「ふぁ~~~眠いですよ先輩」
「眠いなど言うなもうすぐ朝だ。それで交代すれば言い」
「はは、やれやれ若い人だからそうなりますよ」
「いやいや、アンタだって十分若いでしょう」
「私は良いんです。慣れているんで」
ここは雲集市の博物館。
展示物を監視する警備委員Aはバイトでクリスマスのための金をここで稼いでいた。
しかし、初めての深夜勤務、現代若者であるAはもう体力の限界であった。
対する警備委員Bはこの業界にそれなりに長く勤めているためこの程度の勤務はもう慣れていた。
そして、ここの展示物にはそこまで価値こそほとんど無いが呪具が数個あるため派遣された『民』の術師Cもまた学生の頃からそれなりにこのような仕事をこなしていた為に夜勤は慣れていた」
「良いですよねぇ先輩は家に帰ったら奥さんと娘さんでしたっけまだ幼稚園に通う」
「ああ、あいつらのためならこの程度どうともない。お前はまだ若い。その内出会いがあるさ」
「そうですよね!よっしゃぁ!後2時間頑張りたくありません」
「しかたないなまったく。おい、湯沸かしてくれコーヒー飲むぞ」
「はい、わかりました」
「はぁ、まったく近頃の若いのはなぁ」
そう、話しながら3人の警備委員は監視を続けていると。
「ん?あれ、二人ともちょっと」
「んだ、どうしたんだ?」
「どうしました?」
画面を覗き込むとそこには展示されている部屋に人影があった。
「侵入者か?お前は見張っていろ何かあったら本社に連絡しろ」
「はい!分かりました」
「行くぞ!」
「ええ」
BCは走り出した。向かう先は人影の見えた部屋だ」
タッタッタッタッ
走る走る走る
ガラッ。ドアを開ける。
「「ッ!」」
ライトを照らし辺りを探ろうとしたその時。
「あら、見つかってしまいましたか。フフフ、これはいけない」
女がいた。それも時代が百数年前にタイムスリップしたような衣装を着て。
まるで冥府の底のような黒髪を幾つかの飾りで包み。
絹のような白い肌と魅力的な肢体を布で最低限度を隠すようなその姿はギリシャのトーガを思い浮かべる。
手には羽のような蛇が付いている杖を持つそれはまるで映画などで出てくるジャングルの現地民族のジャーマン。
術師であるCは気づいた。この女は呪術師だと。
「動くな!貴様手を上げろ!」
Aは女に銃を向けた。
同じくCもまた銃を女に向けた。
「あらあら、大の大人が物騒な物を持って危ないではないですか」
くすりと笑うその笑みは男を惑わせる娼婦のようであった。
「先輩、急いで本社に連絡を」
「んなぁ!そんな事言われなくてもなぁ」
「早く!この女普通じゃ・・・」
「ええ、そうよ私は普通じゃない貴方でもね」
そう言うと女は杖を振った。
ズサッ、そんな音がした。
「ッ、ガハッ」
「先輩!」
「あらあら、術師ともあろうものがただの人に庇われるなんて情っさけ無いですわよ」
「っ、貴様ぁぁ」
素早くCは印を結ぶ。
『オン・シュリ・マリ・ママリ・シュリ・ソワカ!』
鳥枢摩明王の真言を唱え小規模の破魔の炎を浴びせようとするが。
「フフフ、ダメね」
それは瞬く間にかき消されてしまった。
「ッ!なっならもう一度『オン・シュリ・マリ「遅いわ」』ハッ!」
腰に備えていた警棒を構えるドン、と衝撃が来た。
「くうあっ」
「無様ね。やっぱり人間はこれぐらいよね」
そう言うと女は一つの展示品を手に取る。
「ハッ!」
それは神具価値こそほとんど無い為に今回の展示に持ってこられたがまさか持ち去られるとは思わなかった。
「貴様!」
「さようなら」
そう言うと女は姿を消した。
「二人とも!大丈夫でしたかって先輩!大丈夫ですか」
ハッと気づくとBは大量の血が出ていた。
「不味い急いで救急車を」
「はい!」
二人は今回の事を本社に報告(魔術の事は揉み消された)し大規模な犯罪組織が関わっているのではとお茶の間のネタとなった。
「なるほどね、それで俺に何をして欲しいんですかねぇ?」
雲集市のとある会議室。そこにいる少年は日本に初めて現れた神殺し高橋司郎である。
「そうですね、今回の事件が国外の呪術師によるものだと言うことは分かっているのですがその、具体的な事がまだ分かっていないから一応らしいです」
質問に答えるのは正史編簒委員会に所属する媛巫女の一人東屋早苗。その他数人の職員。
「・・・神具か、まぁ俺みたいな騒ぎを起こしたくない人種は平和ボケしないように騒動がやって来るんだな」
「・・・カルナの時大騒ぎにした張本人が何を言っているんですか」
「まぁ、それはこれ、これはそれって事で、それにな」
「?何ですかその含みある言い方」
「いやな、そもそも連中(神々、カンピオーネ)の力ってさ明らかに戦略核兵器みたいな物じゃないだから被害何て気にするのが無駄だと思うぞ」
「それでも気よつけてください」
「分かっている。暴虐不尽の魔王扱いは勘弁だ」
笑いながら司郎は部屋を去った。