カンピオーネ! 縁結びの魔王   作:黑米田んぼ

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キツネ狩りじゃァァァ!!と意気込んだら三巨人強すぎなツングースカイベこれで序盤とは今回はかなり本気なんだなと思いました。
前置きはこれにて本編どうぞ。


32話

 ―――――――――ありがとう、お陰であの人に会えるわ。

 

「ッ!」

 意識が混濁するのを必死に振り払いアリサは目を覚ます。

 

「――――――今の声は」

 神殺しの三つ巴の戦いを見ながらいつでも避難を行えるように準備し、現れた二柱のまつろわぬ神を確認した瞬間彼女の意識は声が聞こえた瞬間途切れた。

 

 そして状況を確認するために周りを見ようとした瞬間それを見た。

 

 美しい顔立ちで鳥の羽を刺し黒いベールを全体にかけた兜を被った女性。

 時代錯誤なプレートアーマーが何処か似合い巨大な槍と禍々しいオーラを纏った剣を腰に下げている。

 

 極め付けは背中に生える白鳥の翼が目の前にいる女神が何者なのかを分からせた。

 

――――――否、まつろわぬジークフリートに引っ張られる女神なぞ一柱しかいない。

 

「まつろわぬブリュンヒルデ!」

 

 ブリュンヒルデ、またはブリュンヒルド、北欧の竜殺しの英雄シグルドの妻であった主神オーディンの娘であり戦乙女の一人である。

 

 二人は出会い結ばれたが色々あり別れ、二人は別々の男女と夫婦となりその後悲劇的な最後を二人は迎えた。

 

 この神話が国を越えのちのジークフリートが主役となるニーベルンゲンの歌へと変わるのだ。

 

 そのためおそらく此度降臨した彼女はもう一つの側面も持っている。

 

 英雄を終わらせる死神だけでは無くその後英雄が無くなった後の悲劇、復讐劇の一面。

 

――――――即ち、ジークフリートの妻、クリームヒルトの一面も持っている。

 

 全てを終わらす舞台の幕、機械仕掛けの神。

 

 それがかの女神、ブリュンヒルデ=クリームヒルト。この狂ったニーベルンゲンの歌を終わらす死神である。

 

「――――――ッ!?」

 状況もそうだがアリサに向かって礼をするのはこの顕現には彼女の血筋が影響しているのだろう。

 

――――――—――アリサ・アウッテオの所属する黄昏の十字結社は北欧、古のバイキングが源流であった。

 

 恐ろしい海賊であったが彼らは優れた航海技術を持つ航海者でもあった故にキリストの騎士達とも交流があり時代と共に混ざり合い結果現在の黄昏の十字結社が出来上がった。

 

 故にキリスト、シャルルマーニュ、アーサー王などのヨーロッパで盛んだったものよりもアリサには北欧の魔術、それも地母神フレイヤなどに仕える魔女の血筋が強く出ていた、

 

 故に北欧の魔術、特にワルキューレに高い適正があり。それによりこうしてブリュンヒルデに目をつけられたのだ。

 

「・・・・・っ、・・・ぅぅ、・・・」

 穏やかな貴婦人のような微笑みだがそれ以上に体から溢れる凄まじい死のプレッシャー。

 心臓を鷲掴みされたような重圧と恐怖で動かない体はまるで死刑執行前の死刑囚のような錯覚だ。

 

「・・・た、・・・た、高橋司郎・・・・・」

 この状況を打開出来る存在である神殺しの名を呼ぶ。

 

――――――—――されど

 

「・・・・・高橋司郎?」

 名前を呼んでも俯いたまま、突っ立っている。

 もう一度声をかけようとしたーーーーーその時。

 

「――――――ァ」

 

「・・・・・え」

 

「ァァァァァ、――――――◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!」

 高橋司郎の体が膨張した。

 170cmより高めの身長が5メートルほどの巨大となっていき着ていた服が弾け飛ぶ。

 腕や脚も身長と同じく大きくなり丸太のように太くなっていく。

 それに伴い体からカラフルな羽が生えていき背中から翼竜のような翼が生えて来る。

 そして恐るべき大魔王さえ不敵な笑みを浮かべられた顔は前に伸びティラノサウルスのような恐竜の顔に変わっていった。

 

 南米の鳥のような羽毛を生やした。恐竜と二足歩行のドラゴンのようやキメラの竜人に高橋司郎は変わっていった。

 

「な、な、な、・・・・・何で」

 

 ――――――結論から言えば権能の暴走である。

 曰くケツァルコアトルは人身御供をやめさせた際宿敵テスカトリポカによって呪いの酒を騙されて飲み暴走してしまい自身の妹と肉体関係を結びアステカの地を追われたと言われている。

 

 儀式の影響を一人で受け止めたせいで理性が飛び神殺しの生存本能がケツァルコアトルの権能を暴走させたのだ。

 

 それによりケツァルコアトルの権能の化身と言うべきものが高橋司郎の体を乗っ取り生存本能と闘争本能でケツァルコアトルの権能だけを行使する化け物になってしまったのだ。

 未だ制御出来ていない権能を持つゆえになのかそれともそれが神殺しのサガなのかは誰にもわからぬが。

 

「――――――◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!」

「ひいっ!?」

 誰かの悲鳴が聞こえる。

 儀式が終わり正気に戻った者達からすれば目の前に異形の化け物が唸り声を上げているのだ。

 恐怖を感じずにはいられないのだ。

 

「――――――ふん、興醒めだ。狂いおって。もう良い儀式も終わった死ね小僧」

 権能を使い特大の雷を司郎に向けて放つヴォバン。

 

「――――――◼️◼️◼️◼️◼️!」

 それに対応するために翼から竜巻を発生させ盾にする。

 

「――――――◼️◼️◼️◼️◼️!!」

 お返しとばかりに硬質化させた羽を危険と判断された二人と三柱に飛ばす。

 

「うわわわわっ!?」

「乱暴な方」

 慌てて羽を切り飛ばすドニに対してヴォバンは風を操り自分に被害が行かないように払い、ブリュンヒルデはルーンで軽やかに焼き払う。

 

 ジークフリートとファブニールは自慢の防御力により少し力を入れれば傷など付かない。

 

「グオオオオオオッッッッッ!!!!」

 大した力は残っていないと判断されたのかは分からなかったがファブニールは司郎に襲いかかった。

 

「――――――――!?」

 ビルの柱も噛み砕く大顎をかわしそのままタックルをかます。

 

「――――――――――――◼️◼️◼️◼️◼️!」

 翼を上へ広げ羽の隙間から風を噴き出してくる。

 

「空へ飛ぶ気ですか」

 ブリュンヒルデが呟くと同時に竜体が浮かび空へ飛翔する。

 

「グオオオオオオッッッッッ!!」

 ファブニールは翼を広げ司郎を追いかけるために飛翔する。

 

「――――――まっ、」

 その光景に呆気に取られ空に羽ばたく二体の竜によって天井が完全に崩壊し、瓦礫がアリサに降り注ぐ。

 

「――――――ッ!」

 死ぬ。そうアリサ・アウッテオは思った。

 

 ――――――頭上に落ちる瓦礫が何かの攻撃によって砕かれた事によって事なきを得たが。

「――――――誰?」

 そう思った瞬間。

 

 

 

「――――――早く逃げろ――――!!死ぬぞ!!」

「―――あ、貴方は」

 一瞬だが覚えがあった。この儀式場の見張りをしていた呪術師だ。

 

「何故、ヴォバン公爵の方が?」

「何を言ってやがる!儀式は終わってまつろわぬ神が顕現しただろうが!もう公爵はこの子達に興味なんかねぇよ!」

「あの日本人の魔王様、あんなに若いのにあのヴォバン公爵に挑んでお前さん達を助ける?・・・ために身代わりになったんだぞ」

「遠くで使い魔越しに見てたがよこれじゃあ恥ずかしくって戻れる場所も無いんだよ!」

 

「急げ!他の魔王とまつろわぬ神が続きを始めやがった!こっちだ!」

 ヴォバン配下の男が来た道を示す。

 

「わ、分かりました。皆さん、彼方に」

 日本人の少女があの1番に声を上げて他の巫女達を先導する。

「急げ!動ける者は体が動けない者に手を貸してやってくれ!」

 状況を理解し、儀式に着ていた服から青い服に着替えた銀髪の少女も避難に遅れている子を支えている。

 

「―――――――私は」

 悔しさを握りしめながらアリサは行くてを邪魔する瓦礫や障害を蹴散らしながら避難を手伝った。

 




果たして今年までにこの章は終わるのか・・・無理な気がする。

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