「これで、もしも、が起ころうが問題が無い。さぁ、喧嘩の時間だ。爺!!」
そう言い放ち、俺は生太刀をヴォバンに投擲する。
「ふん!」
しかし、その一撃は強風によって明後日の方向に飛び近くにあった鎧を破壊する。
「まぁ、そうだよな」
布都御魂を手に持ちそのまま上段切りを行う。
「いい太刀筋だ。私に挑むぐらいはあるな―――だが」
そう、言うのが早いのか出てきたのが早いのかは分からないがヴォバンの足元から20、30匹現れた。
(まだ、自分から攻めてこないか)
まだ、様子見って事か。・・・まさか、舐めていないよな。
「冗談もほどほどにしろよ爺さん。儀式を忘れるほどの興奮を与えてやるからな、高血圧で倒れるなよォ!」
カマイタチを形成し、やってきた狼の体を二つに分ける。
「ほう、風か。なら私もそうさせてもらおう」
ビュン、そう聞こえる。
「治まれ」
あっさりと来るであろう強風をそよ風へと弱体化させる。
「豊穣、それだけではないな我が従僕が見たぞ。東洋の古き主神か!それも呪術神!」
「ああ、そうだよ。で遊びはそれで良いのか?」
さっきから遊んでいる感じがしていてちょっと腹が立ってくるぞ。
「この程度で俺を殺せると思っていたのか?笑わせるなよ爺さん」
こんなんで?こんなもので?俺を殺す?・・・・・ギャグのつもりだよな。
「来いよ、夜はまだ始まって間もないんだぜ。お楽しみはこれからだ。かかって来い。Harry!Harry!Harry!!」
言いながら溜め込んだ呪力を雷撃に変換し、横薙ぎに放つ。
『良いだろう、せいぜい私を楽しませてくれよ少年!』
ミチミチと服が千切れるような音がする――――瞬間。
『さぁ、コングはなった!ラウンド1だ!!』
巨大な人狼現在の場所が場所なのか15メートルと本来よりかは小さい・・・もっとも十分巨体だが。
少女――――――アリサが儀式場にやって来たのはまさにこのタイミングだった。
カンピオーネ高橋司郎、掴みどころの無い奇妙な矛盾を抱えた男・・・それが少女の現在の評価だった。
神殺しの覇者の名を知りながら時に傲慢に時に謙虚にカッコつけのナルシストのように振舞えば力の無い凡人のように頭を下げる姿勢が何処か引っかかっていた。
―――――無論、彼の力を図り違えてなどいなかった圧倒的な力を持ちここに来るまでボロボロの魔術師や騎士しか見ていないのは文字道理彼が圧倒的な実力者
――――嘗てカンピオーネのと言う呼び名が無かった時代にヴォバン公爵が呼ばれていた異名・・・マスター・オブ・メイガスその名に恥じなかった。
現在、彼が放った雷撃も並みの魔術師ではどうしようも無かった。・・・だが
雷撃が体毛に弾かれる。
・・・あれをあっさりと彼女以外にもこの一連に驚きを隠せない者も多い。
―――――その上とでも言うべきなのだろうか?さらなる光景が彼女達は更なる追い討ちを掛ける。
―――――ビュウ、ビュウ、ビュウ・・・・・風が吹き荒れる。
――――ザァ、ザァ、ザァ、ザァ耳を澄ませば雨が屋根を強く打ち付ける。
まるで嵐、いや間違いなくこれはヴォバン公爵の権能疾風怒濤(シュトルム・ウント・ドランク)の嵐の権能だろう。
――――ああ、確かにこれでは勝てない。
人は神と魔王の前では跪くしかないそれを理解したのだ。
―――――しかしなお、この光景を前に悠然と立っていた。
高橋司郎。東洋の古き呪術神を倒しその座へ至った『6人目』はその姿を見てもなお。
不動の顔でヴォバンを睨みつけていた。
この程度では届かないと?この程度では届かないと?
「はっ、ほざけよリュケリオス(狼人間)・・・前から気に入らなかったんだ」
布都御魂を肩に担ぐように構える。――――まるで、自分を一つの矢のように体を丸めて。
「人の命を紙の用に吐き捨てて奴隷の様にこき使い続けるその性格、その権能こっちに来てからそれがはっきりと苛立っているんだ」
幻想(フィクション)が現実(リアル)になった瞬間。彼の中のこの男への怒りがあふれている。
―――――死は一度きり、この世で誰よりも命の重みを理解しているからこそ今を愛しているのだから。
――――それはとても永遠の刹那と呼ばれた男とは似ているようでまったく似ていない男、世界に取り残された哀れな迷い人。
―――だからこそ、彼は・・・今を生きるのだと
「―を―――け」故に貴様はもう要らんここから先は新しい者達の時代だ。
「―を置いてけ」あえていればいい、飢えていれば良いのだとそれを知らぬ哀れな老狼よ
「首を―――を置いていけぇ!ヴォバンァァンンッッ!!」
――――その首を両断するために身体強化を行い一瞬で距離を積めようとするが
「ッ!」
呪力の塊が近づいてくる。間違いなく強風の権能だ。
―――――不意に何かが頭に浮かんだ。
「我は四台元素を司る竜なり、強風を贄とし、我に疾風の羽を与えたまえ!」
―――――瞬間、・・・・・俺の体が軽くなった。