「第三防衛網突破されました!まもなく神殺しがこちらに来ます!!」
司郎達の猛攻を平家派は止めることができず平家派の本陣となる本堂はまた鼻の先にあった。
「慌てるな!奴がくる前に儀式を完遂させて仕舞えば良い。それまでの辛抱だ」
まるで台風によって薙ぎ倒されるような激しい音が近づいてくる中首謀者たる虚鉄は威厳ある声で平家派の混乱を沈めて見せる。
「そ、そうだ。我々には切り札たるまつろわぬ茨木童子がある!かの鬼さえ呼べば勝機がある」
果たしてそれが神殺しと渡り合えるものなのか。いや、そもそも制御も出来るか怪しいそれに彼らの希望になっていた。
「ああ、そうだ。これで・・・やっと勝負になるヒヒッ、ふふふ、フヒッヒヒヒヒヒヒッ・・・おっと、いかんいかん」
・・・果たしてそれが彼等にとって希望となるか。
「――――――雷よ!」
「畜生!左の防波堤が破壊された!突っ込んでくるぞ!」
ただの魔術師による攻防戦であれば突破するにはそれ相応の時間を要するだろう防壁であっても平家派が戦っているのは司郎達カンピオーネ。彼ら相手では強固な砦でさえ障子の壁となる。故に司郎が空に手を伸ばせば雷が鳴り響きそこに込められた莫大な呪力は平家派の防波堤を安安と破壊した。
「突っ込め!!」
司郎が作り出した突破口に味方である若い術師たちが殺到する。司郎が彼らにかけた軍神の加護による強力なバフによって個々人の実力差がまちまちで術師集団としての質は平家派の方が上であるにもかかわらず彼らは次々と平家派の術師を打ち倒して見せた。
「もう直ぐ本陣だ!さっさと乗り込んで頭潰してこい司郎!!」
平家派の術師を倒しながら四季は司郎に言う。
「分かった。ここは任せたぞ。行くぞアリサウィン早苗!」
その言葉を聞いて司郎は3人を引き連れて本陣に続く橋へと走り出そうとする。
「――――――おっと、ここは通さないで神殺し」
橋の真ん中に立ち塞がる一人の男。覚えがある亜衣をキズモノにしたあの術師だ。
「――――――懲りないやつだ。ダルマにしてもまだ立ち上がる根性だけは認めてやるがな」
ダルマの意味に?を浮かべる外国人二人を尻目に司郎は心の底から呆れていた。
「はっ、女一人亡くなって呆けていた腰抜けのセリフとは思わへんな」
「・・・言うじゃないか御大層な大魔術を使って女一人も殺せなかったなまくら風情のくせに―――――」
司郎は虚空を見つめながら呪力を高める。
「そうは思わないか―――――亜衣!」
大国主の禁厭を使い呪力を大きな水へと変換し鏡のように形成させ。
「―――――――――」
ばしゃんと弾ける音が響いたと同時に一人の少女が―――清水亜衣その人が降ってきた。
「・・・亜衣さん。その姿は?」
早苗達が亜衣と別れたのは下校の時だ。ならばその姿は学生服のはずだ。
だが今の亜衣の姿は学生服の上に深い赤色の軽装の甲冑とを烏帽子に似た兜をかぶり手には約73センチほどの太刀が握られていた。
「・・・司郎」
震える声が耳に届いた。俺には亜衣が怪我を直している間どんな気持ちだったのか分からない。曰く十年修行したのかも知れないらしいが・・・もしそうだとしたら亜衣は・・・・・
「―――――コイツ、私がやる。先に行って」
太刀を男に突きつけながら亜衣はそう言った。
「・・・コイツを使うか?」
そう言って布津御霊を呼び出して近寄るが。
「・・・行って。私だけで勝たないといけないんだ」
まるで拒絶するように視線を向けずに亜衣はそう言った。
「・・・そうかよ。早苗、アリサ、ウィン―――――行くぞ!」
そう言い司郎は三人を風を使って飛ぼうとする。
「させんわ!!」
飛ぶ前に叩き落そうと刺客は刀を振るうが。―――――ガキン!
「アンタの相手は私だよ!!」
二人の間に亜衣が滑り込み刀で受け止める。
「チィ!」
押し合いに付き合っても得が無いと判断して亜衣に距離を取る。そして亜衣を相手に刀がぶつかり拮抗する事に刺客の男は苛立ちを覚えた。身体能力強化の術を使っているのは当たり前だが男と女作られる筋肉量は基本男が上だ。その当たり前を覆すほどの亜衣の力の操作の高さを理解するしかないのだ。
(・・・コイツ、ここまで強かったのか?)
清水亜衣は高橋司郎の女の一人であり高橋司郎によって彼の権能の一部を行使することが出来るが、彼女は魔術師の家では無く尚且つ魔術の世界に入ったのも1,2年程度、納めている魔術も基本の身体能力強化の術や物体を強化する程度のはず。魔道の名家に生まれそれに相応しい実力をつけるために鍛えた男からすれば権能の神剣さえ持たなければ大した相手では無いはずだ。
「・・・・・清水亜衣」
「あ?」
突然自分の名前を言う亜衣に対して刺客は頭に?を浮かべる。
「・・・私は名乗ったよ。アンタも名乗りなよ。・・・それともあの変な結界を張らなければ何も出来ない腰抜けだったら私、残念だよ」
「・・・はっ、言うじゃないか。・・・ええよ、名乗ってやる。福原俊矢だ。まぁ、覚えなくてええで、今度こそ―――死ねや」
一瞬で姿が見えなくなったかと思いきや背後に気配を感じ取り振り向くが時すでに遅し、猿飛で飛んだ俊矢の刀が亜衣の腹に突き刺さる――――――
「死なないよ」
・・・と言うわけもなく。亜衣は冷静に迫る刀の峰を掴み。そのまま回し蹴りを放つ。
「チッ!足癖の悪い女やな」
力の力みと解放が上手いのか肉体強化の術をかけて、受けた足が痛みを訴えていることに苛ついている俊矢。
「いけない?乙女の恋を邪魔する奴は蹴られて寝てしまえって言うでしょう!!」
瞬いた一瞬で亜衣の姿が消え先ほどの主返しと言わんばかりに背後をとって頭に向けて刀を振り下ろした。
「ッ!?そうかいなら射殺してやるよ駄馬女!!」
下ろされた刀を回避して即座に亜衣にむけて連撃を叩き込んでいく。
斬!斬!斬!当たれば柔らかな乙女の柔肌はおろか骨まで断絶される俊矢の斬撃を前に亜衣は臆する事も無く捌き切っていく。
「お返し!!」
捌き切った瞬間。反撃開始と言わんばかりに亜衣の刀が俊矢に迫る!!
「そんな上手い話は無いわ貰った!!」
すぐさま亜衣の刀の腹を掴んだ俊矢の刀が亜衣の腹に一線振るうが直ぐに亜衣の姿が消えその場から離れた場所に現れた。
「チッ、随分と早いな。随分と変わったな」
「へへ、褒め言葉として受け止めておくわ」
緊張する一戦に一息つこうと両者の深い深呼吸が間に響く。
「ええ刀やのお前さん切り殺したら貰っていくわ」
「薄緑の事?あげないよ天狗のおじいちゃんからの貰い物だからね勿論命も」
「ほう、薄緑に天狗ねぇ・・・平家の人間にええ度胸や―――その首切り飛ばして神殺しの顔にぶちまけてやる」
「やって見なさいよ。―――ここからが本番だから付いて来なさいよね!!」
亜衣は懐から幾つもの苦無を取り出し放り投げる。
「天狗の足運びを此処に!―――参!」
呪文を唱えた瞬間。亜衣の姿は消え俊矢の背後を取る。薄緑またの名を膝丸。平家を大敗させた英雄源義経の愛刀の名を冠した同銘の刃が俊矢に迫る。
「チィッ!?」
この闘いが起こって何度目か、舌打ちをうつのは。名門に生まれ才能にも恵まれ、それに相応しい研鑽を積んだ自分が迎撃できているとはいえこんなろくに研鑽を積んでもいない小娘に先手を取られ倒すことが出来ずにいる事に本気で苛立っていた。
「天狗の足運びを此処に!―――七!」
亜衣が再び呪文を唱える。鬼一法眼から学んだ戦闘魔術その中で亜衣が学んだ最も難易度が高い魔術。縮地法を再度起動させる。自身が飛びやすく魔術的マーキングされた苦無へと亜衣はワープする。
「糞女がァァッ!!!」
呪文を唱える度にあっちこっちへワープし離れたら別の苦無を投げて俊矢を翻弄する亜衣に怒りの声が響く。
「天狗の足運びを此処に!―――弐!」
「そこの場所は分かっとる!」
飛び回った亜衣のワープ場所をしっかりと把握していた俊矢はワープ触媒である苦無の方向に振り向くが・・・
「――――――!?」
苦無の先には小さな石ころが宙に浮き―――
「――――――何度も何度も同じ場所に飛ぶわけ無いじゃんバカ」
呪文を発動させてワープフェイントに引っかかっている俊矢の後頭部に薄緑の鞘が振り下ろされる。
「・・・キッチリリベンジさせて貰ったよ」
身体強化の術に物質強化の術がかかった薄緑の鞘の強打を受け気絶した俊矢の体に金縛りの呪いをかけて身動きが出来ないようにして亜衣は司郎の元へと向かった。殺されかけたとはいえ現代人の亜衣には人を殺す覚悟は出来てはいなかった。
「――――――まっ、マズイです。神殺しがもう直ぐに儀式は!!儀式はまだおわら――――――」
まつろわぬ茨木童子を呼び出す儀式は終わらないのかと問おうとする本陣の門番の訴えは衝撃音にかき消さられる。
「――――――ようこそ我が宿敵神殺し高橋司郎」
そしてこの騒動の全ての元凶に司郎は出会ったのであった。
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