で見るのは大変なので、南半球に旅行に行った際でも見てください。ただし、南十字を見る際は、南十字が出る前に出現する偽十字にご注意を。

・発炎機構“焼き焦がす猟犬(シリウス)
シリウスは冬の大三角を作る星の一つで、おおいぬ座の一等星です。名前の意味は、武装の和訳とほぼ同じで『焼き焦がす者』。とても明るい星で、実は太陽を除いた恒星では一番。狼星なんて呼ばれることもある人気の星です。

・発雷機構“先行する猟犬(プロキオン)
プロキオンは冬の大三角を作る星の一つで、子犬座の一等星です。名前の意味は、武装の和訳とほぼ同じで『犬の前を往く』。小さい子犬座の存在を地上に見せつけてくれる可愛い星です。ちなみに、発雷と言う能力はシリウスとの対比と先行と閃光を掛けたものだったりします。

雑談
剣道の試合はしたけど、ISの戦闘はなかったですね。次回に持ち越しです。
ちなみに、武装はこれから増える予定ありです。どんな武装が出るのかはお楽しみに、と言うことで。
今回は星間の夢想家(スター・ゲイザー)の性能の半分もお伝えできませんでしたが、次回で半分は説明できると思います。
……早く部活のシーンを書きたいです。
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