「咄嗟について来たけどよかったのこれ以上君が首を突っ込む必要ないと思うけどな!?」
「あー、何でだろうな、昔から馬鹿騒ぎに首を突っ込みたがるタチなんだ」
アイルランドの夕道を走るバイクに駆る司郎。
真面目に考えたら彼についてくる必要無かったようなことに気づいたウィンは頭を抱えながら話を続ける。
「君なに人?東洋人なのは分かるけど・・・と言うか名前も聞いてなかったね」
「高橋司郎、日本人だよろしく。お前は?」
「僕はウィン、ウィン・マクガヴァンだよ。・・・しかし、日本人は謙虚って聞いていたけど君は違うんだね」
「日本人にも色々といるさ、・・・不味いな。距離がどんどん遠のいていく」
司郎が追いかけている邪術師集団の車はどんどん遠のいていく。このままじゃあ見失ってしまう。そう思った司郎だが。
「問題ないよ。僕の愛犬達の嗅覚を共有して奴らの呪具に施されたマーキングを追っていけば目的地にたどり着く」
「そんな術を使えるのか。・・・上手く追っているなアイツら」
ふと、後ろを振り向けば少し離れた後方にウィンの愛犬達が周りの人から見えにくい場所から司郎達のバイクを追っている。
「ふふっ、アイネもマウニも僕の両翼とも言うべき使い魔だからね。アレぐらい動作もないよ。・・・それよりアイツらはあの呪具を使って何をしようとしているんだろうね?」
「どういう事だ?」
「――――――奴らの始まりは五ヶ月前ぐらいだとされているんだ。このアイルランドの各地で人を集めて細々と始めたらしい」
道中ウィンは邪術師集団の話をし始めた。
「奴らのボスはアメリカから逃げて来た僕達白枝騎士団と同じドルイドの系譜の邪術師で妖精と死霊魔術に精通しているらしい。各地の儀式の場所は墓地などが多かったらしい」
「奴さんの仲間が言っていたが俺たちを生贄にしようと言っていたな。イギリスにドルイドに捧げられた身分の高い遺体が発見されたとかなんとか」
「・・・確かに僕達ドルイドにも生贄の文化がなかったかと言えば嘘じゃない。・・・でも命をましては人の命を奪って使う術は
禁術。知っているだけならいざ知らず使ったとなったら許されない」
「ああ、全くだこの二十一世紀に逝かれている」
「でも、奴らから見ればどうでも良いんだろうね、徐々にエスカレートしていって怪我や誘拐事件が発覚していっていよいよ僕たちが動く事になったんだ」
進んでいった果てに邪術師集団の車は人通りの少ない森深い道へと入っていった。
「そして、二週間前。奴らはアメリカの邪術師組織と手を組んで大航海時代にアメリカに持ち込まれたケルト由来の神具を密輸すると言う情報が手に入って探りを入れて2日前にここダブリンに持ち込まれたのをブリン従姉さんが奪取して合流する前に奴らに追われたところを君が見つけたわけ」
「なるほどね。・・・だが、何でそこまで?」
「さぁ?頭は見え透いた虚栄心だと思うけど下にいる奴らは術をロクに知らない素人が多いらしいか――――――」
バイクを走らす司郎一向から少し離れた所から突然オーロラが出現した。
「何だよアレは!?」
「なっ、あそこは!?」
唖然とする司郎だが、ウィンには心当たりがあった。
「知っているのか?」
「半年ぐらい前に発見されたケルトの遺跡だよ。妖精との交信に使われたとか何とか」
「――――――交信、まさか」
「行ってみよう!」
「ああ!」
バイクを降り二人は遺跡に近づく。
「――――――これは」
ウィンは絶句する。
かつてのケルトの人々の宗教、政治の重要なタラの丘にも似た石柱の遺跡から光が漏れだしオーロラを形成している。
石柱の直ぐそばに黒いローブを被った邪術師のボスが、周りには司郎を殴ったカボチャの覆面を被った男などを含め3人ほど集まっている。
「白枝騎士団だ!今すぐこの馬鹿騒ぎを辞めてお縄につけ!」
武器構え邪術師集団に投降を促す二人。
「――――――ハハハ、言うじゃないか善の術師共が邪魔をするな」
邪術師のボスがメイスを二人に向ける。
「これより私はティル・ナ・ノーグの扉を開き。そこにいる妖精を捕らえ使い魔へとする。この世とあの世にある妖精圏を支配しこの地を牛耳る魔術結社の第一歩なのだ!!」
「――――――何て?」
呆然とした顔でウィンは邪術師のボスを見る。
「事の危険性を分かっているの!?この世とあの世の境目に手を出す何て下手すれば神々が舞い降りる!狂った神を相手に僕たちが出来る事なんて逃げるしか出来ない。タダの自殺行為だ!!」
「挑戦をしない臆病者に私の野望の邪魔はさせない」
「儀式を止めるよシロウ!こんな儀式どう転んでも災厄を呼ぶだけだ!」
「分かった!」
武器を構える両者。アイルランドの命運を賭けた今回の事件の人と人の最後のぶつかり合いが始まった。
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