「――――――シロウ!!」
ゲイ・ボルグに刺され空から落ちていく司郎にウィンは叫ぶ。
高所から受け身も取れないままに叩きつけられた司郎は頑丈なカンピオーネだからか常人なら死は免れないようなダメージが体に現れなかった。
「あ、・・・ああ、シロウ・・・シロウッ!」
だが、司郎の体には魔槍が突き刺さり見るからに手遅れだとウィンは理解した。
「ちょいとあっけなかったな」
「ッ!?」
司郎の体に突き刺さったゲイ・ボルグを引き抜きクー・フーリンは寂しげに言い放った。
「―――――お前!」
ボウガンを呼び出しウィンが習得する中で最も強い戦闘魔術をヤドリギの矢にこめようとする。
「ほう、やるか。いいぞ挑むなら戦士として殺してやろう」
ウィンに殺意をぶつけながらクルージーンを引き抜くクー・フーリン。
「―――――ッ・・・な、舐めないで・・・」
並外れたその殺意にウィンは足がすくみそうになるが必死に勇気を振り絞りながら矢をボウガンに装填しようとした・・・・・が。
「えっ!?」
巨大な呪力の流れを感じたウィンは呪力の先、魔槍に刺されて死んだ司郎の遺体が発火して燃えていた。
「なっ、・・・何で!?」
困惑するウィンの疑問に答えたのは意外な人だった。
「―――――なるほどな、復活の権能か」
そう言いクー・フーリンは司郎の発火現象の意図を理解した。
「・・・・・復活」
そう言われてウィンも落ち着く。高橋司郎は生きている。まだ彼は完全に死んでいないのだ!不死鳥のように炎の中から蘇るのだ!!
「止めを刺しても良いが・・・・・止めだ。そもそもコイツの喧嘩に横やりを入れたのは俺だ貸しとして返してやるよ」
クルージーンを仕舞ってクー・フーリンは立ち去ろうとする。
「おい嬢ちゃん、そいつが起きたら伝えろ。・・・もう一戦やろうとな」
クー・フーリンは虚空に古代文字・・・否オガム文字を描きウィンに向けて飛ばした。
「―――――これは?」
オガム文字がウィンの体にぶつかり消える。するとウィンの体は少しだけ温かくなっていた。
「ちょっとしたゲッシュだ。俺に対してあそこまで食い下がろうとする根性は気に入った伝言役としてちょっとした代金だ。ちゃんと伝えろよちょっとしたものでもゲッシュなんでな忘れたらただじゃ済まないぞ」
「―――――忘れないよ」
司郎を見ながらウィンは誓う。
「ハハッ、そりゃよかった。じゃあな嬢ちゃんそいつ次第ではまた会おうぜ」
そう言ってクー・フーリンは戦車を呼び出し空へと去って行った。
「―――くっ、・・・何とか間に合ったってことで良いんだよなパンドラ」
真っ白い空間の中で司郎は神殺し達の母パンドラに再開する。
「も~~相変わらずシロウは他人行儀!名前じゃなくてママって呼んでも良いのよ?」
「・・・・・いや、これ以上母親は要らない」
「・・・・・そう、そろそろシロウも起きるだろうし最後に一つあの遺跡を早く何とかした方がいいわ。あの遺跡は私達のいる場所と現世を繋ぐ橋ましてやこの時期○○○○〇〇様だけじゃあーーーーー」
最後の名前らしき言葉が聞こえないまま司郎は夢の世界から目を覚ます。
「―――――うっ・・・か、体が痛い・・・・・」
ゆらゆらと消えゆく炎の中から司郎は新しい服を取り寄せる。
「・・・・・シロウ?」
声がする方向に司郎が振り向くとウィンが涙目でそちらに向いていた。
「・・・・・わりぃ、心配かけたな」
あっけらかんとした態度を見せる司郎だが。
「良かった・・・良かったぁっ・・・」
ウィンは司郎に抱きつく。
「あ、・・・ああ、そ、そうだな・・・言ってはいないな・・・お前には・・・」
柔らかい少女の体に未だに童貞な司郎はドキドキしてしまう。
「ごめん。・・・でも、僕、シロウが・・・シロウが死んだって思っていたからクー・フーリンが復活の権能を使ったって言ってなかったら・・・」
「・・・・・悪いな俺には二つの蘇生手段があるその一つがケツァルコアトルから簒奪した権能の能力の一つなんだ自分の体を犠牲にして新しい体を作り上げる能力なんだ出来れば他の人には話さないでくれ」
「・・・・・分かった白枝騎士団大騎士ウィン・マクガヴァンは君が望む相手だけにこのことを伝えます・・・・・それとまつろわぬクー・フーリンから伝言が―――――『もう一戦やろう』と」
「・・・・・そうか、なら。アイツの元に」
まつろわぬクー・フーリンの伝言の意味を理解しそう言いながら司郎は移動しようとした。
「―――――済まないが待ってもらわないか?」
カツンカツンと靴を鳴らす音がして司郎質の前にジョン・プルート・スミスが現れた。
「・・・・・確かアンタはアメリカの」
「そうだ。実は私の知り合いが厄介なものを見つけてしまってね。話すよりも見た方が早いついてきてはくれないか?」
そう言いスミスは司郎達を誘う。
「どうする?」
「ついて行くスミスなら問題ないだろう」
ついて行こうとする司郎。
「・・・・・ほう、これでも客観視は出来るつもりだこんな変人にあっさりとついて行こうとするのは感心しないがね」
そうスミスは言う。
「・・・・・これは個人的な勘だが俺達の中で一番信用できるのはアンタだ。・・・一つ聞きたい。ここに来る間に三人の少女を見てないか?二人は黒髪と茶髪の日本人でもう一人は金髪のフィンランド人なんだがアンタの知り合いと一緒に居たんだが・・・」
スミスにアリサ達の事を尋ねる。司郎は知っているスミス=アニーだと言う事をだとすれば直前に会っているはずだと。
「見たともわが友と共に恐るべき魔女アーシェラを相手に奮闘していた奴は私が追い払った安全は保障しよう」
「・・・・・そうかなら良いんだ感謝するよスミス」
「ふふ、礼を言うのはこちらの方さ良い女性達と巡り会っているようで少し嫉妬してしまうな」
「・・・・・」
その言葉に若干ウィンは何とも言えない表情を見せた。
「―――――来たか」
高い丘に司郎達を連れて来たスミスを迎える人影が一人。
「・・・・・アンタは」
顔を見れば嫌でも察せるイギリスのカンピオーネ。
「アレクサンドル・ガスコイン!!」
その顔を見たウィンは思わず嫌な顔を見せる。
「アレクでいい。書くのも読むのも面倒な名で呼ぶよりも良いだろう」
「・・・・・シロウ言いたくないけど離れよう。コイツと関わるとこの辺りの魔術結社からは白い目で見られるよ」
「・・・・・アンタ会って間もないけどどれだけアイルランドの魔術師に嫌われているんだよ」
原作でアレクと関わるのは同類のスミスや護堂、恋愛は戦なラブコメやっているアリスぐらいだ。一般魔術結社からすればアレクサンドル・ガスコインがどれだけ嫌われ恨まれているのかが良く分かった。
「恨まれる事は俺達ではよくある事だ気にするな」
「否定がしないがアンタよりも嫌われるとは思わないが!」
(どいつもこいつも会うたびに俺がツッコミ役になるんだが大丈夫!?護堂はまだ戦闘じゃなければ良いカンピオーネ一のヤベー奴と言われたアイーシャ夫人と会ったら俺どうなる!?)
困惑する司郎を相手にスミスが話を進めようとする。
「それはさておきだ。見たまえ二人ともあの軍勢を」
その手の先に強化魔術で強化した目で見る司郎とウィン。
「―――――嘘こ、こんな事って」
嘗て司郎とウィンが辿り着いた遺跡の中央部境界を閉じる門の制御装置に大量の悪霊が渦巻いていた。
「―――――不味いな。これが外に漏れだしたら大変な事になるぞ」
とてもじゃないが人が相手をするような数じゃない事に司郎は呆れる。亡霊の軍勢は後方から幾らでも現れる。
「それだけじゃないこれを見ろ」
そう言いアレクは携帯にある写真を見せる。
「―――――これは」
「鹿の角を持つ神・・・・・ケルヌンノス」
「そうだ。奴がこのワイルドハントの総大将なのだろうあれを撃破するか再び閉じないとどうなるか分かるはずだ」
「少なくとも人間社会に重大な損害が起きるだろう。だが、問題はまつろわぬケルヌンノスだけではない。私やアレクを追ってきたまつろわぬ神がいた」
「・・・・・クー・フーリンか。それは俺が相手をする奴には借りがある」
「ほう、既にあれと接触・・・いや、戦闘したな。良いだろうあの英雄神はお前が相手をしろ」
「・・・・・いいさ。やってやるよどの道こんな真似をしてくれたのはあのかませ神祖だからなアンタに当たってもしょうがない」
「決まりのようだな・・・では我々はまつろわぬケルヌンノスとその配下のワイルドハントを」
「俺はまつろわぬクー・フーリンを相手にするちゃんとなんとかしてくれよ先輩方」
「もちろんだとも安心してくれ君が主役を譲ったんだしっかりと私が演じきろうじゃないか」
「おいまて、それは―――」
その提案に意を唱えようとするアレクを尻目に司郎とウィンはまつろわぬクー・フーリンを相手にするために別の場所へと移動した。
「・・・・・どうしたんだよ嫌な顔をして」
禁厭を持ってまつろわぬクー・フーリンの居場所を調べていた司郎をウィンは見ていた。
「ちょっとね・・・・・君は僕に・・・どうして欲しい?」
「・・・・・ああ、なるほどね。分かっているよついて行くか来ないか」
「・・・・・うん。正直あの化け物相手に正直怖い。命がけの仕事なんて良くあるのにそれでも今回ばかりは怖くて足の震えが止まらない。・・・・・でも、このままでは大量の悪霊が現世に解き放たれてしまう。それは白枝騎士団として見過ごせない」
「それならお前は外に行って皆にこれを伝えに行く選択肢もある。俺達が負ける事は別に不思議じゃないましてやあの百鬼夜行は少なくても外に漏れた時の対策できる余裕を作る役割は大事だよ」
「そうかもしれない。・・・それでも、僕は今回だけは何故か・・・その選択肢がとれない」
「何でだ?」
「―――――君を置いてけない。ゲイ・ボルグで貫かれて大分消耗しているはずだ」
「・・・・・そうだな。だが、アイツらが無事なら短い間で呪力の当てを用意する事が出来る・・・おっ」
移動している二人の前にまつろわぬメイブが残した軍勢の防具が置いてあった。
「これ、残ったんだ。あの後ずっと準備していたのかな」
「有り得なくは無いなアイツらは神だ。どれだけ長い時間経とうと平気でいること自体は不思議じゃない時間間隔が違うんだろうさ。
甲冑に剣、槍・・・そして。
「チャリオットと軍馬か魔獣のようだが禁厭をかければ操れるか」
軍馬に動物を操る禁厭をかけて操る。
「・・・・・御者必要?」
思わず司郎に問うウィン。
「・・・・・さぁな、だが。アイツは乗って来る。俺はそう思っている」
「・・・・・シロウ。君の戦いをサポートしたいって言ったら迷惑?」
ウィンは手を司郎の腰に当てる。
「・・・・・ウィン。それで良いのか?」
ウィンの顎に手を当ててクィッと上げる。
「うん、・・・こう、言うのは・・・その・・・恥ずかしいけど・・・あの日・・・君に助けられたあの日。君に夢中なんだ。だから―――ンッ」
うだうだ言っているウィンの口を口で塞いでやる。
「ありがとうなこんな俺なんかを好きでいてくれて。・・・だから俺はその思いに答えるのが男の仕事だ。だからお前に俺が隣に立てる力を俺が与える」
ウィンの口の中に舌を入れて舌と舌を絡ませてウィンの中に大国主の禁厭を流し込んでいく。
「・・・・・シロウ・・・君刺されるよ・・・他の神殺しは侍らせたりするような人はいないのに」
「いや、今世はそうだけど昔の神殺しはそう言った連中がいただろうし前時代な奴が居ても良いじゃないか」
「あ、はは。そうだね、むしろ組織としてはそっちの方がいいからね」
ウィンの体に禁厭が順応していくそうする事でウィンの魔術を大きく強化する。
「―――この戦い勝つぞウィン俺とお前で」
「―――――うん。勝とうシロウ二人で」
異界の空の下で二人の男女の舌が絡み合う。次の戦いに勝つための儀式が今終わろうとしていた。
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