「―――――2年ぶりか」
ウィン達白枝騎士団から依頼を受けた司郎は仲間達を連れ2年以来のアイランド、ダブリン空港にいた。
「司郎!こっちこっち!!」
「ああ、分かった。今―――おっと、すみません」
亜衣に呼ばれ動こうとした司郎だが偶然通りかかった女の人にぶつかってしまった。
「いいえ、こちらこそ人を探していて周りを見ていなかったから」
ぶつかったスーツを着た女性に司郎は英語で謝るが対する女性は流暢な日本語で返す。
「・・・日本語お上手ですね。つれを待たせているのでそれでは」
何とも言えない表情をしながら司郎は亜衣達のほうに向かう。
「いい旅を後輩君」
そう女性は呟く。
「これで良いですか教授?」
女性は買ってきた飲み物を教授と呼ばれた老齢の黒人に渡す。
「ありがとう。・・・どうやら呼ばれたのは我々だけでは無いようだ」
「ええ、教授。くだんの遺跡が起動したのがアメリカからもたらされた呪物らしいからケルトとアメリカどちらの歴史にも名高い教授をアドバイザーとして・・・そして彼をもしものための戦力として」
二人は司郎達について考察する。
「随分と彼らは交流が広いようだ。だが、皮肉なものだと私は思うよ。間違いなくロクな事にならないと私は思うがどうかね―――――アニー?」
幻想文学の研究者ジョー・ベストがアメリカのカンピオーネ、アニー・チャールトンに問う。
「さあ?6人目次第じゃない」
あっけらかんに答えるアニー。経験でわかっているのだカンピオーネとは上手くやっていけるか終生の敵となるかのその時にならないと分からない。日米の魔王の会合は一体どうなるかそれは正直神のみぞ知るなのだろうと。
「これから行くところは司郎は一度行ったことがあるんだよね」
遺跡へ向かう車の中で亜衣は行き先の事について司郎に尋ねた。
「ああ、2年前まだ神殺しにもなってない頃にな」
「・・・・・ウィンちゃんと会ったのもその時?」
「そうだが」
「何かあった?」
ウィンを見ながら亜衣は聞く。
「色々と後ろから二回も後ろを取られたり神獣と戦ったりな」
「・・・・・どうしたの?」
司郎の口調が少し低くなったのを亜衣が指摘する。
「いや、まだ三流魔術師だった頃を思い出してな」
二年前の戦いで傷つけられた場所を撫でる司郎。
「三流って・・・」
「三流さ。特にいい家でも無くそこまで目立つような仕事なんてこなかったしな。そもそも、俺は地元で周りの奴らと小さな仕事をやって青春やっているはずだったんだがなぁ・・・・・」
どこで間違ったのやらと黄昏る司郎。
「―――――ふぅん、分かっていたけど3人ともシロウの事好き?」
話し込んでいる司郎達を見ていたウィンがそんな事を呟く。
「うぇ!?」
「っ!」
「えっ、そっそのぉ・・・」
その言葉を聞いて亜衣、アリサ、早苗の顔が真っ赤になる。
「あははっ、人たらしだねシロウ。皆まとめて娶るの?」
「ブッ!・・・そっ、その事は・・・」
おいおいやめろよと司郎は頭を抱える。
「あはは、ごめんね。でも、そう見えちゃうのはシロウも解っているんじゃないの?」
「へ?どういう事?」
ウィンの言葉に思わず聞いてくる亜衣。
「カンピオーネは魔術師達の王誰も勝つことが出来ない存在でありまつろわぬ神を倒せる。表と裏の法に縛られないただ一つの存在。だから魔王の命令は絶対なんだ」
「―――――そう、そのとうりなのよね。過去に引き起こされたカンピオーネによる虐殺は欧州では有名よそれこそヴォバン侯爵とかね」
ヴォバン侯爵の引き起こしたまつろわぬジークフリート招来の事を思いだすアリサ。
「そっか、だから危険な儀式に大勢の人が巻き込まれたんだね」
「だから、カンピオーネに好ましい異性を近づけさせるんだよ。もし王の心を射抜き寵愛を得ればその人の組織は大きな影響力を持つ」
「そう、そうなんだ」
亜衣は思わずうなづいた。自分の幼馴染がそんな遠い存在になっていたとはと。
「・・・・・もしかして日本ってそういうこっちの常識ってあまり認知されてない?」
「そうですね。亜衣さんはまだこちらの世界にきて日が浅いと言う事もありますが。その、日本ではカンピオーネは司郎さんが初めてで」
そう早苗が堪える。
「確か、お隣の中国にも王がいたわよね」
アリサが中国の王を話題に出す。
「羅濠教主ですね、名前は一応。ただ、その名前は聞いていますが教主本人が表舞台に出てくることはまずなくそもそも人物像が不明で」
「そうね。確かに欧州で有名なカンピオーネと言えば・・・・・」
「ヴォバン侯爵、・・・・・・そして、黒王子。アレクサンドル・ガスコイン」
アリサの言葉を繋ぐようにウィンが嫌な顔をしながら呟く。
「あ、えっと。その侯爵が悪い人なのは知っているけど。・・・その王子って人も結構悪い人なの?」
ばつが悪そうな表情で亜衣が聞く。
「まぁ、あまりね。黒王子の本拠地はイギリスだから結構やられてて」
「黒王子アレクサンドル・ガスコイン。イギリスの王であり魔術結社、王立工廠の若きリーダー。・・・でも、彼は人類の・・・いえ。イギリスの味方ですらない。彼の知識的探究の為に幾つもの事件を起こしそれによって様々な魔術結社が被害を受けたのは言うまでもない」
いやな顔をするウィンの代わりにアリサがアレクの話をする。
「そう。特にかの黒王子が一番熱をあげているのはかのアーサー王さえ求めた聖杯。そのため聖杯伝説の基盤の一つであるケルトの遺物が多く持っている私たち白枝騎士団もかの黒王子の被害は少なくない」
「・・・・・神様を倒したような人たちって迷惑な人たちばかりなんだね」
ウィンが嫌な顔をしているわけを知って亜衣もそう言うしかなかった。
「それだからシロウが王になったのは驚愕したし納得はしたよ。神獣に真正面からぶつかれる人間はそんなにいない上に生き残れる強運を持つ人間なら不思議ではないかなって」
「・・・・・ふん」
「まぁまぁ、そんなに嫌な顔をしないでよ司郎」
ウィンの話に不機嫌になった司郎を亜衣がなだめる。
「―――――間もなく現場に着きます王、お願いできますでしょうか?」
車を運転していた運転手が司郎に聞いてくる。
「ああ、良いぜ。流石に昔痛い目にあったからそれを他人も味わってほしいなんて思わねぇよ」
司郎は運転手の言葉を二つ返事で答える。
「えっと別世界を繋ぐ装置を止めるんだよね出来るの?」
亜衣が司郎に聞く。
「ああ、あの遺跡は大地の龍脈を吸い取って稼働する。だったら俺の大国主の権能と布津御霊で龍脈を断ち切って遺跡の呪力を吸い取って完全に封印する」
「・・・・・出来るの?」
司郎の軽い言葉にウィンが思わず聞いてしまう。レポートを見ていてもそれを目で見てないからこそ司郎の実力を見極め切れていなかった。
「出来る。俺の大国主の権能。ああっとなんだったっけ。・・・
「―――――」
司郎の権能のスケールのデカさに困惑するウィン。
「ふっ、心配するなよウィン。あの頃は違う。俺に全部任せろよ」
笑いながら司郎はバスを降りる。
「―――――ホント2年ぶりだな」
遺跡の道のりを歩く司郎一行。
「一応アメリカから来たものが元凶だから向こうの著名な教授を招いたんだけど余計だったかな」
「―――――さぁな。問題ないんじゃないか」
アメリカの王が来ている理由を理解した司郎。スミスはめんどくさいカンピオーネであるが必要以上に関わらなければ言動が変わっているだけでカンピオーネではかなりの良識人だから問題ないと司郎は思った。
そうして、件の遺跡に到着した司郎一行・・・・・だが。
「―――――え?」
ウィンの目には遺跡を調べていた白枝騎士団の団員が皆倒れていた。
「どっ・・・どうしたの皆!!」
遺跡の前で倒れている団員に声をかけるウィン。
「ッ!お前ら俺の周りに集―――――」
此処にいる者たち全員を眠らせた者たちがすぐ近くにいると考えた司郎はウィンの傍に近寄り早苗達をこちらに来させようとする。
「―――――さぁ、再び開くがいい妖精郷の扉よ!!」
だが遅い。声のする方向に司郎は振り向く。そして目の先にいる紫の髪の少女に気づく。
「糞っ!!」
この事件の主犯格が誰か察した司郎は古き神王の秘術を使い倒れている団員達を可能な限り遠くへ飛ばそうとする。
そして、司郎とウィンは再びあの世界にやって来てしまった。
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