「――――――おっ、来たな坊主元気そうで何よりだ」
異界に構成された森林地帯。木が幾つも生え枝に雑草が生い茂るその地にまつろわぬクー・フーリンはチャリオットに乗ってやって来た司郎に軽く声をかけた。
「ようリベンジしに来たぜクー・フーリン」
「そうか。それは何よりだ。嬢ちゃんも混ざるんだな?」
クー・フーリンはチャリオットの御者をしていたウィンに声をかける。
「そうだよ。女が戦場に出ちゃったらいけないクー・フーリン?」
恐怖を勇気で飲み込んだその目をクー・フーリンはしっかりと見る。
「良い目だ。その目は恐怖を飲み込んだ戦士の目だ。・・・そう言えばお前らの名前を聞いていなかったなせっかくだ。結末はどうにせよ戦士として名を聞かないのは礼儀が無い。俺達の宿敵神殺しよ勇気あるドルイダスよ。汝名は?」
そうクー・フーリンは二人に名前を訪ねて来る。
「―――――司郎。高橋司郎だ」
「―――――ウィン。ウィン・マクガヴァン。白枝騎士団の大騎士にして偉大なるドルイダスだ!」
名乗り上げる司郎とウィン片方は短く。もう一人は堂々と昔ながらの騎士のように名乗り上げる。
「シロウにウィンね。良いだろう偉大なる太陽神ルーグとコンホヴァル王の妹デヒティネの子クー・フーリンの名に置いて戦場に立つお前達を今一度戦士として認めよう。・・・さぁ、立派な戦車にも乗っているようだし。いっちょ騎馬戦と行こうじゃないか!!」
クー・フーリンは戦車を呼び出し乗り込む。
「行くぞロイグ!!相手をするに相応しい相手だ楽しい戦いにしゃれ込もうぜ!!」
そう言うとチャリオットの御者ロイグはチャリオットを走り出した。
「俺達も行くぞウィン!!・・・我が禁厭は全ての秘術を高める言葉なり!!」
「うん、行くよシロウ!!豊穣にして馬たちの女神であるエポナよ!我らの馬に汝の加護を!!」
ウィンの口から動物強化の呪文が唱えられ二頭の馬は大きく叫びチャリオットを鳴らす。
「しっかり捕まっていてねシロウ!!」
「応!運転頼むぞ相棒」
ガラガラガラ!!まるで地を這う雷のような音を鳴り響かせ異界の森にて人と神殺し、そしてまつろわぬ神の戦車戦が始まった。
「―――――さぁて、どう料理しようかね…」
蹄と車輪が大地に轍を作らせながらクー・フーリンは思考を巡らせる。
「・・・・・アイツはさっきの戦いで俺のゲイ・ボルグを喰らった回復殺しの呪いを前にただの蛇の再生の権能では死ぬ。それなのにゲイ・ボルグを受けて死ななかった。詰まる所アイツが蘇生に使った権能はただの蛇じゃない。死と再生の逸話を持ち前の体を捨てて新しい体を構築し魂を入れる権能を持っているはずだ。体力がどれだけ残っているのかね・・・」
そう司郎の呪力の総量を考察していたら。
「おっと」
強力な雷撃の権能が飛んできたのでチャリオットを操作し意図も簡単に避けてしまう。
「・・・・・なるほどな。遠慮はするなか。全く病み上がりのくせに」
クスリとクー・フーリンは笑った。
「・・・・・決まった?」
一方チャリオットを走らせるウィンは布津御霊で雷を発射した司郎に思わず問う。
「・・・・・決まるわけないだろう。あれでさえ俺達の戦いはジャブでしかない」
「ぇぇ・・・普通の術師なら神具を扱っても出せるか分からないのに」
それに困惑するウィンに司郎はクスリと笑う。
「そいつが俺達の戦いってわけだ。・・・来るぞ!速度を緩めろ!!」
司郎の指示を聞いてウィンは馬達を操りブレーキをかける。その直後一筋の光が横切り幾つもの木々をなぎ倒す。
「・・・・・うそ。ただの石!?」
魔術で光の正体を確認したウィンはそれが投擲された石ころだと理解した。それと同時に驚愕した呪力を宿していたのだろうがだからとしてそんな威力を持つのだろうかと。
「良い操縦だ嬢ちゃん。今ので馬を落とすつもりだったが少なくとも俺と騎馬戦をするだけの技量があるってことだ!!」
続けてクー・フーリンは投石器に石を詰めて投げる。呪力を帯びた石は魔弾となり司郎達を狙う。
「ッ!!」
どれだけ呪力を魔術を馬に注ぎ込んで操ってもその魔弾は正確に二人を射抜かんと迫る。
「シッ!」
司郎は神剣を振るいその魔弾を切り裂く。切り裂かれた魔弾はただの石ころとして地面に落ちていく。
「戦車の上での剣の腕も上場。・・・それじゃあ、先ずは一太刀と行こうか!!」
クー・フーリンはクルージーンを引き抜き司郎達に近づく。
「ウィン!手綱を離すな集中しろ俺が守る。走らせるだけに集中するんだ!!」
「う、うん!」
迫るクー・フーリンのチャリオットに恐怖するウィンを司郎は発破をかける。その発破が染み渡りウィンは握る手綱を強く握る。
「おりやぁ!!」
「―――――セイッ!」
飛び移るクー・フーリンの剣を前に司郎も神剣を振るい対応する。
短いチャリオット同士の足場を上手く工夫しながら宝剣と神剣をぶつけ合い火花とその音が鳴り響く。
「そこだ!」
「ちっ、そこ返すよ!」
一合、二合、三合。神殺しと英雄神が剣と剣で打ち合うオーケストラ。重なる度に火花と鉄がぶつかる音が響く。
クー・フーリンが宝剣で突きを放てば司郎はそれを神剣で受け流しながら距離を詰めてその胴体に一撃を打ち込もうとする。それに対処するために体をひねらせ斬撃は虚空を切る。
「よっと」
流石にやり過ぎたと思いクー・フーリンは自分のチャリオットに戻る。
「お返しだ喰らっておけ!!」
呪力をひねり出し布津御霊から特大の雷撃がクー・フーリンに迫る。
「チィッ!?」
防御魔法を使ったのだろうか常人であれば黒炭となしているだろうにかすり傷で済ませている。
「それでこそだ。それでこそ、俺達の宿敵だ神殺し!!」
まるで獲物を見つけた狼の如き鋭い顔に恐ろしく濃厚な殺意にウィンは鳥肌が立った。
(―――――離さない。この手綱だけは!)
それでもウィンは戦うのを諦めない彼女を駆り立てるのは司郎への敬愛と戦士としての誇り。焦がれた少年への憧れと共に戦場に立てているならば、白枝騎士団の大騎士として預かられたこの手綱は決して離さない―――。
(―――さぁて、いっちょ仕込みをしますか)
ゲイ・ボルグを刺され瀕死の中ケツァルコアトルの再構築の分けられた権能『金星の鳥』とでも言うのかを発動させていた最中ぼんやりと浮かんだ四つの風とその真ん中に太陽のイメージを神殺しの直観を元に発動条件を整えるための準備をする。
「死よ腐れ、次の命を育むための苗床となれ」
司郎の手に現れる古語がばら撒かれ空を舞う。
「―――――へっ、熱くさせてくれるじゃないか」
魔術で司郎達を探索していたクー・フーリンは司郎から飛んでくる攻撃に対処していた。
司郎が放ったのだろうか斬撃が空を舞い。司郎とクー・フーリンが走らせるチャリオットの間にある木々が倒されそれらは一同にクー・フーリンの馬車に迫る。
「ロイグ!戦車を倒すんじゃねぇぞ!!」
呪力を注ぎ込みチャリオットの御者であるロイグの能力を上げ迫りくる倒木を躱していき飛んでくる斬撃を同じくクルージーンの斬撃で相殺する。
「ハハッ、熱くさせてくれたんだお返しだ。ちゃんと生き延びろよ!!」
投石器に弾丸を込めて魔術で特定した移動している司郎達に向けて魔弾が放たれる。
「―――――ッ来るぞ!!」
「う、うん!!」
チャリオットを走らせている司郎達に剛速球で飛んでくる魔弾。一度避けられたからと言って油断は出来ない。槍や剣の逸話が多いだけで元より古代ケルトに置いて投石器は一般的な武器ましてや逸話ではクー・フーリンの父は魔眼の神であるバロールをタスラムと呼ばれる投石器で撃ち殺している。当然クー・フーリンとてその狙撃術は一流である。
「―――――ッ・・・お願い・・・」
馬達を迫りくる魔弾の恐怖をなだめながら自分もまた迫る死の恐怖を勇気で抑え込んで技術、魔術自分のすべてを使い迫りくる魔弾を避けようとするウィン。
「―――――ほう。うまいじゃないか嬢ちゃん。その年で俺の投擲を避けるとは大した腕だ。誉めてやる」
次々と放たれる魔弾を必死に躱していっていくウィンを魔術で見ていたクー・フーリンは素直に誉めていた。
「・・・・・だが、今度のはそこらの連中が投げるようなものと一緒にするなよ。・・・もっとも、この程度で死んだら魂をとっ捕まえてあそこにいる亡霊共の餌にしてやりたくなるからな」
クー・フーリンの父太陽神ルーグは別名サウィルダーナハ日本語にして百芸に通じた。その名のとうり魔術、武術、工芸、医術、古史などなど多芸に通じかのカエサルが書いたガリア戦記に置いてヘルメスと同一視される水星の神メルクリウスと同一視される神とされる。
そして、その子であるクー・フーリンもまた幾つもの武術と魔術を習得していた。これはそのほんの一つ回避した魔弾は跳弾し再度司郎達を襲う。
「うそ!跳弾するなんて!?」
跳弾する魔弾にウィンは絶句する。異界とはいえただの樹木の耐久力など大したものじゃないはずだ。それなのに木々に当たって落ちる。勢いが残って埋め込まれるとかではなく。発射されたその勢いのまま司郎達が乗るチャリオットに迫って来るのだ。
「それだけじゃないな。あらかじめ跳弾を前提にして到達するように計算を入れて死角から狙う一撃が幾つも来ている」
木々を弾きながら司郎達に迫る死の魔弾その数約50あらゆる場所に投擲し跳弾して司郎達を打ち抜こうとする。
「ど、どうしようシロウ!!」
「―――――対処するさ。風よ嵐となれ!!」
一度に全方位で迫る死の弾丸を相手に嵐の禁厭で嵐の防壁を張り対処する。
ギリリリリィィィィ!!!暴風と魔弾という材質のはずなのに明らかに鉄を切断するよなおかしな音が鳴り響く。
「そらよっと!!」
更に呪力を防壁に注ぎ込んで一気に周囲を吹き飛ばす!!!
「よし、魔弾は対処した!!」
嬉しそうに笑うウィン。強烈な呪力が籠った魔弾が四方から飛んで来て恐怖していたウィンからすればそれを対処できたことは素直に喜ぶべきなのだろう。
「―――――いいやこれからさ」
御者の先端にある馬達の連結を切り馬達を自由にさせて禁厭でチャリオットを動かす司郎。
「ちょっ、何を言っているの!?ってか戦車が!?」
困惑するウィンだが直後に莫大な呪力を感じ取ってその方向に振り向く。
「―――――残念だったな楽しかったが遊びは幕引きだ」
クー・フーリンはウィン達を追い越し莫大な呪力を宝剣に込めながらウィン達が乗っているチャリオットに突撃してきた。
「―――――そういう事さ。ウィン!着地は任せるぞ!!」
「―――――分かった!!」
司郎の指示を聞いて杖とヤドリギを持ちながらウィンはその時を待つ。
「―――――真っ向勝負だ」
布津御霊を蜻蛉の構えを取り神剣に呪力を注ぎ込む。
「―――――輝けクルージーン!!夜の闇を照らす輝く光となれ!!!」
「―――――鳴り響け布津御霊!!天津の神威をもって敵を撃て!!!」
―――――2つの輝きがぶつかり異界を照らす。
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