カンピオーネ! 縁結びの魔王   作:黑米田んぼ

45 / 60
明けましておめでとうございます!
まだまだ、続く第五章次回で過去編は終えるつもりです。どうぞ楽しんでいってください。


44話

「――――――っ、ここは?」

 光に慣れて見えてきた司郎の目に映る光景。

 草木の生い茂る草原だが幻想的でのどかさを感じるその光景は文字どうり妖精郷にでも迷い込んだのかと感じさせる。

 

「大丈夫?」

 隣にいたウィンが声をかけて来る。

「ああ、大丈夫だ。お前は?」

「僕も大丈夫。時間は立っていないと思うけど」

「それよりここは何処だ?」

「恐らくここはアストラル界と人間界の狭間?みたいなところだと思う」

「あ〜あ、聞いたことはあるな。つまりこの世界は普通は繋がらない二つの世界の橋みたいなもんか」

 当時の司郎にとってファンタジーなどで出る別世界の狭間のようものと認識する。・・・神殺しとしての司郎ならここの危うさを十分理解できたのだがそれはまた別。

「そのようなものかな。あの遺跡は太古の昔にケルトの神や妖精達への儀式をしていた儀式上だったはずだ。奴らが開拓時代にアメリカに渡ったらしい呪物を使って儀式をした結果こうなったんだと思う」

 事前に得た情報を元に現状を説明しながら空間を維持している核を調べているウィン。

 

「う〜ん、取り敢えず元の世界に戻るにはどうすれば良いんだ?」

「・・・・・ちょっと待って、どうも遺跡に霊脈が繋がってこの世界を形成しているようだから今流れを調べてヤドリギで流れを堰き止めて一回この空間を止めさせて後で霊脈と遺跡の繋がりを断つ。」

 ウィンは術式を展開させてヤドリギを何本か用意している。

 

「――――――分かったが急いだ方が良いぞ」

「え?何で?」

 司郎の言葉にウィンは振り向く。

 

「――――――嘘」

 二人からかなり離れた場所には大量の古のケルトの装いの軍隊がゆっくりと二人の所へと進軍している。

「おいおいヤバイぞ早く何とかしろ!!」

「待ってくれ!今何とかする」

「急げ!こっち来たら命がない・・・!?」 

 ウィンを急かす司郎の近くに槍を持った今まさに司郎のいる場所に進行しようとふるケルトの装いをした人の形をした異形の兵士が降りたつ。

 

「――――――」

 目には表情が感じられず冷酷に司郎を見つめるその兵士はまるで冷酷な殺人ロボットだ。

 

「――――――嘘、あの呪力量、神獣クラスだよ」

「どうやら逃がしてはくれそうも無いな・・・やるしかないか」

 肌を刺すほどに尖った呪力をその身に味わいながら刀を構え司郎は眼前の敵に合い対する。

「――――――っ、マウニ!アイネ!シロウを援護してあげて!」

 ウィンは敵が下級とは言え神獣クラスと判断し自身の愛犬を援護に向かわせる。

 

「――――――ッ!」

「――――――」

「「グルルル」」

 4者ともに睨み合いが始まる。

 

(――――――マジかよコイツ、隙が全然無い)

 呆然とそこに立ち司郎達を見つめる異形の兵士ははゆっくりどのように調理してやろうかと見つめていた。

 ゆっくりと兵士は司郎に近き槍を振るう。

 

「――――――ッ!・・・・・うぉっ!あっ、重いィ!」

 目にも止まらないスピードで振るわれた一撃を咄嗟に刀で受けその衝撃を受け流す事に成功した。・・・だが振るわれた一撃の重さは衝撃により痺れる司郎の腕を見れば明らかだった。

「気をつけろワンコロども!あれの怪力は洒落にならんぞ!!」

 司郎の助言を聞き優秀な猟犬達は動き出す。

 

「ガフゥッ!」

「――――――!」

「ウォォォォーーーン!!」

「――――――!」

「ガフッ!」

 マウニが飛びかかるように振る舞い兵士に槍が振るいたがるように誘い兵士が槍を叩きつけた瞬間後方に飛びる。

 アイネはマウニのフェイントに兵士の後ろに周り遠吠する。

 誘われたと思った兵士は叩きつけた槍をそのまま力任せに横薙ぎで振るう。

 その隙にマウニが本当に飛びかかる。

 飼い主が居なくても巧みなチームワークでマウニとアイネは兵士を翻弄する。

「――――――!」

 マウニの力と呪力で強化された狩猟具で噛みつくが兵士はさしたダメージは無い。司郎もウィンも知る由もないが兵士は女王に呼ばれた際一つに纏められた兄弟達を28に分解させられた個々となったがそれでもクランの猛犬に一歩も引かなかった怪物。術師から離れた猟犬など蚊に刺されたほどにも感じない。

 

「キャイン!」 

 振り回されて地面に叩きつけられたマウニが悲鳴を上げる。

「――――――!」

「――――――させるか!」

 兵士は槍をマウニに突き立てようとするが司郎が間に入って八相の構えで受け止める。

 

「くぅっ・・・」

 受け流す事に成功したが司郎の右肩を槍の先端が割く。

 

「まだまだァッ!」

 頭を振り切り兵士に刀を向けようとする司郎。

「――――――あ、・・・あれ?」

 司郎の体に異常が発生する。

「んっ、ガハッ、なっ何なんだこれは?」

 頭痛、眩暈、吐き気になり司郎は気分が悪くなる。

 

――――――伝承においてクランカラティンの槍には毒があると知られている。

 故に、少しでも人である司郎には戦闘困難になる程の猛毒になる。

 

「――――――はぁ、はぁはぁ」

 必死に手持ちの札と術で必死に毒を除去しようとするがそんなのをクランカラティンは見逃さない。

 

(――――――やべ)

 槍が迫る。弱った体では避けられない。

 

(――――――ここまでかよ)

 避けられない死が司郎を襲う。

 

 

 

 ガキィン!!鉄と鉄のぶつかる音が響く。

(――――――なっ!)

 死神の槍が大剣に塞がれる。

「くっ、何で馬鹿力だ!これだけ身体強化の術をかけたのに腕が痺れやがる」

 巨漢の大男が不貞腐れながらクランカラティンに大剣を向ける。

 

「大丈夫ですか?」

 ケルト十字架を首にかけたシスターが司郎を支える。

「やるじゃねぇか日本人。後は俺たち白枝騎士団が時間を稼ぐ」

 続々と現れる白枝騎士団のメンバー。

「いいけどよ、あの槍は気をつけろよ」

 シスターの癒しの術を受け司郎の体は活力を取り戻す。

「安心しろ!俺たちの目的はあの怪物を倒す事じゃない!」

 

――――――そう、司郎達の目的は動いている遺跡を止めてアストラル界と人間界の繋がりを断つこと。

 妖精の軍隊が迫る中、司郎と白枝騎士団は邪術師団体が引き起こした大惨事を『一旦』終結するための最後の防衛戦が始まった。




感想評価コメント等お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。