「ミルヒに続き、リコちゃんにまでお姉ちゃん認定されるとか……。もうお姉ちゃんでもいいかなぁ…ハハハ」
「間違えてごめんなさいなのであります……」
いくら普段から私が女に間違われると言っても、大人の場合は男だと分かってからかい半分で言っていることが多いから、同年代の子に素で間違われるとメンタルのダメージが大きいよね。…それにも最近は慣れ始めてるけどさ。
「もう慣れたし、皆そうだからリコちゃんは悪くないよ。そもそも私が女の子だと思われるのがいけないんだし。…やっぱり髪か?髪が長いのがいけないのか?それとも言葉使い?」
「うーんと、シロの場合は外見のせいじゃないと思うであります。えっと、なんていうか、全体的にお姉ちゃんオーラが漂っているというか、雰囲気が年上の女の人みたいなのであります。」
……ほぅ。
「………つまりはどうしようもないってことだよね。いいよいいよ、どうせ私は男らしくないですよ……」
「(フォローのつもりが逆効果になってしまったであります!?)
で、でも!シロはとっても強いでありますから、戦で功績をどんどん上げていけば、きっと皆もシロが男らしいと思うでありますよ!」
「…でもレオとかエクレールとか女の子なのに強いよね」
「それは………でも!レオ様やエクレにも勝てば問題ないであります!」
「……まあ、弱いよりは強い方が男らしいか。私も戦で負けるのは嫌だし。うん、ちょっと元気でたよ、ありがとねリコちゃん」
「シロが元気になって良かったであります!それはそうと、もうすぐ訓練の時間でありますが、大丈夫でありますか?」
「え!?もうこんな時間!?今日はすごい強い人が訓練を見てくれるらしいから早く行かないと!それじゃリコちゃん、またねー!」
「はいなのでありまーす!頑張ってきて下さいでありますー!」
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ざわざわ……
なんとか間に合ったかな…。やっぱり強い人が来るからか皆気合入ってるなー。一体どんな人なんでしょうね?
「それでは、今日の訓練を始める!今日は大陸一の剣士と名高いダルキアン卿に指導してもらえる貴重な機会だ。皆今日の訓練を無駄にしないように全力で取り組むように!」
『はい!』
「拙者が只今紹介にあったブリオッシュ・ダルキアンでござる。今日一日ではあるが出来る限りのことはやるのでよろしく頼むでござるよ」
あらま、強い人ってあの背の高い女の人なんだねー。この世界の女性はレオといいエクレールといい強い人が多いなぁ。
…って、え!?和服?いや袖がないしなんか違う気もするけど、和服だ!お城とかあるし完全に洋風なのに和服まであるとかフロニャルドはもう何でもありだね。
でもいいなー、私も和服着てみたいなー。最後に和服着たのは10年以上前だし、夏とか着流しみたいなゆるい服の方が楽だもんなー。
…おっとっと、今は訓練に集中集中。
「ということで、先ずはダルキアン卿の強さを模擬戦で直接見せてもらおうと思う。見ることで得るものもあるからな。そうだな相手は……」
おお、騎士団以外の強い人の戦いを直に見ることって殆どないから楽しみだな。相手はロランさんかな?次期騎士団長だって噂だし。
「……ちょうどいいしシロにダルキアン卿と模擬戦をして貰おうか!」
………what?
キンッ、キンッ
「ふっ!はあっ!」
「この年で、これ程の腕前でござるとは、驚きでござる!」
ガッ
「ぐっ!そういう割には、驚いてるっていうよりは楽しんでる気がするのは、気のせいですかね!段々!剣も重くなってきてるし!」
「拙者もここまでの実力を持つ者と戦うのは久しぶりなもの故、些か気分が高ぶっているようでござるよ」
「お褒めいただけるのは嬉しいですけど、それで今こんなキツイのかと思うと複雑ですね!」
入れ替わり立ち替わり、まるで2人で舞っているかと思えるほどに、2人の戦いは、速く、そして美しかった。
周囲の騎士はシロの強さが相当なものであることは今までの訓練から理解していたが、それでもなお、ダルキアンと互角にーーもちろんある程度の手加減はされているだろうがーー戦うシロを見て、絶句していた。
なにせ喋っている余裕があるのだから、シロの方も全力でないことは誰の目からも明らかなのだ。
「これが、シロの全力………。わ、私だって頑張っていつかシロやダルキアン卿みたいに強くなるんだ……!」
エクレールを始め、騎士達が2人の戦いに魅せられ、「自分もいつかこんな風に……!」と感化されるのは、必然だったのかもしれない。
ーーある者は2人の技を何とか盗もうと食い入るように見つめーー
ーーある者は自分ならこの戦いの中でどのように戦うのか思い描きーー
ーーまたある者は2人にあって自分に足りないものは何かを考えるーー
今までの訓練の比にならないほど、この瞬間、騎士団全員が真剣に今自分ができることに取り組んでいた。しかし、いつまでも戦いが続くわけもなく………
キンッーーー
「ぐぅぅ!……やっぱり強いですね。手加減してもらっているっていうのに、こっちは全力で挑んでようやく互角以下ですし」
「いやいや、先ほども言ったでござるが、この年でここまで拙者と戦える実力あれば十分でござるよ。
………それに、シロ殿も全力ではあっても本気ではなかろう?」
…………………。
「…あちゃー、気付かれていましたか。自分でも最近気付いたっていうのに、強い人にはすぐ分かるものなんですね」
「まあ、それなりに拙者も場数を踏み、色んな相手と戦ってきたでござる故な。……シロ殿は本来は別の武器を使うのでは?剣の間合いに戸惑っているようでござるし」
「……ホントに凄いですね。剣が苦手って訳でもないですけど、やっぱり私には間合いが少々狭いみたいで。槍とか、薙刀の方が扱いやすいですね」
「……ふむ。折角の機会でござるし、拙者も相手と本気で戦えないのは個人的に好きではないでござるからなぁ。ここは是非ともシロ殿に本来の武器でお相手願いたいでござるよ」
「と言っても、訓練用の槍はなんかしっくりこないですし……流石に紋章術は危ないし……」
「もう紋章術が使えるでござるか!シロ殿は本当に将来が楽しみでござるな。しかし、気遣いは不要で御座るよ」
「……なら、本気でいかせてもらいます」
そう言ってシロが剣を捨て、目を閉じて集中すると、次第に目に見えるほどに輝力が集まり、形を成していく。ーーー数秒後、シロの手に握られているものは、身の丈以上の大槍だった。
青白く輝くそれは神秘的でありながらも、小さい雷が走っており攻撃的でもある。
「それがシロ殿の本気でござるか……。ならば拙者も相応の本気でもって相手をせねばシロ殿に対して失礼でござるな」
ダルキアンも自身の剣を腰に構えると、両者は対峙したまま時が止まったかのように動かなくなる。
そしてーーーーーーーー
ーーーー2人の間に、一陣の風が通り抜けた瞬間ーーーー
「烈空一文字!」
「貫け!ヴァジュラ!!」
ーーーー雲ひとつない空に一筋の稲妻が走り、それを掻き消さんばかりの暴風が吹き荒れたーーーー
中途半端な終わり方ですみませんm(_ _)m