化物と怪物   作:ヒトノミライ

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この物語は、いきなり高校生とかはありません。
やるとしても2.3年飛ぶくらいです。



白い本の虫

「あははは! おい! ボールそっちいったぞ!」

 

「ナイスパス!」

 

目の前で4歳児達がサッカーボールで遊んでいるのを俺はベンチに座り、この前母さんに買ってもらった本を片手に聞いていた。

 

あれから、4年くらい過ぎた。その間に分かった事がある。

一つ目は、俺の誕生日が8月30日だったということ。

二つ目は、父さんは考古学者だということ。

三つ目は、この身体のスペックが凄まじいということ。

 

父さんが考古学者だったということは、前々から予想が大体ついていた。仕事部屋にある本の内容が遺跡などについてのモノが多かったからだ。まぁ、それだけでは無かったが俺はほとんど読み終えてしまった。

 

誕生日については特に何も思わなかったが、この身体のスペックには驚かされた。何しろ、一度読んだだけで暗記出来てしまうし、その暗記したモノも全く忘れる事が無いということだ。そして、応用力もある。

まさに天才と呼べる脳だ。

 

元々、本を読むのが好きだった俺は様々な知識をドンドン吸収していった。

少し前に、母さんが俺に早いうちから勉強に慣らせようとしたのか、凄く簡単な足し算用の絵本を使ってやらされた事があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『じゃあ、この一つのリンゴとこっちにあるもう一つのリンゴ。これを同じ籠にこうやって入れたら、いくつかな〜?』

 

『………2個』

 

絵本の中の二つのリンゴが、次のページで同じ籠に入ってるのを見て、一度答えるのを迷ったが、ちゃんと答える。

 

『当たり〜! 雪兎は良い子ねー』

 

『………母さん』

 

『もう、ママって呼んでって言ってるでしょ〜!』

 

『………………』

 

俺を膝の上に乗せて、ぐしゃぐしゃと俺の頭を撫でてくるのを俺は恥ずかしいから跳ね除ける。

 

『うふふふっ、恥ずかしがり屋ね〜。それで、どうしたの雪兎』

 

『………さっきのは足し算でしょ』

 

『あら、よく知ってるわねー。そうよ』

 

『…………それならもう出来る』

 

俺がそう言ったのを意地を張ったと思ったのか、母さんは微笑みながら近くにあった紙と鉛筆を持ってきた。

 

『じゃあ、雪兎にはひらがなを覚えて貰おうかなー』

 

そう言って母さんは紙にひらがなで“ゆきと”と書いた。そして、俺に鉛筆を持たせたいうことは、書いてみてと言っているんだろう。

 

『…………出来た』

 

『んー、どれどれ……って、これ……』

 

俺が書いたのを見て、母さんは驚きに目を染めている。

それもそうだろう。3歳児が漢字で“雪兎”と書いたら誰もが驚くだろう。

 

『雪兎……これ、何処で覚えたの……?』

 

『………父さんの本で』

 

『遊びで読んでいたんだと思っていたわ……。ちなみにだけど雪兎。パパの部屋の本はどれくらい読んだ?』

 

『………半分以上は読み終わった』

 

再び、驚きに目を染めている母さんを見て、俺はさっきまで読んでいた本の続きを読み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事が3歳の誕生日を迎えて一ヶ月経った頃の出来事だ。

それから、俺が足し算や掛け算、さらには三角関数や微分係数などが出来ると知った母さんは、俺が本を読むのが好きだと知っていたから、本をたくさん買ってくれた。

絵本とかではなく、数学の専門書や科学の専門書など、俺と本屋に一緒に行き、俺が欲しいと言ったものを喜んで買ってくれた。

 

「…………」

 

最近は、それらをほとんど読み終えてしまったから漢文や詩集、古文などを読んでいた。

 

しかし、本ばかり読んでいる俺を心配したのだろう母さんは、俺を近くの公園に連れ出していた。

 

だが、前世の時から人付き合いが大の苦手だった俺だ。目の前で遊んでいる4歳児達の中に混ざる、というのはペンギンが空を飛ぶと同じように無理な事だった。

 

それに、この年齢の子供たちというのは自分とは違うものを嫌う。

俺は他の子供たちと違い、髪は真っ白で、目は真っ赤だ。この時点で子供たちの輪に入る事など出来るわけなかった。

 

だから、俺はベンチに座り、聞こえてくる遊び声をBGMに漢文を読んでいた。

たまに向けられる、嫌悪の眼差しを無視しながら。

 

「…………」

 

母さんもよく諦めないものだと思う。俺にみんなの輪に加わって欲しいのは分かるが、それは俺が嫌だし、みんなも嫌なんだ。

他人に合わせて、みんなとの仲を崩さないように、なんてことが俺はそもそも嫌いだった。

何故俺が他人と歩調を合わせないといけないんだ。

 

他人の顔色を伺い、機嫌を損ねないように愛想笑いを振りまく。もし、それが出来なかったらイジメられる。

なら、最初から他人と関わるのをやめればいい。それが俺の前世で学んだこと。

 

だからこそ、今日も変わらず俺はベンチを陣取り、本の虫となっていた。

 

「ねえねえー、なによんでるのー?」

 

「…………ン?」

 

家族以外から話し掛けられるのが久振り過ぎて、俺に話し掛けて来ていたのに気づかなかった。

 

本から目を離すと、ショートカットの女の子が俺の読んでいた本を覗きこんでいた。

 

「わぁー! むずかしいもじがいっぱいだー!」

 

「………これは漢文」

 

「かんぶん?」

 

「………他の国の言葉だ」

 

そう答えると、目の前の女の子は目をキラキラさせてきた。

 

「がいこくのことばがわかるの?!すごいねー!」

 

「…………」

 

「それに、そのかみまっしろできれいだねー!」

 

他の子供たちとの反応の違いに少しばかり驚いた。

この子以外にも、俺に話し掛けてきた子供はいた。しかし、そいつらは俺の読んでいる本を見ると、『こいつへんなのよんでるぞー!!』と馬鹿にしながら他の子供たちに言いふらしに行くか、俺のこの真っ白の髪と真っ赤な目を見て、気持ち悪い!と言っていた。

 

だが、目の前の女の子はそんな他の子供たちと違い、目をキラキラさせ尊敬の眼差しで俺を見ていた。

 

「ねえねえ! おなまえなんていうの?」

 

「……瑞原雪兎」

 

「わたしはことねみさき!よろしくね、ゆきちゃん!」

 

「………ゆきちゃんはヤメロ」

 

 

 

それが瑞原雪兎と琴音美桜の出会いだった。

 

 

 

 




ふむ、前話よりは多かったかな。
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