着任に不手際があったので那珂ちゃんのファンやめます 作:宮下
「特型駆逐艦『曙』よ。って、こっち見んな! この糞提督!」
建造が終わったと聞いて出向いてみたら彼はいきなりの罵倒を受けた。
着任前に軍籍であった訳でもない彼はそれを咎める事も出来ずに呆気に取られる。目の前の幼女は眉を逆八の字にし彼を品定めするように見ていた。
その傍では小さな妖精さん達が成し遂げたといった表情で額の汗を拭い、秘書官である那珂ちゃんは何故かポスターの作成に取り掛かっている。
「……あー。さっそく二人には鎮守府正面海域へ出撃をして貰いたい。駆逐イ級を相手に練度を高める方針で行こうと思っているからあまり遠くまでは行かなくていい」
「那珂ちゃんの出番だね!」
「……別に良いけど、臆病過ぎるんじゃないの」
返ってきた反応は彼の胃を締めあげる。もしかして自分は『ハズレ』を引いてしまったのではないだろうか。
他鎮守府の提督たちとは情報交換の為に随時連絡を取っているが、どの秘書官も多少差はあるが提督の助けになるべく尽くしているらしい。
彼の前には少々頭に問題があるのではないかと疑いたくなる軽巡洋艦と、開口一番に罵倒が出てきた駆逐艦が一隻ずつ。
行先が不安になるのも仕方無いと言える。
「編成は旗艦『那珂』、二番艦に『曙』。すぐに出撃準備に移ってくれ」
「那珂ちゃんがセンターだね! よーし、アイドルはデビューが肝心なんだから頑張るぞー」
「クソ提督の指示に従うなんて嫌だけど、仕方無いか……」
「…………本当に頼むぞ?」
特にアクシデントもなく二隻による艦隊は駆逐イ級の撃破に成功、母港に帰投した。
その後繰り返し駆逐イ級に二対一で挑み練度を上げている最中の事。
「提督、地道な活動が大切なのも分かるけど、折角の那珂ちゃんのデビューがこれじゃファンのみんなが満足できないよー」
練度が5になった軽巡洋艦は提督への不満を顕にし。
「クソ提督、那珂が出撃中に私にアイドル活動を強要してくるのをさっさとどうにかしなさいよ!」
練度3の駆逐艦は提督と軽巡洋艦への不満を顕にしていた。
彼は自分は何か思い違いをしているのではないかと考え、他鎮守府へと通信を試みる。
返ってきたのは『初期艦は真面目だし、二隻目の艦娘もよくやっている』、『厳しい所もあるが仲良くやっていけている』、『口調はおかしいがしっかりやっている』、『ウチは丁度姉妹艦が揃ったので仲良く出撃してくれている』、『ドジっ娘可愛い、見守りたい』と様々な反応。
とりあえず彼の様に胃を痛める事にはなっていないらしい。
再度出撃を終え、二隻が入渠している時に彼は決意する。三隻目に賭けようと。
妖精さんを呼び、一番良いレシピで建造を頼むと伝える。
色々と余裕はないのだが高速建造なるものを頼み新たな艦娘を出迎えた。
「こんにちは! 伊五十八です。ゴーヤって呼んでもいいよ! 苦くなんかないよぉ!」
一番良い駆逐艦レシピ