化物と怪物   作:ヒトノミライ

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少し日常の話が入ります。


日常は前触れ

「ねえねえ、ゆきちゃん。これなんてよむの?」

 

「……だからゆきちゃんは……もうイイ」

 

あの出会いから2ヶ月が過ぎた頃、俺の家には美桜の姿があった。

 

あの日から、俺が公園に行くといつも話し掛けてきて、俺の読んでいる本を興味深そうに見ていた。

それを見ていた我が母は、美桜を家に呼びなさいと言ったのだ。

 

美桜の父親は普通に会社勤めだが、母親が看護師をしていた。

今は、育児休暇で休んでいるがそれが終わると保育所也に預けないといけなくなってしまう。

だから、今は預けることが出来る保育所を探しているのだという。

 

それが、初めて美桜を家に呼んだ時に美桜の母親である佳苗さんから聞いた話だった。

それを聞いた母さんはこう言ったのだ。

 

 

『それなら、佳苗さんが働いている間はウチで預かりますよ』

 

 

当然、佳苗さんは悪いですよ! と強く言っていたが母さんが俺の遊び相手になってくれているから全然大丈夫ですよ、と強く説得したのが功を成したのか、佳苗さんもこれの提案を受け入れた。

 

看護師である佳苗さんは、勤務時間が不安定だが父親である春人さんが定時で帰ることが出来るのも拍車を掛けたようだった。

 

その後に、佳苗さんが春人さんをウチに連れてきて、ありがとうございます! と何度も何度もお礼を言ったのを覚えている。

 

だから、今日も春人さんが迎えに来るまで美桜と家のリビングで遊んでいた。

遊ぶと言っても絵本を開き、わからない所を俺に聞いてくるというのをやっているだけだが、美桜にとってはそれが楽しいらしい。

 

「……これは、“ゆきだるま”だ」

 

「ゆきだるま?」

 

「……そうだ。雪が降った時に積もった雪を丸めたのがそれだ」

 

「むむむ〜、よくわからないよ〜」

 

「……泥だんごの雪バージョンだ」

 

「それならわかるよ! やっぱりゆきちゃんはあたまいいな〜」

 

そうやって、遊びながら勉強していると母さんが此方にやってきた。

 

「美桜ちゃんに雪兎。おやつが出来たからおいで〜」

 

「おやつ!!」

 

「………はァ」

 

バッと顔を勢いよく上げて、走って行ったのを俺はため息を着きながら見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、お迎えかしら?」

 

日が傾き、時刻が五時半を過ぎた頃に家のインターホンが鳴り響いた。

俺たちはおやつのドーナッツを食べた後、再び絵本を読んで遊んでいた。いや、別に俺は絵本を読んで遊んでいたわけでは無い。美桜が絵本で遊んでいるのを、松尾芭蕉の詩集を見ながら見守っていたのだ。

 

「美桜ちゃーん! お父さんが迎えに来たわよー!」

 

「パパ!!」

 

玄関から母さんの声が聞こえると、美桜はさっきまで読んでいた絵本を床に置き、駆け足で玄関に走っていく。

 

「おお! 美桜。ちゃんと良い子にしてたか?」

 

「うん! きょうもゆきちゃんとおべんきょうしてたんだ!」

 

「そうかそうか。偉いな〜」

 

走ってきた美桜を春人さんは抱き上げ、頭を撫でた。

 

「いつもありがとうございます。美桜を見てもらって」

 

「いえいえ、雪兎も初めての友達なので楽しそうですから」

 

「そう言って貰えると助かりますよ。あっ、そうだ。今度の日曜日は佳苗も私も休みが取れたので、花の丘の公園にピクニックでもどうですかね?」

 

そちらの都合も合っていたらなんですが…と言う春人さんを母さんは遅れて来た俺の頭を撫でながら言った。

 

「それは良いですね。是非行かせて貰いますよ。ウチの主人は無理だとは思いますが、雪兎と私は大丈夫ですから」

 

「そうですか! 佳苗も喜ぶと思いますよ。車はウチが出しますから」

 

「あら、いいんですか?」

 

「ええ。では、日曜日の十時に来ますから」

 

「わかりました。雪兎も分かったね?」

 

「………うん」

 

俺が頷くと、母さんは俺の頭を再びわしわしと撫でた。

 

「ねえねえ、パパ。ピクニック行くの?」

 

「そうだぞ〜。雪兎くんと一緒にねー」

 

「ほんと!? 楽しみ〜!!」

 

美桜の喜びように母さんも春人も微笑んでいた。

 

「では、今日もありがとうございました。ほら、美桜も雪兎くんにバイバイって」

 

「ゆきちゃん! またあしたねー!」

 

「…………また明日」

 

俺が照れてそっぽを向いたのを春人さんが嬉しそうに見ていた。

そして、玄関の向こうに消えていく美桜と春人さんに、いつものように手を振りながら見送った。

 

「ほら、雪兎。いつまでも玄関にいると風邪引くわよ」

 

「……うん」

 

玄関で少しの間、呆けてるいた俺は母さんの声で我に帰り、リビングの向こうに消えて行った母さんの後を追った。

 

 

 

 

 

あっ、そうだ。

 

 

 

 

 

「……ねぇ、母さん」

 

「ん? どうしたの雪兎」

 

「…………明日、花の図鑑買って欲しい」

 

「まぁ! うふふふっ、いいわよー。雪兎が欲しいのを買ってあげる」

 

「…………ありがと」

 

「もう、雪兎は照れ屋さんなんだから〜」

 

「………別に照れてない」

 

「うふふふ」

 

 

 

俺の頭を愛しそうに撫でる母さんに、俺はまた照れてしまい再びそっぽを向いてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 




ふむふむ、中々に安定して書けている。
この調子で明日も投稿したいと思います。

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