今年も縁結びの魔王をよろしくお願いいたします。
「―――――出てきたぞ!」
「急げ!この雨の上、やつれている子がいるぞ!」
「よく頑張った!もうすぐ帰れるぞ」
瓦礫を払い抜き脱出したアリサ達。
事前に脱出した子達を保護するために集められた別働隊が手厚く保護する。
敵も味方も無い。ここからが自分達の仕事だと彼らは一生懸命に行動している。
「―――――」
それを複雑な気持ちで見ているアリサ。
彼らに混ざり手助けをしても良かった。捕まっていた仲間に会いに行っても良かった。
「――――――」
でも出来なかった。アリサ・アウッテオの中にあるナニカ。それが彼女を迷わせていた。
「――――――私は何を」
「ーーーー見つけた。アリサちゃん!」
すれば良いんだろう?と悩んでいたアリサに亜衣と早苗が駆けつける。
「――――二人共」
「司郎は?司郎はまだあそこにいるの?アイツ私たちのラインを切っちゃって」
「―――――彼は」
空に指を指す。
「何で空に―――まさか」
「――――――ッ、やはりあの時見えた幻視は」
亜衣と早苗は空を見る。
ヴォバン公爵の権能で大嵐の上時刻は夜、先の見えない黒い夜空で激突する二体の竜。
「シャァァァァァァァァァ!!」
嵐の夜ではとても見えにくい10メートルサイズの黒竜。ファブニール。
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!」
逆にこの夜空には不釣り合いなカラフルの体毛をした5メートルサイズの竜と恐竜が混ざり合ったナニカに変貌した高橋司郎。
何処かに飛び去りたい司郎とそれを打ち落としたいファブニール。
嵐の夜での飛行戦は背中を取り合うドッグファイトへと発展していった。
ファブニールが司郎に向けて火炎弾を放つが司郎は右へ左へ交わしていき羽を機雷のようにばら撒き爆破させていく。
空は目にも止まらぬスピードで空を切り裂き、火炎と爆発が飛び交う戦場と化していた。
「――――――ね、ねぇ、・・・もしかしてだけど。ーーーあのドラゴンの一つって」「――――――ええ、どうしてこうなったのかは私にも分かりませんけど。・・・・・彼は高橋司郎は正気を失ってあのような姿に」
「――――――そんな」
衝撃の事実に膝つく亜衣。
「――――――実は私たちはあの二体が出てくる前に大国主の権能で司郎さんと魔術的なラインを繋げていたのですがそれを司郎さんが一方的に切ってしまわれて、何かあったのですか?」
真剣な目でアリサを見つめる早苗。
「二つ聞いて良い?」
「なんですか?」
「貴方達が用意したあの紙人形って要するにスケープゴートの類で間違いない?」
「ええ、身代わり人形の一種ですが」
「もう一つ高橋司郎の第一の権能って他の術に介入できる能力もあるの?」
「そう言っていましたが・・・・・もしかして」
「――――――これが私の目の前に突き刺さっていたのと一瞬、私たちに降り注ぐオドロオドロしい光のようなものを彼が庇ったようなビジョンが見えたの」
言いながら生太刀を二人に渡す。
「っ、・・・・・司郎」
雷鳴轟く空を見上げてる亜衣。
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!」
「シャァァァ!!」
少女達の心配を余所に化け物になってしまった司郎とファブニールの空中戦は続く。
逃げ切れ無いと判断した司郎の本能はファブニールを撃退するために三十枚程の剛鉄の羽を作り出しミサイルの用に飛ばしていく。
それに対応するために再び自信の皮膚を硬化させ羽を受け止める。
しかし、顔付近に飛んできた羽は爆発し、ファブニールの視界を塞ぐ。
煙に乗じて神速タックルをファブニールの腹に叩き込む。
「グゴオォオッ」
効果があったのか唸り声を上げるファブニールに体を捻りドラゴンテールを再び腹に叩き込む。
だが、ファブニールは腕で尻尾を受け止め口から紫のブレスを放つ。
「!、◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!?」
咄嗟に距離を取ろうとしたがブレスに当たってしまい。更にはファブニールが放ったブレスは毒ブレスであり。司郎の竜体はファブニールの毒が体を蝕む。
「シャァァァ!!」
速度が上がらない司郎を追い討ちするためにファブニールはその鋭い爪で肩羽を切り裂く。
翼を切り裂かれ落ちていく司郎に更に追い討ちをかけるために火球ブレスを五発叩き込む。
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!?」
翼をもがれ、かつてケツァルコアトルを冥界に叩き落とした司郎は今度は自分が空から地面に叩き落とされた。
「ーーーーーねぇ、もう一つ良いかしら?」
墜落する司郎を見たアリサは二人に話しかける。
「何?」
急いで司郎の元に向かいたい亜衣だが、何処か覚悟を決めたかのような気配に真摯に向き合う。
「貴方達はその・・・怖くないの?」
「それはどのような?」
聞き返す早苗にアリサは答えた。
「神殺しの戦いは文字通り神話の戦い。そう聞いていたけど正直いまいちピンとこなかったの・・・彼の戦いを見る前は」
「・・・」
「平気で物を吹き飛ばし、一流の術師数人分の一撃をシャブみたいに放つそんな戦場に私たち人間のできることは少ないの」
「だからもう一度言うの・・・そんな命が幾つかあっても足りない戦いにどうして身を投じれるの?・・・怖く・・・無いの?」
「・・・・・司郎ってさ、見た目よりも繊細なんだよね」
語り始める亜衣。それは別世界に迷い込んでしまった男の話。
「太々しいけど何かに必死にならないと生きていけないらしくてね、そんな調子で神様に喧嘩売って勝っちゃったらしいの」
国津神の最高神である大国主と戦い高橋司郎はそうやって勝ってカンピオーネになった。
「でもね、弓を持った神様に負けて、ボロボロでお腹に剣が突き刺さっていた姿を見て私、ゾッとしたの」
「――――――それは」
「――――――そんな司郎を見て司郎が戦いから逃げられないのなら。せめてやれることはやりたい。それが、私の理由なの」
「――――――正直、まだ悩んでいる事が沢山あります」
亜衣の話を聞き早苗もまた自分の思いを述べる。
「初めは上の指示だったんですよ。でも、一緒にいて一年ほどですけどこの人のために自分が出来る事はやるって決めたんです。もし、組織と司郎さん、どっちを取るかと言われたら迷わず司郎さんを選びます」
「ーーーーーー呆れた。って言うより納得したわ。そんな風に神殺しの周りには人が集まるって理解したわ」
「?何が?」
「女神フレイヤよ戦少女に白鳥の羽衣を与えたたまえ」
「ちょっーーーーーー」
「ーーーーーーお先に行かせてもらうわよ」
聞き返す亜衣を尻目に飛翔の術を使い飛び去るアリサ。
「ちょっと、何なのよあいつ」
「・・・行きましょう。恐らく行き先は同じなはずです」
「・・・うん、心配だからね」
少女達は動き出す。大切な人の元へ。
神殺しの周りには多くの人や組織が集まる。
今回の元凶であるヴォバン公爵も多くの信奉者がおり。聞くところによれば孫娘を今回の儀式に差し出した。アリサ達からすれば狂人としか言えない人間もいる。
どうしてそんなに神殺し達に心酔するのか疑問に思う時もあった。
自分達より優れているのは知っているがあそこまで良い物なのかと考えていた。
その考えは先の戦いで変わった。
災害の如き苛烈さの攻撃を物ともせず欧州一の大魔王の片腕を奪った
高橋司郎。
そんな彼の背中を見て思ってしまった一つの感情。
一度はそれを否定しょうと思った。
だが、自分も仲間たちも助けられておめおめと自分だけ帰れるのか。
「借りは返します。私は黄昏の十字結社の騎士。勇者の隣に立つ戦少女よ!」
白鳥の翼を羽ばたかせアリサ・アウッテオは己が認めた神殺しへと飛翔するのだ。
胸の内とかを描き切るのは大分難しいと思いました。