「―――—――流石に足手纏いか」
司郎がそう呟く。体の毒は治癒魔術で解毒され体も動く。
「うおおおおっ!!」
白枝騎士団の一人がクランカラティンに大剣を振りおろす。
「―――—――」
クランカラティンは呪力を高め腕と装甲で剣を受け止める。
「セイッ!」
また別の者が槍でクランカラティンを突き刺そうとする。
「ガハッ・・・」
「大丈夫か!?」
「取り敢えず大丈夫だ。回復を頼む」
「任せろ!」
弾き飛ばされ怪我を負った男に仲間が回復をかける。
次から次へとクランカラティンに白枝騎士団の魔術師達は挑み続ける。
外部者である司郎の出番はもう終わり。名残惜しいが彼らの息を乱してはいけない。後出来ることは彼らの邪魔にならないことだけだ。
「後少しだ!それまでそいつを抑えてくれ」
ウィン達の作業ももう終わる。それに合わせてしっかり脱出するだけだ。
「準備よし、皆下がって!」
準備が終わったのかウィンが皆んなに声をかけてくる。
「どうすれば良い!?」
「植え付けたヤドリギがあと少しで大地の力を吸い取り始めるからそしたら呪具によって繋がっていたこの世界は繋がりを失って崩壊するから脱出するよ」
司郎に聞かれてウィンは答える。更にボウガンで大量のヤドリギの矢をクランカラティンに撃ち込む。
「―――—――よし、逃げるよ」
力の供給が無くなり崩壊し始めたのを確認し司郎達は出口まで走り出した。
「―――—――急げ!!崩壊が予想より早いぞ!!」
呪具の呪力が無くなり世界と世界の繋がりの紐が途切れこの世界が崩壊していく。
「くっ、足場が悪くなっている」
崩壊していく世界のためか定期的に地面が揺れ司郎達の行くての邪魔をする。
「あの橋が境界線だ急げ!」
現世の入り口になっているらしい橋を白枝騎士団の騎士達が先頭で司郎達は後方の順で渡り出す。
もう少しだ。これを渡り終えたらもう危険は無くなる。そんな期待と不安が入り混ざる状況では自然と動きに焦りが出る。
「―――—――しまっ」
もう2歩で岸に着くと言うタイミングで最後尾にいたウィンの足元が崩れてウィンは崖へと落ちていく。
「届け!」
すぐさまボウガンにヤドリギの種を装填してツタを飛ばす。
「―――—――嘘」
そのツタが岸に届くかに思えたが僅かに届かなかった。
「―――—――ぁぁ」
重力に従いウィンの体は下へと落ちていく。彼女の目に見える岸から離れていく光景はそれがスローモーションのよう見えた。
―――—――死ぬ。術師である以上予想外の存在に出会い理不尽な死や死んだ方がましの理不尽を受ける可能性があると幼い頃から教えられていた。それでも死ぬかもしれないと思うと絶望感が頭を覆う。
「―――—――ッ!」
「シロウ!?」
伸び切り後は落下するだけのヤドリギのツタを司郎は手を伸ばして掴み取る。
「はっ、離して!君も落ちちゃう!」
「やかましい!!目覚めが悪いんだよ!!困らせたく無ければ早く上がってこい!!」
ツタを腕に巻きながらウィンに上がってくるように言い放つ。
「ごめん、ありがとう」
「どういたしまして」
登り終えてからウィンは司郎に感謝を伝えた。
―――—――そこからの話は必要以上に語るべきことでは無かった。
危機から脱した僕達はそのまま領域の外へと脱出することができた。
出口の光を潜り外の空気を吸って初めて生きて帰って来れた達成感を感じたのち僕達白枝騎士団は外部者であるシロウと共に安全な場所へ移動し拿捕した邪術師のアジトな関係者から得たその情報をまとめた。
その後僕は問題無しになったシロウを宿である叔父夫婦の家に送り届けた。・・・届けてたんだ。
「何、この気持ち?」
もう少し彼と話をしてみたい。もっと彼を知りたい。喪失感が心の中に広がるような、心の中にぽっかりと穴が空いたようなそんな気持ち。
もう一度会おうと思ってもシロウは次の日にはもう帰国してしまっていた。
―――—――ハートを撃ち抜かれた。そう心の中でウィンは思った。あの時崖に落ちた自分を助けた日本人の彼の事を好きになってしまったと。
気づいたその日は真っ赤な顔を抱えてベッドで唸っていた。
―――—――狩人なのに、森の賢者と呼ばれたドルイダスなのに!ぁぁ、一目惚れなんて、カッコがつかない。
そんなシロウは僕と別れて暫くして魔術師達の王カンピオーネに至ったことを知って更に僕を白枝騎士団を驚かせた。
その後幾つもの神を討ち果たし欧州で知らぬものはいない大魔王ヴォバン公爵と競り勝ったと伝えられてますます距離が遠のいたと思った。
「―――—――だからこそなのかな」
広げた報告書、そして指令を胸にウィン・マクガヴァンはあの日の思い出を胸に高橋司郎のいる日本へと向かったのであった。
では次回は五章後編一体司郎はどんな神と戦うのか今後もご期待を頂けると幸いです。