カンピオーネ! 縁結びの魔王   作:黑米田んぼ

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41話

「――――――ここだね。よくやったね偉いよマウニ」

「ワン!」

 ダブリンの裏町にある一つのビル。

 ここアイルランドで近頃暴れている邪術師の本拠地がここだった。

 通勤用か逃走用か駐車場には幾つかの車とバイクが置いてあった。

 そこに銀のショートヘヤーを翻し薄緑のハンティングジャケットを着た一人の少女が青毛と赤毛の二匹のスコッティッシュ・ディアハウンドを引き連れてやって来た。

 

「確かにここなのだなウィン」

 ウィンと呼ばれた少女の背後から屈強な男達が現れ先頭に居る男がウィンに問いかける。

「―――――当然さ。僕の愛犬が間違うはずなんかない」

 自信たっぷりにウィンは平たい胸を張る。

「・・・・・まぁ、ドルイダスであるお前が言うなら間違いない。それに・・・」

 男はコンパスを見ながらビルを見定める。

「事前に用意したマーキングも一緒だ。少なくともここに調べない理由は無い」

「そのとうりだね」

 少女達のジャケットの胸に光る白い枝が渦巻きに描かれているバッチがキラリと光る。

 

 カツンカツンとブーツの音が裏町に響く。

「――――――へぇ、結界張れるんだ。下級の邪術師がトップの素人集団だと思ってたよ」

 僅かな違和感からビルに貼られた侵入者察知のための結界に気づきウィンはジャケットから一本の伸びたヤドリギを取り出しオガム文字を空に描き無効化する。

 

「えっ、なっ!?・・・ど、どちら様でしょうか!?」

 外に貼られた侵入者防止の結界に反応が無かったからか受付の人は突然やって来る大多数の存在にあっけにとられる。

 

「貴方がどのような立場で此処にいるかは知らないけど・・・眠ってね」

 再びウィンはヤドリギでオガム文字を書き眠りの魔術を使いばたりと受付は倒れる。

 

「何だ!・・・お前たちは!・・・まずい!見つかったのか!?」

「ボスを呼べ!応援を呼べ!」

 慌てるビルの人間達は混乱しているが。

 

「お前たちは無関係な市民を拉致し生贄を捧げる禁術を扱った疑いがある大人しく我々白枝騎士団に投降しろ!」

 男は投降を要求した。・・・・・だが。

 

「ふざけるな!貴様ら魔術結社の介入は分かっていたそれでもなお我々は目的を達成する!者共やれ!」

 ぞろぞろと武器を持った者たちがやって来る。

 

「総員突撃!一人残らず捕縛せよ!!」

 白枝騎士団のリーダー格の号令の元、員達もまた邪術師の集団に立ち向かう。

 

「このっ、コノォッ!」

「素人に負けるかよ!」

 当然ながら軍配は白枝騎士団にあった。

 邪術師集団は殆ど魔術の『ま』ぐらいしか知らない素人と一部のはみ出し者の中堅ぐらいしか居ない。

 幼い頃から魔術に触れ様々な動乱に揉まれた魔術結社相手では比べる事は出来なかった。

 

「ヒギャァァァッ!!」

「畜生!このイヌッコロが!・・・ガァっ!」

 そして、この制圧戦に最も輝いていた術師こそ銀髪のドライダス、ウィンだ。

 少女、ウィン・マクガヴァンは白枝騎士団の大騎士である。

 ケルト由来のドルイド魔術を使うウィンにとって彼女が育てた猟犬は彼女の使い魔としてドルイド魔術の恩恵を最大限に活用できる。

 ケルトの大英雄フィン・マックールが二頭の猟犬を従えていたようにウィンの二匹も猟犬もまたそれに迫る力を持っている。

 

「あのガキをやれ!あの犬はあのガキの使い魔だ。供給源を断てば弱体化するぞ!」

 それを見抜く邪術師の一人が武器を構えてウィンに突撃する。

 同様に何人かの邪術師集団がウィンに迫る。

 

「そこ!」

 迫る集団にウィンはドルイドに珍重したオークの木とヤドリギで出来た杖を呼び出し杖術で打ち負かしていく。

 棍棒や剣をバトンのように回しながら受け流し、隙を作り打ちのめしていく。

 

「マウニ!アイネ!上へ行くよついて来て」

「「ワン!」」

 青毛のマウニ、赤毛のアイネを引き連れてウィンは奥へと足を進め、歩きながら遠距離に対応するために片手で扱えるボウガンを取り付けた。

 

「・・・マウニ、ブリン従姉の匂いを辿って。アイネは僕と随伴して」

 ウィンはこの場所の発見に貢献し、行方不明の従姉妹であるブリンを探しながら邪術師達を倒していった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・持っている刀を僕に渡すんだ」

 そして、時は戻る。

 

 謎の魔術テロ集団から囚われた人たちと共に脱出するために動いていた司郎。

 時を同じくして白枝騎士団もまたこの地に潜んでいた邪術師の一団を一掃し、彼らに捕らえられた人たち、および邪術師達が密かに取り寄せた呪具とそれを追って行方不明になった仲間の回収を目的に攻め入った。

 

 そのため司郎はテロリストと戦う術師集団がいるのは知っていたがまさかホールドアップされるとは夢にも思わなかった。

(――――――なんでさ)

 背に腹は変えられないと諦め、司郎は刀を遠くに転がし誤解を解くために女性から貰ったバッチを後ろでボウガンを構えている術師、ウィンに見せる。

 

「!?それを何処で拾ったんだ!」

 ウィンは矢尻を司郎に突きつけ脅す。

「危ないな、仲間が助けに入っているかもしれないからこれを見せて保護してもらえと言われて貸してもらったんだ。そこの3部屋奥に隠れているよ他にも捕まった人たちがいるからってな」

 

「―――――分かった。アイネ、その東洋人見張っといて変な動きしたら噛みついて良いよ」

 司郎の刀を拾いウィンは言われた部屋へ急ぐ。

 

「はぁ、高いんだがなぁアレ、・・・お前のご主人ちょっと乱暴じゃ無いか?」

「ワフン」

 その愚痴は赤毛の犬アイネにはどうでも良かったらしいのかそっぽ向いた。

 

 

 

「―――――ごめんなさいねうちの従妹が迷惑をかけて」

「いえ、俺も待ってれば良かったので気にしないでください」

 ウィンは直ぐに戻ってきた。後ろからは銀の長髪をした女性もといブリンや他の捕らえられた人たちもついて来た。

 

「確かに君は違ったようだね、・・・これ返すよ」

 そう言いながらウィンは司郎に刀を返した。

 

「ああ、・・・それで、俺もそうだがアンタの従姉や捕まった人たちを安全な所に案内してはくれないのか?」

 そう司郎が尋ねたら。

「良いよ、後は作業のようなものだからね。皆こっちだよ」

 了承し、出口に案内しようとするウィン。

 

「うわぁァァァァ!?」

「チィッ!なんて奴だ!?」

 だが、それと同じくして司郎とウィン達がいるフロアから大きな悲鳴が上がった。

 

「!?・・・何!?・・・この呪力量は!?」

「おいアンタら!俺たちの後ろに下がれ!」

 悲鳴に即座に戦闘体制をとる司郎とウィン。

「ーーーーーーおお、ウィンかブリンもいるな無事で良かった」

 白枝騎士団の術師が武器を構えながら近づいてくる。

「今の悲鳴は!?」

「今さっき頭を押さえようと突撃したがヤツは今まで生贄で与えた呪力で魔獣を呼びやがった。それもかなりの化け物をな!」

 術師がウィンの質問に答えたと同時に化け物がやって来る。

 

 燃えるような赤い目をした黒い大きな犬。ブラックドッグだ。

 

「従姉さんと君たちは下がってマウニ、アイネ!!獲物だ!」

「ああ、分かった!」

 ボウガンのボルトを回しいつでも発射できるようにして愛犬達と共に司郎達の前に立つウィン。

 

『オオオーーン!!』

 雄叫びを上げブラックドッグが迫る。

「そこっ!」

 動きを読みながらウィンはボウガンから呪力で出来た矢を放つ。

 

『ガフッ!』

 素早く矢を避けブラックドッグはウィンの喉笛を噛みちぎろうと迫る。

「ッ――――!」

 止めようと動こうとしても今の司郎では間に合わない。

 

「オオオーーン!!」

 だが、それは司郎の出番では無い。ウィンを守るのは彼女が育てた二匹の使い魔だ。

 アイネがブラックドッグにタックルをかましマウニがガラ空きのブラックドッグの胴体に噛み付く。

 

「援護する!」

 白枝騎士団の仲間がブラックドッグに撃ち込む。

『ギャイン!?』

「バロールの瞳を穿つが如く敵を穿てタスラム!」

 怯むブラックドッグを見てウィンは必殺の魔弾を撃ち込む。

 

『オオオ〜〜〜〜〜ン!!』

 断末魔を上げながらブラックドッグの呪力は風へと流されていった。

 

「よし、後は頭を撃ちぬけば・・・」

 ウィンがそう言った瞬間。

 

 『ドォォォォォン!!!』下から炸裂音が響く。

 

「なっ!?・・・下で何があったの!?」

「周りをしっかり見ながら早く降りろ!崩れるかもしれない!」

 司郎とウィン達は慌てて下に降りる。

 

 一階には混乱している白枝騎士団がいた。

「何があった!?」

 ウィンは周りに尋ねる。

「奴ら自爆しやがった!上のお前らのために結界を張ったんだよ」

「くっ・・・まだ外にいるのか!?」

 

 外に出るウィン。だが、時すでに遅し邪術師のトップとかぼちゃ男達は車に乗り込み終え走り出している。

「くっ・・・マウニ!追うんだ!」

 ウィンは愛犬に追跡させる。

 

「・・・・・後は」

 自分はどうしようかと考えていた瞬間。

「おい!あいつら追うぞ乗れ!」

 邪術師の拠点にあった鍵を奪い取りバイクに乗った司郎がウィンを誘う。

 

「良いけど運転出来るの!?」

「ハワイで親父にな・・・・・走るぞ掴まれ!」

「う、・・・うん」

 

 けたたましいエンジン音が響き少年少女は走る。




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