DOG DAYS また花が咲く頃に   作:あるく散歩道

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これからは今までより投稿ペースが落ちると思います

一応大学受験の真っ最中なので。

3月からは頑張りますのでしばらくお待ちいただけると嬉しいです。


おともだち

 

コンコンッ

 

どうぞー

 

ガチャッ

「失礼します。…シロナ様、おはようございます。昨晩はよく眠れましたか?」

 

そう言って部屋に入ってきたのは昨日ミルヒオーレ姫の後ろに控えていた、いつも目を細めてニコニコしている一人の女性。

 

「ええ、はい。自分で思ってた以上に図太いみたいで、グッスリと。」

 

「ふふっ、それは良かったです。…昨日は姫様と遊んで頂きありがとうございました。あのような姫様の笑顔は久方ぶりで、ここのところ姫様はいつも暗い顔をしておりましたので、領主様は勿論、私たちメイドや騎士も心配していたのです。ですから、本当にー」

 

ー姫様を笑顔にしてくれたことを、臣下一同お礼申し上げますー

 

 

そう言って女性ーーリゼルは頭を下げる。

 

「いやいや、頭をあげてくださいよ。昨日も言ったと思うけど、お礼を言われるようなことは何もしてませんから。

心配するのも、わかりますけどね。ミルヒは優しいから。

ーーーいや、優しすぎる、のかな。自分のせいで他の誰かが困ったりするのが嫌なんだろうね。だから、淋しくてもわがままの一つも言えずに感情を自分の中に押し込んで我慢しちゃう。

まあ、この年頃の子としてはすごいと思いますよ?感情を抑えられるなんて5歳の子が簡単に出来ることじゃないし。

それに、ああやって必死になって頑張ってる子をみると、お兄ちゃんとしては助けるしかないじゃないですか。」

 

「お姉ちゃんとして、ではないのですか?」

 

「違います。お姉ちゃんじゃないですからね。やめてくださいって、マジで。最近初対面の人に女の子に間違われまくって凹んでるんですから。

はあ、やっぱりこの髪が長いのが原因なのかな…でも切ったらお母様に怒られるし………」

 

そのままブツブツと愚痴を言い始めた彼を見て、やはり見た目のことで悩んだりと年相応なところもあるのだと妙な安心感を覚える。

昨日、姫様を優しく包み込むように諭してくれた彼の雰囲気は自分よりかなり年下の少年とは思えないほど精神的に老成していたから。まあ精神年齢だけならリゼルより年上なのだから、当たり前のことではある。

部屋のカーテンを開けてから彼が自らの長い髪をまとめようと悪戦苦闘しているのを見て、微笑ましく思いながら彼の後ろにまわり、男の子には珍しい綺麗に伸ばした髪を梳く。

 

「…ん?あぁ、結んでくれるんですか?じゃあお願いします。あ、はい。昨日と同じ三つ編みで。…いやぁ、助かります。いつもはお母様がやっちゃうんで、まだ自分でやるのは慣れてなくて。」

 

そう言って少年は苦笑する。毎朝母親に髪を編んでもらっている姿を想像すると、どうやっても母と娘にしか見えないと思うのだが、それを言うと彼はまた愚痴を言い出してしまうので自重して今日の予定を尋ねる。

 

「…今日の予定ですか?結局昨日は騎士団の皆さんにご挨拶できなかったので、今日はそっちを先に済ませようかと。

えぇ、分かってますよ。ちゃんとお昼とおやつはミルヒと一緒に頂きます。

あ、エクレールも呼んでいいですよね?人数は多いに越したことはないですし、あの子もミルヒと最近一緒にいられないのを気にしてたみたいですから。

…それじゃあ、今日も一日「お兄ちゃん」として頑張りますか!」

 

そう気合を入れて部屋を後にする彼の後ろで、わざわざ「お兄ちゃん」を強調した彼の意地に、彼女が我慢できずに吹き出したのを、吹いていた風のおかげか、彼が気づくことはなかったーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆さんどうも、シロこと、シロナです。

 

いきなりですが……な・ん・で・こ・う・な・っ・た!

 

私は現在、騎士団の人たちと1人vs4人で模擬戦してます。

…なんで挨拶しにきて模擬戦してるのかって?経緯を簡単に教えましょうか。

 

騎士の皆さんに挨拶

いつもの通り女の子だと誤解される

男であることを証明したいなら戦えばいいby団長

模擬戦 ←new!!

 

…流れがおかしいことは私もよーく分かってますよ、えぇ。

団長に言葉巧みに騙されて今こんなになってるわけですから、我ながらおバカだと思います。

第一、エクレールや他にも女性の騎士がいる時点で戦って勝っても男だと証明なんてできないですよね。エクレールは才能があるのか、既にかなりの強さみたいですし。

 

…あー、基本的には剣で攻撃を捌いてるだけなんですけどシンドいなぁ。大人相手だし、数が数なんで。

 

まあ、普段から10人以上のガキンチョ共と追いかけっこしてるおかげで、耐久力は自信があるので、こうやって考え事してる余裕はありますけど。

 

てか、いい加減に終わりましょうよ、団長さーん。

 

これ他の人から見たらただのイジメですよ、なんか段々と相手の人数増えてるし。

 

隣にいるエクレールのお兄さんも言ってやってくださいよ!千人長なんだから。

 

………いやいや、流石はヴァンさんの子だな、じゃなくて。感心してないで助けてくださいよ。

 

…あ、ヴァンっていうのは元千人長の私のお父様です。

 

 

……って、ちょっと?さすがに8人は多すぎですって!無理だって!

 

ああもう、本当に、なんでこうなったぁぁぁぁぁぁあ!!!

 

 

 

 

この後、マルティノッジ兄弟も参戦して、ボコボコにされました。

千人長は反則でしょう、こちとらまだ子供なんですから。

 

…騎士団に入ったの、失敗だったかなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【1週間後】

 

テレテレッテレ〜!!

 

シロは、もんしょうじゅつ、をつかえるようになった!!

 

 

この前ボコボコにされたあと、あとは攻撃だな、と団長にアドバイスを頂いたので、どうすればいいか訪ねたところ

 

「ん?ヴァンから紋章術を教わっていないのか?」

 

って言われまして。

何だそれは、と急いで家に帰って酒を飲んで酔っ払って寝ていたお父様を叩き起こして教えてもらいました。

 

なんでも紋章術っていうのは輝力を放出する必殺技みたいなもので、騎士や領主の家にはそれぞれの家の紋章があるようです。

じゃあなんでただの一般家庭のウチに紋章があるかっていうと、お父様が戦で頑張って報酬として貰ったらしい。元千人長は伊達じゃないんだね。

 

そんなわけで、お父様から紋章術を簡単にレクチャーしてもらい、折角なんでオリジナリティある紋章術にしようと、騎士団の訓練の合間や夜寝る前にこっそりと練習して1週間。

 

ついに私の紋章術ができました!!

 

 

…ふっふっふ、これで今までの訓練の恨みを晴らしてくれるわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【翌日】

 

other's side

 

ー空いた口が塞がらない、とはこのことだろうか。

 

いつもなら騎士たちの訓練で剣が打ち合う音が響いているはずのここ、フィリアンノ城の中庭は静まりかえり、辺りには戦闘不能の証である「だま化」した騎士たちが目を回して転がっている。

 

 

その中心に立っているのはつい先日入団したばかりの少年。言うと彼は怒ってしまうので、直接言ったりはしないがーーーキラキラと光を反射している雪のような白さの髪を若干煩わしそうに手で払う姿は、まるで絵画の中から女神が現れたように美しく、しかし目には戦乙女のような引き込まれてしまいそうな力強さも感じる。

 

まだ戦も経験した事のない、この美少女にしか見えない美少年が騎士20人以上を一気に倒したなどと、誰が信じるのか?

 

 

「…完全に、やり過ぎ…ですよね、これ。あ、あはは…」

 

 

この光景を見た千人長の私、ロラン・マルティノッジと騎士団長は同じことを考えているだろう。

 

ーー彼こそが、本当の天才と呼ばれる者なのだとーー

 

 

other's side end

 

 

 

 

 

 

いやー、まいったまいった。まさかあんなことになるとは。

 

……あ、一応反省はしてますよ?やりすぎた感は否めないので。騎士の人たちも皆をだまになっちゃって今日は訓練にならなかったし。

 

…?ああなった経緯ですか?

 

いつも通り1人vs複数人で模擬戦

最初は善戦するも、相手が増えて押される

避けるのが面倒になって紋章術つかう

ああなる

 

まあでも、紋章術を試せたし、私としては大満足です。で、今は最近恒例になったミルヒとのおやつを頂きながらお喋りタイム。いつもはここにエクレールも居るんだけど、午前中の私がやった模擬戦を見て

「シロに追いつくために、午後も訓練する!」

と言ってたので本日は欠席です。

 

………?ああ、ごめんねミルヒ、ちょっと考え事してただけだから。ちゃんとミルヒの話は聞いてるよ。

え?じゃあ何の話かって?え、えーっと、あれだよね。昨日ミルヒが私の方に走ってきたら何もないところでつまづいで危うく転びそうにーーあ、違いますか。

すいません、聞いてませんでした。

 

…ふふっ、ほっぺた膨らましてるミルヒも可愛いね。ホント、私の妹として家に持って帰りたいくらいだよ。

いや、うん、喜んでもらえるのはいいんだけど、私とミルヒの場合"姉妹"じゃなくて"兄妹"だからね。ちょくちょく間違えてるけど、私はれっきとした男だよ。前にちゃんと説明したでしょ?

 

…そこで可愛らしく首をかしげられてもねぇ。……はぁ

 

で、結局何の話だったっけ?ーーへぇ、明日お隣の国のお友達が来るんだ。

隣ってガレットだよね。てことは明日はガレットのお偉いさんがくるわけだ。

 

ーーーえ?お友達を紹介したい?…まあ別にかまわないけど、折角久しぶりに合うのに、私なんかが居ていいの?というか一応私も騎士団所属だから、警備のお仕事とかあるかもしれないし。

 

…なんですか?いつもニコニコしてるリゼルさん。

あ、別に平気ですか。新米が仕事をサボるとか真面目な日本人としては罪悪感を感じるけどーーーああ、ミルヒの護衛ね。まあ物は言いようですよね。

では明日はミルヒオーレ姫の護衛を微力ながら全力でやらせていただきます。

さてさて、ガレットの"お友達"はどんな子か。今から楽しみだなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【次の日の夜】

 

………………………………………疲れた

 

いや、お仕事でトラブったりしたわけじゃないですよ?私以外の誰かが怪我をしたとかもないし。

ああでも、あれはトラブルと言えばトラブルなのかな?最終的には部屋の中が嵐にあったみたいになったから。

理由、ですか。んん、なんて言えばいいのか…正直私に原因はあるんでしょうけどね。

ミルヒとか周りの人たちは苦笑いしてるだけだし。

はぁ、なんで_____________はあんなに怒ったんだろうねぇーーーーー

 

 

 

 

ー遡ること数刻前ー

 

「久しぶりじゃのう、ミルヒ!」

 

そう言ってミルヒと抱き合って、普段は頻繁に会うことができない友達と嬉しそうに話している彼女は、海に面したお隣の国、ガレット獅子団領の次期領主であられるレオンミシェリ・ガレット・デ・ロワ姫。

 

なんでも2人はそれこそ、生まれた時から仲がいいらしく、まるで姉妹のようだとか。確かに目の前で嬉しそうに話してる2人を見ればそこまでいうのも納得できる。それでーーー

 

「おっ、お前見ない顔だな。新入りか?」

 

「もう、ガウ様。初対面の女の子にお前は失礼ですよ!」

 

「そうやでーガウ様。うちらじゃあるまいし」

 

「……………」

 

このいかにもな腕白少年がレオ姫の弟君のガウル王子。

その周りで注意しているのはガウル王子の親衛隊の人たちで、上からベール、ジョーヌ、ノワールの3人。

というか私はまた女の子だと思われてるんだね。

そのままでも不都合はないけど、私のプライド的にも女だと思われたままなのは嫌なので、はやく誤解を解かないと。

 

「あの、私はーー「あん?何言ってんだお前ら。コイツは男じゃねえか」ーーガウル王子!!私は貴方について行きます!」

 

「ど、どうした急に」

 

ついに!ついに私を男だと一目で分かってくれる人に出会えた!

この世界に生まれてからこれほどまでの嬉しさを感じたことがあっただろうか?!いや、ない!←反語

 

「「「えぇぇぇぇぇぇぇ!?男の子なのー?!」」」

 

「なんじゃ、気づいていなかったのか」

 

「レオ様もシロが男の子だとわかってたんですか?」

 

「もちろんじゃ。というより、間違えるわけなかろう」

 

なんとレオンミシェリ姫も気づいてくれていた!

いよっしゃぁぁぁぁ!!今日はお祝いだー!

…ううっ、長かった。

思えば、お母様から始まり、近所の人たち、ミルヒと、今までまともに男として扱われることが皆無だった私の今生。

苦節7年半、毎日の筋トレはやっぱり間違っていなかっーーーー「じゃが、女のような奴がミルヒの護衛とは、頼りないのう。見たところ体の線も細いし、まだ垂れミミの方がマシじゃな」ーーーは?

 

「レ、レオ様?それ以上はシロが可哀想ですし…」

 

「事実じゃからな、仕方あるまい。だいたいーーー

 

……ふーん。そうゆうこと言っちゃうんだ。えぇ、いいですよ初対面で女に間違えられるのは。

慣れてますし、自分の外見が男らしくないっていうのも自覚してます。

でもね、さすがの私でも今のはカチーンときましたよ。

ここは一度、このお姫様に私が男であることを思い知らせてやる必要がありますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーじゃから、シロとか言ったか?お主はもっと……ッッ!」

 

そこでレオンミシェリの言葉は彼に手を掴まれ、ベットの上に押し倒されたことで遮られた。

周囲の者たちは突然の行動に驚き、言葉を発することができない。

それもそうだろう。今レオンミシェリと彼、シロの顔の距離は10cm程度しかないのだから。

あと少し近づけば唇が重なり合うような距離にいる2人の成り行きを見ていることしか、彼らにできることはないのだ。

…約1名、楽しそうにニコニコと事態を静観しているメイドもいるが。

 

「あっ……………」

 

彼の手がレオンミシェリの頬を優しく撫でる。

至近距離で見つめ合う両者の視線が逸れることはなく、予想だにしなかったことに混乱しているのか、彼女のいつもの覇気は無い。

ただ不安げな瞳でシロを見つめるだけである。

 

 

…そして少しずつ2人の距離は縮まって行き、彼はーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーレオンミシェリの額にーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いだっ!」

 

ーーーーーーーーーーデコピンをした。

 

「ふっふっふ、これでレオンミシェリ姫も私が頼りない女みたいな男でないことがわかったでしょう」

 

そう言ってシロが立ち上がり、何もなかったかのように話し始めた。

しかしーーー

 

「確かに私は女顔ですよ。それに髪が長いせいで余計に女みたいに見えるのも認めます。でもね、いくら私でもあそこまで言われては黙っていられま「……じゃ」……え?」

 

「なんてことしてくれたんじゃ!この馬鹿者!!」

 

レオンミシェリが彼と同じように落ち着いている訳もなかった。

顔から耳まで真っ赤に染めているのは、怒りというよりも恥ずかしさのようではあるが、まだ7歳の子供である彼女にはシロの行動は刺激が強すぎたのだろう。

 

「ちょっとレオ姫!?危ないから物投げないで!!」

 

「うるさい!おとなしく当たらんかー!」

 

「そう言われて当たるやつはいませんよっ!」

 

「ええっと、ふ、二人とも、ケンカは…!」

 

「わっはっは!姉上にあんな事するなんて、あいつおもしれーな!!」

 

「あらあら、今日は部屋のお掃除が大変そうですね♪」

 

 

ーーこの新しい"お友達"との出会いが彼にどんな影響をもたらすのかは、まだ誰にもわからないーー

 

 

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