―――一体何時になったら終わるのだろうか。突然現れた暴漢・・・否、司郎を殺すために放たれた刺客に襲われ戦いその体力は大きく減っていた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
強化の術を纏った竹刀を握った亜衣の顔は汗でびっしょりであり大事な学校の制服には所々に切り込まれていた。
「・・・随分と弱いな、所詮男に愛されていただけの女やな」
刀を持った軽装の男は亜衣をあざ笑った。
「ッ!」
元より清水亜衣は生まれた頃から魔術師として育つために育った他の者達とは異なり元はただの一般人だった。剣技こそ至っていても魔術に関しては未だ。始・破・離の破の始まり程度。アリサやウィンのような魔術格闘を極めておらず。二人のような実力者となるためには司郎の加護が必要なのだ。
司郎の加護は刺客が使った異界化によって封じられ、味方はおらず孤立無援、得物は実物とは違って余りにも頼りない竹刀。誰がどう見ても絶体絶命だった。
(耐えないと。耐えたら皆が駆けつけてくる。信じるんだこれまでの頑張りを此処で示すんだ)
それでも亜衣はめげず、竹刀を構え抗う力を示す。
「・・・あほやな。そんなやせ我慢」
刺客が亜衣に迫る。常人の何倍もの速度で距離を詰め刀で亜衣を切り裂こうと振り下ろす!
「ハッ!」
耐久力を考慮すれば真剣と竹刀では直ぐに壊れるのは誰も分かるだろう。・・・だからこそ亜衣は正しく剣道で対処する。
振り下ろされる真剣の一線を竹刀の腹で滑らせそのまま力一杯横へ振り、振り下ろされる引力を利用して体感を崩して即座に距離をとる亜衣。
「・・・随分と防御は上手いやん。顔だけじゃないんやな。・・・けれど」
刺客は札を取り出す。ある札は刺客の刀に触れ火を付与させある札は燃やそう亜衣にめがけて飛翔する。
「ッ!」
手札はほとんど無い。魔術の札など亜衣には作れず僅かにカバンに入れていた物は直ぐに使い切った。しかしここで死ぬわけにはいかない。飛翔する札を一振り、二振り、三振り。次々と竹刀で叩き落すが。
「所詮、素人のガキやな」
刺客が放つ横一線が亜衣の脇腹を切り裂いた―――――
「アアアアぁぁぁぁっぅ!!」
声にならない少女が出してはいけない声が異界に響く。
「痛い。・・・痛い・・・っ」
脇腹から流れる赤い液体。火を付属した刀出来られたからかジュワと肉が焼けるような音が一瞬聞こえた。
「ぅっ・・・ぅぅっ・・・」
防ぎきれない斬撃によって制服にはあちこち切られた跡がありその切り跡からは黒い染みが幾つもあり体も切られたのは言わずも無いだろう。そんな今の自分に亜衣は悲しさを覚え目には涙を流していた。
「ハッ、可哀そうやな―――無様でええなッ!」
刺客が飛び蹴りをしてくる。防御するがボロボロになっていた亜衣の体はあっさりと吹き飛ばされる。
「はぁ・・・はぁ・・はぁ・・・」
大粒の水滴が降り注ぐ大雨の街を司郎は飛翔しながら縁を辿っていた。
「亜衣無事でいてくれよ」
早苗によって一部の人間が自分を倒したいと反乱を起こしているらしい。その上自分と繋がりのある亜衣達もターゲットになっていると知ってはシャレにならないことこの上ない。
「・・・・・一体どうなっていやがるんだよ!?俺の加護を封じて異界化するとかあの糞爺ども何考えているんだよ!!」
道中でアリサとウィンから電話がかかり無事撃退した事を知らされ使われた結界の効果を知って明らかにレベルの違う相手。正史編纂委員会が黙る相手。司郎には心当たりがあった。
「・・・だが、明らかに前提が異なる一体あの爺さんたち以外にどの連中が背後にいるんだ!」
司郎の頭に思いつくのは大国主命に因縁のあるとある英雄神。確かにそれだけのことは出来るだろうが明かに出来る事がおかしい。司郎の権能の加護を封じる結界を複数作るなど明らかにおかしいそんな事をトリックスターでもあるあの英雄神とは思わない。
「頼む亜衣無事でいてくれよ」
そう言って司郎は全力でこれまで亜衣が帰路までの道を元に縁を辿って飛翔する。
「―――――所詮お前はあの化け物におんぶ抱っこの雑魚ってことだよ雑魚女!!」
「ッ!・・・わぁぁぁッッ!!」」
しかし、司郎の祈りは現実には反映されてはいなかった。今もなお亜衣は技量のさの前に打ちのめされていた。
「はぁ・・・はぁ・・・何で・・・何でこんなに酷いことが出来るの!?私たちは!司郎は!何もしていないじゃない!!」
ボロボロの中で亜衣は思わず刺客に大きな声で思いをぶつけた。清水亜衣からすれば高橋司郎がこれまでした事が悪とは思わない。やって来た神を倒し、死に向かっていた巫女たちを助けるために古き魔王と戦い。友人のために必死で大災害を食い止めた。確かにここ1、2年の司郎の周りに可愛い子がいっぱい現れるようになり皆が司郎に好意を抱いていた。だからと言って殺される言われは無いはずだ。そう亜衣は思っていた。
「知らんわ、お前らが気に食わないんだろうさ」
そう言われて脇腹を刀で刺された。
「っ・・・ぁ・・・し、司郎・・・」
脇腹から血が流れ治療も満足に出来る体力が亜衣に残っておらず絶体絶命の危機的状況に至っていた。
「終いやその絶望した首を神殺しに見せてやるよ」
そう言って刺客は上段に振り上げ―――――
「此処だ!」
結界の外側に辿り着いた司郎は結界の外郭に触れる。
「・・・・・・・・・・・亜衣」
心臓がドクドクと動く。何故そんな事になるのか分からなかった。けれどそこに転生して両親以外に一番付き合いの長い友人が恋人がいるのだ。
「―――――破ッ!」
大国主命の権能で結界を破壊する。普段ならもっと時間をかけるはずだったが気づけはあっさりと壊れた。
「!?」
結界が破壊された事に刺客は思わず動揺する。僅かに戸惑った太刀筋に亜衣は活路を見出し体を捻る。
「―――――――亜衣!!!」
―――――彼/私達は見てしまう。
―――――視界に広がる亀裂が現れ崩れる結界。
―――――亜衣の返り血で服が汚れた刺客とその刀。
―――――――何より。
「司郎・・・」
崩壊し崩れ落ちる結界の地面に落ちる亜衣。手を伸ばしても届かない。何故か使う事を忘れた権能。・・・そして全てが終わったその時。
―――――彼が彼女に誕生日で渡したリボンの一切れが司郎の前にひらりと落ちた。
「ぁ・・・ぁぁ・・・」
雨粒が彼を打つ。冷えていく体温はまるで彼の心のようだった。
「ぁぁっ・・・ぁぁ・・・ぅぁっ・・・」
分かってしまうのだ。理解したくないのに。してはいけないのに。
「ぅぅっ・・・ぁぁぁぁぁ」
だが、現実は否が応でも気づかないといけない。・・・何より。
「悪いな。アンタのカキタレ殺させてもらったわ」
「――――――――」
記憶が逆行する。
―――司郎!
―――――ねぇーねぇー司郎、一緒に剣道部やろうよ
―――――いいわよ、責任取りなさいよね司郎!
思い返す度に思いだす彼女との思い出――――――嗚呼、そうか・・・彼女は清水亜衣はもう、『この世』にいないのだ。
「亜衣―――――――――――――」
声にならない声が大雨の街に響く・・・そして灰色の道に昏い火が堕ちた。
この話は当初はもうちょっと大人しくする予定でした。・・・呪術に出会うまでは後書いている途中でイドが来たのも皮肉と言うか参考にしていました。果たして清水亜衣の運命は後はこの世界の日本の明日はいかに。お楽しみに。後私最近あにまんで聖杯戦争スレ立てています気が向いたら遊びに来てね。