ザフトとの交戦の後、無事に〝アークエンジェル〟は月から来航した本艦隊との合流を果たした。
第八艦隊。これを指揮する司令は、マリュー・ラミアスのかつての上司、デュエイン・ハルバートン准将である。良識ある人格者でありながら、柔軟な思考と果敢な行動力を兼ね備えた『智将』──聞けば『〝G〟計画』を提唱し、GATシリーズを開発させたのも、そんな彼だという話だ。
そうして〝アークエンジェル〟は、歓迎されるように第八艦隊の輪に入った。
本艦隊との合流を果たした時──それは、今まで〝アークエンジェル〟に乗り合わせていた──〝ヘリオポリス〟の──民間人が解放される時でもある。
もともと〝ヘリオポリス〟はオーブが所有するコロニーだ。収容された民間人の故郷は地球にあり、この後、彼らは祖国であるオーブへ降下するシャトルへ乗船することになるだろう。
トール・ケーニヒ。
サイ・アーガイル。
カズイ・バスカーク。
ミリアリア・ハウ。
これまで有志で〝アークエンジェル〟に協力していた彼らもまた、その責務から解放されることになる。
(こんな毎日も、やっと終わりを迎えたって考えてもいいんだよな……?)
カズイ・バスカークもまた、艦橋で通信士を務めてきたキラの同級生である。
彼は自室で、ひとり思いを巡らせていた。
現在、マリューにムウ、ナタルの三名がハルバートンとの対面のため〝メネラオス〟へ移っており、他の艦員には待機が命じられていた。詰まるところの自由時間を与えられた彼らであったが、特にすることも見つけられなかったカズイは、自室でひとりぼーっとしていたのだ。
(あとはもう、解放されるのを待つだけかぁ……)
そう思うと、にまにまと引き攣ったように口元が緩み出す。
──こんな軍艦なんかからは、何度も逃げ出したいと思ってた。
早く家に帰って、親に顔を見せて、それで自由になりたいと思っていたのだ。
そんな辛抱がようやく報われ、あと数時間で、ようやく下船することができる。
──でも、どうしてか。
今になって、そのことに素直に喜べない自分もいる。
「…………」
もやもやとして、胸の奥に、何かが引っかかる。
──本当に、このままで、いいんだろうか……?
幼い頃から、カズイは内向的な性格だった。友達と集まって外で遊ぶより、屋内でひとり機械をいじっているのが好きだった。スポーツというスポーツに打ち込んだこともなければ、これまでの人生で何か表彰されるようなことをしてきたわけでもない。
──そんな、ごくありふれた、普通の人生。
そんな彼にとって「地球軍の最新鋭艦で通信士をやっていた」という事実は、たとえ数日間の思い出と実績であろうと、今度の人生で最大の自慢話になっていくのだろう。
(通信士席……)
あと数時間で、それも他人に明け渡さねばならない。
正規の通信士がやって来れば、自分はもう、あの座に就く必要がない──そうと思うと嬉しくもあるが、不思議と居場所を横取りされるようなやるせなさも憶える。
──どうせ暇なんだ。もう一回くらい見納めて……いや、座り納めてこよう……。
そう思って、艦橋へやってきた。
特に仕事があるわけではなかったが、カズイは自分の持ち場である通信士の座席に座り込む。そして、今の自分は軍人なのだという充足感と、わずかな優越感に浸った。
「ん? どした、そんなとこに座り込んで」
艦橋の下から、男の声が響いた。──チャンドラ伍長の声だった。
びくり、と肩を上げたカズイが、恐々と応える。
「いやぁ……この
「ははん。いざ降りるとなると、名残惜しくなったか? そんなに気に入ったんなら、この先もずっと座ってられるよう手配してやってもいいんだぜ?」
「じょ、冗談じゃないですよ」
おののくほどの黒い冗談に、けたけたとチャンドラは哂った。
そこで、あ、と何かに閃いたように声を漏らす。
嫌な予感がした。
「そうだ。暇してるんだろ? ちょっと手伝え」
「……はい?」
──来なけりゃよかった。
後悔が遅い、カズイであった。
このときのカズイが依頼された仕事は、『ある一枚の書類を指定された者達に配布する』──というものであった。その書類には『除隊許可証』と書かれている。
たとえ非常事態であっても、民間人が戦闘行為を行えば、それは越権を通り超して犯罪となる。それを回避するために、学生達が日付を遡って志願兵として入隊していたことを示す──要は偽造書だ。
これから下船していくカズイ達には絶対に必要なもので、仕事を受けたカズイを除いて、他にはトール、ミリアリア、サイ──そして、キラの四人に配らなければならない。
──なに、ただ一枚の紙っきれを渡して回るだけだぜ?
チャンドラは人の悪い笑みを浮かべながらそう云ったが、艦内待機を告げられた今、その四人がどこにいるのかなど、おおよそ検討もつかないではないか。
要するに面倒な作業を押し付けられたわけであるが、広い艦内は、カズイもまだまだ完全に構造を理解したわけではない。道に迷いながらの作業は、思ったよりも難航した。
「あっ」
カズイが最初に見つけたのは、トールだった。
格納庫を訪れると、トールはゲームに熱中していた。正確には、彼がプレイしているのはゲームではなく、戦闘機の本格的なシミュレーターである。まあ、そこに座り込んでいるトールがどう見てもゲームの気分でプレイしている以上、今はゲームという表現の方がより正しいのかもしれない。
トールが操縦する戦闘機が撃墜される度、彼は「ちっくしょ~」と唸り、闘志を再燃させてコンティニューボタンを押す。まるで子供のように、まったく終わりの見えない遊びをしている。そんなに操縦技量を鍛え上げて何がしたいのか、カズイの思慮の及ぶところではなかったが。
カズイにとって嬉しかったのは、その傍らには「まだやるの?」と云わんばかりの呆れ顔をしたトールのガールフレンド、ミリアリアの姿もあったことだ。
一気に二人に手渡せたので、あとはサイと、キラの二人だ。
書類配りを再開して少し歩き回った後、食堂で運よくサイを見かけた。
「大変そうだな、手伝うよ」
もともと、サイは人柄が好いやつだ。面倒見の良いとでもいうのか。
難儀しているカズイを見て、放っておけなかったのだろう。ふたりはそうして、最後に残されたキラを探し始めた。つかつかと廊下を歩いているとき、
「キラ、どうするのかな……」
唐突に、サイがそう言葉を漏らした。
え、と訊ね返すカズイに、彼は深刻な面持ちで続けた。
「いや、あいつ……いくら艦隊と合流できたからって、簡単に艦を降りれるのかなって、心配になってさ」
「降りられるのかだって? だって僕らはもともと、民間人だろ?」
「でもキラはコーディネイターだし。──ああ、もっと云やあ〝ストライク〟操れんのなんて、あいつくらいなもんだろ?」
そう云われてみれば、今この状況下でキラの下船を許せば、それは〝アークエンジェル〟──ひいては地球軍全体にとっての大きな損失となるのか。
そう考えた時。カズイは返す言葉を失った。しかし、しばし顔を落とした後、こんなことも云い放った。
「正直、俺もこのまんまでいいのかなっていう気は……してたんだよな」
思ってもみなかった言葉に、これを聞いたサイが大きく目を開く。
唖然としてカズイに視線を遣ると、カズイは至って真剣に言葉を探していた。
「このまま……艦を降りちゃっていいのかな」
「どうしたんだ、カズイ?」
──まさか、カズイの口からそんな言葉を聞くなんて。
サイは驚いていた。これまでカズイは、誰よりもは下船を望んでるものだと思っていた──というより、そういう言動を実際にしていたし、彼はそうした気持ちを周りに隠そうともしてこなかったのだ。
何か、大きな心境の変化があったとか? いや、仮にそうだとしても、何がきっかけで──?
「俺だって、戦争をしていたいわけじゃないぜ? でもその……ここに来るまでにさ? 色々あって──俺達はそれを、見てきちゃったじゃないか」
「──いろいろ《・・・・》?」
歯切れの悪いカズイに、サイはなおも訊ね返す。
「──あのステラって子が……連れ去られたり、さ」
「……ああ」
「なんだか俺達って、キラとステラにばっかり、辛い役を押し付けてるみたいな気がしてさ」
云われて思い直すが、サイとて、そのことを失念していたわけではない。
ステラ──〝ヘリオポリス〟で出逢った、キラの妹分。正しくは、キラの昔の友達の妹だそうだ。
それで、サイ達もまた、まるで正当な後輩生のように接してきた彼女は、数日前にザフトに連れ去られてしまった。
──ステラだって女の子だ。
きっと怖い思いをしたに違いない。あるいは、今も怖い思いをしているのかもしれない。
それなのに、その原因を作り出した自分だけが、のうのうと平和な世界に抜け出そうとしている。
──そんなんで、本当にいいのかよ……?
心に残った良心が、まるで情けない自分を咎めるように、何度もそう呟くのだ。
「カズイ、おまえ……?」
何か思うところがあるようで、サイはまるで、物珍しいものでも見るような目でカズイを眇めている。
──失礼な目だな。
思ったカズイだが、声には出さなかった。不満げな顔は作ったが。
「なっ、なんだよ」
「……いや、ごめん」
サイは言及せず、前を向き直す。
カズイも深くは追求せず、前を向いた。
「……キラ、見つからないね」
艦内を歩き回って、もう何分になるだろうか。
道ですれ違う誰に尋ねても、キラを見かけたとは云ってくれない。
目撃情報がない以上、キラは艦内を彷徨いているのではなく、ひとつの場所に留まっている可能性の方が高いということになる。
「居住区に戻ってみるか?」
「うん」
ふと居住区に戻り、再度キラの自室を訪問しようとしたとき──ようやくそこで、キラを発見した。
キラはフレイの部屋から出てきていた。
──道理でいくら探し回っても、見つからなかったわけだ。
ひとり合点するサイであったが、
(──どうして、フレイの部屋に……?)
ふと、眉を顰めた。
しかしすぐに気を取り直して、見かけた姿を呼び止める。
「キラ!」
「ッ!? サ、サイ……ッ!」
ドアが開いた直後の姿を認め、サイとカズイのふたりが、キラへと近寄って行く。
キラはどこか不自然に視線を泳がせていた。サイと目を合わせようとしない。
「フレイの部屋にいたのか? 探してたんだぞ」
「え。そっ、そうなの……?」
「……? どうした、そわそわしてるように見えるけど」
「う、ううん。そんなことないよ」
否定するキラであったが、事実、キラはどう見ても落ち着きがなかった。浮き足立っている、という表現が妥当なほどに、足元が定まっていない。目も泳ぎ、動作もいちいち忙しない。
──何か、後ろめたいことでもあるのだろうか?
言葉を掛けようとしたサイであったが、まるで、この場所に居づらくなったかのように、キラは慌てて口を開いた。
「ごっ、ごめん。ちょっとやらなきゃいけないことあるから、〝ストライク〟のとこに行かなきゃ……っ」
フレイの部屋にいた割に、そう云って足早に立ち去ろうとする。
サイは慌てて、背を向けるキラを呼び止めた。
「ちょっと待った。──
「除隊、許可証?」
「ああ。一応俺達、元は民間人だからな」
その書類に目を通して、キラが足を止める。
身体を半分だけ反転させ、サイ達の方を振り向いた。
「でも、こんなもの……僕には」
キラは消沈した様子で答えるが、
「
キラの
──今、一番会いたくない親友からの、聴きたくない励ましだ。
途端、激しい罪悪感がキラを襲う。後ろめたさに耐えらえなくなり、キラは足早に、書類を握ってふたりの許を走り去る。
「なんだ? なんか、様子がおかしいな」
「──香水の匂いがした」
サイは不審そうな顔を浮かべて、去っていくキラの背中が見なくなるまで、その場に硬直していた。
その傍ら、サイよりも不審そうな……いや、猜疑した様子のカズイが、ぼそりと呟く。サイの目が、呆気に開かれる。
「えっ……?」
「高そうなやつ。ブランド品じゃないかな……キラから香ったよ」
「お、おい、やめろよカズイ。何だって云うんだ……。それじゃ、まるで──」
愕然とするサイが、咄嗟に背後を振り向く。視線の先に、フレイの部屋が構えられている。無機質にもドアが閉ざされたフレイの自室──そこから、キラは出てきた。
──それだけ長い時間を、キラは、この室内で過ごしていたというのか?
女性の匂いが、身体に移るほどの時間を……?
「何なんだよ」
その言葉を吐き捨てたのは、サイではなくカズイだった。
表情は、強い不満に満ちている。
「ステラのことなんて、キラは、どうでも良かったっていうのかよ……」
その言葉を受け、サイは疑問を抱く。
──どうして今、ステラの名前が出てくるんだ……?
訝しみ、不意に彼は訊ねていた。
「な、なあ。気を悪くしないで聞いて欲しいんだ。ひょっとしてカズイ、ステラのこと……?」
「えッ!?」
カズイは、まるで図星を突かれたかのように慌て出す。たちまちに耳が紅くなっていくのが分かった。
「い、いやっ、俺の誤解ならそれでいいんだ!
しかし、そう云って弁明したサイには──そう推理してしまうほどの懸念材料があった。
もともと、カズイは不器用な性格をしている。
──妙なところで強情で、いまいち、素直になれないヤツだ。
羨ましいと思っている相手に、羨ましいと正直に云えない。自分の想いを、相手に素直に伝えられない。他人に対して羨望を抱くこと自体が格好の悪いことだと思っているのか、憧れる相手にほど冷たく、無関心に装って接してしまう。
それを何と云ってよいのか、不器用──いや、反動形成な性格なのだ。
カレッジに通っていた頃、カズイは同級生のキラの能力を羨んでいて、それと同じくらいに僻んでいた。
羨ましいはずなのに。それほどに純粋な感情をしかし、カズイは上手に昇華することができず、選りにもよって嫉妬という昏い方法でしか表現することができないでいたのだ。
──ステラが〝ヘリオポリス〟に現れたときも、そうだった。
ある日突然、どこかの芸能事務所にでも所属しているのではないかと思えるほどの美少女が現れ、その娘はキラの妹分で、人懐っこげに彼等の日常、カレッジの生活の中に転がり込んできた。
ステラへの対応について、一番分かり易かったのはトールだ。ステラを一目見た時に、可憐な容姿に黄色い嬌声を上げ、それでもってミリアリアに半目で睨まれていた。裏表がなく、思考と言動が清々しいまでに一致していた彼は、ある意味でカズイと対照的だ。
サイは婚約者がいる手前、男性らしい邪念などは抱くはずもなかったが、素直に綺麗な子だなと思ったのは事実だ。しかし、どちらかと云えば彼女が秘めた──年下ながらカレッジでも十分に通用しそうな──その能力の高さを評価していた部分が大きい。
ミリアリアは同姓として、彼女を妹のように思って親密に接した。もともと揮発な性格で、同性というのもあったのだろう、ステラと最も打ち解けるのが早かったのは彼女だ。
けれども、カズイだけは一向にステラのことを認めようとはしなかった。彼女が〝ディフェンド〟に乗った際にも、彼女を敵視する発言をしていたとミリアリアから聴いている。
(対抗心が、あえて真逆の、関心から生まれたものだとすれば──)
誰よりも下船を望んでいたカズイが今になって踏ん切りを付けられず、迷っていることも考えられる。
──なんだか、キラとかステラにばっかり、辛い役を押し付けてた気がしてさ……。
カズイは、ひとり誘拐されたステラのことを偲んだ時──「自分だけは助かりたい」なんて考えている自分に、嫌気が差したのではないだろうか? そう思い切って訊ねると、カズイは素直に答えてくれた。
「可愛い子だなって、素直に思ったよ。でもさ、あんな綺麗な子に、俺なんかが話しかけるなんてさ……やっぱり」
卑屈になってカズイが渋るのを、サイは咎めるようにして諌めた。
「そういうの、ほんとに悪い癖だよ、おまえの。──でも、やっぱりか」
「うん、だからかな」
「え?」
自分の気持ちを、素直に認めたカズイであったが、その先を続けた。
「キラとステラってさ、なんだか、俺達じゃあ理解できない世界にいるんじゃないか──って思ってたんだ」
実際、両者の間には、ナチュラルとコーディネイターという人種の壁があるのだから、本来、暮らすべき世界は違っていて当然なのかもしれないが。
「だから余計に、あの二人の間には、オレなんかが入ってく余地なんてないって思ったし」
だからこそ、諦める決意をしていた。
ふたりには、ふたりにしか理解できない世界があるなら、そもそも自分が首を突っ込んでいく余地はない。ふたりが苦難の先に
そんな諦めも、とっくのとうに着いていたというのに。
「でも……でも、さ」
カズイが、珍しく憤りを憶える。
(キラからは、たしかにフレイの香水の匂いがしたんだ……ッ)
キラはステラを大切にしていた──のではないのか? にも拘わらず、キラからは違う女の匂いがして。
この事実が、どうしても認められない。
認める以前に、許してはいけない気がする。
──そもそも、フレイはサイの婚約者だろう?
キラは、フレイと同じ部屋で過ごしていた。
カズイ達がキラを探している間──あるいは、それよりも、ずっと前から?
キラが今やっていることは、親友すら失うほどの裏切りではないか!
(ステラがいなくなったからって、こんなの、あんまりじゃないか……!)
陰ながらステラに想いを寄せていた少年の生理だからこそ、思い至り、云えた言葉なのかもしれない。
カズイは、去って行くキラの背中を睨んだ。
(綺麗な女の子なら、誰でもいいのかよ……! フレイは、ステラの代わりかよ……!? キラ、おまえ本当は、誰を求めてるんだよ……!?)
──悪いヤツじゃないって、信じてたのに!
そんなカズイの胸の問いかけは、きっと今のキラですら、答えられないものであった。
足つきの第八艦隊との合流を許してしまったイザーク達であったが、今現在はブリーフィングを行っている。作戦を立案しているのは、クルーゼである。
そこでは、第八艦隊ごと『足つき』を撃墜しよう────という作戦が考案されていた。
それは一見して無謀な突撃案のように思える。しかし〝ヴェサリウス〟が搭載するGATシリーズの強力さが、従来では不可能だった作戦を可能とする。例の大天使を相手に、これまで目立った戦果を挙げられていないイザーク達であるが、第八艦隊が保有する機体のほとんどはMAであり、彼らの敵ではないのだ。
加えて、この作戦には〝ガモフ〟と〝ツィーグラー〟も参加するため、ザフトとしても大幅な戦力の底上げが見込まれている。
「アスランが戦線を離れ〝イージス〟は出撃できないが。君達と〝ジン〟だけでやれるかね?」
「はっ」
イザーク、ディアッカ、ニコルの声が重なる。
威勢の良い返事を聞き届けたクルーゼは、不敵に哂った。
「解析に修復、その他もろもろの作業がために、鹵獲した〝ディフェンド〟は本国に送られた。──事情は聴いているだろう?」
その問いかけに、一同は目を見合わせた。
三人には珍しく、全員が困惑した様子だ。
そこで、イザークが口を開く。
「クルーゼ隊長、本当なのですか? あの〝ディフェンド〟に乗っていた者が、その……アスランの妹、というのは」
ディアッカとニコルも、そのことには珍しく、こぞって関心がある。
しっかりと耳を立て、クルーゼの返答を待つ。
「──事実だ」
当のクルーゼは、特に気に留めた様子もなく平然と答えた。
三人の表情に、動揺と驚愕、困惑の色が奔る。
「私が直々に、パトリック・ザラ委員長閣下にステラ嬢発見の連絡を入れた。──閣下もまた、相当な衝撃を受けていらしたよ」
その呼び名を聞き、イザーク達は、妙な違和感を憶えた。
今まで地球軍として、敵として立ちはだかって来たその少女は、よもや〝プラント〟に戻れば、敬称が使われて然るべき、上流の存在であったという事実に対してだ。
「そんなっ……」
──なんという巡り合わせなのか……。
戦場で、生き別れた兄と妹が、敵として再会を果たすなど。
「あの少女たったひとりの存在を巡って──この先の〝プラント〟は、大きく動くことになるだろうな」
「ザラ国防委員長は……ご自身の息女でさえ、政治に取り込まれるおつもりなのでしょうか?」
ニコルの声に、クルーゼが平然と哂う。
「彼女は犠牲者さ。崩壊した〝ユニウスセブン〟の生き残りにして、ブルーコスモスに攫われ、体を弄られ、連合の駒とされていた
「っ……!」
仮にそれが事実なら、彼女はまるで見世物のように、世間からの注目を一心に浴びることとなるだろう。
「やがては閣下の娘、アスランの妹であることが公表されるだろう」
悲劇の家族の──シナリオの完成だ。
一家を襲った惨劇。地球軍に母を殺され、娘を攫われた父子は──無情にして残酷なまでの苦難を乗り越え、現在は〝プラント〟を統率す執政者として、一方は〝プラント〟のために戦う戦士として、遺憾なく活躍していることが明かされる。
祖国を守るために為政する父と、祖国がために戦う息子。そして、悲しき運命に弄ばれ、奇しくも唯一、祖国への生還を果たした
やがては「ザラ」という名前そのものが〝プラント〟の未来に希望を
「引き裂かれた兄妹の感動の再会物語は、連合の腐敗と愚かさを見せつける、これ以上ない広告塔になる」
それが、ラウ・ル・クルーゼが予想する──パトリックの企図する計画の全貌だ。
その計画を想像するのは、在る側面からすれば、容易なことである。
低軌道を航行する〝メネラオス〟の中で──
「公表された事実により、〝プラント〟国民の同情を一心に受けるであろうパトリック・ザラが、国防委員長の座に留まらず──さらなる政界の高みへと伸し上がって行くのは、おそらく、時間の問題かと」
ムウ・ラ・フラガもまた、その想像に及ぶのは早かった。
ザフト軍に鹵獲された〝ディフェンド〟のパイロットを務めて来た少女の正体が、パトリック・ザラの娘であるという事実をハルバートンに告げ、言葉を続けたのだ。当然、その少女の体内から、得体の知れない薬物反応が検出されたこと。その少女が長らく、地球軍に関係した者の傍にあったこともまた明かしている。
「地上の連中は、まさか、そんな野蛮なことをやっているのか……!?」
長らく宇宙で活動しているハルバートンには、地球で今、何が起きているかを把握することは難しい。ただ、地上の連中が何か「ろくでもないこと」に予算を注ぎ込んでいることだけは、薄々と勘づいていた。
利権がらみで、役にも立たないことにばかり資金を投じている。それよりも先に、やるべきことがあるにも関わらずに。よもやそれが、人体を用いた人体実験、人体強化とは……。
「コーディネイターには
言葉の前半までは賢明なことである。しかし、なぜ他に方法が思い及ばなかったのだろう?
対照的な話である。
デュエイン・ハルバートン准将は、コーディネイターには
しかし一方で、地上の地球軍は機体ではなく、人間そのものを改良している?
遺伝子操作を忌み嫌った結果、遺伝子以外ならば、人体のどこにどう手を加えても許されるという発想は、おろかな本末転倒ではないだろうか。
憤るハルバートンの脇で、副官のホフマン大佐が口を開く。
「そう云えば地上で……〝ソキウス〟と呼ばれる、ナチュラルのためだけに生み出された戦闘用のコーディネイターが造られている──」
「なにっ!?」
「という、あくまで噂であれば、耳にしたことがありますな」
ホフマン大佐は、ハルバートンに鋭い視線で睨まれた後、曖昧な言葉で弁明した。──自分は関与していませんと、云わんばかりの態度だった。
訝しんだ様子で、ナタルが訊ねる。
「では、ステラ・ルーシェもまた、それに似た処置を受けていたと?」
「あくまで事実無根の噂だ、信憑性は薄いがな」
応答を聞き、ハルバートンは失望したような眼で副官を睨んだ。しかし、お門違いであることを理解すると、改めて咳払いを挟んだ。
「姑息な手を使うから墓穴を掘る。そのような不徳義が明るみに出れば、いずれ地球のナチュラルさえもが連合を
事実、その真実を知ったハルバートンは、地上の連合軍に対して、激しい猜疑心を抱いてしまった。普通の人間であれば、そう考えるのが正常だ。
同族に恨まれてしまっては、それこそ地球連合軍は、おしまいではないか。
「その少女の存在は〝プラント〟の団結を高めるものとして、遺憾なく利用されるだろうな……」
「パトリック・ザラは……実の娘さえ、政治に売ると?」
「それすら厭わぬ────そういう男だ」
ハルバートンのその言葉が、マリューの胸に深く突き刺さる。
──地球軍がやっていることは、本当に正しいのか……?
ハルバートンのように、この世界の行く末を本当に憂いでいる者は信用に値する。
しかし、〝アルテミス〟でもそうだったが、今の話を聞く限り、地球軍の多くは、ザフトを前にして、地球軍同士で争っているようにも見える。
まして、罪もない少女に薬物を投与するほどの行いをしているとなれば、地球軍の正義はいったい、どこにあるのだろう?
〝アプリリウス・ワン〟──
辺りはすっかり夜になり、青い光が、窓から差し込んでいる。それに照らされ、安らかに眠るステラの寝顔、横顔は、ひどく美しく、可憐に見映えた。
アスランは、そんなステラの傍を離れようとはしなかった。
パトリックから次の指示が出るまで、彼は前線に復帰することは認められていない。当分は前線を離れ、ここで時間を潰すことになるのだろう。
ステラの臥す医療用ベッドが運び込まれた一角の部屋で、アスランは、茫と立ち尽くしている。
──おまえたち
父の言葉が、脳裏に蘇る。
パトリックか行うことは、たったひとつ。
──愛娘ステラ・ザラの生存を〝プラント〟全土へ公表すること。
テロ被害対策として身分を隠し、平穏な〝ユニウスセブン〟で育った無邪気な少女。
幸か不幸か、彼女は血のバレンタインの日の早朝に〝ユニウスセブン〟を発ち、核攻撃の難を逃れた。
しかし、核爆発の余波でシャトルごと宙域で難破し、地球軍に拿捕される。
彼女には記憶の改竄が施され、その後の経緯は不透明だが、結果的に彼女は地球軍による洗脳教育を受け、連合軍の駒となるように支配されていた。
そしてその先の戦場で、実の兄、アスラン・ザラとの再会を果たした。
人々の関心を誘発する、大掛かりなシナリオだ。
都合よく脚色された部分は点在するかもしれないが、大した捏造があるわけでもない。
つまりは、真実なのだ。
この事実を公開すれば、全〝プラント〟国民の意志は、軍事的手段による戦争の早期終結法案を掲げるパトリックへと結集することになるだろう。
ナチュラルの非道を嘆きつつ訴えかけることで、国民の反連合思想を煽り、民意は総意となって軍備の強化へと乗り出す。──すべてはナチュラル殲滅を謳う、パトリックの思いのままに。
──しかし、それに利用される、ステラの立場は?
何十万という人口を誇る全〝プラント〟のコーディネイター達の注目に、彼女はまるで見世物のように曝されることになるのだ。その後も、彼女の存在を巡って情勢は動き、動乱する。
しばらくは、注目を浴び続ける存在となるだろう。
しかし、身も心も支配されて来た彼女にだからこそ、今後は平穏な生活を取り戻してやるべきではないのか?
家族としての思いを優先するのであれば、彼女の存在は秘匿した方が良い。
政治家としての利を優先するのであれば、彼女の存在を公開した方が良い。
この取捨選択を迫られた時、父は迷わず、後者を選び取ったというのか。
「……どうして、戦おうと思った?」
アスランが不意に、言葉を漏らす。
言葉をかけた先は──その時、ゆっくりと目を醒ましたステラである。
すっかり、意識を取り戻している。ただ、拘束されていることを気付いた彼女は、暴れた所で無駄であるということを理解したようで、今回は大人しくアスランへと顔を向けた。それを見たアスランが一瞬、驚いた顔をする。
判断力は、あるようだ。
「おまえが、オレ達の襲った〝ヘリオポリス〟に居合わせたのは偶然だったのかもしれない……。でも、おまえがあの時〝ディフェンド〟に乗ろうと思ったのは、決して偶然なんかじゃないはずだ」
アスランは、真剣な面持ちで問いかける。
「どうして〝プラント〟に牙をむくような真似をした? 地球軍に味方するように、教え込まれているからか?」
「……ちがう」
アスランの問いかけに、ステラは暴れることもなく、低い声調で小さく答える。
アスランの耳には、十分に届いている。
「ザフトがあの場所を攻めた、いろんなものが壊された、たくさんの人が殺された……」
言葉を受け、それを行った当人として、アスランが押し黙る。
「キラにミリアリアに……ザフトは、わるくない人達のことまで巻き込んだ。だからザフトから、キラたちを守らなきゃいけないって思った」
「そこからか──ステラの守る対象は、地球軍になったのは。なら、おまえがザフトと戦っていたのは、君自身の意志だった、ということか」
誰かに、命令されていたわけじゃないんだな?
問いかけに、ステラが小さく頷く。
それを認めたアスランは、数秒間と押し黙り、
「……ふ」
次に、小さく嗤った。
──ならば
口内で呟き、無意識に小さく嗤う。
端正な口元に奔った
それを見たステラが、疑ったように眉を顰める。──ステラの知っている
怪訝な貌を作るステラに、アスランは弁明するように続けた。
「いや、安心したよ。今のステラは、地球軍に操られているわけじゃないってことが分かったんだ」
アスランは、安堵したように哂う。
今のステラは操られているわけではない。彼女には意志があり、理解力もあるように見える。
──ならば……
ステラの中の常識を、真実と正論を以て、すべて書き換えてしまえば良い。気を取り直し、毅然として話す。
「ステラ、オレはステラの味方だ。だからよく聴いてくれ」
身を乗り出すようにして、眼前に臥す妹へ訴えかける。
〝ヴェサリウス〟の医務官も、云っていたことである。
今のステラの肉体や脳は、決して薬物による強い影響を受けて狂っているわけではなく、むしろ云えば、あらゆる身体データは正常値に戻りつつある。ヒトが持つ極自然な免疫力によって、肉体は薬物依存から立ち直り始め、一方の知能や精神は、年齢相応の領域まで遅ればせながらも発達しているとのこと。
喜ばしいことだ。
しかし、尚も
おおよそ、これまで根本的に受けてきた教育自体が間違っていて、誤った知識ばかりが、まるで常識であるかのように刷り込まれているだろう。
だから、矛盾した行動ばかり、平然と起こしてしまう。
「おまえは〝プラント〟に帰って来たんだ。だからもう、地球軍に味方する必要はない。──〝アークエンジェル〟を守ろうなんて、もう二度と考えるんじゃない」
ステラは、アスランの言葉を疑った。
──守ろうなんて、考えるな?
アスランは、ステラの意志を否定しようとしているのか?
「でも、あの艦には、友達が」
「その友達も、もう
「〝アークエンジェル〟が第八艦隊との合流を果たした」という報告は、アスランには決して喜ばしいものではなかったが、しかし、ステラを
アスランの言葉を聞き、ステラは、大きく目を開く。
「じゃあ、みんなはもう、安全なの……?」
「ああ。ステラの友達は全員、あの艦から降りる。彼らに危険が降りかかることは、もうないんだ」
友達というのが、誰のことかはまったく分からないが、アスランは根拠もなく断言してゆく。話の調子を、ステラに合わせているのだ。
「……キラも?」
放たれた問いに、沈黙が流れる。アスランが、返答に詰まった。
地球軍が、キラという貴重な人材をみすみす手放すとは考え難いが、ステラをここで不安がらせるのは得策ではない。
その思いが頭を過った時、あえて答えた。
「…………ああ。あいつも……降りるさ」
ステラの友達は、全員〝アークエンジェル〟から下船する。
──だからもう、あの艦を守る必要はない。
アスランのその誘導に──そこで、ステラは反論する。
「でも、だからって」
友達が下船した?
だからと云って、沈んでも構わない艦では、ないのだ。
ステラは、あの艦に乗る搭乗員の多くを友好的に思っている。
何度もステラを看病してくれた医務官や──いつも浮かない顔ばかりしていたラミアス艦長。小言に煩いバジルール中尉に、不思議と好感が持てたフラガ少佐──新たに出会った慕わしく思える者達が、あの艦に乗っている。
今までの繋がりをすべて放棄して、水に流すことなど、今のステラには出来ないのだから。
「やつらは地球軍だ。ナチュラルなんだぞ」
「関係ないって云った……! ステラは、あの人たちが好きだから、だから守りたいだけなの」
「仮にそいつらが、おまえの……いや、オレ達の母上を奪った連中だったとしてもか?」
その瞬間、ステラの表情が、硬直した。それっきり絶句して、唖然とする。
アスランは、深くため息を吐いた。
──やはり、都合の悪い記憶は消されているのか。
その事実に強い怒りを覚え、淡々と、言い聞かせるように先を続ける。
「母上は、地球軍の核攻撃によって殺された。──ステラが今まで守って来た、地球軍によってな」
「え…………っ?」
「記憶を弄られていたステラには、分からないだろう。こんな戦争を始めたのは……先に攻撃を仕掛けたのは、地球軍なんだ」
そもそも、地球軍が核攻撃さえ仕掛けなければ、武力で争い合う事態など起きなかったかもしれない。
二種族が歪み合う情勢は残っていたかもしれないが、戦争による犠牲者がここまで増えることはなかったはずだ。
核攻撃でコーディネイターが死に、その予防策としてのニュートロンジャマーでナチュラルが死に、互いに抱いた憎しみが沸騰し、戦争を引き起こした。
すべての引き金を引いたのは、ナチュラルの方なのだから。
「地球軍は……わるもの、なの…………?」
震えた声で訊ねるステラ。
動揺するのも、無理もない。ステラが今まで信じて来た軍が、信念が、アスランの言葉によって一気に突き崩されたのだから。
問いを受けたアスランは、答える──
「──ああ」
あえて云うならば──「是」と。
その瞬間、ステラの表情が、絶望に彩られる。
頭が、ひどく混乱する。
──今まで信じて戦って来たものは、なんだったの……?
戦争──人と人とが憎み合い、殺し合うこと。
互いが互いに「死」を与え合う現実のこと。
──死……死ぬは……だめ…………。
ずっと、そう思って来た。
守れば、死なない。
だから、多くの者を守りたい、って…………。
「キラのことを守りたいなら、守ればいい。あいつは悪くないし、俺はその想いを尊重する。ただ、それでも……〝アークエンジェル〟はダメなんだ」
「でも、パパは『ステラがいるからたくさんのものを守れる』って云ってた……! ──
「父上はナチュラルのことなど考えてはいないさ。──
戦争を始めたのは、地球軍。
殺しを始めたのも、世界に多くの「死」を齎したのも地球軍。
だったら。
──「こわいもの」は……地球軍じゃないか……。
次の瞬間、アスランが、震えるステラの拘束具を取っ払い始めた。
許可された行為ではなかったが、ステラが暴れ出さないことを悟り、また、暴れた所で自分なら取り押さえることもできると、理解していたのだろう。
茫然自失として、それでもゆっくりと起き上がるステラに、アスランは云った。
「地球軍を守る必要も、戦う必要もない。ステラはただ──戦争のない、優しくて暖かな世界に帰れればただ、それでいいはずなんだ……!」
アスランが起き上がったステラの肩を持ち、言い聞かせるように、また、噛み締めたように云う。
ステラが、その言葉を反芻する。
「『戦争のない、優しくて暖かな世界』……?」
それは、シンが云っていた言葉だ。
シンが自分を地球軍に返す時────「そんな世界」へ自分を送り届けて欲しいと、彼は云った。
──約束してくれ! 戦争とかモビルスーツとかっ……そんな、死ぬようなこととは絶対遠い……優しくてあったかい世界へ、彼女を帰すって!
今なら、わかる。
あの時のシンが犯した行為は、ステラがラクスにしたことと一緒だ。
必要な薬物を失い、当時、ステラは瀕死の状態に陥っていた。ザフトはステラの体が求めるものを持ち合わせていなかった。だからシンは、ステラを地球軍へと帰すことを決意した。
──死なせたくないから帰すんだ!
──ステラじゃ、ラクスは守れないから……。
悔しくも、自分の力では、守れないことを理解したから。
それが出来る者に委ね、自分の代わりに守ってもらおうとした。
きっとそれは、ステラがラクスを帰した時と同じように、軍規に背いた行為だったのだろう。きっと後で怒られたのだろう。
それだけシンは、必死になってステラを守ろうとしてくれていた。
けれど、その先はどうなった……?
シンはネオにそれを任せて、結局──ステラは「そんな世界」へ帰れただろうか?
帰れてはいない。
その後、再びステラは記憶を失い、シンの暖かみさえ忘却し、流れのままに〝デストロイ〟に搭乗した。
でも、それを命じたのは誰だ。
地球軍。
──
ひょっとして。
あの人こそが、わるいもの──「
「あっ……」
嘘だ。
認めたくも、信じたくもない。
何の罪もない、ベルリンの人を殺せと命じたのも。
懸命に生きた、シンの思いを平気で踏みにじったのも。
全部、地球軍だったなんて!
「そん、なっ」
膝が折れ、その場に崩れ落ちる。
悲痛な面持ちで、アスランは少女の身体を抱き止めた。
絶望に苛まれる妹の姿を見て、アスランは改めて思い知る。
考えに至ってしまう。
──父上の、仰る通りだ……。
今なら、彼の意見に賛同することが出来る。
そんな気がしている──。
アスランの瞳から光が消え、
入れ替わるように、激しい憎悪が浮かんだ。