カンピオーネ! 縁結びの魔王   作:黑米田んぼ

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かれこれもう60話結構いったな~って思うようになりました。
昨日からまほよコラボが始まりましたね。旧メルプラから入った人間からすればやっぱ魔法を出すと興奮するよ。


60話

「―――はぁ・・・はぁ・・・」

 視点変わってアリサと僧兵の戦い。高度な魔術と薙刀術にアリサもまた苦戦していた。実力が拮抗している者同士の攻防にアリサの体力はゆっくりと削れ息は荒れていた。

「こぉぉぉっ―――」

 僧兵と思わしき格好の刺客は深い深呼吸を取りながら体力を回復しているのだろうが実力の拮抗した激戦の証拠としてかその顔には汗が流れていた。

 

(・・・随分と厄介な防御魔術。霊視はまだ降りていないけどサナエが普段使っているようなものとは思えない恐らく別の技術。それが一体どのようなやり口で私の攻撃を防いでいるのかしら)

 これまで何度も何度もアリサは刺客の体に攻撃を当てて見せた。・・・しかし、どれだけ攻撃を叩き込んでもどれだけ急所を打ち付けても僧兵は気にせず薙刀をアリサを切りつけようと振るってきた。

 

「巨人の力をこの腕に!大いなる人達よ我らに力を!セィィッ!!」

 何度目かの攻防、手斧を放り投げ相手に迎撃させて隙を作ろうとしたアリサだったが・・・。

 

「うぉぉぉぉぉぉっっ!?」

 怪力の魔術をかけ素でも其処らの猛獣をねじ伏せる程の筋力で投げる手斧はシャレにならない殺傷力を持つはずだ。それなのに僧兵は手斧の刃が当たってもなお怯みもせず突っ込んで薙刀をアリサに振り下ろした。

 

「ッッ!!」

 槍で薙刀を防ぐがすぐさま薙刀を引き連続突きを放ってくる。当たればタダでは済まない死の刃を反射神経を魔術で強化し魔女としての直観とフルに使って連続突きを捌き切る。

 

(・・・やっぱり、『切れない』)

 どさりと落ちる手斧。当たった場所を見てみても僧兵の体には傷一つ突かない。これまでも何度もアリサが切りつけても僧兵の体には傷がつかないのだ。

(―――――このカラクリを解かないと負ける)

 この不死身の怪物をどう攻略すればよいのかアリサは思考を巡らせる。

 

(・・・ならば。先ずは条件を見つける)

 明らかに異常な防御力に明らかにおかしいと判断したアリサは防御の条件を改めて考察する。

 

(・・・この不滅のカラクリは一つずつ明らかにしてみましょう、そうすれば天啓を来るかもしれない。少なくとも単純な武具の性能とは思えない)

 不死身のカラクリは様々ある。例えば司郎の太陽の鎧、ドニの鋼の体、アレクの雷の体、アイーシャの幸運の加護、護堂の復活。様々な不死性の権能が存在するがそれらは皆神話に置ける逸話や神性に由来する力。この世界の魔術には宗教と歴史が密接にしておりこの異常な防御力も何かの由来に当たるのだろう。・・・当たり前だがそれにも限度、神と神殺しと力と比べたら気休め程度になるのだろうと理解しておいた方が良いだろう。

 

(『鋼』の英雄由来の逸話の再現。幻術による攻撃の回避・・・先ずはこの辺りから)

 アリサはゆっくりと深呼吸をし体力を回復しつつ目の前にいる敵対者の攻撃を待ち構える。

 

「・・・・・セイッ!」

 ドスン!と大地を踏みしめる音を響かせて僧兵は攻撃が効かない事を良い事に大きく振りかぶりアリサに向けて薙刀を振り下ろす。薙刀の一番の武器は長いリーチ巨漢の僧兵の腕を含めて更に攻撃範囲が広がるのだ。

 

「ッ!・・・」

 振り下ろし、薙ぎ払い、連続突き。あらゆる攻防をアリサは捌いていく。薙刀同様アリサの持つ槍もまたリーチが武器。長距離による武器術の打ち合いが再び始まる。

 

(・・・先ずは小手調べ!)

 耐えて耐えて、神経をすり減らしながら振り下ろされる上段を槍を回して弾き、反対側の柄を伸ばして僧兵の腹を打ち抜く。

 

「ッ!?・・・」

 一瞬だが顔を覆っていた布の奥から見える目が動き聞いている事にアリサは気づいた。

 

「・・・どうやら、斬撃は効かない打撃は効くようね」

 槍を構えながらアリサは僧兵に問う。

「今、霊視を通して見えたわ。巨大な仏。聖人の逸話を由来とするものかと思ったけど高度な魔術礼装を体に仕込んでいるのでしょう?」

 霊視に見えた巨大な仏を通してこの防御力の名と由来を一通り理解したアリサ。それに対して僧兵は一瞬悩んで。

 

「良く分かったな。これは十一面観自在菩薩心密言念誦儀軌経の内容を書いた経典を衣服に仕込んでいる。生半可な斬撃は効かない」

 

―――――この僧兵は少し嘘をついている。

 11面観音菩薩とは観音菩薩の変化身であり頭部に11の顔を持つ菩薩である。その経典の内容には十一面観音菩薩の十種勝利と呼ばれる現世への利益がある。離諸疾病、一切如來攝受、任運獲得金銀財寶諸穀麥等、一切怨敵不能沮壞、國王王子在於王宮先言慰問、不被毒藥蠱毒。寒熱等病皆不著身、一切刀杖所不能害、水不能溺、火不能燒、不非命中夭。この内経典には火炎無効、斬撃無効、毒、病を無効にする効力を持っていた。

 

「・・・・・そう。(だとすれば相手は最低でも斬撃の通りが悪い・・・だとしたら)」

 槍を構え直し勝負をつけようとゆっくりと距離を詰めるアリサ。

 

(・・・ブラフかも知れん)

 僧兵もまたアリサの相手の行動を予想しながら薙刀を構え思考を巡らせる。

(奴にとって一番はあの槍による遠心力を使った打撃。頭部に当たれば当然タダでは済まない。それだけではない斬撃が効かないだけで他の攻撃は効かないわけではない。北欧と言えば火、雷ぐらいか火は問題無い。だが、雷はシャレにならない。そうなれば新たに雷除けの術を使う。斧を呼び戻して刃の無い方で殴るも有りだ。―――――属性を使った突き。頭部へ振るう振り下ろし次に体感を崩すために腹部に攻撃。それらをブラフにして斧で攻撃するを考慮・・・準備は出来た。―――選択はコチラでさせてもらう)

 

―――――動く。先手は僧侶、大振りの薙刀がアリサを襲う。

 

「ッ!」

 攻撃を槍で受け止めすぐさま次の攻撃に移る前に右へと流す。

「白鳥の翼よ!」

 槍を放棄しすぐさま飛翔術で上空に移動し真下から呼び寄せた斧を振るう。

 

「―――――笑止!」

 即座に斧を拳で受け止める。空中で白刃取りをされたアリサと僧兵の力比べに移る。

(―――――終わりだ。拙僧もまた怪力魔術は得意。このまま首を掴んで閉め落とす)

 お互い怪力の魔術を極めているのであれば残っているのは力差のハッキリする男女と20CM差の体格差とそして踏ん張りの利かない空ではどうあがいてもアリサには勝つ方法が存在しないだろう。

 

「―――――ええ、殿方に力比べなんか淑女がするものじゃありませんので」

―――忘れていないだろうアリサ・アウッテオは北欧のバイキングの血を引く魔女である。

 

「雪の女王たるスカジの吐息を知るがいい!哀れな獲物よ、影の地に落ちるがいい!!」

 アリサの手から白い煙が現れ手斧を持つ手を離し僧兵の生身の部分に向けて手を差し込む。

 

「―――――冷たい」

 その言葉だけを残して僧兵は低体温症で膝を付き。

 

「さようなら、とても勉強になりましたわ」

 冷却の魔術から怪力の魔術に切り替え通常の成人男性の何倍もの筋力を手に入れた剛腕で斧の峰を僧兵の首筋に撃ち込んだ。

 

 

 

 

「・・・これで終わったね楽しかった時間ってのは直ぐに終わっちゃう」

 所変わってウィンのマンションの出口近く。ウィンは刺客である弓使いに射抜かれ血を流し倒れている。

 

「使い魔たちは皆逃げちゃったね可哀そうだけどそこはしょうがないよね」

 巨大な大弓を担いでやって来た小柄な少年。これがウィンと戦っていた弓使いの刺客であった。

 

「一応死体を件の神殺しに見せつけるから持って行かないといけないんだよな面倒」

 そう言って弓使いは打ち刀を呼び出す。

 

「まぁ、首さえあれば良いでしょ」

 そう言って弓使いはウィンの首に打ち刀を振り下ろそうとした――――――瞬間。

 

 

「―――――相手に勝った瞬間が一番油断する。僕も良く狩った獣を焦ってその場で解体しているところを他の獣に襲われかけた事があったから分からないわけじゃないけどね」

「!!!?」

 その声を聴いて大急ぎで振り返るが既に振り払ったオークで作られた杖で打ち刀を弾き飛ばされる。

 

「―――――身代わりか!?」

 距離を取りながら傍に突っ伏していたウィンの遺体を見るとそこには五本のヤドリギと羊の人形へと変わっていた。

 

「そうだよ。いわゆるスケープゴートの応用って奴」

 大弓を使わせないために独特なステップを踏みながら距離を詰めて再び杖を振り下ろす。

 

「!?」

 杖の一撃で防いできた大弓を叩き落しそのまま遠心力を活かした薙ぎ払いで弓使いを吹き飛ばす。

 

(―――――不味い逃げないと)

 戦う手段を殆ど奪われたからこそ冷静になるために必死で逃げようと身代わりを使おうとした―――――瞬間。

 

「ガウガウ!!」

 影に隠れていた猟犬達が弓使いを抑え込んだ。例え魔術師であっても使い魔による魔術を使って通常の何倍のパワーを持っている大型猟犬に抑え込まれては術師でも逃げられない。

 

「―――――これでWINだ!」

 そう言ってウィンは大きく振りかぶった一撃をお見舞いし弓使いの刺客を打ちのめした。

 

 

 

 

「―――――はい。もしもし。早苗どうした?」

 時間が巻き戻り反乱を知った早苗は大急ぎで司郎に電話をかけたのだ。

『司郎さん急いで皆さんの元に駆けつけて下さい!京都の委員会の過激派が司郎さん達を襲撃しようとしています!皆さんが危険なんです早く!!』

 電話の先で響く困惑する司郎の声を聴きながら必死に動くように声をかけ続ける。電話をかける途中で見えてしまったのだ。

 

 

 

 

 

―――――鮮血とそれによって全てを燃やす業火を宿した司郎の姿を

 




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