カンピオーネ! 縁結びの魔王   作:黑米田んぼ

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5月までに書き切りたかったですが思いのほか長くなっちゃいましたね書きたい所を何処までも書いたらこんなんになっちゃいました。
ではどうぞ。


36話

「フフフッ、アハハハハッ!!」

「ッ、―――ちぃっ!・・・ったく・・・このぉっ、・・・チィッ、重い」

 戦闘が始まり戦況はブリュンヒルデ側が優勢だった。

 司郎は現在先の復活の際膨大な呪力を失い現在三割ぐらいしか残量は無い。

 更に愛刀の生太刀と布都御魂は諸事情で離れており人間時代に使っていた名無しの刀を使っているがいかんせんただの刀。力を込めなければ役に立たない上ジークフリートとの戦いにて先端が折られている。

 そのためリーチが通常より短く。かつ突きなどの技が威力が下がる。

 

「――――――ッ!?」

「フフフッ、惜しかったですね」

 その隙を突いて振り下ろされたアリサの槍もまたあっさりとかわされる。

「ッ、――――――ハァァァァッ!」

 続けて槍を振るう。それをブリュンヒルデは易々と躱していく。

 

「いただきますね」

 振り終えた隙を逃さない戦乙女では無く英雄殺しの槍がアリサに迫る。

 

「させるか!」

 刀を払い槍をはたき落とす。

 

「流石ですね神殺し」

 ドロリとした視線を更に司郎に注いでくる。

 

「どうしてです?」

 英雄殺しの槍が迫る。

 

「何がだ」

 迫る一撃を躱し、返刀と言わんばかりに叩き込む。

 

「どうしてそんなに生にしがみつくのです?」 

 お返しと言わんばかりに更に英雄殺しの槍を一撃、二撃、三撃、四撃五撃六撃七撃八撃九十――――――当たれば吹き飛ぶ一撃を次々と繰り出して行く。

 

「生きたいと思うのは当たり前だろう」

 司郎はそれを次々と受け流して行く。

 

「なら何故あんな事を言うのです?」

「何のことだ?」

 大ぶりの一撃に対して司郎は距離を取りブリュンヒルデもまた距離を取る。

 

「死は一度きりと言うのであれば・・・・・何故死人である貴方がこうして生きているのですか?」

「・・・何の事を言っているのですか?」

 何を言っているんだこの女、そう思うアリサ。・・だが。

 

「フフフッ、私分かるんです。戦乙女としての本能でしょうか。分かるんです貴方の魂少しヘルの香りがします冥界神の権能を持つのでしょうがそれ以上に香る死者の匂い。・・・貴方は神殺しになる前に何処かで一度死んでいるのでしょう」

 

「・・・・・それがどうした」

「――――――えっ」

 その言葉を『高橋司郎』は吐き捨てるように肯定した。

 

「――――――理不尽に死んで気付けば赤ん坊で一から別人で生きるしか無い。最近風に言えば転生もの主人公みたいな状況になっちゃったんだよ俺は」

 ハハハッ、と乾いた笑いをする司郎。

 

「――――――だから俺は死にたく無いんだよ。死人が歩いてる?それがどうした。俺は今、生きている。心臓もしっかり動いている。ならそれでいいじゃ無いか。・・・何より真剣勝負の真っ最中だろう。冷たい北風の中必死に生きて戦ったバイキング達を狩ったように俺の命を奪いに来いよ」

 

「――――――そうですね。冷たいミズガルズで人間達は必死に生きていきました。そしてそんな彼らを私たちはヴァルハラに連れて行くために殺してきました。――――――では改めて」

 

「――――――ああ、改めて」

 

 互いに獲物を構え。

 

「――――――ぶちのめしてやる」

「――――――殺して差し上げます」

 

 頭上から互いの体を砕こうとしがみつきながら落下してくるヴォバンとファブニールを合図に戦乙女と神殺しは再び動く。

 

「避雷針」

 大国主の呪力が篭った札を何枚か投げる。

 

 轟!轟!轟!ヴォバンによって嵐になっている空模様。

 当然雷も自然と鳴りヴォバンもまた敵を撃つために何度も落としている。

 それを誘導する札がブリュンヒルデの移動を阻害する。

 

「そこ!」

「ッ!」

 動きが鈍くなったブリュンヒルデに向けてアリサが魔槍を投擲しブリュンヒルデの片足に槍が刺さる。

 

「でかしたアリサ!」

 動きが止まったのを狙って司郎は死の呪力を纏った刀をブリュンヒルデに叩き込む。

 

「――――――舐めないでください」

 炎のルーンを展開しブリュンヒルデは司郎の突撃を妨害する。

 

「ッ、・・・・・うおっ!・・・しまった!」

 炎から豪速の槍が飛んでくるが司郎は死の気配を直感で感じ刀を横に構え盾にする・・・だが、その反動で刀はとうとう限界になり破壊される。

 

「終わりです神殺し、ヴァルハラへと行きなさい」

 ブリュンヒルデは剣を取り出し白鳥の翼で飛翔し動揺している司郎を笠懸で斬り伏せよう迫る。

 

「ッ、――――――」

 アリサは斬り殺される司郎の未来が浮かんでしまい目を伏せる。

 

「――――――あっ」

「――――――なっ」

 目を開いたアリサ、そこには斬り殺される司郎はなかった。

 

「――――――くっ、間に合ったか」

 ブリュンヒルデの剣を布都御魂で受け止めあと一歩の所で命を救ったのだ。

 

「まだそんな武器を持っていましたか・・・ですが」

 ブリュンヒルデは両腕に筋力強化のルーンを展開させ剛腕に身を任せて司郎の頭を叩き切ろうとする。

 

「鳴り響け布都御魂!」 

『応!』

「ッ!?」

 布都御魂の刀身から雷が発生し感電する前にブリュンヒルデは素早く離れた。

 

「セイッ」

 布都御魂を素早く振り雷の斬撃を飛ばす。

 

「トールのルーンよ」

 雷神トールのルーンを書きブリュンヒルデは雷の斬撃への耐性を強める。

 

「風よ」

 追い風を発生させ速度をを上げブリュンヒルデに迫り布都御魂を叩き込む。

 

「ッ!」

 ブリュンヒルデは魔槍で布都御魂を受け止める。布都御魂から流れる電流とトールのルーンが相殺され拮抗したその光景は先程と逆の立場になる。

 

「シッ」

 布都御魂の握る手を緩め片手を離し拮抗していた姿勢を崩しそれによる僅かな隙に離した片手に生太刀を握り眼前の敵の横腹に一撃を叩き込む。

 

「ッ、――――――やりますね。それでこそ神殺し」

 間一髪だったのだろうか僅かに鎧から出る血をルーンで止めながらブリュンヒルデは司郎を賞賛する。

 

「ですが分かりません先ほどまで疲弊していたはずですが・・・・・まさか、いえ、間違いないです。・・・神殺し、その剣に大地の力が注がれているのを感じました一体何を?」

「さぁな、自分の頭で考えてみろよ」

 ブリュンヒルデの推測は正しく復活の権能を使い呪力を使いすぎて残った呪力では魔王二人とまつろわぬ神三柱相手にジリ貧なのは分かっていたため司郎は呪力を回復させるしかなかった。

 そのためのヒントは原作でペルセウスが現れた経緯にあった。

 原作でペルセウスが現れたのはドニが龍脈と繋がった神具を叩き切ったせいなのだ。

 司郎が最初に倒した神大国主は豊穣の神、大地の神でもある。

 再び魔術的繋がりを早苗、亜衣に繋ぎ大国主の権能の一部を二人に使えるようにし龍脈を布都御魂に繋げる儀式をさせ司郎とアリサはこれ以上戦火が拡大しないように戦場に向かった。

 

「鳴り響け!」

 ――――――そして、この地の龍脈に繋がった布都御魂を通して司郎は権能を行使する。

 龍脈から流れる大地の力は鋼の軍神である布都御魂には相性最高であり豊穣の神である大国主もまた存分に扱える。

 軍神の神剣から幾つもの雷球が放たれブリュンヒルデに迫る。

 

「舐めないで下さい」

 ブリュンヒルデは白鳥の翼を広げ雷球から逃げながらルーンで叩き落としていく。

 

「――――――高橋司郎!」

「――――――ッ!結べ縁結び」

 追撃しようとした瞬間アリサの声が聞こえたと同時にヤバい気配が頭によぎり縁結び(物理)で今いる場所から距離を取る。

 

 その一秒後、空から業火が降り注いだ。当たれば上手に焼けましたーと某狩りゲーの肉の用になるかもしれないほどにはヤバいものだろう。

 周りを見ればヴォバンのジジイが人狼の姿で着地したのを見た。方向からして空中にいたジジイに向けて放ったのだろうかどちらにせよ気の休まる場所はないと言う事だ。

 

「やれやれ参っちゃうなこりゃ」

 見ればブリュンヒルデが幾つものワルキューレを召喚して突撃準備を完了している。

 ファブニールも今度は俺に狙いを付け始めたようだ。呪力が幾らか回復し、天敵である鋼の神剣を持っていれば蛇殺しのアポロン並には危険視されるだろう。

 

「やってみせるさ、どんな地獄だって生き延びてやる」

 相棒を構え眼前の二柱に対応する為に集中をしカウンターを叩き込もうと待ち構える。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――だがその緊張は膨大な光によって掻き消された。

 

「――――――なっ」

「――――――えっ?」

 ドニとジークフリートが落ちた地面から放たれた莫大な呪力を持つ光が地上を薙ぎ払い空へ飛んでいく。

 

「グガァァァァァァァ!!!?」

「嗚呼、貴方――――――」

 光はファブニールとブリュンヒルデを飲み込みその存在を消し去る。

 

――――――財宝を溜め込む王道ドラゴンの代表でもあるファブニール。英雄殺しの悲劇の代表である戦乙女ブリュンヒルデ=クリームヒルトは突然の事になすすべなくその姿を世界から消え去る。

 

「――――――まさか」

 唖然としながら状況を見て恐らく自分で落としたドニとジークフリートが地下で激突。最後にジークフリートがバルムンクを放ちドニと相打ちその余波であの二柱が吹き飛んだ。

 当然犯人がドニであるのも考えられるがそれは色んな意味で考えたくないので放置する。

 

「――――――あっけないものだな」

 まつろわぬ神がいなくなった事でアドレナリンが下がっていったのを感じ始めるがまだ危険な辻斬りと狼ジジイがいる危険地帯なのを思い出し移動しようと呪力を練り始めた――――――その時。

 

「――――――なっ」

 先程までヴォバンの権能によって嵐の夜になっていたはずの空がみるみるうちに変わっていき始めた。

 

 雨を降らせた雲はどんどん晴れていき代わりに出てくる星の光は瞬く間にかき消されて行く。

 神殺しとまつろわぬ神の戦場を今照らすのは何もかもを焼き尽くさんが如く君臨する炎の星がそこにあった。

 

「――――――散々邪魔が入りジークフリートもどの神も満足に食い足りなかったが」

 炎の星が最古の魔王を照らす。

「元より人生というのは思いもよらない事など良くあるものではある。少なくとも貴様らのような若い神殺しが乱入してきた時点で碌な事にならないのは分かってた。このようなものでも多少の無聊は紛らわされる・・・だが」

 

 現存一人目の神殺しが現存6人目の神殺しを睨みつける。

 

「このヴォバンが何一つ成してないというのも何だと思うのでな。せっかくだ小僧、この戦いの勝ち負けでも決めようじゃないか」

 原作において国を焼き滅ぼすともうたわれた炎の砲撃権能『劫火の断罪者』をヴォバンは司郎に向けて放とうとしている。

 あれをどうにかして生き延びれば勝ちと言うシンプルな勝負だ。

 

「冗談じゃないそんな義理があるか!」

 逃げようと風を起こそうとするが。

「なっ、ちょっと、・・・離して!」

「アリサ!〜〜〜ッ、このクソジジイ!」

 瞬く間に鎖が現れアリサの体を拘束する。先程までの戦闘で疲弊した上に神にも抗える術も既に解除されその上反動もあって抵抗が出来なくなっていた。

 既に劫火の断罪者は発射体制を整えており下手に動けばモロに食らうかアリサを切り捨てなければいけないほどには追い詰められていた。

 

「どうする。お前の騎士を捨てれば助かるかもしれないぞ」

「そうよ早く逃げなさいよ!私の事は良いから」

 流石は最古参の魔王、司郎が勝負に乗りたがるよう的確に言葉を選んで放ってくる。

 同じようにアリサもまた足手まといはもう要らないと言わんばかりに自分を切り捨てようと進言する。

 

――――――だが。

「――――――ふざけるなお前を置いていけるかよ」

「馬鹿!あんなのどうにもならないわよここまで頑張ったなら」

「――――――なぁ、アリサ。人生は一度きりだ」

「・・・・・へ?」

「死んだら次があるか分からないし次があっても今までの関係は殆ど消える」

 神剣を構え龍脈から大地の力を吸い取る。

「――――――ここでお前を見捨てたら俺は一生後悔する。助けられなかったって、この手にはそんな後悔をしなくても良い力を持っているならすれば良い。・・・後悔は死んでからでも間に合う。だから見ていろアリサ・アウッテオ、俺の戦いを後世に伝えろこれがカンピオーネ、高橋司郎だ。いくぞ布都御魂、ここ1番の大舞台だ気張れ!!」

『応とも!行くぞ王、我が刃は炎も星も切り裂いてくれるわ!』

 

「――――――――――――壱、弐、参、肆、伍、陸、漆、捌、玖、拾、―――布留部、由良由良止、布留部」

 大地の力を操りながら司郎は神楽を舞う。

「――――――曰く、この一児をもって我が麗しき妹に替えたらかな、すなわち頭辺に腹這い脚辺に腹這いて泣きいさち悲しびたまう」

 その詠唱は司郎もよく知るとあるゲームの詠唱、ただ一振りの刃でありたいと願った男の祈りそのもの。

「――――――その涙落ちて神となる、これすなわち畝丘の樹下にます神なり。―――ついに佩かせる十握剣を抜き放ち軻遇突智を斬りて三段に成すや、これ各々神と成る。劍の刃より滴る血これ天安河辺にある五百個盤石我が祖なり」

 カルナの鎧では司郎はともかくアリサは守れない。故に布都御魂と大地の力を融合させ最高の一撃を放とうとする。

「――――――謡え、詠え、斬神の神楽、他に願うものなど何もない。未通女等之、袖振山乃、水垣之、久時従憶寸吾者」

――――――さぁ、この歌劇に終焉を。

「八重垣・左士神・蛇之麁正。神代三剣、もって統べる石上の鎌風、諸余怨敵皆悉摧滅」

 布都御魂を鞘に戻し切るものを改めて確認する。

「――――――太極、神咒神威 経津主・布都御魂剣!」

 抜刀し上段の姿勢で大きく振りかぶり刀身から殲滅の雷が放たれ同時にヴォバンもまた劫火の断罪者を放つ。赤と白の二つの殲滅の力がぶつかり合い大気を震わす。

 

(――――――司郎!)

(――――――司郎さん!)

 大国主にやって繋いだラインから亜衣と早苗の声が聞こえてきた。

 司郎を支えるために早苗は大国主の権能による龍脈の制御を亜衣は布都御魂の制御に手を貸す。

「――――――大いなる戦乙女の愛は竜殺しの英雄をさらに偉大にさせる―――足手まといが何もしない訳にはいかないのよ!」

 更にアリサもまた繋いだ大国主のラインを通して強化の術をかける。

 

『――――――ッッッ、まだまだァ!!』

 度重なる膨大なエネルギーを受け止め続けた布都御魂もまたヒビが入り光が漏れ始める。だが、徐々に押し返しているために戦いを命とする『鋼』の神剣もまた魂を震わせているのだ。

 

「うおおおおおおぉぉぉっ――――――チェストォォォォォォォッ!!」

 莫大なエネルギーを再び注ぎ劫火の断罪者を押し返す。

 

 

――――――殲滅の稲妻が炎の星を消しとばしこの歌劇に終焉の幕が下ろされたのだ。




長かった因縁のこの章もあとこの話を含めて3話。どうぞ楽しんでいってください。
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